Q53【外貨建て相続財産】外貨預金・外貨建て生命保険等の相続税評価方法/海外口座や海外不動産も相続税の対象か?

 最終更新日:2022/01/20 閲覧数:6,861 views

 

相続財産に「外貨の財産」が含まれている場合があります。
相続税の申告は日本円で行う必要がありますので、外貨建ての財産は日本円に換算する必要があります。
また、国内だけではなく、海外に所在する財産も、原則として相続税の課税対象となります。こういった「海外財産」も、日本円での換算が必要となります。
今回は、相続税上の「外貨財産の換算方法」や、「海外資産と相続税の関係」につきお伝えします。
 

1. 外貨建て相続財産の具体例

外貨預金や、トラベラーズチェック、外貨建て保険証券や外貨建て年金などが対象となります。また、海外に所在する資産も、原則として相続税の課税対象となります。
 

2. 外貨建て資産換算方法

(1) 外貨建て資産換算方法

国税庁HPでは、下記のように決められています。(No4665)
原則として、納税者の取引金融機関が公表する課税時期(相続又は遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)における最終の対顧客直物電信買相場(TTB)又はこれに準ずる相場により行います。
対顧客直物電信買相場とは、金融機関が顧客から外貨を買って邦貨を支払う場合(顧客側にとっては外貨を邦貨に交換する場合)の相場をいいます。課税時期にその相場がない場合には、課税時期前の相場のうち、課税時期に最も近い日の相場によります。

 

(2) POINT

  • お亡くなりになられた日のTTB(最終値)により算定します。
  • お亡くなりになられた日が、土日祝日の場合や、取引所の相場がない場合は、原則として、その相続開始日前のレートで換算します。
  • 公表されているTTBは、納税者(相続人)の取引金融機関です。亡くなった方(被相続人)ではありません。ただし、メインバンクがなかったり、過去の為替相場を公表していないケースもありますので、任意の金融機関の為替レートを使用しても、実務上は問題ないと思われます。

 

(~ご参考~)

TTB 銀行が外貨を買い取る際の適用レート
TTS 銀行が外貨を販売する際に適用レート
TTM TTBとTTSの中間値

 

(3) 例題

相続開始日:202×年12月31日
外貨普通預金残高 : 5,000 US$
202×年12月31日に相場がなく、前日の相場は以下の通り

 

(12月30日の相場)

TTB TTS TTM
104.5 102.5 103.5

 
(計算式)
5,000×102.50(TTB)=512,500円 ⇦相続財産 となります。

3. 外貨建て債務の場合は?

外貨建ての借入金等の債務は、相続税上「債務控除」をすることができます。当該外貨建債務も、外貨建資産と同様に円に換算が必要となりますが、TTS(対顧客直物電信売相場)での換算が可能です(財産基本通達4-3)。
 
(財産基本通達4-3)
・・(注)外貨建てによる債務を邦貨換算する場合には、この項の「対顧客直物電信買相場」を「対顧客直物電信売相場」と読み替えて適用することに留意する。

 

4. 先物外国為替契約の場合

先物外国為替契約の締結により、その財産につき決済相場が確定している場合は、当該先物外国為替契約により「確定している為替相場によって換算します(同4-3)
 

5. 海外資産も課税

(1) 原則課税

海外にある資産についても、原則として相続税が課税されます。例えば、外貨預金は、国内にある外貨預金だけとは限りません。海外に所有する外貨預金があるケースもあります。これらについても、原則として相続税が課税されますのでご留意ください。

(2) 例外

ただし、財産取得時に日本国籍を有しており、死亡日前10年を超えて外国に住んでいる場合等は、外国の財産に日本の相続税が課税されません。

(3) 海外不動産の評価は?

海外の不動産を相続税評価する場合も、日本の「財産評価基本通達」に基づき、相続開始日のTTBで円換算を行います。ただし、海外では「路線価」のない国もあり、国内の不動産と同じように評価できないケースがあります。その場合は、「市場での売買価格」や、現地の不動産会社に査定を依頼、不動産鑑定士等の専門家に鑑定を依頼することになります。

(4) 外国税額控除あり

海外の財産については、現地所在地国で「相続税相当額」の課税がある場合があります。この場合、外国で納税した相続税相当額につき、日本の相続税課税額から控除可能です。

(5) 申告しなくてもばれないか?

原則として、「海外の財産」も相続税の課税対象となります。
現在は、世界各国の税務当局が、各地の預金情報を交換していますので、海外の金融機関の外貨預金の情報も、日本の税務当局は把握していると思われます。つまり・・申告漏れは、ばれる可能性は高いと思われます。
なお、被相続人の海外資産については、所得税申告書に添付される「財産債務調書」「国外財産調書」が参考になります。

 

6.参照URL

国税庁 No4665  外貨(現金)の邦貨換算

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4665.htm
 

財産評価基本通達4-3(邦貨換算)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01/01.htm#a-4_3
 

外貨(現金)の評価

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/15/05.htm
 

No.4138 相続人が外国に居住しているとき

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4138.htm
 

7.YouTube

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