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Q116 遺言書に記載した「受遺者」「相続人」が、「遺言作成者」よりも先に死亡した場合の「遺言書」の効力は?

公開日:2021/02/01 最終更新日:2021/06/29

 
「遺言書」がある場合、残された遺族は、相続発生後、基本的に「その内容に従って」遺産を分割する必要があります。
しかし、場合によっては、遺言作成者よりも「遺言書」に記載された受遺者(財産を受け取る人)が先に亡くなってしまうケースもあります。
この場合、「遺言書」の効力はどうなるのか?迷いが生じます。

 

1. 遺贈の場合、遺言書は「無効」となる

遺贈とは、「遺言」により、被相続人の財産を「特定の人」に無償で与えることをいいます。
「遺贈」は、法定相続人に限らず、法定相続人以外の方にも可能です。
例えば、波平さんが遺言書で、法定相続人ではない「マスオさんに全財産を渡す」と記載があれば「遺贈」となります(「遺留分」は無視します)。

しかし、こういった「遺贈」で、受遺者が先に亡くなってしまった場合は、原則として、その部分の遺言書は無効になります(民994条)。

 

2. 遺言書の法定相続人に「相続させる」旨の記載がある場合

遺言書で、法定相続人に「相続させる」と記載されている場合は、「遺贈」ではなく、「遺産分割方法の指定」であると解されています(平成3年4月19日最高裁 Q114参照)。
この場合に、遺言作成者よりも「相続人」が先に亡くなった場合、遺言書の効力はどうなるでしょうか?
民法994条は「遺贈」の規定のため、直接適用はできません。
 

(1) 具体例

  • 波平が「遺言書」に、「サザエ(法定相続人)に全財産を相続させる」と記載
  • 波平より先に、サザエが先に死亡した(「遺留分」は無視します)

 

(2) 原則無効

この場合も、「遺言書」のその部分については、原則無効になります(平成23年2月22日最高裁)。
つまり、「遺贈」と同じ結論となります。
 

(3) 例外 

ただし、上記最高裁判決では、「遺言者が相続人の代襲相続人等に財産を相続させる意思があった」事情があれば「有効」となる旨示しています。
つまり、遺言書で、「相続人が先に死亡した場合にその子(代襲相続人)に全財産を譲る(=全財産を代襲相続させる)」旨の記載がある場合は「有効」になるということです。
例えば、波平さんが作成した「遺言書」で「サザエが先に死んだ場合は、タラちゃんに財産を譲る」というような内容の記載があれば・・「有効」ということですね。
 

(4) まとめ

上記例をもとに、結論をまとめると、以下の通りとなります。
 

遺言書
原則 「遺言書」の効力は無効
したがって、遺言書の内容にあるサザエさんがもらうべきだった「全財産」を、タラちゃんが代襲相続することはできません。
ただし、将来波平さんが亡くなった場合、タラちゃんは、遺産分割協議によって相続人間で決定した相続分については代襲相続可能となります。
例外 遺言書に、「サザエが先に死亡した場合、タラちゃん(代襲相続人)に全財産を譲る」記載がある場合、「遺言書」の効力は有効となります。
この場合は、遺言書の内容通り、タラちゃんは波平さんの全財産を受け取ることができます

 

(5) 無効になる部分

あくまで無効となるのは、「先に亡くなった相続人がもらうはずだった部分」だけですので、その他の遺言書の効力は有効のままです。

 

3. 予備的遺言の重要性

上記のとおり、遺言作成者よりも先に「相続人」が亡くなった場合も、「遺言作成者が相続人の代襲相続人等に財産を相続させる意思があった」事情があれば「有効」となります。
したがって、仮にそういった意思がある場合は、「遺言書」に、その旨明確に記載しておくことが必要となります。
これは、「予備的遺言」と呼ばれ、遺言書で「相続人が先に死亡した場合の取扱いを指定しておく」ものです。
「予備的遺言」があれば、相続人が先に亡くなった場合の取扱いが明確となり、相続人間の争いもなくなりますので、非常に有用だと思います。
 

(遺言書の記載例)
遺言者は、遺言者の相続人Aが、遺言者の死亡以前に死亡(同時死亡を含む。)している場合、遺言者は同人に相続するとした〇条の不動産を、同人の長男××(〇年〇月〇日生)に相続させる。

 

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Q113 【徹底比較】「法務局自筆証書遺言の保管制度」と「公正証書遺言」を徹底比較

公開日:2020/11/01 最終更新日:2021/06/29

DR190

 
2020年7月10日より、法務局での「自筆証書遺言の保管制度」が始まりました。
「自筆証書遺言の保管制度」とは、「自らが手書きで書いた遺言書」を、法務局に預けることができる制度です。
法務局に預けることで、遺言紛失リスクの回避だけでなく、遺言の所在が明らかとなりますので、非常に有用な制度です。
今回は「自筆証書遺言の保管制度」を、「公正証書遺言」と比較して解説します。


 

1. 公正証書遺言との比較

比較すると以下の通りとなります。
メリットがある方は、「グレー」にしています。
 

自筆証書遺言保管制度 公正証書遺言
作成者 ご自身(代理人×)(※1)
  • 公証人(公証役場)
  • 遺言の内容を公証人にお伝えして公証人が作成
証人の立ち合い 不要 2人以上必要
遺言の様式 法務省令で決められている 特になし
出張サービス 必ず本人が出向く必要あり
(代理人不可、介添え程度はOK)
公証人出張可能(別途手数料)
費用(実費のみ)(※2) 3,900円
(保管料はなし)
5万円程度~
(遺産金額その他条件で異なる)
保管期間 現物は、遺言者の死後50年
(スキャン画像データは150年)
原則20年(ただし、実質は半永久的)
紛争の可能性(※3) 普通 低い
検認の有無(※4) 不要
原本の返却 不可(謄本のみ)
遺言者死亡前の検索
(相続人等関係者のみ)
不可(死亡後に検索可能)

 

(※1)
    「保管申請の手続書類」に関しては、司法書士が代理作成可能。

 

(※2)
    どちらも「依頼時」にお金がかかるだけで、保管にかかる「料金」は発生しません。

 

(※3)
    「公正証書遺言」の場合、本人の口述内容を公証人が確認する点で、内容の精度は高まります。
    一方、「自筆証書遺言保管制度」の場合、法務局では「形式確認のみ」で、「内容の確認」までは行われません(本人自署の確認や、本人確認程度)。

 

(※4)
    「検認」手続とは、遺言書の存在を裁判所で明らかにすることで、偽造や変造を防止するための手続です。
    通常、「公正証書遺言書以外の遺言書」は、相続開始後遅滞なく、家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります(民法1004条)。
    ただし、法務局の「自筆証書遺言」の場合は「検認不要」となりますので、手間が省けます。
    なお、検認手続は、遺言書の有効性を判定するものではありません。

 

2. 自筆証書遺言保管制度の特徴

(1) 関係遺言書保管通知

自筆証書遺言保管制度では、誰かが「遺言書の閲覧」や「遺言書情報証明書」の交付を受けた場合、その他全ての相続人等に「遺言書が保管されている旨」の通知が行われます。


 

(2) 死亡時の通知

遺言書保管申請の際に、「死亡時通知の申出」をすることが可能です。
これは、遺言者が死亡したときに、法務局から、あらかじめ指定された相続人等のうち、1名のみに遺言書保管の旨の通知が行われます(実際の運用は令和3年度以降予定されています)。


 

(3) 遺言の「内容確認」までは行われない

「公正証書遺言」の場合は、公証人が1つずつ内容を確認していくため、内容の正確性及び遺言者の遺言能力が担保されます。
しかし「自筆証書遺言書保管制度」は、あくまで遺言書を保管する制度であり、「遺言書」の内容の正確性及び遺言者の遺言能力を担保するものではありません。
法務局で預かる際に確認するのは、外形的な確認(民法第968条に適合するか、本人の自署か程度)だけですので、後日の紛争防止という観点では、「公正証書遺言」の方が優れています。


 

3. 自筆証書遺言保管制度の流れ

(1) 事前予約

本人が、法務局に事前予約を行います(電話・窓口・ネット予約も可能)。


 

(2) 必要書類の準備

① 住民票
    本籍地の記載ある住民票(取得後3ヵ月以内)1通

 

② 本人確認書類
    マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど顔写真付き証明書で有効期限内のものを1点

 

③ 遺言書の保管申請書
  • 法務省ウェブサイトからダウンロード可能(「受遺者等・遺言執行者等欄」や「死亡時の通知等欄」など、自分に関係ないページもすべて提出必要)
  • 「保管申請書」に関しては、司法書士による代理申請可

 

④ 自筆証書遺言書
    「法的に有効な遺言」である必要があるため、以下の点に留意します。
  • 遺言者が全文自筆(PC不可)。財産目録等は、登記簿や通帳等添付もOK。
  • 日付記載
  • 氏名を自書
  • 押印(認印もOKですが、実印が好ましい)
  • 相続財産、財産を取得する方を特定しているか。

 
なお、法務局へは、「無封状態」の遺言書原本、その他添付書類を持参します。


 

(3) 保管証の受領

提出した書類に不備がなければ、その当日「保管証」が交付されます(後日郵送も可)。
遺言者の氏名・出生の年月日・遺言書保管所の名称・保管番号が記載されています。


 

4. 遺言書情報証明書(本人死亡後)

相続人や受遺者等は、相続開始後(遺言者死亡後)に、初めて「遺言書の閲覧請求」や「遺言書情報証明書の入手」が可能です。
相続開始前に、相続人や受遺者などが遺言書の閲覧請求等を行うことはできません。
生前に閲覧請求ができるのは、遺言作成者本人のみです(代理人不可)。


 

(1) 遺言書情報証明書の効果

自筆遺言書に代わる書面となりますので、不動産登記手続や預貯金などの名義変更等の相続手続に利用することができます。


 

(2) 証明書を取得できる方

相続人・受遺者・遺言執行者等、遺言者と特定の身分関係等がある方のみ請求可能です。


 

(3) 入手の際に必要な書類

  • 法定相続情報一覧図の写し or 原戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票(作成後3か月以内)
  • 請求人の住民票(受遺者や遺言執行者が請求する場合)
  • 法定代理人が請求するときは、戸籍謄本や資格証明書類(作成後3か月以内)
    (請求人が法人の場合、代表者事項証明書(作成後3か月以内))


 

5. その他

(1) 法務局に保管すると他の相続人に知られてしまう?

保管制度による保管申請をしても、別段、ご家族などには通知はされません。
なお、保管制度を活用しない場合は、原則通り「家庭裁判所の検認」が必要となり、検認後は「遺言の有無」が相続人全員に通知されることになります(検認済通知書)。


 

(2) 書き換え・内容変更・撤回は可能?

遺言書は何回も書き換えができ、作成日が新しいものを有効と扱います。
また、いつでも、その保管の撤回を申し出ることができます(代理人×)。


 

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Q112 【2020年最新サンプル付!】自筆証書遺言の記載方法

公開日:2020/10/01 最終更新日:2021/06/29

DR189

 

 
遺言書には、大きく、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3つの種類があります。
そのうち、①「自筆証書遺言」は、遺言者本人自身が自筆で作成する遺言書です。


 

1. 自筆証書遺言のメリットデメリット

メリット デメリット
  • 気軽に作成できる
  • 証人が不要
  • 何回修正しても手数料かからない
  • 自筆で自ら記載しないといけない
  • 遺言が無効になる恐れ
  • 家庭裁判所による検認が必要
  • 遺言の存在に気づかれない可能性

 

2. 要件

① 本人が手書きで記載
    自筆証書遺言は、すべて遺言者本人が書く必要があります。
    一部でも代筆があると無効となります。
    録音テープ、録画なども認められません。

 

② 日付を記載
    日付の記載がなければ無効となります。
    日付は自筆で、遺言書を作成した年月日を記入します(日付スタンプ×、〇年〇月吉日×)。

 

③ 署名をする
    自筆によるフルネームでの署名がなければ、無効となります。
    署名は必ず遺言者1名のみとされており、夫婦2人共同で遺言を行うことはできません。

 

④ 捺印する
    捺印は認印でもよいですが、後々のトラブルを考えると実印が良いと思います。
    遺言書が数枚にわたる場合は、割印があるほうがベター(有効要件ではない)。

 

⑤ 相続人や相続財産は正確に記載
    遺言書は、相続人及び相続財産が特定できるように正確に記載します。
    例えば、「妻に家を相続させ、長男に預金を相続させる」は、あいまいなため×です。
    具体的で、客観的な記載が必要です。

 

  • 用紙や筆記用具に制約はありません。とはいっても、紙は高耐久性の高いもの、筆記具は、後から改ざんされない万年筆などがベターです。
  • 形式は縦書き、横書きどちらでもOK。
  • 遺言書は封筒に入れ、封をしておくのがベスト。
  • 第三者に保管してもらう方が安全(弁護士など)。
  • 裏面には「本遺言書は、私の死後、開封せずに家庭裁判所で検認を受けてください」など、と記載しておくと明確。

 

⑥ 訂正する場合
    できる限り書き直した方が安全ですが、「訂正」する場合は、必ず、訂正場所に二重線を引き、押印の上、正しい文字を記載します。
    そのうえで、遺言書の余白に「〇行目〇文字削除〇文字追加」と自書で追記、署名を行います。


 

3. 最近の法令改正

以下の改正があり、「自筆証書遺言」のデメリットが解消されつつあります。


 

(1) 財産目録PC可(民法968条2項)

2019年の改正により、相続財産をまとめた「財産目録」は、PCでの作成が認められることになりました。
また、「通帳コピー」や「不動産登記簿謄本」を添付資料することも認められました。
ただし、「財産目録」以外は、従来通りすべて自筆で書く必要があります。


 

(2) 2020年「自筆証書遺言の保管制度」

2020年7月より、法務局で「自筆証書遺言」を保管してもらえる制度が始まりました。
これにより、遺言の紛失等のリスクが大幅に軽減されます。
こちらは、次回Q113で、詳しく説明します。


 

4. 留意事項

(1) 遺留分に配慮する

遺留分とは、遺言でも奪われない最低限度の「相続財産」に対する取り分の権利です。
兄弟姉妹には認められていません。
遺留分を侵害された相続人は、相続開始後、他の相続人に対して、「遺留分減殺請求」を行うことができます。
 
なお、法律上、「遺留分を侵害する遺言」そのものは「有効」ですが、相続人間でもめる可能性が高いため、遺留分に配慮のうえ遺言書を作成することが大切です。


 

(2) 遺言執行者の選任

遺言執行者は、遺言内容を正確に実行する人です。
遺言書で「遺言執行者」を指定しておくと、執行者が相続人代表として手続を進められるため、相続人が複数の場合などは、署名押印手続等の点で時間短縮になります。
また、相続人間で協力が得られない場合でも、不動産登記を進めることが可能な点や、他の相続人による財産の処分などを抑止することも可能です。


 

(3) 検認手続き

公正証書遺言と異なり、自筆証書遺言は誰も確認していないため、相続発生後、家庭裁判所に「検認」の請求が必要になります。
自筆証書遺言を保管する人は、遺言者の死後、遺言書を家庭裁判所に提出し、家庭裁判所が提出された「遺言」の検認を行います。
検認とは、遺言書の情報を確認して遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
検認は、「法律上有効に成立したかどうか」の手続であり、遺言の内容の妥当性を確認するものではありません。


 

5. 自筆証書遺言の記載例

Q112_1
 

(※1) 戸籍通りに記載します。
妻、息子などは、あいまいなため×です。
(※2) 「相続させる」と明記します。
「引き継ぐ」「取得させる」などあいまいな表現は×。
(※3) 土地と建物を分けて物件を特定します。
登記簿どおりに記載(現住所地ではない)。
(※4) 預貯金は、銀行名、支店名、預金種類、口座番号を記載して特定します。
金額は、相続時点では変動している可能性が高いため、通常は記載しません。
(※5) 相続人以外の方に財産を遺贈する場合は、「遺贈する」と記載します。
(※6) 遺言書の「記載漏れ対策」として、当該文言を入れておくと、紛争防止になります。
(※7) 遺言執行者を定めておくと、遺言の実行がスムーズに短縮化されるメリットがあります。
(※8) 将来は予測できませんので、不測の事態に備え、相続人が自分より先に亡くなった場合をあらかじめ記載することも可能。(予備的遺言)。
(※9) 付言事項は、自由に記載できます。
「家族に対する感謝の気持ち」や、「自分の望み」などを記す場合が多いです。
法的な効力はありませんが、読んだ人を納得させる効果があります。
葬儀の方法などを記載する場合もあります。
(※10) 日付は正確に記載し、自筆により署名します。


 

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Q92 代償分割の利用場面

公開日:2019/06/24 最終更新日:2021/06/30

DR168
 

代償分割は、遺産分割方法の1つです。
代償分割とは、いったん特定の相続人が相続分を超える「遺産現物」を相続し、その代わりに、相続超過分(もらいすぎた分)を、他の相続人に金銭で支払う方法です。
 
相続財産に「不動産」が多く含まれる場合は、「代償分割」を活用することで、「金銭による弾力的な遺産分割」が可能となり、相続人間に不公平が起こりにくいと言われています。


 

1. 代償分割の利用場面

代償分割を利用する場面は、以下のようなケースです。
 

ケース 具体例
現物分割ではうまくいかない場合
  • 遺産の多くが「不動産」など換金性の低い財産の場合
  • 相続人全員が取得を希望しない相続財産が含まれている場合
特定の相続人に引き継がせたい場合
  • 事業用の不動産や自社株式など、事業を承継する相続人に引き継がせたい場合
不動産を利用する予定がない場合
  • 不動産に居住する予定の相続人がいない場合
  • 不動産の維持・管理が負担になる場合


 

2. 代償分割のメリットデメリット

 

メリット デメリット
  • 金銭での「柔軟な遺産分割調整」が可能
  • 一人の相続人が不動産を相続することで、「小規模宅地等の特例」の利用場面が増える
  • 代償分割での「金銭の分配」には譲渡所得税がかからないため、換価分割に比べると税額が安く収まるケースが多い
  • 代償金の支払をするため、相続人自らが資金を準備する必要がある
  • 代償金を将来支払う場合は、相続人間で争いが生じる可能性がある

 
 


 

3. 所得税・贈与税との関係

「代償分割」による資金の移動には、所得税や贈与税はかかりません。
ただし、「遺産分割協議書」に、代償金の支払方法等は、明確に記載しておく方が安全です。


 

4. 相続税との関係

代償分割を実行しても「遺産の総額」は変わらないので、相続税の「総額」は変わりません
ただし、各相続人間の相続税負担割合は、代償金によって変わってきます

 
代償分割実行後の相続税の負担割合(按分割合)は、以下の通りとなります。

代償金を支払った相続人 相続した遺産 - 支払った代償金
代償金を受け取った相続人 相続した遺産 + 受け取った代償金


 

5. 代償金を「他の財産」で渡す場合

代償金は、金銭に限らず、相続人が所有する「他の財産」で支払うことも可能です。
ただし、金銭以外の資産を交付した場合は、「資産の時価相当額の収入」があったこととして、譲渡所得税が課税されます。
金銭以外の交付の場合は、注意が必要です。


 

6. 生命保険の活用

代償分割の場合は、代償金を支払うための「資金を準備」する必要があります。
この点、資金を確保するために、生前に「生命保険」を活用することが考えられます。
 
例えば、生前に「被相続人」が生命保険に加入し、当該保険の受取人は、将来、「分割困難な財産を相続する相続人」に指定しておきます。
 

  • 生命保険金は、「相続人固有の財産」のため、遺産分割に受け取ることが可能。
  • 生命保険金は、一定限度まで「相続税の非課税限度額」がある。

 
生命保険金は、「相続税の非課税限度額を活用しながら、資金を確保することができる」点で、「代償分割」との相性は非常によいと思います。

 

Q91 換価分割の際の「単独登記」と贈与税の関係

公開日:2019/05/20 最終更新日:2021/07/01

DR167
 

「換価分割」を行う場合は、不動産を売却する手続が生じます。
この点、売却する際の不動産名義は、「共同相続人の全員名義より、代表者単独名義」の方が、押印や資料準備等の面で、スムーズに手続を進めることができます。
 
そこで、換価分割の実務では、
①便宜上、一旦「代表者名義」で単独相続登記を行い代表者が売却、
②その後に、売却代金を他の相続人に遺産分割割合で金銭を配分する
 
といった方法が採られる場合があります。
いわゆる「単独登記」呼ばれるものです。
 
しかし、この「単独登記」の場合、「売却代金を各相続人に配分する行為」が「贈与」に該当し、「贈与税」が生じないのか?という疑問が生じます。


 

1. 換価分割とは?

換価分割とは、相続不動産を売却し(換価)、その売却代金を相続人で分割する方法です。
 


 

2. 換価分割の不動産登記名義

換価分割を活用して「相続不動産」を売却するには、一旦不動産を、被相続人名義から相続人名義に変更(相続登記)しなければ売却ができません。
 
登記名義の変更には、①共有登記②単独登記の2種類があります。
以下、それぞれに分けて説明します。


 

(1) 共有登記

「法定相続分」による共有名義で相続登記を行い、共有名義のまま売却を行います。
共有名義での売却の場合、共有名義人全員の承諾が必要となりますので、相続人が多数存在する場合などは、実現が困難な場合があります。


 

(2) 単独登記

共同相続人のうち代表者を決め、便宜上「代表者単独名義で相続登記」を行い、代表者名義で売却を行います。
共同相続人が多数存在する場合は、共有登記よりも単独登記の方が、スムーズに手続を進めることが可能です。


 

3. 単独登記と贈与税の関係

単独登記の場合、形式上は「単独登記名義」の人が不動産の売主となり、売却後に他の共同相続人に代金を配分することになります。
 
この、売却後の配分は「贈与」に該当し、贈与税は生じないのでしょうか?
(共有登記の場合は、「贈与税」の問題は生じません)
 
この点、換価分割のための「単独登記」による売却&配分に関しては、国税庁に以下の回答があります。

 

【照会要旨】
遺産分割の調停により換価分割をすることになりました。
ところで、換価の都合上、共同相続人のうち1人の名義に相続登記をしたうえで換価し、その後において、換価代金を分配することとしました。
この場合、贈与税の課税が問題になりますか。
 
【回答要旨】
共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。

 
単に「換価のための便宜」での単独登記であれば、その後の代金が実際、遺産分割協議(調停)に基づいて配分されたなら、贈与税の問題は生じないということですね。


 

4. 遺産分割協議書での記載

贈与税の問題が生じないように、便宜上単独名義で不動産を売却する場合は、「遺産分割協議書」で、その旨を記載しておくことが必要です。
例えばこんな感じです。
 
(単独登記での「遺産分割協議書」の例)

被相続人00の遺産相続につき、相続人Aと相続人Bは遺産分割協議を行い、本日、次のとおり合意した。
一.相続人Aは、次の相続財産を相続する。
  (00不動産)
二.相続人Aは、前項の不動産を速やかに売却・換価するものとし、売却代金から売却に関する一切の費用(仲介手数料、登記費用、譲渡所得税等)等を控除した残額を、全相続人の間で法定相続割合に従って分割、取得する。
三.売却の便宜のため、Aが本件土地につき単独相続の登記を行うことをBは承諾する。


 

5. 参照URL

(遺産の換価分割のための相続登記と贈与税)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/13/01.htm
 

Q90 換価分割の利用場面

公開日:2019/05/20 最終更新日:2021/06/30

DR166
 

「換価分割」とは、相続不動産を売却して金銭に換えた後、その売却代金を相続人間で分割する遺産分割方法です。
 
相続財産に不動産が多く含まれる場合は、「換価分割」を活用することで「金銭による弾力的な遺産分割」が可能となり、相続人間に不公平が起こりにくい方法と考えられています。


 

1. 換価分割の利用場面

換価分割を利用する場面は、以下のようなケースです。
 

ケース 具体例
現物分割ではうまくいかない場合
  • 遺産の多くが「不動産」など換金性の低い財産の場合
  • 相続人全員が取得を希望しない相続財産が含まれている場合
代償分割ではうまくいかない場合
  • 相続人に資金がなく、代償分割の代償金の支払いが困難な場合
不動産を利用する予定がない場合
  • 不動産に居住する予定の相続人がいない場合
  • 不動産の維持・管理が負担になる場合


 

2. 換価分割のメリットデメリット

 

メリット デメリット
  • 金銭に換えることで、不動産評価が明確になり、相続人間の不公平が生じにくい
  • 金銭での「柔軟な遺産分割調整」が可能
  • 納税資金等の確保が可能
  • 利用予定のない不動産を処分することで、資産の有効活用ができる
  • 金銭に換わるため、相続前の用途(不動産)では活用できない
  • 売却代金には「譲渡所得税」がかかる

 
 

 

3. 譲渡所得税との関係

(1) 譲渡所得税がかかる

「換価分割」による不動産の売却には、譲渡所得税がかかります。
各相続人は、相続発生時点(被相続人の死亡時点)で、相続財産を取得します。
つまり、換価分割による不動産の売却は、「相続開始時点で既に取得済の財産」を譲渡する行為であることから、「譲渡所得税」の対象となります。


 

(2) 譲渡所得税の計算

換価分割で売却した「譲渡所得税」の計算は、換価時に「代金の分割割合が確定しているかどうか?」で各人の税額が変わってきます。
 

換価時に換価代金の取得割合が確定している場合 あらかじめ確定済の「取得割合で分割」したものとして譲渡所得税を計算する。
換価時に取得割合が確定しておらず、後日分割する場合 原則として「法定相続分で分割」したものとして、譲渡所得税を計算する。
ただし、確定申告期限までに、換価代金が分割され、相続人全員がその代金の取得割合に応じて確定申告した場合は、その申告も認められる。

 
(ご参考~単独登記者に譲渡所得税が全額課税された判例)
過去の判例で、換価分割を行うために、「便宜上単独名義で売却した人に全額譲渡所得税が課税」された、
という結論の事例があります。以下抜粋です。
 
10908 広島地方裁判所 不当利得返還請求事件 平成20年2月29日棄却・確定 抜粋

・・・表面的には原告があえて単独相続するという形式を採っていること、・・・
相続人間の潜在的な合意についてあずかり知らない税務署としては、原告が本件不動産を単独取得したとの前提で申告を指導したとしても、やむを得ないところである。
原告としては、あえて単独相続の形式を採るからには、・・不利益も勘案し・・他の相続人との間で調整して対処しておくべきであった。

 
ただし、この判例は、純然たる相続分に応じた分配がされていなかったケースですので、例外的なケースだと思われます。
とはいえ、換価分割を行う場合は「遺産分割割合」を明確にして、きっちり各人が所得税確定申告を行う必要がある、とは言えますね。


 

4. 相続税が課税される対象

相続税は、相続開始時点における相続財産の評価額で計算されますので、相続後に換価分割した場合でも、換価後の現金に相続税が課税されるわけではありません。
相続税の課税対象は、あくまで「相続時の不動産評価額」となります。


 

5. 単独名義の換価分割と贈与税の関係

換価分割に際し、便宜上、不動産名義を「単独名義」で行う場合があります。
この場合は、「贈与税との関係の論点」が生じます。この点に関しては、次回解説します。


 

6. 参照URL

(換価分割と譲渡所得税)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/09/01.htm
 
(10908 広島地方裁判所 不当利得返還請求事件 平成20年2月29日棄却・確定)
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2008/index.htm
 

Q89 遺産分割の種類(現物分割・換価分割・代償分割)

公開日:2019/04/23 最終更新日:2021/07/01

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遺産分割の代表的な方法には、「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3種類があります。
3種類それぞれの方法を組み合わせることも可能です。


 

1. 現物分割とは?

遺産を、物理的にそのままの形で分割する方法です。
例えば、「A銀行の預金は長男に分割」、「1筆の土地を2筆に分割して兄弟で分割する」などです。
 
現物分割は、最もシンプルで簡単な方法ですが、それぞれの財産価値がバラバラな場合は、相続人の間で公平に分割できない場合もあります。
 
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2. 代償分割とは?

代償分割とは、一度、特定の相続人が相続分を超える「遺産現物」を相続し、
その代わりに、もらい過ぎた分(超過分)を、他の相続人に金銭で支払う方法です。
 
例えば、「会社の工場や非上場株式」などの相続財産は「分割」せず後継者である相続人が一括で相続する方が有用です。
そこで、これらの財産は後継者がすべて引き継ぎ、もらいすぎた分(超過分)を、その他の相続人に金銭等で支払い、相続配分を調整します。
 
代償分割では、金銭での調整が可能な点で柔軟な遺産分割が可能ですが、
受け渡す資金(代償金)を確保しなければいけない、というデメリットがあります。
なお、「代償分割で支払われる金銭」には「譲渡所得税」はかかりません。
 
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3. 換価分割とは?

換価分割とは、分割対象の「遺産現物」を売却して金銭に換えた後、相続人間で分割する方法です。
遺産が「不動産」など換金性の低い財産の場合、そのままの状態では「現物分割」はうまくいきません。
そこで、前もって不動産等を売却し、「売却代金」を各相続人の遺産分割割合に応じて、金銭で配分します。
また、相続財産の中に相続人全員が相続を希望しない財産がある場合や、代償分割の代償金の確保が難しい場合にも利用されます。
 
換価分割では、相続人間の公平性は確保できますが、いったん不動産等を売却して金銭の形に換えることになるため、相続前の用途で利用を継続できないというデメリットがあります。
なお、「遺産現物」を売却した代金には「譲渡所得税」がかかります。
 
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Q88 遺産の一部分割って?

公開日:2019/04/23 最終更新日:2021/07/01

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すべての遺産分割を行う前に、遺産の一部だけを先に「遺産分割協議」で決定することも可能です。
「一部分割」と呼ばれます。(⇔すべての遺産の分割は「全部分割」)


 

1. 遺産の一部分割とは?

「一部分割」とは、相続人全員の合意のもと、遺産の一部を分割する方法です。
例えば、相続財産のうち、預金だけを先に「遺産分割協議」で相続人を決定する場合などです。
相続人全員が合意済の場合は、「一部分割」を行うことも可能です。
 
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2. どういう場合に行われる?

「一部分割」を行うことで、実務上は、柔軟な対応が可能となります。
例えば、相続財産全体をどのように分割するか?までは決まっていないが、
取り急ぎ、預金口座だけを分割して支払手段を確保したい場合などには有用ですね。
 

一部分割対象資産 ケース
預 金 先に預金口座のみを分割し、相続税納付用資金を確保したい場合
不動産 先に不動産を売却して現金に換えた上、各相続人への配分額を調整したい場合(換価分割
その他 分割が困難な遺産や、争いのある遺産の分割は後回しにして、先に簡単な遺産だけを分割してしまいたい場合


 

3. 留意事項

「一部分割」の場合、全相続財産のうち「一部分のみ」の相続人が確定し、その他の財産の相続人は確定していない状態です。
したがって「一部分割」の時点で、相続人間の話し合いにより、将来分割予定の財産につき「一定の取り決め」をしておくことが多いです。
 
このような「取り決め」については、将来、相続人の間での争いが生じないように「一部分割協議書」に記載しておく必要があります。
また、分割しやすい「預金」などだけを先に「一部分割」した場合は、分けにくい「不動産」などの分割が後回しになりますので、後々の遺産分割で協議がうまく進まない可能性もある点にも留意しましょう。
 

Q63 遺産分割協議後に財産が見つかった場合は?

公開日:2018/02/27 最終更新日:2021/08/25

 

遺産分割協議も終わってほっと一息・・
と思ったら、その後に新たに財産が見つかってしまった!なんてこともあるかもしれません。
この場合の取扱いをまとめます。

 

1. 遺産分割協議の位置づけ

被相続人が保有していた遺産は、遺産分割協議が終了するまでは、相続人の「共有状態」となります(民法第898)。
そして、遺産分割協議終了により、ようやく遺産は「各人の単独所有」となります。

 



 

2. 「遺産分割終了後」に、新たな遺産が見つかった場合の法律上の取扱い

では、遺産分割協議終了後、新たな遺産が見つかった場合、どうすればよいのでしょうか?
この場合、新たに見つかった遺産については、再度「遺産分割協議」を行います。
(相続人全員の同意で、当初遺産分割を最初からやり直すことも可能)



 

3. 相続税上の取扱い

また、相続税上は、新たに見つかった遺産についても「相続税申告」を行う必要があります。

 

見つかった時期 対応
相続税申告期限内 新たに見つかった財産も含めて「相続税申告書」を作り直します。
既に相続税申告書を提出済の場合 修正申告を行います。
延滞税や過少申告加算税が発生するケースもあります。

 



 

4. 遺産分割協議書の工夫

もし、後から財産が出てきそうな場合は、実務上は、その後の手間を減らすため「遺産分割協議書」に、後日発見される財産の取扱いを記載しておくケースもあります。
例えば、「当遺産分割協議後に発見された相続財産は、配偶者00が相続する」などです。
ただし、この文言だと、後から大きな財産が見つかった場合に相続人間でもめる可能性があります。
「当遺産分割協議後に発見された相続財産は、各相続人の法定相続分の割合で相続する」と記載すると、もめるケースは少なくなるかもしれませんね。

Q19 遺産分割未了の場合の相続税申告

公開日:2017/05/31 最終更新日:2021/08/04

 

相続が発生した場合、相続人同士の話し合いにより「遺産分割」を行う必要があります。
一方、相続発生後10か月以内に「相続税申告書」を提出しなければいけません。
今回は、この「遺産分割」と「相続税申告書」の関係、そして「遺産分割が未了の場合の相続税申告」についてまとめます。

 

1. 遺産分割と相続税申告書の関係

実は・・「遺産分割」には、期限は特にありません。
一方、「相続税申告書」の提出は、相続発生後10か月以内に行わなければいけません。
 
では「相続税申告書」の提出が先なの?と思われる方もいるかもしれません。
しかし、現実的には、「遺産分割」は「相続税申告書提出期限」までに済ませておく必要があります。
なぜなら、「遺産分割」が確定しないと(= 各人が実際に相続すべき財産が決まっていないと)、相続税額が確定しないからです。
したがって、順番的には、「遺産分割」が先、その後に「相続税申告書」の提出を行います。

 

2. 遺産分割が確定しない場合の相続税申告は?

しかし、現実的には、遺族間での遺産分割の話し合いがまとまらず、「遺産分割」が「相続税申告期限」までに確定しない場合もあります。
この場合ってどうするんでしょうか?
 
「相続税申告書」の提出は相続発生後10か月以内、ここは待ってくれません。
期限を過ぎるとペナルティが課せられますので、必ず期限内に行わなければいけません。
でも、実際・・「遺産分割」が確定していないのに、どうやって「相続税申告書」を提出すればよいのでしょうか?
 
実は・・「遺産分割」が、相続税申告期限までに間に合わない場合、「いったん法定相続分で相続したと仮定して申告・納税を行う」ことになります。
法律上は、遺産を「共有取得したもの」として、各自の相続税額を算定します。
 
この場合の「相続税申告」は、あくまで仮申告・仮納税です。
つまり、一旦相続税申告書は提出しますが、将来、正式に「遺産分割」が確定した時点で相続税計算をやりなおし、再度「確定申告書」を提出します(「修正申告」「更正の請求」と呼ばれます)。
その時点で、当初納税額との差額を、相続人ごとに追加納付、還付を行うことになります。

 

3. 相続税申告期限までに遺産分割できない場合のデメリット

ただし、「遺産分割」が確定しないまま相続税申告書を提出する場合、相続税の大きな恩典が使えなくなる点に留意です。
特典が使えない ⇒ 当初支払う相続税額が多くなる = 期限内に相続税額を支払えない可能性!というリスクがあります。

 

(1) 小規模宅地等の特例が使えない

小規模宅地等の特例は、「土地の相続税評価額を5割~8割減額」し、相続税額をかなり安くしてくれる制度です。
 
しかし、この「小規模宅地等の特例」では、「相続税申告書の提出期限までに当該小規模宅地が分割されていること」が要件となります。
つまり、相続税申告期限までに「遺産分割」が行われていなければ、この特典は利用できません。
 
この結果、「遺産分割」が確定しないまま「相続税申告書」を提出する場合は、相続税額がかなり多くなることを想定しておかなければいけません。

 

(2) 相続税の配偶者控除が使えない

相続税の配偶者控除は、「相続財産が法定相続分または160百万円まで」の場合、相続税がかからないという制度です。
 
しかし、この「相続税の配偶者控除」では、「相続税申告書の提出期限までに配偶者が遺産分割や特定遺贈によって当該遺産を取得したこと」が要件となります。
つまり、相続税申告期限までに「遺産分割」が行われていなければこの特典は利用できません。
 
この結果、「遺産分割」が確定しないまま「相続税申告書」を提出する場合は、相続税額がかなり多くなることを想定しておかなければいけません。

 

4. 将来は改めて利用できる!

上記の通り、「遺産分割」が未確定のまま相続税申告を行うと、各種特典が利用できないことになります。
しかし、将来的に「遺産分割」が確定した場合には、改めて利用できますので、ご安心を!
以下の2つの制度があります。

 

(1) 申告期限後3年以内の分割見込書

当初の「相続税申告書」を提出する際に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出しておくと、申告期限から3年内に分割が決定した時点で、小規模宅地等の特例を利用することが可能となります。
具体的には、分割確定から4ヵ月以内に「更正の請求」をすれば、これらの特例の適用を受けることができます。

 

(2) 遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書

「遺産分割」は、想像以上に遺族間でもめる場合が多く、申告期限から3年経過した時点でも、「まだ遺産分割が確定しない」ケースもあります。
この場合、もう一つ「救済方法」が用意されています。
 
申告期限後3年経過日翌日から2か月以内に、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由(※)がある旨の承認申請書」を税務署に提出し、所轄税務署長の承認を受けます。
これにより、判決確定の日などから4か月以内に遺産が分割されれば、これらの特例を適用できます。

(※)やむを得ない事由とは、例えば、「相続人間で裁判等になっている」などの事情です。