Q66 一般社団法人を利用した相続税スキーム?

 最終更新日:2023/01/20 閲覧数:6,450 views

 
一般社団法人は出資持分がありません。したがって、亡くなった方が一般社団法人をお持ちであっても、持ち分がない以上、相続税の課税対象にはなりません。
しかし、ここを悪用して、一般社団法人に資産を移すことによる相続逃れが横行したことから、2018年に相続税の改正が行われています。

 

1. 一般社団法人とは?

一般社団法人とは、営利を目的としない「非営利法人」です。
株式会社との大きな違いは、原則として「利益の分配が行えない」点です。
ただし、必ずしも「公益性」が要求されるわけではなく、収益を獲得する活動は可能ですし、従業員に給与を支払うことも可能です。
 

2. 原則として相続税が課税されない

(1)原則として相続税が課税されない

一般社団法人は、株式会社と異なり、「出資金」や「持分」の概念がありません。
 
通常の株式会社は、出資額や留保利益に「持ち分」が存在するため、この「持ち分」につき、相続税が課税されます。
一方、一般社団法人は、いくら利益を稼いでも、「持分がない」ので、原則として課税されることはありません。例えば、一般社団法人の理事が亡くなったとしても、理事の交代だけで完了します。
 

(2)相続税を免れる?

例えば、評価額の高い「収益不動産」や「自社株式」を、遺言・売却・贈与等何らかの形で、一般社団法人に移しておけば、その後、相続税は課税されないことになります。

 

ただし、一般社団法人に財産を移す際には、贈与税や所得税が課税されます
でも・・移す時点で、一旦「贈与税」や「所得税」を支払ってしまえば、一般社団法人には永久的に相続税が課税されない・・というロジックになります。
 

3. 相続税課税の例外(2018年改正)

2018年の税制改正で、一般社団法人を親族で支配している場合は相続税が課税されることになりました。一般社団法人設立による「租税回避行為」を阻止し、課税の公平性を確保することが目的です。

 

(1) 親族で支配する一般社団法人の相続税課税関係

次の要件のどちらかにあてはまる一般社団法人(or一般財団法人)の「理事」が死亡したときは、一般社団法人に相続税が課税されます。理事に限定した規定です。「特定一般社団法人等」と呼ばれます。
 
●相続の直前で、役員に占める同族役員の割合が1/2超
●相続前5年間につき、役員に占める同族役員割合が1/2超の期間が合計3年以上
 
「同族役員」とは、被相続人とその配偶者、3親等内の親族、オーナー企業の従業員など特殊の関係がある人です。
また、過去5年以内に理事であった人が死亡した場合も同様に課税されます。

(2) 課税される金額

「特定一般社団法人等」については、死亡役員(理事に限る)に対応する純資産額を、遺贈で取得したものとして、特定一般社団法人等に相続税が課税されます。
次の金額が「被相続人から一般社団法人」に「遺贈」されたとみなされます。
 
一般社団法人の純資産額÷被相続人(死亡した理事)を含む同族役員の数

 
ただし、個人から一般社団法人に資産を移転したときに贈与税が課税された部分は、当該金額につき相続税から控除します。

 

4. 一般社団法人に対する贈与税

個人から一般社団法人への資産贈与により、個人の贈与税・相続税が不当に減少する結果になる場合は、一般社団法人を個人とみなして一般社団法人に「贈与税等」が課税されます(相法66条④)
 
【相続税法第66条第4項】
持分の定めのない法人(一般社団法人)に対し、財産の贈与又は遺贈があった場合において、当該贈与又は遺贈により当該贈与又は遺贈をした者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、当該法人を個人とみなして、贈与税又は相続税を課する。

 
【不当に減少する結果とならない場合】
以下①~④の要件すべて充たす場合です(相施令33③)
 


① 運営組織が適正であり、定款等で、理事等に占める3親等内の親族割合を1/3以下とする定めを設けること。
② 一般社団法人に関係する「特定の者」に、特別の利益を供与しないこと。
③ 定款等で、解散時の残余財産は、国等に帰属させる旨の定めを設けること。
④ 一般社団法人に法令違反、仮装隠蔽等がないこと。

 
例えば、個人が、相続税を減らすために「一般社団法人」を設立して、個人の財産を贈与した場合どうでしょうか?
この場合、上記の規定があるため、資産を移したときに「贈与税等」が課税されます。
 
つまり、一般社団法人に贈与した時点では、上記の規定があることにより、歯止めがかかってるんですね。
この時点での「相続税節税効果」は・・ありません。

 

5. 贈与よりも譲渡?

上記のみなし贈与の規定は、ハードルが高いため・・現実的には、「贈与」は難しく(=贈与税がかかるため)、「売買」で移転することが一般的です。
 
個人が所有する不動産等を、一般社団法人に贈与する場合、「時価で譲渡」したものとして「譲渡所得課税」が発生します。一方、贈与を受けた「一般社団法人側」は、その「受贈益」に対して「法人税」が課税されます。

売買の場合、「入り口時点」では譲渡所得税はかかりますが、「出口時点」、つまり譲渡後の時価上昇による相続税等の影響は避けることができます。

 
(まとめ)

適正価額での譲渡
  • 一般社団法人は個人とみなされず、「贈与税等」は課せられない。
  • 譲渡側に「譲渡所得税」はかかるが、その後の時価上昇による相続税等の影響は避けることができる。
無償での贈与
  • 一般社団法人を個人とみなして「贈与税等」かかる。

 

6. 参照URL

(特定の一般社団法人等に対する課税のあらまし)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201909/01.htm