Q114【赤ちゃん】胎児は「生まれたもの」とみなす?相続権はあるのか?遺産分割や相続税申告期限の延長は?

 最終更新日:2022/11/25 閲覧数:2,011 views

 
配偶者が若くして亡くなり、相続人のおなかの中に赤ちゃんがいるケースもあるかもしれません。
こういったお腹の中の胎児は、相続権があるのか?という論点です。
また、生まれてきた赤ちゃんは未成年ですので、現実的な遺産分割はどのように行うのか?
相続税申告書の提出有無など・・疑問が生じます。
 
今回は、お腹の中にいる胎児の相続権の有無、遺産分割、相続税申告方法につき解説します。

 

1. 胎児の場合は?

胎児とは、まだ生まれていない、おなかの中にいる状態の赤ちゃんのことです。
民法上、相続人になる方は決められています。①配偶者②子③直系尊属(父母や祖父母)④兄弟姉妹です。
上記の「子」には、胎児が含まれるのか?という論点です。
 

胎児は、民法上、相続に関しては「すでに生まれたものとみなす」と定められています(民886)。
したがって、相続が発生した場合、被相続人の妻のお腹にいる「胎児」は法定相続人として取り扱われます。
ただし、「死産であった場合」は、法定相続人になりません
 
胎児がいる場合の「相続人の取扱い」をまとめると、以下となります。
 
【夫が亡くなり、妻と胎児のみの場合の夫の相続人】

胎児が出生した場合 妻  / 生まれてきた子供
胎児が死産の場合 妻 / 夫側の直系尊属又は兄弟姉妹

 

なお、胎児は生まれたものとみなされるため、代襲相続も可能です(民887Ⅱ)。 例えば、夫が2023年1月に亡くなり、その後、2023年3月に夫の父が亡くなり、2023年5月に夫の赤ちゃんが誕生した場合、赤ちゃんには夫の相続権がありますので、夫の父の相続につき代襲相続が可能です。
 

2. 遺産分割協議

判例上は、生まれてきた時に、相続開始時に「遡って」権利能力を取得するとしています。また、死産の場合は相続権が発生しませんので、「胎児」の時点では、まだ相続人が確定していない状態となります。
 
例えば2023年3月に夫が死亡し、5月に胎児が生まれた場合、生まれる前の4月時点で遺産分割協議をしたとしても、「相続人が確定していない」時点での「遺産分割協議」のため、無効な遺産分割協議となります。
したがって、遺産分割については、二度手間を省くため「胎児出生後」に行います。

 

3. 特別代理人の選任

胎児出生後、赤ちゃんを含めた相続人間で遺産分割協議を行いますが、赤ちゃんは未成年のため、通常は母が赤ちゃんの代理人となります。

ただし、「親権者又は成年後見人と未成年の子供の利益が相反する場合」は、親は代理人になれません
例えば、親と赤ちゃんが相続人の場合、たとえ自分の子供であっても、相続金額や内容は、両者で公平に決定する必要がありますが、親は、赤ちゃんの意思に関係なく、自由に遺産分割協議ができる点で、利益相反が生まれます。
 
そこで、こういった「未成年者とその親が共に相続人になる場合」は、特別代理人の選定が必要となります。
特別代理人は、家庭裁判所への申し立てにより行います。利益のない第三者であれば親族でもOKです。
 

4. 相続税申告

相続開始時に胎児がいる場合、相続税申告の取扱いは以下となります。

(1)相続税申告書提出時(被相続人が死亡を知った日の翌日から10か月以内)までに出生する場合

申告期限までに胎児が出生する場合は、通常の相続人となりますので、遺産分割を行い、法定相続人の数に含めて基礎控除を計算し、課税価格、相続税の総額などを計算します。

したがって、10か月の期限内に赤ちゃんが生まれそうな場合には、出生するまで申告を待つ方が修正申告の手間が省けます。

 

(2)相続税申告書提出時(被相続人が死亡を知った日の翌日から10か月以内)までに出生していない場合

申告期限までに胎児が出生しない場合、その胎児はいないものとして、一旦申告及び課税価格の計算を行います(相法27Ⅰ)。その後、出生した場合には、以下の手続きが必要になります。
 

胎児以外の相続人 改めて、胎児を「法定相続人の数」に含めて、基礎控除及び相続税総額の再計算を行い、出生の翌日から4か月以内に更正請求を行います(相法32条Ⅰ)。
生まれた赤ちゃん 生まれた赤ちゃんの相続税申告期限は、「出生日の翌日から10か月以内」となり、法定代理人である親が代わりに行います(法令解釈通達第27条関係27-4)。

 

(3)申告期限の例外

ただし、上記(2)の場合、仮に生まれたものとして計算した場合、基礎控除が増える結果、相続税申告・納税義務がなくなるような場合、申告書提出期限の延長が認められています。
 
こういった場合は、申告自体が無意味になるため、胎児の生まれた日後2か月間の延長が認められています(相基通27-6)。

 

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