マイホーム購入やリフォームを行う場合、親や祖父母から、「資金援助」を受けるケースもあると思います。
こういった場合、原則として、受けとった側に贈与税がかかりますが、一定要件を満たせば、最大1,000万円まで非課税となる制度があります(措置法第70条の2)
当該制度は、「年間110万円までの贈与税非課税枠」や、所得税上の「住宅ローン控除」との併用も可能です。
今回は、住宅取得資金の贈与税非課税制度の概要や、暦年贈与110万円非課税枠、所得税上の住宅ローン控除との関係につき解説します。
目次
1.住宅取得資金の贈与税非課税枠
(1)非課税限度額
令和8年12月末まで、住宅取得資金の贈与につき、下記の「非課税枠」が認められています。
| 通常の非課税限度額 | 省エネ等住宅の場合の非課税限度額 |
|---|---|
| 500万円 | 1,000万円 |
上記の非課税限度額は、贈与を受ける「受遺者」ごとに判定します。したがって、1人の受遺者に対して複数の贈与者がいる場合に、限度額が2倍になるわけではありません。
逆に言うと、「贈与者ごと」の非課税枠ではありません。したがって、例えば、夫婦共有名義でのマイホーム取得などで、夫と妻が、それぞれの親から資金を受け取る場合は、「非課税限度額が2倍」になります。
(なお、共有持分の場合、住宅ローンの返済はそれぞれで支払する必要がありますので、例えば、購入後に夫が妻の分の住宅ローン返済を行うと、贈与税の課税対象となります)。
(2)要件
自己や家族が住むための住宅であれば、新築・増改築・中古でも非課税特例の対象になりますが、「資金援助」に限定され、不動産自体の贈与は対象外となります(例えば、立替や借入で住宅代金を支払い、その後に「贈与資金」で清算や借入金返済にあてるのも×です)。
主要な要件は以下となります。それぞれ、細かい要件がありますので、詳細は、国税庁HPをご参照ください。
| 受遺者(もらう人) | ● 贈与を受けた年の1月1日時点で、18歳以上 ● 合計所得金額が2,000万円以下(新築住宅で、40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下)(※1) |
|---|---|
| 贈与者(渡す人) | ● 直系尊属からの贈与。直系尊属なので、おじ・おば×。配偶者の親からの援助は×。 ⇒一方で、養父母はOKですので、養子縁組も含めて検討が必要。 |
| 住宅(※2)(※3) |
● 床面積40㎡~240㎡かつ、居住用面積が半分以上 ● 自己の配偶者、親族などの(特別の関係がある人)から、取得をしたものではないこと |
| 居住時期 | 原則として、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて、住宅を取得・居住(or居住が確実である)。 |
(※1)合計所得金額とは
給与所得だけでなく、「譲渡所得」など、他の所得も合算した金額を指し、3,000万円の特別控除等適用前の金額。マイホーム買い換えの場合は、旧マイホームの譲渡所得で「合計所得金額」が、2,000万円を超えるケースに注意。
(※2)土地だけの取得の場合
対象になりません。受遺者が家屋を取得している必要があります。例えば、夫が親から贈与を受け、夫が土地購入、妻が家屋を購入する場合は対象になりません。資金贈与を受ける人と家屋所有者が一致している必要があります。
(※3)中古住宅・リフォーム等の場合
● 中古家屋の場合は、昭和57年以降建築された建物or耐震基準適合証明(耐震基準適合証明書・住宅性能評価書等)があるものに限定。
● リフォーム等の場合は、費用が100万円以上に限定。確認済証・検査済証の写し・増改築等工事証明書の書類が必要。
(3)省エネ等住宅とは
「省エネ等住宅」とは、省エネ・耐震・バリアフリーなど一定の基準を満たし、「住宅性能証明書等」で証明できる住宅を指します。
住宅性能証明書、建設住宅性能評価書(断熱等性能等級4など)については、「取得日前2年以内」又は「取得の日以降」に調査が終了したものが要件とされていますので、特に、中古住宅の取得の場合は注意が必要です(リフォームの場合は、増改築工事証明書に「省エネ等住宅基準への適合が証明」されたもの)。
なお、所得税上の「住宅ローン控除」の方も、「住宅性能評価書等」が要件とされるケースはありますが、「取得日前2年以内」の要件はなく、微妙に要件が異なる点には注意が必要です、
2.贈与を受けるタイミングに注意
住宅取得資金の贈与税非課税枠を利用する場合は、贈与を受ける時期、居住開始時期につき、十分に留意が必要です。
(1)贈与を受けるタイミング
住宅取得を目的とした資金の贈与は、「居住前」に受ける必要があります。
入居後に受け取った場合は、制度を利用することができません。
(2)取得・引渡しのタイミング
贈与を受けた年の、「翌年の3月15日まで」に住居を取得・居住開始する必要があります。
売買契約を締結しただけでは「取得」にはあたらず、「引渡し」された時点で「取得」となります。
また、「居住開始」とは、実際に居住し、住民票を移転した時期となります。
住宅の新築はスケジュール通りに進まないこともありますので、贈与を受けた後、翌年3月15日に「引渡し」されないケースもありえます。したがって、「贈与」を受けるタイミングは、「居住開始の直前」に受けるのが安全です。
なお、上記要件を満たさない場合でも、「入居の見込みがある」と判断された場合は、例外的に、「贈与を受けた年の翌年12月31日までに居住」の要件を満たせば、認められるケースもあります。この場合は、「居住できない理由」「入居予定時期」「遅滞なく入居する旨」を記載した書面などを、贈与税申告書に添付して提出します。
(3)具体例
(例)令和9年3月31日にマンション引渡し予定の場合
⇒令和8年中に贈与を受けた場合は、令和9年3月15日までに引渡しが行われないため、要件を満たしません。一方で、入居前に「贈与」が行われる必要があります。
したがって、上記例題場合、贈与資金の受取時期は、令和9年1月1日~令和9年3月31日の3か月間に限定されます。
また、贈与税の申告期限は、令和10年3月15日(贈与を受けた年の翌年)となります。
3.贈与税申告書の提出期限/必要書類
期限内申告が要件となっており、たとえ贈与税が0円になる場合でも申告が必要です。
期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日となり、期限後申告の場合は、特例の適用ができません。
(添付書類)
- 住宅の売買契約書・請負契約書などの写し
- 登記事項証明書(入居後、家屋、土地)
- 省エネ住宅の場合は、住宅性能証明書等
(その他の書類)
- 戸籍謄本(贈与者との続柄を確認するため)
- 受遺者の「源泉徴収票等」(受遺者の所得要件を確認するため)
なお、贈与税申告書提出時点で、贈与取得資金をすべて使いきれていない場合は、未利用部分は贈与税の課税対象となる点、注意が必要です。
4.住宅ローン控除との関係は?
今回の「住宅取得資金贈与の非課税枠」と、所得税上の「住宅ローン控除」の併用は可能です。ただし、住宅ローン残高によっては、「住宅ローン控除」の対象となる金額が減少する場合があります。
住宅取得資金贈与の特例を適用する場合、「住宅ローン控除」の金額の上限は、以下となります。
住宅購入金額-贈与税非課税枠
以下、住宅ローン控除の金額が①減少しないケースと、②減少するケースをそれぞれお伝えします。
(例)3,000万円の住宅購入、住宅取得資金贈与の非課税枠を500万円利用。
⇒住宅購入金額3,000万円-贈与税非課税枠500万円=住宅ローン控除の金額上限は、2,500万円となります。
(1)住宅ローン設定額2,500万円のケース(=減少しない)
⇒ ローン残高2,500万円全額につき、住宅ローン控除可能です。
(2)住宅ローン設定額3,000万円のケース(=減少する)
⇒ ローン残高3,000万円のうち、住宅ローン控除の金額は2,500万円に減少します。
5.暦年贈与・7年内生前贈与加算との関係
(1)暦年贈与非課税枠110万円との関係
住宅取得資金の贈与税非課税枠と、暦年贈与の非課税110万との併用は可能です。
どちらを先に優先適用するか、の決まりは特にありません。
したがって、例えば、先に暦年贈与を活用して、残りを住宅資金贈与非課税枠に充てることで、上記の住宅ローン控除の額を減らさず、有効に使えるケースもあります。
(2)7年内生前贈与加算との関係
原則として、「相続開始前7年以内の生前贈与」は、贈与がなかったものとされ、相続財産に持ち戻されます。ただし、住宅取得等資金贈与の非課税枠を利用した贈与は、「生前贈与加算」の対象になりません。例えば、「相続直前に住宅取得資金の贈与枠を利用」して、相続財産を減らすこともできます。したがって、当該観点からは、暦年贈与の非課税枠(110万/年)よりも、住宅取得等資金贈与の非課税制度を優先する方がお得といえます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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6.参照URL
(直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm
(措置法第70条の2関係)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sozoku/091127/70_2.htm
(住宅取得等資金の贈与と住宅借入金等特別控除との関係)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/17/08.htm
(居住の用に供したとき等)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/sochiho/080708/70_3/04.htm#a-2-2



