被相続人がゴルフ好きな方であれば、「ゴルフ会員権」をお持ちの方もいると思います。
その他、例えば、エクシブなどの「リゾート会員権」をお持ちの方もいるかもしれません。
こういった各種の「会員権」も、「財産価値」がありますので、原則として、相続税の課税対象となります。
そこで今回は、「ゴルフ会員権」「リゾート会員権」等の相続税評価方法につき解説します。
目次
1. ゴルフ会員権とは?預託金の種類は?
(1) ゴルフ会員権とは?
ゴルフ会員権とは、「ゴルフ場を利用できる権利」であり、一般的に、「ゴルフ会員権」を保有する方に、優先利用権(割安プレー権)が付されています。「株式方式」と「預託金方式」の2種類があります。
(2) 預託金の種類
多くのゴルフ場は、「預託金方式」となりますが、預託金には、「通常の預託金」と「入会預託金」の2種類があります。
通常の預託金 | 新規募集を行う際に、ゴルフ場整備等を目的として調達される預託金。当該預託金部分は、ゴルフ会員権の市場価額(取引相場)の中に含まれている(=売却時に売主から買主へ引き継がれる) |
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入会預託金 | 新たに会員になる際に預ける預託金。入会預託金は、会員を退会、あるいは会員権を他社に売却した場合にゴルフ場から全額返還される内容のため、市場価額(取引相場)には含まれない(=売却時に売主から買主に引き継がれない) |
2. ゴルフ会員権の相続税評価方法
ゴルフ会員権については、相続税上、「取引相場のあるゴルフ会員権」「取引相場のないゴルフ会員権」に区分して、それぞれの評価方法が定められています。
(1) 取引相場があるゴルフ会員権
取引相場があるゴルフ会員権は、原則として、取引価格の70%で評価を行います。
ただし、取引価格に含まれない「返還される預託金」が別途ある場合は、返還預託金等の金額を加算します。
課税時期の取引価格 × 70% + 取引価格に含まれない返還預託金の現在価値
「取引価格に含まれない返還される預託金」とは、上記の「入会預託金等」のことです。「通常の預託金」は、取引価格に含まれていますので、「入会預託金」がない場合は、取引相場×70%の評価で完結します。したがって、入会預託金の有無を、ゴルフ場に確認しておく必要があります。
なお、「入会預託金」は、原則として退会時や売却時に全額返金されますが、預託金等返還までに「一定期間」(概ね1年を目安)がある場合は、「割引現在価値」で評価を行うことも可能です。課税時期から返還日までの期間に応じて、基準利率で計算した利息を割り引いて算定します(基準年利率は、国税庁HPご参照ください。)
(2) 取引相場がないゴルフ会員権
ゴルフ場によって、名義書換停止中の場合や、譲渡が禁止されているものもあり、取引相場のないゴルフ会員権も存在します。こういった、取引相場がないゴルフ会員権の評価方法は、以下となります。
株式方式の会員権 | 通常の株式評価 | 「財産評価基本通達」に基づく非上場株式(取引相場のない株式)と同様の方法で評価 |
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預託金方式の会員権 | 預託金評価額 | 預託金の額で評価。預託金等返還までに「一定期間」がある場合は、「割引現在価値」で評価(上記同様) |
株式方式+ 預託金方式 |
株式評価額+預託金評価額の合計で評価 | 株主となり、かつ、預託金を預託しなければ会員となれないゴルフクラブ会員権 |
上記以外(プレー権のみなど) | 相続税評価なし | 財産評価基本通達4-4、211 |
なお、会員規約で「会員権の相続や譲渡が禁止されるゴルフ会員権」の場合は、被相続人の死亡とともに会員の権利は失われますので、相続税評価額はゼロとなります。
(3) 名義書換料の取扱い
ゴルフ会員権は、相続後に名義変更を行いますが、当該名義書換料は相続後に、相続人が負担すべき費用ですので、 債務控除の対象にはなりませんので、ご留意ください。
3. 取引相場とは?
取引相場については、ゴルフ会員権の「取引仲介業者」が開示しています。例えば、ゴルフホットラインや、住地ゴルフなどが代表例です。「売希望」と「買希望」の2つの価格が記載されていますが、相続税評価上は、中間値(仲値)で行います。
複数の業者で取引相場が異なる場合 | 業者によって取引相場が異なる場合は、最安値のものを採用してもよいこととなっていますが、明らかに一つの業者だけが安い取引相場の場合などは、平均値をとる方が安全です。 |
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相続発生日の取引価格 | ゴルフ会員権は、原則として相続発生日の評価額で評価します。ただし、相続発生日に取引相場がない場合は、相続発生日の前後で、相続発生日に近い日の取引相場を採用します。 |
破たんしたゴルフ場の会員権評価は? | プレーもできず、売買もできない場合は、相続税評価額はゼロとなります。プレーはできる場合でも、預託金が戻ってくるかどうか不明な場合は預託金がないものとして、相続税評価額はゼロとなります。 |
4. リゾート会員権の相続税評価方法
「リゾート会員権」なども、財産価値がありますので、相続税評価を行う必要があります。
ただし、リゾート会員権の場合、さまざまな形態があり、「不動産の権利とセット」になった会員権も存在します。
例えば、「エクシブなどのリゾート会員権」は、「①不動産所有権」と「②施設利用権」で構成され、それぞれ分離して譲渡することはできません。また、契約解除する場合は「清算金」の返還がある場合もあります。
(1)リゾート会員権の相続税評価
「リゾート会員権」は、「ゴルフ会員権の評価方法」に準じて評価します。会員権取引業者が仲介することが多く、取引価額が開示されているケースが多いです。
取引相場がある リゾート会員権 |
通常取引価格×70%で評価。 |
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取引相場がない リゾート会員権 |
預託金等の金額で評価。預託金がない場合は、「契約解除する場合の清算金」で評価(精算金がない場合は相続税評価額はゼロ) |
(2)保有不動産部分の評価は?
エクシブなどのリゾート会員権購入時は、土地と建物の持分も取得するため、不動産登記や固定資産税が発生します。したがって、当該部分の土地建物の評価が別途必要なのか?疑問が生じます。
これらについては、一般的に、リゾート会員権の取引価格に含まれていると考えることができるため、相続税評価上は、取引価格と別に切り分けての評価は不要と考えられます。
(3)乗馬クラブやテニスクラブなどの会員権は?
これらについては、有償で他人に譲渡できないものが多く、入会金を解約時に返還することもほとんどありませんので、相続税評価額はゼロになるケースが多いです。
5. 参照URL
(No.4647 ゴルフ会員権の評価)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4647.htm
(不動産所有権付リゾート会員権の評価)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/15/09.htm
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