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相続の豆知識 遺産分割




Q92 代償分割の利用場面と所得税・贈与税との関係

DR168
 

 
代償分割は、遺産分割方法の1つです。
代償分割とは、いったん特定の相続人が相続分を超える「遺産現物」を相続し、その代わりに、相続超過分(もらいすぎた分)を、他の相続人に金銭で支払う方法です。
 
相続財産に「不動産」が多く含まれる場合は、「代償分割」を活用することで、「金銭による弾力的な遺産分割」が可能となり、相続人間に不公平が起こりにくいと言われています。


 

1. 代償分割の利用場面

代償分割を利用する場面は、以下のようなケースです。
 

ケース 具体例
現物分割ではうまくいかない場合
  • 遺産の多くが「不動産」など換金性の低い財産の場合
  • 相続人全員が取得を希望しない相続財産が含まれている場合
特定の相続人に引き継がせたい場合
  • 事業用の不動産や自社株式など、事業を承継する相続人に引き継がせたい場合
不動産を利用する予定がない場合
  • 不動産に居住する予定の相続人がいない場合
  • 不動産の維持・管理が負担になる場合


 

2. 代償分割のメリットデメリット

 

メリット デメリット
  • 金銭での「柔軟な遺産分割調整」が可能
  • 一人の相続人が不動産を相続することで、「小規模宅地等の特例」の利用場面が増える
  • 代償分割での「金銭の分配」には譲渡所得税がかからないため、換価分割に比べると税額が安く収まるケースが多い
  • 代償金の支払をするため、相続人自らが資金を準備する必要がある
  • 代償金を将来支払う場合は、相続人間で争いが生じる可能性がある

 
 


 

3. 所得税・贈与税との関係

「代償分割」による資金の移動には、所得税や贈与税はかかりません。
ただし、「遺産分割協議書」に、代償金の支払方法等は、明確に記載しておく方が安全です。


 

4. 相続税との関係

代償分割を実行しても「遺産の総額」は変わらないので、相続税の「総額」は変わりません
ただし、各相続人間の相続税負担割合は、代償金によって変わってきます

 
代償分割実行後の相続税の負担割合(按分割合)は、以下の通りとなります。

代償金を支払った相続人 相続した遺産 - 支払った代償金
代償金を受け取った相続人 相続した遺産 + 受け取った代償金


 

5. 代償金を「他の財産」で渡す場合

代償金は、金銭に限らず、相続人が所有する「他の財産」で支払うことも可能です。
ただし、金銭以外の資産を交付した場合は、「資産の時価相当額の収入」があったこととして、譲渡所得税が課税されます。
金銭以外の交付の場合は、注意が必要です。


 

6. 生命保険の活用

代償分割の場合は、代償金を支払うための「資金を準備」する必要があります。
この点、資金を確保するために、生前に「生命保険」を活用することが考えられます。
 
例えば、生前に「被相続人」が生命保険に加入し、当該保険の受取人は、将来、「分割困難な財産を相続する相続人」に指定しておきます。
 

  • 生命保険金は、「相続人固有の財産」のため、遺産分割に受け取ることが可能。
  • 生命保険金は、一定限度まで「相続税の非課税限度額」がある。

 
生命保険金は、「相続税の非課税限度額を活用しながら、資金を確保することができる」点で、「代償分割」との相性は非常によいと思います。

 

Q91 換価分割の際の「単独登記」と贈与税の関係

DR167
 

 
「換価分割」を行う場合は、不動産を売却する手続が生じます。
この点、売却する際の不動産名義は、「共同相続人の全員名義より、代表者単独名義」の方が、押印や資料準備等の面で、スムーズに手続を進めることができます。
 
そこで、換価分割の実務では、
①便宜上、一旦「代表者名義」で単独相続登記を行い代表者が売却、
②その後に、売却代金を他の相続人に遺産分割割合で金銭を配分する
 
といった方法が採られる場合があります。
いわゆる「単独登記」呼ばれるものです。
 
しかし、この「単独登記」の場合、「売却代金を各相続人に配分する行為」が「贈与」に該当し、「贈与税」が生じないのか?という疑問が生じます。


 

1. 換価分割とは?

換価分割とは、相続不動産を売却し(換価)、その売却代金を相続人で分割する方法です。
 


 

2. 換価分割の不動産登記名義

換価分割を活用して「相続不動産」を売却するには、一旦不動産を、被相続人名義から相続人名義に変更(相続登記)しなければ売却ができません。
 
登記名義の変更には、①共有登記②単独登記の2種類があります。
以下、それぞれに分けて説明します。


 

(1) 共有登記

「法定相続分」による共有名義で相続登記を行い、共有名義のまま売却を行います。
共有名義での売却の場合、共有名義人全員の承諾が必要となりますので、相続人が多数存在する場合などは、実現が困難な場合があります。


 

(2) 単独登記

共同相続人のうち代表者を決め、便宜上「代表者単独名義で相続登記」を行い、代表者名義で売却を行います。
共同相続人が多数存在する場合は、共有登記よりも単独登記の方が、スムーズに手続を進めることが可能です。


 

3. 単独登記と贈与税の関係

単独登記の場合、形式上は「単独登記名義」の人が不動産の売主となり、売却後に他の共同相続人に代金を配分することになります。
 
この、売却後の配分は「贈与」に該当し、贈与税は生じないのでしょうか?
(共有登記の場合は、「贈与税」の問題は生じません)
 
この点、換価分割のための「単独登記」による売却&配分に関しては、国税庁に以下の回答があります。

 

【照会要旨】
遺産分割の調停により換価分割をすることになりました。
ところで、換価の都合上、共同相続人のうち1人の名義に相続登記をしたうえで換価し、その後において、換価代金を分配することとしました。
この場合、贈与税の課税が問題になりますか。
 
【回答要旨】
共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。

 
単に「換価のための便宜」での単独登記であれば、その後の代金が実際、遺産分割協議(調停)に基づいて配分されたなら、贈与税の問題は生じないということですね。


 

4. 遺産分割協議書での記載

贈与税の問題が生じないように、便宜上単独名義で不動産を売却する場合は、「遺産分割協議書」で、その旨を記載しておくことが必要です。
例えばこんな感じです。
 
(単独登記での「遺産分割協議書」の例)

被相続人00の遺産相続につき、相続人Aと相続人Bは遺産分割協議を行い、本日、次のとおり合意した。
一.相続人Aは、次の相続財産を相続する。
  (00不動産)
二.相続人Aは、前項の不動産を速やかに売却・換価するものとし、売却代金から売却に関する一切の費用(仲介手数料、登記費用、譲渡所得税等)等を控除した残額を、全相続人の間で法定相続割合に従って分割、取得する。
三.売却の便宜のため、Aが本件土地につき単独相続の登記を行うことをBは承諾する。


 

5. 参照URL

(遺産の換価分割のための相続登記と贈与税)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/13/01.htm
 

Q90 換価分割の利用場面と譲渡所得税

DR166
 

 
「換価分割」とは、相続不動産を売却して金銭に換えた後、その売却代金を相続人間で分割する遺産分割方法です。
 
相続財産に不動産が多く含まれる場合は、「換価分割」を活用することで「金銭による弾力的な遺産分割」が可能となり、相続人間に不公平が起こりにくい方法と考えられています。


 

1. 換価分割の利用場面

換価分割を利用する場面は、以下のようなケースです。
 

ケース 具体例
現物分割ではうまくいかない場合
  • 遺産の多くが「不動産」など換金性の低い財産の場合
  • 相続人全員が取得を希望しない相続財産が含まれている場合
代償分割ではうまくいかない場合
  • 相続人に資金がなく、代償分割の代償金の支払いが困難な場合
不動産を利用する予定がない場合
  • 不動産に居住する予定の相続人がいない場合
  • 不動産の維持・管理が負担になる場合


 

2. 換価分割のメリットデメリット

 

メリット デメリット
  • 金銭に換えることで、不動産評価が明確になり、相続人間の不公平が生じにくい
  • 金銭での「柔軟な遺産分割調整」が可能
  • 納税資金等の確保が可能
  • 利用予定のない不動産を処分することで、資産の有効活用ができる
  • 金銭に換わるため、相続前の用途(不動産)では活用できない
  • 売却代金には「譲渡所得税」がかかる

 
 

 

3. 譲渡所得税との関係

(1) 譲渡所得税がかかる

「換価分割」による不動産の売却には、譲渡所得税がかかります。
各相続人は、相続発生時点(被相続人の死亡時点)で、相続財産を取得します。
つまり、換価分割による不動産の売却は、「相続開始時点で既に取得済の財産」を譲渡する行為であることから、「譲渡所得税」の対象となります。


 

(2) 譲渡所得税の計算

換価分割で売却した「譲渡所得税」の計算は、換価時に「代金の分割割合が確定しているかどうか?」で各人の税額が変わってきます。
 

換価時に換価代金の取得割合が確定している場合 あらかじめ確定済の「取得割合で分割」したものとして譲渡所得税を計算する。
換価時に取得割合が確定しておらず、後日分割する場合 原則として「法定相続分で分割」したものとして、譲渡所得税を計算する。
ただし、確定申告期限までに、換価代金が分割され、相続人全員がその代金の取得割合に応じて確定申告した場合は、その申告も認められる。

 
(ご参考~単独登記者に譲渡所得税が全額課税された判例)
過去の判例で、換価分割を行うために、「便宜上単独名義で売却した人に全額譲渡所得税が課税」された、
という結論の事例があります。以下抜粋です。
 
10908 広島地方裁判所 不当利得返還請求事件 平成20年2月29日棄却・確定 抜粋

・・・表面的には原告があえて単独相続するという形式を採っていること、・・・
相続人間の潜在的な合意についてあずかり知らない税務署としては、原告が本件不動産を単独取得したとの前提で申告を指導したとしても、やむを得ないところである。
原告としては、あえて単独相続の形式を採るからには、・・不利益も勘案し・・他の相続人との間で調整して対処しておくべきであった。

 
ただし、この判例は、純然たる相続分に応じた分配がされていなかったケースですので、例外的なケースだと思われます。
とはいえ、換価分割を行う場合は「遺産分割割合」を明確にして、きっちり各人が所得税確定申告を行う必要がある、とは言えますね。


 

4. 相続税が課税される対象

相続税は、相続開始時点における相続財産の評価額で計算されますので、相続後に換価分割した場合でも、換価後の現金に相続税が課税されるわけではありません。
相続税の課税対象は、あくまで「相続時の不動産評価額」となります。


 

5. 単独名義の換価分割と贈与税の関係

換価分割に際し、便宜上、不動産名義を「単独名義」で行う場合があります。
この場合は、「贈与税との関係の論点」が生じます。この点に関しては、次回解説します。


 

6. 参照URL

(換価分割と譲渡所得税)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/09/01.htm
 
(10908 広島地方裁判所 不当利得返還請求事件 平成20年2月29日棄却・確定)
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2008/index.htm
 

Q89 遺産分割の種類(現物分割・換価分割・代償分割)

DR165
 

 
遺産分割の代表的な方法には、「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3種類があります。
3種類それぞれの方法を組み合わせることも可能です。


 

1. 現物分割とは?

遺産を、物理的にそのままの形で分割する方法です。
例えば、「A銀行の預金は長男に分割」、「1筆の土地を2筆に分割して兄弟で分割する」などです。
 
現物分割は、最もシンプルで簡単な方法ですが、それぞれの財産価値がバラバラな場合は、相続人の間で公平に分割できない場合もあります。
 
190429Q89_1


 

2. 代償分割とは?

代償分割とは、一度、特定の相続人が相続分を超える「遺産現物」を相続し、
その代わりに、もらい過ぎた分(超過分)を、他の相続人に金銭で支払う方法です。
 
例えば、「会社の工場や非上場株式」などの相続財産は「分割」せず後継者である相続人が一括で相続する方が有用です。
そこで、これらの財産は後継者がすべて引き継ぎ、もらいすぎた分(超過分)を、その他の相続人に金銭等で支払い、相続配分を調整します。
 
代償分割では、金銭での調整が可能な点で柔軟な遺産分割が可能ですが、
受け渡す資金(代償金)を確保しなければいけない、というデメリットがあります。
なお、「代償分割で支払われる金銭」には「譲渡所得税」はかかりません。
 
190429Q89_2


 

3. 換価分割とは?

換価分割とは、分割対象の「遺産現物」を売却して金銭に換えた後、相続人間で分割する方法です。
遺産が「不動産」など換金性の低い財産の場合、そのままの状態では「現物分割」はうまくいきません。
そこで、前もって不動産等を売却し、「売却代金」を各相続人の遺産分割割合に応じて、金銭で配分します。
また、相続財産の中に相続人全員が相続を希望しない財産がある場合や、代償分割の代償金の確保が難しい場合にも利用されます。
 
換価分割では、相続人間の公平性は確保できますが、いったん不動産等を売却して金銭の形に換えることになるため、相続前の用途で利用を継続できないというデメリットがあります。
なお、「遺産現物」を売却した代金には「譲渡所得税」がかかります。
 
190429Q89_4
 

Q88 遺産の一部分割って?

DR164
 

 
すべての遺産分割を行う前に、遺産の一部だけを先に「遺産分割協議」で決定することも可能です。
「一部分割」と呼ばれます。(⇔すべての遺産の分割は「全部分割」)


 

1. 遺産の一部分割とは?

「一部分割」とは、相続人全員の合意のもと、遺産の一部を分割する方法です。
例えば、相続財産のうち、預金だけを先に「遺産分割協議」で相続人を決定する場合などです。
相続人全員が合意済の場合は、「一部分割」を行うことも可能です。
 
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2. どういう場合に行われる?

「一部分割」を行うことで、実務上は、柔軟な対応が可能となります。
例えば、相続財産全体をどのように分割するか?までは決まっていないが、
取り急ぎ、預金口座だけを分割して支払手段を確保したい場合などには有用ですね。
 

一部分割対象資産 ケース
預 金 先に預金口座のみを分割し、相続税納付用資金を確保したい場合
不動産 先に不動産を売却して現金に換えた上、各相続人への配分額を調整したい場合(換価分割
その他 分割が困難な遺産や、争いのある遺産の分割は後回しにして、先に簡単な遺産だけを分割してしまいたい場合


 

3. 留意事項

「一部分割」の場合、全相続財産のうち「一部分のみ」の相続人が確定し、その他の財産の相続人は確定していない状態です。
したがって「一部分割」の時点で、相続人間の話し合いにより、将来分割予定の財産につき「一定の取り決め」をしておくことが多いです。
 
このような「取り決め」については、将来、相続人の間での争いが生じないように「一部分割協議書」に記載しておく必要があります。
また、分割しやすい「預金」などだけを先に「一部分割」した場合は、分けにくい「不動産」などの分割が後回しになりますので、後々の遺産分割で協議がうまく進まない可能性もある点にも留意しましょう。
 

Q63 遺産分割協議後に財産が見つかった場合は?

DR135

 

 

遺産分割協議も終わってほっと一息・・
と思ったら、その後に新たに財産が見つかってしまった!なんてこともあるかもしれません。
この場合の取扱いをまとめます。

 



 

1. 遺産分割協議の位置づけ

被相続人が保有していた遺産は、遺産分割協議が終了するまでは、相続人の「共有状態」となります(民法第898)。
そして、遺産分割協議終了により、ようやく遺産は「各人の単独所有」となります。

 



 

2. 「遺産分割終了後」に、新たな遺産が見つかった場合の法律上の取扱い

では、遺産分割協議終了後、新たな遺産が見つかった場合、どうすればよいのでしょうか?
この場合、新たに見つかった遺産については、再度「遺産分割協議」を行います。
(相続人全員の同意で、当初遺産分割を最初からやり直すことも可能)



 

3. 相続税上の取扱い

また、相続税上は、新たに見つかった遺産についても「相続税申告」を行う必要があります。

 

見つかった時期 対応
相続税申告期限内 新たに見つかった財産も含めて「相続税申告書」を作り直します。
既に相続税申告書を提出済の場合 修正申告を行います。
延滞税や過少申告加算税が発生するケースもあります。

 



 

4. 遺産分割協議書の工夫

もし、後から財産が出てきそうな場合は、実務上は、その後の手間を減らすため「遺産分割協議書」に、後日発見される財産の取扱いを記載しておくケースもあります。
例えば、「当遺産分割協議後に発見された相続財産は、配偶者00が相続する」などです。
ただし、この文言だと、後から大きな財産が見つかった場合に相続人間でもめる可能性があります。
「当遺産分割協議後に発見された相続財産は、各相続人の法定相続分の割合で相続する」と記載すると、もめるケースは少なくなるかもしれませんね。

Q19 遺産分割未了の場合の相続税申告

DR083

 

相続が発生した場合、相続人同士の話し合いにより「遺産分割」を行う必要があります。
一方、相続発生後10か月以内に「相続税申告書」を提出しなければいけません。
今回は、この「遺産分割」と「相続税申告書」の関係、そして「遺産分割が未了の場合の相続税申告」についてまとめます。

 

1. 遺産分割と相続税申告書の関係

実は・・「遺産分割」には、期限は特にありません。
一方、「相続税申告書」の提出は、相続発生後10か月以内に行わなければいけません。
 
じゃー「相続税申告書」の提出が先なの?と思われる方もいるかもしれません。
でも、現実的には、「遺産分割」は「相続税申告書提出期限」までに済ませておく必要があります。
なぜなら、「遺産分割」が確定しないと(=各人が実際に相続すべき財産が決まっていないと)、相続税額が確定しないからです。したがって、順番的には、「遺産分割」が先、その後に「相続税申告書」の提出を行います。

 

2. 遺産分割が確定しない場合の相続税申告は?

しかし、現実的には、遺族間での遺産分割の話し合いがまとまらず、「遺産分割」が「相続税申告期限」までに確定しない場合もあります。この場合ってどうするんでしょうか?
 
「相続税申告書」の提出は相続発生後10か月以内、ここは待ってくれません。
期限を過ぎるとペナルティが課せられますので、必ず期限内に行わなければいけません。
でも、実際・・「遺産分割」が確定していないのに、どうやって「相続税申告書」を提出すればよいのでしょうか?
 
実は・・「遺産分割」が、相続税申告期限までに間に合わない場合、「いったん法定相続分で相続したと仮定して申告・納税を行う」ことになります。法律上は、遺産を「共有取得したもの」として、各自の相続税額を算定します。
 
この場合の「相続税申告」は、あくまで仮申告・仮納税です。
つまり、一旦相続税申告書は提出しますが、将来、正式に「遺産分割」が確定した時点で相続税計算をやりなおし、再度「確定申告書」を提出します。(「修正申告」「更正の請求」と呼ばれます)。
その時点で、当初納税額との差額を、相続人ごとに追加納付、還付を行うことになります。

 

3. 相続税申告期限までに遺産分割できない場合のデメリット

ただし、「遺産分割」が確定しないまま相続税申告書を提出する場合、相続税の大きな恩典が使えなくなる点に留意です。
特典が使えない→当初支払う相続税額が多くなる=期限内に相続税額を支払えない可能性!というリスクがあります。

 

(1) 小規模宅地等の特例が使えない

小規模宅地等の特例は、「土地の相続税評価額を5割~8割減額」し、相続税額をかなり安くしてくれる制度です。
 
しかし、この「小規模宅地等の特例」では、「相続税申告書の提出期限までに当該小規模宅地が分割されていること」が要件となります。つまり、相続税申告期限までに「遺産分割」が行われていなければ、この特典は利用できません。
 
この結果、「遺産分割」が確定しないまま「相続税申告書」を提出する場合は、相続税額がかなり多くなることを想定しておかなければいけません。

 

(2) 相続税の配偶者控除が使えない

相続税の配偶者控除は、「相続財産が法定相続分または160百万円まで」の場合、相続税がかからないという制度です。
 
しかし、この「相続税の配偶者控除」では、「相続税申告書の提出期限までに配偶者が遺産分割や特定遺贈によって当該遺産を取得したこと」が要件となります。つまり、相続税申告期限までに「遺産分割」が行われていなければこの特典は利用できません。
 
この結果、「遺産分割」が確定しないまま「相続税申告書」を提出する場合は、相続税額がかなり多くなることを想定しておかなければいけません。

 

4. 将来は改めて利用できる!

上記の通り、「遺産分割」が未確定のまま相続税申告を行うと、各種特典が利用できないことになります。
しかし、将来的に「遺産分割」が確定した場合には、改めて利用できますので!ご安心を。
以下の二つの制度があります。

 

(1) 申告期限後3年以内の分割見込書

当初の「相続税申告書」を提出する際に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出しておくと、申告期限から3年内に分割が決定した時点で、小規模宅地等の特例を利用することが可能となります。
具体的には、分割確定から4ヵ月以内に「更正の請求」をすればこれらの特例の適用を受けることができます。

 

(2) 遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書

「遺産分割」は、想像以上に遺族間でもめる場合が多く、申告期限から3年経過した時点でも、「まだ遺産分割が確定しない」ケースもあります。
この場合、もう一つ「救済方法」が用意されています。
 
申告期限後3年経過日翌日から2か月以内に、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由(※)がある旨の承認申請書」を税務署に提出し、所轄税務署長の承認を受けます。これにより、判決確定の日などから4か月以内に遺産が分割されれば、これらの特例を適用できます。
 
(※)やむを得ない事由とは、例えば、「相続人間で裁判等になっている」などの事情です。
 

Q8 寄与分って何?

DR068

 

例えば、生前に被相続人の「介護」をずっと行っていた方がいる場合、単純に相続時点の財産(介護分が反映していない)をもとに、法定相続分どおりに遺産分割を行うと、ちょっとかわいそうな気がしますよね。
介護している方は、その分評価してあげたいですよね。

そこで、公平性の観点から、民法上、「寄与分」という制度が認められています(民法904条の2)。
前回の「特別受益」の逆の制度ですね。

今回も、民法(遺産分割)のお話をメインに、最後に相続税のお話をします。

 

1. 寄与分って?

被相続人の生前、介護などの貢献をしている方がいる場合、これらの方の「貢献分」を考慮して相続分を決定する制度です。
この貢献分は、「寄与分」と呼ばれます。「寄与分」は、公平性の観点から、「遺産の総額」から差し引き、残りを「みなし相続財産」として法定相続分で遺産分割を行い、最終的に、寄与分は、寄与した方が相続する形で確定します。

つまり、本来は「相続財産」だが、遺産分割の計算上、本来の相続財産から差し引いて遺産分割計算するんですね。具体的な算定は後述しますね。

 

なお、この「寄与分」の制度は「相続人」のみで、内縁の妻や事実上の養子などには認められていませんので、注意しましょう。例えば、お子さんの配偶者が、義理のお父さんの介護をしていた場合、お子さんの配偶者は、法定相続人ではないので「寄与分」は認められません。

 

2. 寄与の対象範囲

単に、介護をしているからといって、すべてが「寄与分」になるわけではありません。

民法上、一定の場合に限られています(民法904条)。

「被相続人の財産の維持又は増加」がもたらされたことが必要となります。

 

(具体的に寄与が認められる例)

種類
被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付
  • 被相続人の借金を返済するなどの資金援助
  • 被相続人の事業に長年無償で従事
被相続人の療養看護
  • 被相続人の療養看護により、看護費用等の出費を抑え、財産が維持に貢献した場合
その他
  • 被相続人の失業中に生活費を支援した場合など

 

3. 寄与とならない例

  • 扶養義務の範囲内での「療養介護」

 

4. 金額や期間は?

貢献行為の「金銭評価」相当(民法904条の2)。
寄与分の金額は、原則として相続人間で協議してきめますが、協議がまとまらないときは、 家庭裁判所が総合的に検討の上、決定します。

 

5. 具体的な算定方法

(1) 寄与分のマイナス

まず、寄与分は相続財産から差し引きます。

寄与分は「相続財産」から除外して配分するためです。寄与分を差し引いた額は「みなし相続財産」と呼ばれます。

 

寄与分のマイナス = 相続財産 - 寄与分の価格

⇒寄与分マイナス後の財産は、「みなし相続財産」と呼ばれます。

 

(2)   各人の相続分の算定

「みなし相続財産」算定後、法定相続分で配分します。

 

みなし相続財産×相続割合

 

つまり、寄与分は、後から寄与した方に個別配分を行うため一旦除外して、もし、「寄与」がなかったらどれくらい相続していたか?を算定しているんですね。

 

(3) 寄与者の実際の相続分の計算

各人の相続分を算定後、寄与した方には、「寄与分の価額」が加算されます。

 

寄与者の実際の相続分=(2)+寄与分

 

Q8-1

 

6. 例題

  • 被相続人相続財産 100百万円。
  • 法定相続人は長男A・Bのみ。
  • 長男Aは30百万円の「寄与」を行っている(次男Bはなし)
  • 各人の相続財産は?

 

(回答)

  • みなし相続財産・・・= 100百万円 - 30百万円 = 70百万円
  • みなし相続財産の配分・・・70百万円 × 50% = 35百万円
  • Aの相続分・・・35百万円 + 30百万円 = 65百万円
  • Bの相続分・・・100百万円 - 65百万円 = 35百万円

 

7. 寄与が認められるためには?

一般的には、以下のものが証拠としてあれば認められるようです。

 

  • 介護度がわかる資料(介護認定書類・診断書等)
  • 財産を贈与したことを確認できる書類(領収書や申告書)
  • 介護の記録、日記など

 

8. 相続税の取扱い

相続税上、寄与分に関しては、寄与分を考慮した「実際相続分」が相続割合になりますので、寄与がある場合とない場合では、各人の相続分と納税額が変わります
各人の納税額は以下の相続割合によって決定されます。

 

相続割合=実際相続分÷相続財産価額

 

ただし、寄与があったとしても、各人の内訳が変わるだけで、相続財産価額や相続税額は変わりません。
 

Q7 特別受益って何?

DR067

例えば、生前に被相続人から「贈与」を受けた法定相続人がいる場合、単純に相続時点の財産(贈与分減少している)をもとに「法定相続分」どおりに遺産分割を行うと、公平ではありません。
贈与されている方は、事前に相続財産の一部を自分だけ受け取っているのと同じですもんね。

そこで、公平性の観点から、民法上、「特別受益」という制度が認められています(民法903条)。

今回は民法のお話をメイン(遺産分割)に、最後に相続税のお話をします。

 

1. 特別受益って何?

遺贈や、生前贈与を受けた相続人がいる場合、これらの方が「恩恵を受けた財産や利益」を考慮して相続分を決定する制度です。

この、生前贈与や遺贈を受けた分は、「特別受益」と呼ばれます。

「特別受益」は、公平性の観点から、「遺産の総額」に一旦加えて遺産分割を行い、最終的に、特別受益を受けた相続人が、特定受益分を「相続した」ものとして確定します。

つまり、本来は「相続財産」ではないものを「相続財産」と一旦みなすことにより、遺産分割計算を行うんですね。具体的な算定方法は、後述しますね

 

2. 特別受益の対象範囲(民法903条)

生前贈与や遺贈のすべてが、「特別受益」というわけではありません。

民法上、一定の場合に限られています。

対象範囲は、「遺贈」の場合と、一定の場合の「生前贈与」のみです。

(遺贈・生前贈与を受けた者は、共同相続人である必要があります)
(特別受益が認められる場合)

  • 遺贈を受けた場合
  • 婚姻や養子縁組のための生前贈与を受けた場合(持参金等)
  • 生計のための生前贈与を受けた場合(例 住宅購入資金・大学資金等)

 

3. 特別受益とならない例

  • 婚姻時の「結納金」や「挙式費用」
  • 親の扶養義務に属する「義務教育費用」
  • 親族間の単なる「生活費の援助」
  • 生命保険金・死亡退職金(受取人固有の財産なので)

(ただし、多額の場合は、特別受益とされることもあります)

 

4. 金額や期間は?(民法)

「特別受益」に該当する生前贈与等は、「相続開始時」の時価で金額が算定されます。
例えば、生前贈与時に1億円だった土地が、相続開始時に2億円になっていたら、2億円の生前贈与として計算します。
 
特別受益者の相続分から「特別受益分をマイナス」して実際の相続分を計算します。
持戻しの期間には制限がありませんので、何十年も前の特別受益でも該当します。
 
あくまで民法のお話ですので、相続税上の「贈与」の持ち戻しの金額は少し異なります。下記8で両者の相違を解説します。

 

5. 具体的な算定方法(民法)

(1) 特別受益分の持戻し

まず、相続財産に「特別受益分」を足します。生前贈与分は、既に被相続人の財産から減少していますが、いったん「相続財産に残っている」と仮定した金額に戻すんですね。持ち戻しと呼ばれます。

 

特別受益分の持戻し = 相続財産 + 特別受益

 

持ち戻し後の財産は、「みなし相続財産」と呼ばれます。

 

(2) 本来の相続分の算定

「みなし相続財産」算定後、法定相続分で配分します。

 

本来の相続財産 = みなし相続財産 × 相続割合

 

もし、「特別受益分」がなかったら、各人がどれくらい相続していたか?という「本来の相続財産」を算定するんですね。

 

(3) 特別受益者の実際の相続分の計算

「本来の相続財産」を算定後、特別受益者の相続分からは、「特別受益分」を差し引いて算定します
(遺贈の場合は、相続財産から控除)

 

特別受益者の実際の相続分 =(2) ― 特別受益分

 

「特別受益」の額が大きいと、相続の配分がゼロの場合もありえます。

 

Q7-1

 

6. 例題

  • 被相続人相続財産 100百万円。
  • 法定相続人は長男A・Bのみ。
  • 長男Aは30百万円の生前贈与(特別受益)を受けている(次男Bはなし)
  • 各人の相続財産は??

 

(回答)

  • みなし相続財産・・・100百万円 + 30百万円 = 130百万円
  • みなし相続財産の配分・・・130百万円 × 50% = 65百万円
  • Aの相続分・・・65百万円 - 30百万円 = 35百万円
  • Bの相続分・・・100百万円 - 35百万円 = 65百万円

 

7. その他

相続人全員が納得している場合は、上記「持ち戻し」をする必要はありません。

また、特別受益の対象となる贈与財産が、滅失した場合は、以下の特別規定があります(民法904条)。
こちらも民法のお話です。

相続税上の取扱いは、下記8をご参照ください。

 

受遺者の行為により、贈与財産が滅失or既に売却した場合 その財産が存在するとして計算
不可抗力や第三者の行為により贈与財産が滅失した場合 相続開始時の現状にて評価

 

8. 相続税上の取扱い

実は、今までのお話はすべて民法上のお話です。遺産分割する際の計算ですね。
しかし、相続税法上は、取扱いが異なるところがあるので注意しましょう。
「民法」と「相続税」上の取扱の相違を記載しておきますね。

 

民法 相続税
目的 遺産分割 相続税の計算
贈与の対象 遺贈、婚姻や養子縁組、生計のための生前贈与 すべての贈与
持ち戻す金額 相続開始時の時価 贈与時の時価
持ち戻す期間・対象

(※)

期間の制限なし。相続人全員が納得している場合は、「持ち戻し」する必要なし 暦年贈与:相続開始前3年以内すべて

相続時精算課税贈与:制度選択後、相続開始時までのすべての贈与

滅失・毀損
の場合
故意・過失の場合のみ持ち戻す すべて持ち戻す

 

(※)相続税上は、期間の限定はありますが、特別受益に該当するしないにかかわらず、すべての贈与を持ち戻すんですね。

ただし、相続税上は、たとえ持ち戻したとしても、既に贈与税を支払っている分は、相続税計算時に控除されますので、二重課税にはなりません。

 

次回は、「寄与分」をまとめます。
 

Q6 遺留分って何?

DR025

ご自身の財産は、原則として自由に分配することが可能です。例えば、法定相続人に配分する相続分をそれぞれ決めることもできますし、「遺贈」により、第三者に財産を譲り渡すことも可能です。

しかし、もし、被相続人が好きな人にだけ配分してしまったら、その他の法定相続人は「相続財産」を全く引き継ぐことができない可能性があります。

法定相続人にもかかわらず財産を相続できないって・・ちょっとかわいそうな感じがしますよね。

 

そこで、民法上は、「遺留分」として、最低減認められる保証分が認められています(民法1028条)。

 

1. 遺留分が認められている方

遺留分が認められている相続人は、配偶者、子供、父母です。
兄弟姉妹は、遺留分が認められていません。

2. 実際に「遺留分」を主張するためには?

「遺留分減殺請求」を行います。この請求権には「時効」がありますので注意です。

 

遺留分が侵害されていることを知っている場合 相続開始、および自分の遺留分が侵害されていることを知った日から1年
知らない場合 相続開始の日から10年

 

3. 遺留分の割合は?

「遺留分」の割合は、法定相続分の2分の1となります。
(法定相続分の割合は、「相続人の確定・遺産の概要把握」をご参照ください。)

 

(法定相続人のパターンごとの遺留分割合)

Q6-1

 

逆にいうと、上記の割合以外の部分は、被相続人が自由に処分できるということです。
子供には代襲相続人も含みます。
なお、相続に限らず、「遺贈」の場合も、この「遺留分」の制限を受けます。