Q55【海外在住非居住者】実印がない場合の遺産分割協議書の押印は?/「印鑑証明」や「住民票」の代わりの書類は?

 最終更新日:2022/04/16 閲覧数:6,857 views

 
遺言書がなく、相続人が複数人いる場合は、「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が実印(印鑑証明登録印)を押印します。
また、相続税申告の際は、「遺産分割協議書」や「印鑑登録証明書」の添付が必要となります。また、相続財産の名義変更を行う際にも「遺産分割協議書」及び「住民票」の提出が必要となります。
しかし・・相続人が海外在住の「非居住者」の場合は、「実印」や「印鑑証明書」がありません。こういった場合、どういった手続きが必要なのか?という論点です。

 

1.遺産分割協議書は「サイン」でOK

相続人が日本人であれば、たとえ外国籍であっても「相続権」がなくなることはありません。海外では、通常、実印の代わりに、本人が署名(サイン)を行います。相続の場面でも、相続人が「非居住者」の場合は、遺産分割協議書にサインを行うことで、遺産分割協議書は有効な書類となります。

 

2.非居住者は「印鑑登録証明書」がない

一方、日本の居住者の場合、遺産分割協議書に押印した「実印」の根拠として、市区町村に登録された「印鑑登録証明書(氏名・生年月日・住所記載)」が存在します。印鑑登録済の印鑑で「遺産分割協議書」に押印することで、本人が遺産分割に同意したことを証明できるため、相続税申告書提出の際には、「印鑑登録証明書」を添付します。しかしながら、印鑑登録証明書は、日本に住所がなければ発行できないため・・非居住者の場合は、発行されません。
 

3.印鑑登録証明書の代わりとなる「サイン証明」(署名証明)

(1)サイン証明(署名証明)とは?

この点、海外在住の方は、印鑑証明の代わりに、自らの「サイン」を証明する書類として、「サイン証明」という書類があります。サイン証明は、「印鑑登録証明書」の代わりとなりますので、相続税申告の際や、相続財産の名義変更の際に添付することで、申告業務や名義変更手続きも可能となります。

 

(2)サイン証明書の入手方法

通常、非居住者が居住する国の「在外公館」に、完成した遺産分割協議書とパスポートを持参し、目の前でサイン・拇印を行うことで「サイン証明書(氏名・生年月日が記載)」を交付してもらいます。なお、予め署名されている書類の証明はできず、目の前でサインを行う必要があります。
 

(3)サイン証明書の種類

サイン証明書には「単独型」と「綴り型」の2タイプがあります。単独型は申請者の署名を単独で証明するタイプです。一方、綴り型は、遺産分割協議書とサイン証明を綴り合せて拇印する方法です。相続税申告の場面では、基本的に「単独型」で受理されますが、抵当権設定登記等については「綴り型」が必要な場合もあります。提出先により異なりますので、事前に確認が必要です。なお、単独型の場合は、金融機関等で利用することを考えて、余裕をもって取得しておくことをお勧めします。
 

(4)日本国籍がない場合は?

原則として「サイン証明書」を発行してもらえるのは「日本国籍」がある場合のみですが、事情を説明し、失効した日本国旅券や戸籍謄本などを提示すれば、発行してもらえることもあるようです。

 

4.住民票の代わりとなる「在留証明書」

不動産を相続する場合、名義変更登記が必要となりますが、その際、「遺産分割協議書」だけでなく、登記名義人が実在することを証するために、「住民票」ないし「戸籍の附票」を提出します。
しかし、非居住者の場合は、戸籍の附票や住民票に、居住する外国の住所までは記載されていません(国内に本籍が残っていても)。そこで、非居住者の住所を証明する書類として、「在留証明書」という書類が代わりとなります。この「在留証明書」は、現地の在外公館に、パスポートや、現住所が確認できる運転免許証等を持参すれば申請・取得することができます。
なお、相続税申告の場面では、「在留証明書」は添付書類として要求されていません
ただし、海外在住者は、基本的にマイナンバーがなく、戸籍謄本がありませんので、これらの代わりとして「在留証明書」の提出が求められるケースがあります。
 

5.納付方法

相続税の申告及び納税は、亡くなった方(被相続人)の住所地を所管する税務署に行いますので、相続人が海外でも、日本国内の税務署に納税します。なお、納付書に記載する納税者の住所は、海外の住所でも構いません。
 

6. 納税管理人の届出

海外に住んでいる相続人が、日本で相続税申告を行う場合、通常は、納税管理人の選任届出書を税務署へ提出します。納税管理人とは、海外に住んでいる納税者に代わって、税務署へのやりとりを代理する方です(申告書の提出・納税手続等)。相続税の場面では。税金計算を行うため、一般的には税理士等を選任される場合が多いです。
 

7.遺言書の作成

上記の通り、非居住者の場合、国内在住の相続人よりも手間が増えます。
この点、あらかじめ「遺言書」を作成し、国内の遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者の署名・捺印により相続手続きが可能となる、手間が省けます。