「養子縁組」をすると、必ず相続税額が安くなるかというと・・そうではありません。
養子縁組をした結果、相続税額が増加するケースもあるので・・注意です。
1. 養子縁組をすることで、「法定相続人の総数」が減る場合
養子縁組をしたことが原因で、養子縁組をしなかった場合と比べて、法定相続人の総数が減り、相続税の基礎控除額が減少する場合があります。
例えば、被相続人の法定相続人が、兄弟のみの場合です(配偶者・実子・両親すべていない)。
以下、事例をもとに解説します。
- 被相続人甲(長男)の法定相続人は兄弟3人(A・B・C)のみ。
(配偶者、実子、両親はいない) - 兄弟のうち、Aだけが、被相続人甲(長男)と養子縁組を行った。
(非課税枠)
法定相続人 | 基礎控除額(非課税枠) | |
---|---|---|
養子縁組をしない場合 | A・B・C | 4,800万円 (3,000万 + 600万 × 3人) |
養子縁組をした場合 | Aのみ | 3,600万円 (3,000万円 + 600万 × 1人) |
なぜこんなことになるのでしょうか?
法律上の子(=養子縁組したA含む)は、兄弟姉妹よりも相続順位が上位のためです。
Aが養子縁組に組み込まれることにより、結果的に、Aのみが法定相続人となり、残りの兄弟( B・C )は、法定相続人ではなくなります(詳しくは、「法定相続人の範囲」をご参照ください)。
法定相続人が多い方が、相続税の基礎控除額や、生命保険金等の非課税枠は増えますので、こういったケースでは・・相続税の「基礎控除額」が減ります。
2. 養子縁組をすることで、「配偶者法定相続分」が減少する場合
養子縁組をしたことが原因で、養子縁組をしなかった場合と比べて、「配偶者法定相続分」が減少するケースがあります。
例えば、被相続人の法定相続人が、配偶者のみの場合です(実子・両親・兄弟すべていない)。
以下、事例をもとに解説します。
- 被相続人甲の法定相続人は配偶者Xのみ。
(実子・両親・兄弟はいない) - 今回、赤の他人Yが、甲と養子縁組を行った。
(非課税枠)
法定相続人 | 法定相続分割合 | 基礎控除(非課税枠) | その他の非課税枠 | |
---|---|---|---|---|
養子縁組をしない場合 | Xのみ | X 100% | 3,600万円 (3,000万円 + 600万円 × 1人) |
Xは配偶者控除を全額利用できる |
養子縁組をした場合 | X・Y | X 1/2 Y 1/2 |
4,200万円 (3,000万円 + 600万円 × 2人) |
Xは配偶者控除を半分しか利用できない |
養子縁組をしない場合は、配偶者Xだけが「法定相続人」となるため、Xが遺産100%を受け取ります。
一方、Yと養子縁組をした場合は、Yは「実子」と同様に取り扱われるため、「法定相続人」は2人( X・Y )となり、その結果、法定相続分の割合は配偶者X 1/2、養子Y 1/2となります。
一見、法定相続人が1人増えたので、「基礎控除額」が増え、相続税額は減少するようにも思います。
しかし、養子縁組をすることで、配偶者Xの法定相続分が減り、本来、Xが利用できていた「配偶者控除額」の利用可能金額が減少する、という影響があります。
つまり、配偶者Xの相続分が減ることで、「税法上優遇される配偶者控除額」が減少し、結果的に、相続税総額が増加してしまう場合があるということです。
3. 孫を養子縁組にする場合の2割加算
孫を養子縁組することで、法定相続人の数が増加します。
しかし、孫養子は、相続税の2割加算の対象となりますので、場合によっては、養子縁組をした結果、税額が逆に増加してしまうケースがあります。
相続税の減額を見込んで「養子縁組」をしたにもかかわらず、2割加算で相続税額が増えてしまうと・・あまり意味がありませんね。