Q11 生命保険契約に関する権利って?

公開日:2017/03/29 最終更新日:2021/10/16 閲覧数:1,995 views

 

一般的に、生命保険の死亡保険金については、相続税上、みなし相続財産として相続税が課税されます(契約者=被保険者・保険料負担者の場合)。
 
しかし、保険には様々な種類があり、被保険者=亡くなられた方であるケースばかりではありません。
(被保険者とは、保険事故の対象となる方のことです)。

例えば、亡くなった夫が、妻を被保険者として「生命保険」を掛けていた場合などです。この場合、夫死亡時点では、「被保険者」に保険事故が発生したわけではありませんので、保険金を受け取ることができません。
 
しかし、当該保険を、仮に死亡時点で解約していれば、「解約返戻金」を受け取ることができる点で、一定の財産価値があります。これが「生命保険金に関する権利」と呼ばれるものです。
 
今回は、保険料負担者=保険契約者を前提にまとめます。
 

1. 一般的な死亡保険金の場合(「生命保険金契約の権利」が発生しない場合)

●夫が、自分を被保険者として死亡保険金を掛けていた
●保険契約者は夫、死亡保険金受取人は妻とする
●今回夫が死亡し、妻が「死亡保険金」を受け取った。

死亡保険金の多くは、上記例題のケースだと思います。
夫が自分を被保険者(被保険者 = 被相続人)として自分で保険金を支払っている場合です。

Q11-1

この場合、遺族が受け取る「死亡保険金」は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。

前回Q10 でお伝えしたとおりです。
この場合、「生命保険金に関する権利」は発生しません。
 

2. 生命保険契約に関する権利が発生する場合(相2①三)

(1)生命保険契約に関する権利とは

生命保険契約に関する権利とは、まだ保険返戻事由が発生していないが、亡くなった時点で有しているであろう「解約返戻金」や「将来の満期保険金」を受け取ることができる権利のことです。

 

(2)具体例

●夫が、妻を被保険者として死亡保険金を掛けていた。
●上記保険は掛け捨てではなく、解約返戻金があるものとする。
●今回夫が死亡した。
●保険契約者は夫、死亡保険金受取人も夫とする。

同じ死亡保険金でも、「被保険者」が(夫ではなく)の場合です。
つまり、「妻が亡くなった時のために」、夫が死亡保険金を支払っていたような場合ですね。
この場合に、「生命保険契約に関する権利」が発生します。。以下解説します。

Q11-2

(3)保険金請求権が発生するタイミング

被保険者が「妻」の場合は、妻死亡が「保険事故」となりますので、妻死亡時点で初めて保険金が発生します。
したがって、夫死亡した時点では、まだ「保険事故」が発生していないため、「保険金請求権」は発生しません。
 

(4)生命保険契約に関する権利が発生

しかし、上記の生命保険には「解約返戻金」があります。
保険契約者・受取人とも夫のため、生前、夫には「将来、妻死亡時点で生命保険金を受け取ることができる権利」が存在しています。
したがって、仮に生前に保険を解約していれば「解約返戻金を受け取る権利」があったはずです。
これが「生命保険契約に関する権利」です。

 

(5)相続税が課税

上記の「権利」については、相続税上、という一定の財産価値(解約返戻金請求権)があるものとして「相続税」の課税対象となります(掛け捨て保険は除く)。
つまり、「当該権利」を相続した方は、「保険支払事由」が発生していなくても、「相続税」が課税されるということですね。
保険金を受け取るわけではないのに・・相続税が課税されるため、十分注意が必要です。
当該相続により「契約者」の名義も変更されます。

 

(6)まとめ

「生命保険契約に関する権利」を相続するのは、被相続人が他の人に生命保険を掛けていたときです。
死亡保険金は支払われませんが、その代わりに「権利」という相続財産を引き継ぎます。

 

自分自身が被保険者 死亡保険金 通常の生命保険
他の人が被保険者 死亡保険金なし
解約返戻金や満期受取金の権利あり
生命保険契約に関する権利

 

  • 相続開始時点で、保険事故が発生していない生命保険契約 = 被相続人以外の人が「被保険者」であるということ。
  • 被相続人が保険料を負担していること。

 

(7)妻が先に死亡した場合は?

ちなみに、上記例題で、妻が先に亡くなった場合は、受取人である父に「保険金」が支払われます。
この場合、父には、相続税でははなく、所得税が課税されます。
 

3. 金額は?

生命保険金に関する権利は、被相続人が亡くなった時点の「解約返戻金」で評価します(財基通214条)
前納付保険料や剰余金の分配など返戻される金額すべて対象となります(源泉分は控除)。
通常は、「保険会社」の方で計算してくれますので、計算書を入手します。

解約返戻金や満期保険金のない掛け捨ての生命保険契約は「評価ゼロ」となります。

 

4. 通常の(本来の)相続財産

被相続人(保険料負担者)=保険契約者の場合、上記「生命保険契約に関する権利」は、本来の相続財産となります。
なぜなら、被相続人が保険契約者の場合、解約返戻金等は、生前、被相続人(保険負担者)に入るべきお金ですので、被相続人がもともと持っていた財産=通常の相続財産となります。
通常の「生命保険の死亡保険金」のように、「死亡による受取人に新たな債権」=「みなし相続財産」にはなりません。
この結果、以下の点に留意が必要です。
 

(1)生命保険の非課税枠の適用なし

「みなし相続財産」ではなく、「本来の相続財産」となりますので、一般的な死亡保険で利用できる生命保険の非課税枠を使うことはできません。
 

(2)遺産分割協議が必要

「本来の相続財産」となりますので、遺言がない場合には、他の相続財産同様、遺産分割協議書で、「生命保険契約に関する権利」を相続する方を決定する必要があります。
 

5. 生命保険金に関する権利を相続した後の取扱い

「生命保険金に関する権利」を相続した場合、相続人は「被相続人の地位を引き継ぐ」ため、過去に負担した保険料は、相続人が過去から負担したものとみなされます。
相続発生時に解約返戻金相当額で課税済のため、当然、負担保険料も引き継がれるという流れになります。

相続した方が、その後に解約した場合は、解約返戻金につき「所得税」が課税されます。

 

6. 保険契約者等の異動に関する調書

今回のように、「生命保険契約に関する権利」が生じる場合、契約名義は、被相続人⇒相続人に名義変更されます。
この点、契約者死亡により契約者が変更された場合は、保険会社から、「保険契約者等の異動に関する調書」が税務署に提出されます(解約返戻金相当額が100万円超の場合)。
 
つまり・・「生命保険契約に関する権利」につき相続税申告をしていない場合は・・税務署にばれる可能性が高いということになります。
詳しくは、こちらご参照ください。

 

7.みなし相続財産になる場合も?

あまりありませんが、生命保険契約に関する権利が「本来の相続財産」ではなく「みなし相続財産」になるケースもあります。
今回のブログは、被相続人(保険料負担者)=保険契約者の場合を前提にしておりますが、被相続人(保険料負担者)≠保険契約者の場合は、「みなし相続財産」となります。
こちらについては、Q12でまとめています。
こちらご参照ください。

 

8.参照URL

(相基通3-36 被保険者でない保険契約者が死亡した場合)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/04.htm
 

相続税基本通達3-36