Q63 遺産分割協議後に新たな財産が見つかった場合の対応は?/遺産分割協議のやり直しは贈与税や所得税に注意!

 最終更新日:2022/10/05 閲覧数:5,872 views

 

遺産分割協議も終わってほっと一息・・
と思ったら、その後に新たに財産が見つかってしまった!なんてこともあるかもしれません。
こういった場合、遺産分割協議をやり直す必要があるのでしょうか・・
例えば、相続人が遠方に住んでいる場合などは、「遺産分割協議」をやり直すのは実務上ハードルが高いです。
 
今回は、遺産分割協議後に、新たな財産が見つかった場合の法律上、相続税上の取扱いにつき解説します。

1. 具体例

相続財産は、実務上、「財産の網羅性」を把握することが難しいです。例えば、以下のケースが考えられます。
 
●遺産分割協議後、金融機関からの「はがき」などで、口座が存在することが判明した。
●遺産分割協議後、貸金庫、被相続人名義の不動産、他人に貸していた「貸付金」が判明した。
●遺産分割協議後、被相続人名義ではない預金口座や生命保険が、実質的には被相続人のものであることが判明した。

 

2. 新たに見つかった財産のみ遺産分割すればOK

(1)原則

遺産分割協議終了後、新たな財産が見つかった場合でも、原則として遺産分割協議をやり直す必要はありません。以前の遺産分割協議は有効となり、新たに見つかった遺産についてのみ、再度「遺産分割協議」を行えばOKです。
なお、相続人全員の同意で、当初遺産分割を、最初からやり直すこと自体は可能です。
 

(2)例外

ただし、「もし、新たな遺産が当初からあることがわかっていれば、当初の遺産分割をしなかった」場合は、民法上の錯誤無効(民95)を主張することで、新たな遺産も含めて再度遺産分割をやり直すことができます(遺産分割調停や審判による遺産分割は除く)。
また、相続人が遺産を隠していた場合も、錯誤無効の主張は可能です。
 
ただし錯誤無効は、「善意の第三者」には主張できません。例えば、遺産分割で相続した財産を既に売却等をしている場合、売却先の第三者から財産を取り戻すことはできません(民95Ⅳ)。

 

(3)借金が新たに見つかった場合は?

遺産分割協議後に、カードローン等の借金が判明した場合はどうでしょうか?
この場合も、新たな負債についてのみ、「遺産分割協議」で相続人間の負担を決めることは可能です。ただし、あくまで当該負担関係は、法律上は、「債務引受」と呼ばれ、相続人間でのみ有効となります。
 
つまり、例えば第三者の債権者に対しては、債権者の承諾を得なければ、当該「相続人間の負担割合」を主張することはできません。したがって、債権者の立場では、「債権額全額」につき、相続人全員に請求できる権利があります。
 
なお、借金を相続したくない場合は、「相続開始を知った時から3か月以内」であれば、相続放棄も可能です。
 

3. 新たな財産の「相続税上」の取扱い

相続税上は、当然、「遺産分割協議後」に新たに見つかった遺産についても、「相続税申告」を行う必要があります。
 

見つかった時期 対応
相続税申告期限内 新たに見つかった財産も含めて「相続税申告書」を作り直します。
既に相続税申告書を提出済の場合 修正申告を行います。
原則として、延滞税や過少申告加算税が発生します。

 

4. 遺産分割協議をやり直すと贈与税・所得税が課税される!

相続財産は、遺産分割協議終了時点で、各相続人に財産が帰属(=所有権を取得)することになります。
 
したがって、その後に遺産分割協議をやり直した場合、各相続人間における財産の贈与・譲渡と位置付けられますので、税法上は、以下の点に注意が必要です。
 

贈与税・所得税が課税 遺産分割協議のやり直しは、相続人間における贈与・譲渡と位置付けられ、贈与税・所得税が課税されます。
不動産取得税・登録免許税が課税 当初の遺産分割協議で不動産移転登記を行っている場合は、再度名義変更登記が必要となり、不動産取得税・登録免許税が課税されます。

 

つまり・・遺産分割協議書のやり直しは、手間だけでなく、コストもかかるという点で、現実的ではありません。したがって、できるだけやり直しがないように、当初の遺産分割協議で慎重に協議しておく必要があります。
 
なお、遺産分割協議が、例えば相続人の一部が参加していない場合など、無効や取消しになった場合は、遺産分割協議が最初からなかったものとされますので、贈与税や所得税等は課税されません。この場合は、既に、当初の遺産分割協議で相続税申告を行っている場合には、修正申告又は更正の請求手続が必要です。
 

5. 遺産分割協議書の工夫

例えば、相続人が遠方に住んでいる場合などの場合に、再度、遺産分割協議を行うのは、実務上手間ががかります。
そこで、実務上は、当初の「遺産分割協議書」に、後日発見される財産の取扱いを記載しておくと、実務上の手間が省けます。例えば・・
 
「当遺産分割協議後に発見された相続財産は、配偶者00が相続する
 
などです。この場合は、原則として、遺産分割協議を行う必要はありません。
 
ただし、この文言だと、後から大きな財産が見つかった場合に、相続人間でもめる可能性があります。
「当遺産分割協議後に発見された相続財産は、各相続人の法定相続分の割合で相続する」と記載すると、もめるケースは少なくなるかもしれません。
 

6. 相続放棄後に新たな財産が見つかった場合は?

相続放棄をした場合は、原則として「相続放棄」を取り消すことはできません。相続放棄が可能な3か月以内でも取り消しはできません、したがって、「相続放棄」された方は、後から見つかった場合でも、財産を相続することはできません。
 

7. YouTube

 
YouTubeで分かる「遺産分割協議後に新たな財産が見つかった場合」
 

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