Q118 不動産とセットで「住宅ローン」を贈与する方法は?負担付贈与と通常の贈与の違い

公開日:2021/04/01 最終更新日:2021/06/29 閲覧数:1,198 views


 
「住宅ローン付のマンションを子供に贈与したい!」というケースもあると思います。
こういった、「不動産」+「負債」をセットで贈与する行為は「負担付贈与」と呼ばれています。
「負担付贈与」の場合は、贈与を受ける側だけでなく、贈与する側にも税金が課税される場合がありますので、注意が必要です。
 

1. 負担付贈与とは?

負担付贈与は、財産を贈与するだけでなく債務(借入金・預り保証金など)もセットで贈与することです。
通常の贈与と異なるのは、財産を与えるだけでなく、見返りとして「債務の負担」を約束する点です。

 

2. 具体例

  • マンションを贈与する代わりに、住宅ローンの負担をしてもらう
  • 財産を贈与する代わりに、死ぬまで介護してほしい
  • 土地を贈与する代わりに、土地の一部を利用させてほしい

 
負担する債務は、「第三者」に対するものも含まれます。
父が子に財産を贈与する代わりに、母を介護してほしいなどです。


 

3. 「通常の贈与」と「負担付贈与」の評価額の違い

不動産を贈与する場合、通常の贈与の場合は「相続税評価額」で贈与税を計算するのに対し、負担付贈与の場合は、「通常取引価額」つまり市場価額で評価を行います。
不動産の「相続税評価額」は、概ね「時価の8割程度」の金額になりますので、「通常の贈与」よりも「負担付贈与」で財産を渡す方が評価額は高くなります。
 

通常の贈与 相続税評価額で評価
負担付贈与 市場価格(時価)で評価


 

4. 具体例

  • 父から息子(20歳以上)に土地を贈与する(土地の所有期間7年)
  • 父が土地取得時の価額は3,000万円、息子への贈与時時価(市場価額)は5,000万円
  • 息子への贈与時の土地相続税評価額4,000万円
  • 贈与時において、父は借金3,500万円あるものとする
  • その他の特例はないものとする

 

(1) 土地のみを贈与するケース(通常の贈与。借金は贈与しない

① 父の税金(贈与者)

贈与の場合、贈与者には、所得税、贈与税とも課税されません。
 

② 息子の税金(受贈者)

受贈者は、土地相続税評価額4,000万円に対して、贈与税が課税されます。
(4,000万円 – 110万円)× 50% – 415万円 = 1,530万円
 

 

(2) 土地とセットで借金も贈与するケース(負担付贈与)

① 父の税金(贈与者)

借金をセットで贈与する「負担付贈与」の場合、贈与者(父)は、3,000万円で取得した土地を、息子に借金免除額3,500万円で売却したと考えます。
したがって差額の500万円に対して「譲渡所得税」が課税されます。
500万 × 20.315%(5年超譲渡所得税率)= 101.5万円の所得税が発生します。
 

② 息子の税金(受贈者)

受贈者は、5,000万(時価)の土地を、借金引受額3,500万円で購入したと考え、差額の1,500万円は父親からの贈与とみなされ、贈与税が課税されます。
(1,500万円 – 110万円)× 40% – 190万円 = 366万円
 


 

5. 不動産を「負担付贈与」する場合のメリットデメリット(生前贈与のメリット)

 

メリット デメリット
  • 生前贈与の場合は、贈与者の意思を確実に反映して財産を渡すことができるため、無用な相続争いを避けることができる。
  • 不動産を負担付贈与する場合は、贈与時の時価での贈与となるため、将来値上がりが見込まれる不動産の場合は、現時点で贈与する方が有利となる。
  • 負担付贈与は、贈与ではなくあくまで時価での「売却」となるため、贈与者、受贈者どちらにも税金がかかる場合がある。
  • 生前贈与の場合は、相続時に適用可能な小規模宅地等の特例(最大8割減)の適用ができない。
  • 相続の際は課税されない不動産取得税(原則4%、現在は1.5%)が課税される。また、登録免許税は、相続の際よりも高い税率(2%)


 

6. 結論

負担付贈与の場合は、贈与時の時価(市場価額)での取引とされ、贈与者、受贈者それぞれに税金が課税される可能性がある点に、注意が必要です。
ただし、贈与税は通常の所得税よりも税率が高いため、必ずしも「負担付贈与」の場合に、税金総額が高くなるとは限りません。
不動産を「贈与」するのか「負担付贈与」で渡すのか?は、対象不動産の時価や、借金等の金額を総合的に勘案し、税金総額をシミュレーションの上で意思決定することが大切となります。