Q61【死因贈与】遺言よりも活用可能な場合は?メリット・デメリット/遺贈との違い・口頭・契約書の有無・撤回の有無は?

 最終更新日:2022/12/03 閲覧数:2,210 views


 

将来自分が死んだときに、「特定の人物等」に財産を渡したい場合、「遺言」をイメージされる方が多いかもしれません。「遺言」による財産の贈与は、「遺贈」と呼ばれています。
一方、遺贈に似たものとして「死因贈与」という概念があります。死因贈与は、贈与契約の一種ですが、贈与者が死亡した際に効力が発生する契約です。
 
「死因贈与」は、遺言による「遺贈」と非常によく似ています。
しかし、「遺贈」と「死因贈与」は法的な性格が異なるため、状況によって選択すべきパターンが存在します。
 
今回は、死因贈与契約とはどういったものなのか?遺贈との違い、死因贈与が活用できるケースにつき解説します。

 

1. 死因贈与と遺贈の共通点

死因贈与契約は、贈与契約の一種です。生前に「贈与契約」を行い、贈与者の死亡によって贈与の効力が発生するものです。例えば、Aさんが、自分の財産を、死後にBさんに渡したい場合、生前に「AB間で、Aが亡くなった際に、特定の財産をBが受け取る契約」を締結します。これが死因贈与契約です。契約締結時に「贈与の効力」は発生しませんが、Aが亡くなったタイミングで効力が発生し、Aの財産はBに贈与されます。
簡単にいうと、「自分が死んだらあなたに1億円贈与する!」みたいな契約です。
 
一方、「遺贈」は「遺言」により特定の人に財産を渡す行為ですが、贈与者の死亡を原因として効力が生じる点で「死因贈与」と非常によく似ています。したがって、民法上は、「死因贈与」については、原則として「遺贈に関する規定を準用」されることになっています(民554条)。
 

2. 死因贈与と遺贈の違い

しかし、「死因贈与」と「遺贈」は、法的には性格が異なります。死因贈与は、当事者間の贈与契約であり「双方の合意が必要」であるのに対し、遺贈は、遺言による「被相続人の単独行為」のため、受遺者の合意は必要ありません。したがって、以下の違いが生じます。

 

(1) 法律上の比較

遺贈 死因贈与
両社の合意 不要(贈与側の一方的な意思表示) 必要
書類の有無 遺言書が必ず必要(民967~984) 書面の「贈与契約」がなくても、口頭でも成立可能
年齢 15歳以上(民961条) 18歳以上(法律行為)(※1)
遺贈者(贈与者)の撤回 遺贈者の意思で自由に撤回できる。 原則、同左(※2)
受遺者の放棄・撤回 受遺者は自由に遺贈の放棄が可能。 原則、不可(※3)

 

(※1)親権者の同意があれば、18歳未満でもOK
(※2)「生前贈与」の場合、書面があれば、原則として撤回できません(民550条)。一方、死因贈与契約の場合は、実質内容が遺贈に近いため、遺贈に関する規定が準用されるため(民法554条)、たとえ書面による場合でも、原則として撤回は認められています(民1022条)。
(※3)「書面によらない贈与」で、「履行完了前」の場合、受遺者側からの撤回が認められた判例があります(民550条、東京高判H3.6.27)

 

(2) 税制上の比較

死因贈与は、「贈与」という名前から「贈与税」と勘違いされる方もありますが、「相続税」の課税対象となります。
また、どちらも不動産名義を変更する場合、「不動産取得税」「登録免許税」が課税されます。ただし、遺贈の場合は、法定相続人への遺贈につき、非課税ないし税率が安くなっています。
 

遺贈 死因贈与
課税される税金 相続税 同左
不動産取得税 法定相続人 非課税
法定相続人以外 4%
一律4%
登録免許税 法定相続人 0.4%
法定相続人以外 2%
一律2%

 

3. 死因贈与の特徴(メリット・デメリット)

遺贈と比べた死因贈与の特徴(メリット・デメリット)は以下の通りです。
 

(1)負担付死因贈与が可能

死因贈与の場合、死後に財産を贈与する際の「条件や負担」を定めることが可能です(負担付贈与)。例えば、生前は生活の面倒を見てくれる代わりに死因贈与する、などです。こういった「負担付死因贈与」の場合は、贈与を受ける側が、定められた負担を履行した後は、原則として贈与契約の撤回ができないと解されています(最判昭57.4.30)。したがって、遺贈と比べると、死因贈与の方が、契約上の贈与を受ける側の保護が手厚いという特徴があります。逆に、生前に受贈者が負担を履行しない場合には、死因贈与の撤回も可能ですので、間接的に受贈者に負担を促すこともが可能とも言えます。
なお、負担付遺贈もありますが、契約ではないため、負担にかかる法的な拘束力はありません(遺言取消請求権はあり)。
 

(2) 仮登記が可能

死因贈与の対象が不動産の場合、死因贈与契約締結時に、仮登記が可能です(始期付所有権移転仮登記)。「始期付所有権移転仮登記」とは、被相続人生存中は被相続人に所有権があるが、被相続人亡くなった後は、相続人に所有権を移転できる登記のことです。当該仮登記を設定した場合でも、死因贈与契約の撤回は可能ですが、贈与者は仮登記の抹消登記を単独で行うことはできず、受贈者側の協力が必要となります。したがって、安易な撤回が制限されるとともに、仮登記により、贈与者の死後の本登記がスムーズになります。

 

(3)比較的簡単に作成可能

死因贈与契約の場合、自筆証書遺言のような厳格な方式が要求されておらず、家庭裁判所の検認も必要ありません。また、公正証書遺言のような立会人は不要で費用もかかりません。したがって、遺言よりも比較的簡単にコストを書けずに作成できるという点が特徴的です。

 

4. 死因贈与の活用方法

死因贈与契約は、実質的に遺贈と同じ効果があり、しかも「贈与税」ではなく「相続税」が課税されるという点で、比較的実務で活用されるケースは多いです。
また、仮登記で権利を保全できる点、贈与を受ける側の保護が手厚いメリットがあります。
したがって、例えば、以下のような場合は、「死因贈与」を選択するケースがあります。
 

 

ニーズ ケース 内容
贈与者側のニーズ 贈与者が生前に生活を見てもらいたい場合 死因贈与の場合は、負担付契約が可能ですので、例えば、生前に生活支援をしてもらいたいケースなどは、死因贈与を選択するケースがあります。
内縁の妻など法定相続人以外に財産を残したい場合 遺言書でも可能ですが、死因贈与契約は口頭でも成立し、必ずしも公正証書でなくてもよいため立会人や検認が不要な点で、比較的簡単に作成可能です。
遺産を確実に渡したい場合 死因贈与の場合、原則として受遺者側の撤回はできません。したがって、贈与者が遺産を確実に渡したい場合は、死因贈与の方が向いています。例えば、先祖代々の骨とう品や、愛着のある自宅など、遺産を確実に引き取ってほしい場合などが考えられます。
受贈者側のニーズ 受贈者が財産受取の確実性を高めたい場合 遺贈の場合は贈与者の意思で撤回が可能ですが、死因贈与の場合は、仮登記を行うことで安易な撤回を防ぐことができます。したがって、受贈者側が財産の受取の確実性を高めたい場合は、「遺贈」よりも「死因贈与契約」を選択するケースがあります。例えば、先祖代々の相続財産などがあり、相続人が実子と血のつながらない後妻の場合などです。一次相続では、一旦後妻である配偶者が相続し、将来後妻が亡くなった際には、当該財産を実子が受け取りたい場合です。
なお、こういった場合は、実子が後妻の養子に入るか、対象が不動産の場合は、配偶者居住権を設定することも考えられます。

 

ただし、死因贈与は、口約束だけでは、そもそもの贈与の有無、本人の意思能力につきトラブルになるケースも多いです。したがって、できるだけ書面で契約書を作成し、かつ公正証書にしておく方がよいかと思われます。
 

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