相続の豆知識




Q113 【徹底比較】「法務局自筆証書遺言の保管制度」と「公正証書遺言」を徹底比較

公開日:2020/11/01 最終更新日:2020/11/26

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2020年7月10日より、法務局での「自筆証書遺言の保管制度」が始まりました。
「自筆証書遺言の保管制度」とは、「自らが手書きで書いた遺言書」を、法務局に預けることができる制度です。
法務局に預けることで、遺言紛失リスクの回避だけでなく、遺言の所在が明らかとなりますので、非常に有用な制度です。
今回は「自筆証書遺言の保管制度」を、「公正証書遺言」と比較して解説します。
 


 

1. 公正証書遺言との比較

比較すると以下の通りとなります。
メリットがある方は、「グレー」にしています。
 

自筆証書遺言保管制度 公正証書遺言
作成者 ご自身(代理人×)(※1)
  • 公証人(公証役場)
  • 遺言の内容を公証人にお伝えして公証人が作成
証人の立ち合い 不要 2人以上必要
遺言の様式 法務省令で決められている 特になし
出張サービス 必ず本人が出向く必要あり
(代理人不可、介添え程度はOK)
公証人出張可能(別途手数料)
費用(実費のみ)(※2) 3,900円
(保管料はなし)
5万円程度~
(遺産金額その他条件で異なる)
保管期間 現物は、遺言者の死後50年
(スキャン画像データは150年)
原則20年(ただし、実質は半永久的)
紛争の可能性(※3) 普通 低い
検認の有無(※4) 不要
原本の返却 不可(謄本のみ)
遺言者死亡前の検索
(相続人等関係者のみ)
不可(死亡後に検索可能)

 

(※1)
    「保管申請の手続書類」に関しては、司法書士が代理作成可能。

 

(※2)
    どちらも「依頼時」にお金がかかるだけで、保管にかかる「料金」は発生しません。

 

(※3)
    「公正証書遺言」の場合、本人の口述内容を公証人が確認する点で、内容の精度は高まります。
    一方、「自筆証書遺言保管制度」の場合、法務局では「形式確認のみ」で、「内容の確認」までは行われません(本人自署の確認や、本人確認程度)。

 

(※4)
    「検認」手続とは、遺言書の存在を裁判所で明らかにすることで、偽造や変造を防止するための手続です。
    通常、「公正証書遺言書以外の遺言書」は、相続開始後遅滞なく、家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります(民法1004条)。
    ただし、法務局の「自筆証書遺言」の場合は「検認不要」となりますので、手間が省けます。
    なお、検認手続は、遺言書の有効性を判定するものではありません。

 

2. 自筆証書遺言保管制度の特徴

(1) 関係遺言書保管通知

自筆証書遺言保管制度では、誰かが「遺言書の閲覧」や「遺言書情報証明書」の交付を受けた場合、その他全ての相続人等に「遺言書が保管されている旨」の通知が行われます。


 

(2) 死亡時の通知

遺言書保管申請の際に、「死亡時通知の申出」をすることが可能です。
これは、遺言者が死亡したときに、法務局から、あらかじめ指定された相続人等のうち、1名のみに遺言書保管の旨の通知が行われます(実際の運用は令和3年度以降予定されています)。


 

(3) 遺言の「内容確認」までは行われない

「公正証書遺言」の場合は、公証人が1つずつ内容を確認していくため、内容の正確性及び遺言者の遺言能力が担保されます。
しかし「自筆証書遺言書保管制度」は、あくまで遺言書を保管する制度であり、「遺言書」の内容の正確性及び遺言者の遺言能力を担保するものではありません。
法務局で預かる際に確認するのは、外形的な確認(民法第968条に適合するか、本人の自署か程度)だけですので、後日の紛争防止という観点では、「公正証書遺言」の方が優れています。


 

3. 自筆証書遺言保管制度の流れ

(1) 事前予約

本人が、法務局に事前予約を行います(電話・窓口・ネット予約も可能)。


 

(2) 必要書類の準備

① 住民票
    本籍地の記載ある住民票(取得後3ヵ月以内)1通

 

② 本人確認書類
    マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど顔写真付き証明書で有効期限内のものを1点

 

③ 遺言書の保管申請書
  • 法務省ウェブサイトからダウンロード可能(「受遺者等・遺言執行者等欄」や「死亡時の通知等欄」など、自分に関係ないページもすべて提出必要)
  • 「保管申請書」に関しては、司法書士による代理申請可

 

④ 自筆証書遺言書
    「法的に有効な遺言」である必要があるため、以下の点に留意します。
  • 遺言者が全文自筆(PC不可)。財産目録等は、登記簿や通帳等添付もOK。
  • 日付記載
  • 氏名を自書
  • 押印(認印もOKですが、実印が好ましい)
  • 相続財産、財産を取得する方を特定しているか。

 
なお、法務局へは、「無封状態」の遺言書原本、その他添付書類を持参します。


 

(3) 保管証の受領

提出した書類に不備がなければ、その当日「保管証」が交付されます(後日郵送も可)。
遺言者の氏名・出生の年月日・遺言書保管所の名称・保管番号が記載されています。


 

4. 遺言書情報証明書(本人死亡後)

相続人や受遺者等は、相続開始後(遺言者死亡後)に、初めて「遺言書の閲覧請求」や「遺言書情報証明書の入手」が可能です。
相続開始前に、相続人や受遺者などが遺言書の閲覧請求等を行うことはできません。
生前に閲覧請求ができるのは、遺言作成者本人のみです(代理人不可)。


 

(1) 遺言書情報証明書の効果

自筆遺言書に代わる書面となりますので、不動産登記手続や預貯金などの名義変更等の相続手続に利用することができます。


 

(2) 証明書を取得できる方

相続人・受遺者・遺言執行者等、遺言者と特定の身分関係等がある方のみ請求可能です。


 

(3) 入手の際に必要な書類

  • 法定相続情報一覧図の写し or 原戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票(作成後3か月以内)
  • 請求人の住民票(受遺者や遺言執行者が請求する場合)
  • 法定代理人が請求するときは、戸籍謄本や資格証明書類(作成後3か月以内)
    (請求人が法人の場合、代表者事項証明書(作成後3か月以内))


 

5. その他

(1) 法務局に保管すると他の相続人に知られてしまう?

保管制度による保管申請をしても、別段、ご家族などには通知はされません。
なお、保管制度を活用しない場合は、原則通り「家庭裁判所の検認」が必要となり、検認後は「遺言の有無」が相続人全員に通知されることになります(検認済通知書)。


 

(2) 書き換え・内容変更・撤回は可能?

遺言書は何回も書き換えができ、作成日が新しいものを有効と扱います。
また、いつでも、その保管の撤回を申し出ることができます(代理人×)。


 

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coming soon
 

Q112 【2020年最新サンプル付!】自筆証書遺言の記載方法

公開日:2020/10/01 最終更新日:2020/11/26

DR189

 

 
遺言書には、大きく、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3つの種類があります。
そのうち、①「自筆証書遺言」は、遺言者本人自身が自筆で作成する遺言書です。


 

1. 自筆証書遺言のメリットデメリット

メリット デメリット
  • 気軽に作成できる
  • 証人が不要
  • 何回修正しても手数料かからない
  • 自筆で自ら記載しないといけない
  • 遺言が無効になる恐れ
  • 家庭裁判所による検認が必要
  • 遺言の存在に気づかれない可能性

 

2. 要件

① 本人が手書きで記載
    自筆証書遺言は、すべて遺言者本人が書く必要があります。
    一部でも代筆があると無効となります。
    録音テープ、録画なども認められません。

 

② 日付を記載
    日付の記載がなければ無効となります。
    日付は自筆で、遺言書を作成した年月日を記入します(日付スタンプ×、〇年〇月吉日×)。

 

③ 署名をする
    自筆によるフルネームでの署名がなければ、無効となります。
    署名は必ず遺言者1名のみとされており、夫婦2人共同で遺言を行うことはできません。

 

④ 捺印する
    捺印は認印でもよいですが、後々のトラブルを考えると実印が良いと思います。
    遺言書が数枚にわたる場合は、割印があるほうがベター(有効要件ではない)。

 

⑤ 相続人や相続財産は正確に記載
    遺言書は、相続人及び相続財産が特定できるように正確に記載します。
    例えば、「妻に家を相続させ、長男に預金を相続させる」は、あいまいなため×です。
    具体的で、客観的な記載が必要です。

 

  • 用紙や筆記用具に制約はありません。とはいっても、紙は高耐久性の高いもの、筆記具は、後から改ざんされない万年筆などがベターです。
  • 形式は縦書き、横書きどちらでもOK。
  • 遺言書は封筒に入れ、封をしておくのがベスト。
  • 第三者に保管してもらう方が安全(弁護士など)。
  • 裏面には「本遺言書は、私の死後、開封せずに家庭裁判所で検認を受けてください」など、と記載しておくと明確。

 

⑥ 訂正する場合
    できる限り書き直した方が安全ですが、「訂正」する場合は、必ず、訂正場所に二重線を引き、押印の上、正しい文字を記載します。
    そのうえで、遺言書の余白に「〇行目〇文字削除〇文字追加」と自書で追記、署名を行います。


 

3. 最近の法令改正

以下の改正があり、「自筆証書遺言」のデメリットが解消されつつあります。


 

(1) 財産目録PC可(民法968条2項)

2019年の改正により、相続財産をまとめた「財産目録」は、PCでの作成が認められることになりました。
また、「通帳コピー」や「不動産登記簿謄本」を添付資料することも認められました。
ただし、「財産目録」以外は、従来通りすべて自筆で書く必要があります。


 

(2) 2020年「自筆証書遺言の保管制度」

2020年7月より、法務局で「自筆証書遺言」を保管してもらえる制度が始まりました。
これにより、遺言の紛失等のリスクが大幅に軽減されます。
こちらは、次回Q113で、詳しく説明します。


 

4. 留意事項

(1) 遺留分に配慮する

遺留分とは、遺言でも奪われない最低限度の「相続財産」に対する取り分の権利です。
兄弟姉妹には認められていません。
遺留分を侵害された相続人は、相続開始後、他の相続人に対して、「遺留分減殺請求」を行うことができます。
 
なお、法律上、「遺留分を侵害する遺言」そのものは「有効」ですが、相続人間でもめる可能性が高いため、遺留分に配慮のうえ遺言書を作成することが大切です。


 

(2) 遺言執行者の選任

遺言執行者は、遺言内容を正確に実行する人です。
遺言書で「遺言執行者」を指定しておくと、執行者が相続人代表として手続を進められるため、相続人が複数の場合などは、署名押印手続等の点で時間短縮になります。
また、相続人間で協力が得られない場合でも、不動産登記を進めることが可能な点や、他の相続人による財産の処分などを抑止することも可能です。


 

(3) 検認手続き

公正証書遺言と異なり、自筆証書遺言は誰も確認していないため、相続発生後、家庭裁判所に「検認」の請求が必要になります。
自筆証書遺言を保管する人は、遺言者の死後、遺言書を家庭裁判所に提出し、家庭裁判所が提出された「遺言」の検認を行います。
検認とは、遺言書の情報を確認して遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
検認は、「法律上有効に成立したかどうか」の手続であり、遺言の内容の妥当性を確認するものではありません。


 

5. 自筆証書遺言の記載例

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(※1) 戸籍通りに記載します。
妻、息子などは、あいまいなため×です。
(※2) 「相続させる」と明記します。
「引き継ぐ」「取得させる」などあいまいな表現は×。
(※3) 土地と建物を分けて物件を特定します。
登記簿どおりに記載(現住所地ではない)。
(※4) 預貯金は、銀行名、支店名、預金種類、口座番号を記載して特定します。
金額は、相続時点では変動している可能性が高いため、通常は記載しません。
(※5) 相続人以外の方に財産を遺贈する場合は、「遺贈する」と記載します。
(※6) 遺言書の「記載漏れ対策」として、当該文言を入れておくと、紛争防止になります。
(※7) 遺言執行者を定めておくと、遺言の実行がスムーズに短縮化されるメリットがあります。
(※8) 将来は予測できませんので、不測の事態に備え、相続人が自分より先に亡くなった場合をあらかじめ記載することも可能。(予備的遺言)。
(※9) 付言事項は、自由に記載できます。
「家族に対する感謝の気持ち」や、「自分の望み」などを記す場合が多いです。
法的な効力はありませんが、読んだ人を納得させる効果があります。
葬儀の方法などを記載する場合もあります。
(※10) 日付は正確に記載し、自筆により署名します。


 

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Q111 区分所有から共有名義への変更~二世帯住宅等の小規模宅地等の特例~

公開日:2020/09/01 最終更新日:2020/11/26

DR188

 

今回は、二世帯住宅等の場合の「小規模宅地等の特例」の論点です。
二世帯住宅の「小規模宅地等の特例」の適用は、原則として、建物名義が親子「共有名義」の場合は、土地全体につき適用できますが、「区分所有」の場合は「親の居住スペース」部分しか適用できません。

では、名義を「区分所有」から「共有名義」に変更すればどうなるでしょうか?
今回は、変更のメリットと、実務上の留意事項をまとめます。
なお、土地は親所有で、親と子は「同一生計」であることを前提とします。

1. 建物区分所有の具体例

  • 現在、一軒家の1Fには母、2Fには子供家族が居住している(父は既に死亡)。
  • 土地は、母名義。
  • 建物は、1F母名義、2F子供名義の「区分所有」登記(1F、2Fの面積は全く同じとする)。
  • 子は、無償で母から土地を借りているものとする。
  • 将来、母の相続時に、土地に関して「小規模宅地等の特例」は適用できるか?
    (その他の要件はすべて満たしているものとする。)

 

(1) イメージ図

Q111_1

(2) 結論~「区分所有」での特例の適用~

建物は、母と子「区分所有」となっているため、原則として同一生計とみなされません。
したがって、将来お子様が相続する場合、土地に関しては、母の居住スペースのみ小規模宅地等の特例の適用が可能です(=お子様の居住スペース部分は、特例適用できない)。

2. 共有名義への変更

では、上記具体例で、「建物」を「区分所有」から母と子の「共有名義」に変更すれば、土地全体について「小規模宅地等の特例」の適用はできるのでしょうか?

(1) イメージ図

Q111_2

(2) 結論~「共有名義」変更後の特例の適用~

建物を「共有名義」に変更した場合は、各人の所有区分がなくなるため(2人で全体を共有しているだけ)、「区分所有」の場合のように「同一生計とみなされない」ことはありません。
したがって、「同一生計」であるという要件を満たす限り、土地全体につき、小規模宅地等の特例の適用が可能です。

3. 留意事項

建物を共有名義に変更するだけではなく、母とお子様家族が「同一生計」である必要があります。
元々「区分所有」登記されている場合は、生計別の場合が多いかもしれません。
「同一生計」の合理的な説明ができる必要があります。
なお、建物共有名義で生計が別の場合は、「区分所有」の場合と同様、母の居住スペースのみ、小規模宅地等の特例が認められます。

4. 「区分所有登記」から「共有名義」への変更手続

実務上「区分所有」から「共有名義」への変更作業は、手間やハードルが高いです。
例えば、上記具体例では、一般的に、以下の手続が行われます。

 

① 1Fと2Fの母子各々の持分のうち、1/2ずつを等価交換し、所有権移転登記を行う(司法書士)

 

② その後、1件の建物にするため表題部の変更登記を行う(土地家屋調査士)

等価交換は、税務上、原則として売買とみなされ、「所得税」が課税される場合があります。
したがって、課税関係が生じないよう、「固定資産の交換の特例」適用の有無を検討する必要があります。
区分所有の各々の面積が異なる場合は、さらに複雑です。
また、不動産取得税、登録免許税や司法書士等の手数料などのコストも考慮しなければいけません。

5. 結論

結論的に、「共有名義への変更」は、手間やハードルが結構あるため、実務上は「小規模宅地等の特例」のメリットが大きい場合にのみ、実施する場合が多いのかもしれませんね。

6. 参照URL

(固定資産交換特例)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3511.htm

 

Q110 マンション敷地と併設駐車場の相続税評価

公開日:2020/08/16 最終更新日:2020/11/26

DR187

 

 
マンションの場合、居住部分の横に、駐車場が併設されている場合も多いですね。
こういった「駐車場併設」の土地の場合、「駐車場」の利用方法によって、相続税の評価額が変わってきます。
今回は、マンション「居住用敷地」と「駐車場敷地」の評価について、まとめます。


 

1. 土地の評価単位の原則

土地の評価単位は、原則として地目ごとに行います。
ただし、複数の土地でも、一体として利用される場合は、主たる地目からなるものとして、一体で評価します。


 

2. マンションの場合は?

居住用敷地は「宅地」、駐車場は「雑種地」となりますので、原則として別々に評価します。
ただし、土地の利用単位が一体の場合は、一体で評価します。
つまり、マンション併設駐車場の場合は、「駐車場の利用方法」により、土地の評価単位が異なってきます。


 

3. 入居者専用駐車場の場合

駐車場が、入居者専用の駐車場であれば、「居住用敷地」と「駐車場敷地」は一体で利用しているものとして、土地は1単位(居住用敷地+駐車場敷地)で評価します。
この場合、メインとなる「居住用敷地」部分は「貸家建付地」評価となりますので、駐車場敷地部分も「貸家建付地」として評価を行います。
 

(具体例)
  • マンションの居住用敷地400㎡、駐車場敷地100㎡。
  • 駐車場は、マンション入居者専用の駐車場とする。
  • 正面路線価は500千円/㎡、借地権割合70%とする。

 
入居者専用駐車場ですので、駐車場も居住者が一体利用しているものと判断し、全体の土地を「貸家建付地」として評価します。
 
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① 居住用敷地評価額(貸家建付地評価)

500千円 × 400㎡ ×( 1 – 0.7 × 0.3 )= 158,000千円

② 駐車場敷地評価額(貸家建付地評価)

500千円 × 100㎡ ×( 1 – 0.7 × 0.3 )= 39,500千円

③ 土地評価額合計

① + ② = 197,500千円
 
他の事例としては、「コンビニ店舗」と「来客用駐車場」の場合も、一体利用されているものと判断され、土地は、1単位として評価します。


 

4. マンション入居者以外にも貸している駐車場の場合

入居者以外にも貸している駐車場の場合、「居住用敷地」と「駐車場敷地」は一体利用とは判定せず、それぞれ別々に評価(敷地=宅地 駐車場雑種地)します。
この場合、居住用敷地は「貸家建付地」、駐車場敷地は「自用地」評価となります。
なお、たとえ、駐車場のうち一部だけを外部に貸している場合でも、駐車場全体を一つの利用単位として、敷地とは別に評価します。

 

(具体例)
  • マンションの居住用敷地400㎡、駐車場敷地100㎡。
  • 駐車場は、マンション入居者以外に賃貸している部分があるものとする(※)
  • 正面路線価は500千円/㎡とする。

(※)賃貸は、業者を通じた「コインパーキング」ではなく、直接貸しているものとする。
 
駐車場は、入居者以外にも賃貸していますので、「居住用敷地」と「駐車場敷地」は別々に評価を行い、居住用敷地は「貸家建付地」、駐車場敷地は「自用地」評価となります。
 
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① 居住用土地評価額(貸家建付地評価)

500千円 × 400㎡ ×( 1 – 0.7 × 0.3 )= 158,000千円

② 駐車場土地評価額(自用地評価

500千円 × 100㎡ × 1 = 50,000千円

③ 土地評価額合計

① +② = 208,000千円


 

5. 結論

入居者専用駐車場の方が、駐車場部分の相続税評価額が低くなることがわかります。

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Q109 相続手続きに便利な「戸籍の附票」とは?

公開日:2020/07/21 最終更新日:2020/11/26

DR186

 


 

1. 戸籍の附票とは?

戸籍の附票とは、戸籍に記載されている方の住所の履歴を記録した文書のことです。
戸籍謄本とセットで、本籍地の役所に置かれています。
 
住民票の場合、現住所と1つ前の住所しか記載されていませんが、戸籍の附票は、戸籍が作成された時点からその後の住所が記載されています。
 
なお、住所変更があった場合、市役所等に「住所変更」を届け出ると、同時に「戸籍の附票」にも追加記載が行われます。


 

2. どういった場合に利用?

戸籍の附票は、戸籍に記載されている方の昔の住所をたどらないといけない場合に便利です。
具体的に必要な場面は、以下のとおりです。


 

(1) 現住所の分からない相続人が現れたとき

遺産分割協議などを行う場合、相続人全員での協議、署名が必要となりますが、相続人と連絡が取れず、その方の現住所がわからない場合があります。
この場合、「戸籍の附票」には、住所が記載されていますので、連絡の取れない相続人の住所を把握できる場合があります(「戸籍謄本」本体には住所は記載されていない)。
つまり、相続人の「本籍」さえわかれば、「戸籍の附票」で、その方の住所をたどることが可能です。


 

(2) 被相続人の財産名義が古い住所の場合

被相続人名義の不動産等を名義変更する場合、「登録されている不動産の住所」が、お亡くなりになった時点の住所と異なる場合があります。
登記手続では、記載されている所有者の住所と氏名が一致する「証明書類」が必要となります。
この場合、「住民票」では上記の証明ができませんので、過去に登録された「戸籍の附票」をもとに、不動産の相続手続を進めることになります。


 

3. 留意事項

戸籍の附票に記載されている住所は、その戸籍に本籍がある期間だけです。
例えば、結婚等により戸籍を抜けた場合、その後の住所は、新しい戸籍に記録されます。
 
また、戸籍と同様に、様式変更などにより「改製」されることがあります。
改製された場合、古い戸籍の附票(改製原附票)は5年を過ぎると破棄され、昔の住所の記録はなくなります。
「戸籍謄本」や「除籍謄本」の保管期間が150年であるのに対し、「戸籍の附票」の保管期間は、非常に短くなっています。


 

4. ご参考~戸籍の附票の除票(除附票)~

戸籍の附票の除票とは、「除籍謄本」に付随する附票のことです。
死亡、結構、離婚等により、その戸籍に記載されている人が誰もいなくなって「除籍謄本」となる場合、それに付随する附票も除票となります。
「戸籍の附表の除票」には、「戸籍作成から除籍」となるまでの「住所の履歴」が記載されています。

 

Q108 相続実務での「除籍謄本」の意味

公開日:2020/07/21 最終更新日:2020/11/26

DR185

 

 
相続財産の名義変更をする際に、銀行や法務局などから、「除籍謄本」の提出が求められる場合があります。
今回は、「除籍謄本」の内容と、相続実務で「除籍謄本」と言われた場合の実質的な意味を解説します。


 

1. 除籍謄本とは?

現在の戸籍は、「夫婦とその子供2世帯のみが単位」となっています。
子供が結婚した場合は、子供は親の戸籍から抜けて、子供夫婦が新しい戸籍を作ります。
そして、その子供夫婦に新たな子供(孫)が生まれると、その「新しい戸籍」に子供(孫)が入ってきます。
 
このように、「戸籍は最大でも2世帯まで」ですので、いずれは、戸籍には誰もいなくなります。
戸籍謄本に記載されている人が1人ずつ抜けていき、最終的に誰もいなくなると、その戸籍は閉鎖されます。
この閉鎖された戸籍を証明するものが「除籍謄本」となります。
 
まとめると、「除籍謄本」とは、死亡、結構、離婚等により、その戸籍に記載されている人が誰もいなくなった状態の戸籍の「証明書類」となります。


 

2. 相続実務での「除籍謄本」

相続実務では、「除籍謄本」という単語が、正式な意味での「除籍謄本」ではなく、単に「被相続人の死亡が記載された戸籍謄本」を指すものとして使われる場合が多いです。

 
例えば、銀行や法務局などで名義変更する場合には、「その人が亡くなったことを証明する書類」が必要となります。
その際、単に「除籍謄本をお願いします」と言われた場合は、その戸籍に記載されている人が誰もいなくなった状態の「除籍謄本」が要求されているわけではなく、単に「被相続人の死亡により除籍となった旨が記載されている戸籍謄本」を提出すれば事足ります。相続人が死亡したからといって、すべての戸籍が「除籍謄本」になっているとは限りませんので。
 
このように、実務では、単に「除籍謄本」という言葉が、「その人が亡くなったことを証明する書類」として利用されている点に注意しましょう。
単に「除籍謄本」といわれた場合は、「その人が除籍されている戸籍謄本または除籍謄本」を指しているものとして理解すれば、問題ありません。


 

3. 除籍謄本が必要になるケース

相続財産を名義変更する場合や、相続人確定、相続税申告書を提出する際に必要となります。
例えば、預金通帳、不動産、自動車、株などを名義変更する際、相続人が亡くなったことを証明する(=相続が発生したことを証明する)書類として、提出が要求されます。

 

Q107 側方路線に他人が設定した「特定路線価」がある場合

公開日:2020/06/25 最終更新日:2020/11/26

DR184

 

 
今回は、「正面路線価」はあるものの、「側方路線価」がない場合の論点です。
こういったケースでも、路線価がない「側方路線」に、他の土地権者が「特定路線価」を設定している場合があります。
この場合、自分の土地の評価につき「側方路線影響加算等」は行うのでしょうか?


 

1. 側方の路線価が特定路線価の場合は、側方加算は行わない

結論的には、たとえ側方路線に「特定路線価」が設定されたとしても、正面路線価がある土地については、側方路線影響加算は行われません。
特定路線価は、あくまで路線価が設定されていない道路にのみ接している宅地を評価ための路線価であり、すでに路線価に接道している宅地には何ら影響を及ぼしません。
同様に、二方路線影響加算、三方又は四方路線影響加算も影響を及ぼしません。

 

2. 事例

 

下記のA土地の相続税評価はどのように行いますか?

  • 路線価なし通路Cは、隣接地Bの土地権者により、270千円/㎡の特定路線価が設定されている。
  • A土地には側方路線はないが、正面路線価300千円/㎡が存在している。
  • 路線価なし通路Cは、不特定多数通行の公道であり、B土地の専用道路ではない。

 
200625Q106_1


 

(1) 特定路線価の設定可否

 

A土地 側方路線には路線価は存在しないが、正面には路線価があるため、特定路線価の設定はできない。
B土地 路線価が設定されていない道路にのみに接しており、不特定多数が通行する通路のため、特定路線価の設定が可能。


 

(2) B土地の「特定路線価設定」の影響は受けない

A土地を評価するにあたって、たとえ、B土地権者が設定した特定路線価が存在していたとしても、正面路線300千円のみで評価します(側方路線影響加算は行わない)
特定路線価は、あくまで路線価が設定されていない道路にのみ接している宅地を評価ためのものであり(=B土地を評価するためのみに利用)、宅地Aのように既に路線価に接道している宅地の評価には、何ら影響を及ぼしません。
 

(評価対象地Aの相続税評価額)

300千円 × 1.00* × 300㎡ = 90,000千円
* 奥行15mに対する奥行価格補正率
(A土地評価上は、隣接地Bの特定路線価にかかる側方路線影響加算は行わない)


 

3. 注意事項

路線価がある道路に接道しているにもかかわらず、側方に路線価がないからといって、間違えて特定路線価の設定をしないよう注意しましょう。
税務署も、納税者からの申請があると、誤って「設定してしまう」場合があります。
誤って、ご自身の土地評価用に特定路線価を設定して、「側方路線影響加算」を行ってしまった場合は、税額がかなり高くなってしまうことになります。


 

4. 参照URL

(側方路線影響加算等の計算――特定路線価を設定した場合)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/26.htm

 

Q106「配偶者居住権」が消滅した場合に税金はかかる?

公開日:2020/06/23 最終更新日:2020/11/26

DR183

 

 
「配偶者居住権」は、配偶者が亡くなるまで(or 当初設定期間)まで存続し、途中で譲渡することも、当初の設定期間を変更することもできません。
配偶者が亡くなったときや、当初の設定期間が終了した時点では、権利が消滅し、課税関係は生じません
 
ただし、配偶者居住権は、「途中で消滅させる」ことが可能です。
例えば、合意解除や放棄などにより、途中で「消滅」させることは可能です。
また、配偶者が勝手に賃貸・増築等をした場合などは、一定期間後、所有者側から配偶者居住権を消滅させることも可能です(民1032条Ⅲ、Ⅳ)。

このように、配偶者居住権を途中で「消滅させた」場合には、「課税関係」が生じる場合があります。


 

1. 対価を得て消滅させたかどうか?

配偶者居住権を消滅させた場合、有償で消滅させたかどうか?により、課税関係が異なってきます。
 

取扱い 課税される人
有償で消滅 譲渡所得として課税。
現状は、「分離課税」の対象とはなっていないため、総合課税となる。
配偶者
無償で消滅
(低廉譲渡も含む)
原則として,配偶者から贈与があったものとみなされ,消滅直前の配偶者居住権等の価額に相当する利益の額に対し贈与税が課税(相基通9-13の2 )。 居住建物等所有者
(受贈者)

 

(通常の土地建物を譲渡した場合との比較)
通常の土地建物の譲渡 配偶者居住権の有償消滅
分離課税 総合課税

 
配偶者敷地利用権は、「小規模宅地等の特例」の適用が可能ですが、一般的な土地の譲渡の課税方式である「分離課税」ではなく「総合課税」になります。

 

2. 有償で消滅させた場合の譲渡所得算定方法

譲渡所得金額(総合課税)= 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)– 50万円


 

(1) 「短期」か「長期」かで課税対象が異なる

「短期譲渡所得」か「長期譲渡所得」か、で課税対象が異なります(所22、33、38)。
 

区分 課税対象
短期譲渡所得 全額
長期譲渡所得 2分の1が総合課税の対象


 

(2) 長短区分の判定方法

「長短」の判定は、結論的には「被相続人の取得時期」を引き継いで長短区分を行います。
 

短期譲渡所得 被相続人の取得時期より5年内の消滅
長期譲渡所得 被相続人の取得時期より5年超の消滅

 
原則的な長短区分は、「配偶者居住権等」の取得日以後5年内の譲渡かどうか?という条文構成となっていますが、一定の消滅の場合は、短期譲渡所得から除く規定があり(所施令82)、実質的には上記の判定となります。

 

3. 取得費の算定方法

(1) 配偶者居住権(建物)

居住建物等の取得費(※1)× 配偶者居住権等割合(※2)– 減価の額(※3)

(※1)建物取得日 ⇒ 配偶者居住権取得時までの「価値減少額」は減額する
(※2)配偶者居住権設定時における ①配偶者居住権等の価額 ÷ ②居住建物等の価額
(※3)配偶者居住権の取得費 ÷ 配偶者居住権の存続年数 × 取得時から消滅時までの年数


 

(2) 配偶者敷地利用権(土地)

居住土地の取得費(※)× 配偶者居住権等割合

(※)「配偶者敷地利用権の取得費 ÷ 配偶者居住権の存続年数 × 取得時から消滅時までの年数」は、取得費から控除する。


 

4. ご参考~配偶者居住権等消滅前に、対象建物等を譲渡した場合の取得費

配偶者居住権の目的となっている建物や土地等を、配偶者居住権等が消滅する前に譲渡した場合、「取得費」は以下で算定します。
 

居住建物等の取得費 – 配偶者居住権等の取得費

 

Q105 無道路地評価の方が特定路線価設定より節税?

公開日:2020/05/21 最終更新日:2020/11/26

DR182

 

 
以前お伝えしたとおり、「特定路線価」の設定は、義務ではありません。
今回は、「路線価のない道路のみに接している土地」の評価につき、①特定路線価を設定して評価した場合と②無道路地で評価した場合を比較してみます。


 

1. 事例

下記の対象地Bの相続税評価を行ってみましょう。

  • 路線価なし道路Cは、不特定多数の者の通行の用に供されている公道、建築基準法上の道路とします(対象地Bの専用道路ではない)。
  • 対象地Bは、路線価が設定されていない道路にのみ接しています。

 

(普通住宅地区)

200519Q105_1


 

2. 特定路線価の設定可否

  • 対象地Bは、路線価が設定されていない道路Cにのみに接している。
  • 道路Cは、不特定多数の通行用である。

 
要件を満たすため、特定路線価の設定が可能


 

3. 特定路線価を申請した場合

特定路線価を申請した場合、一般的には高めの路線価がつくことが多いです。
(「近隣土地」の路線価や「固定資産税評価額の倍率」を用いて算定する場合が多い。)
 
今回の例では、近隣路線価200千円を参考に、道路Cの特定路線価は、180千円/㎡と設定されたものとします。
 

(対象地Bの評価額)

 180千円 × 0.95(※)× 600㎡ = 102,600千円
(※)奥行30m奥行価格補正率(普通住宅地区)

 

4. 無道路地(旗竿地)として評価した場合

(1) 差引計算

① 想定整形地(赤線部分)

200千円(正面路線価)× 0.91(40m奥行価格補正率)× 1,400㎡ = 254,800千円

 

② かげ地部分(黒塗部分)
  • 隣接地A・・200千円(正面路線価)× 1.00(20m 奥行価格補正率)× 600㎡ = 120,000千円
  • 路線価なし通路C・・200千円(正面路線価)× 0.91(40m 奥行価格補正率)× 200㎡ = 36,400千円

 

③ 評価対象地Bの評価(青塗部分)不整形地補正前

(254,800千円 – 120,000千円 – 36,400千円)= 98,400千円
98,400千円 ÷ 600㎡ = 164千円/㎡

 

(ご参考・普通住宅地区)
奥行20mの奥行価格補正率 1.00
奥行40mの奥行価格補正率 0.91


 

(2) 不整形地補正(不整形地補正率表 注3参照)

上記(1)の差引計算後、不整形地補正等を行います。
不整形地補正は、以下のどちらか小さい方の選択が可能です(0.60が限度)。
 

① 不整形地補正率 × 間口狭小補正率 (小数点第2位未満切捨)
② 間口狭小補正率 × 奥行長大補正率 (小数点第2位未満切捨)

 
① 0.78(不整形地補正率)× 0.94(間口狭小補正率)= 0.7332
② 0.94(間口狭小補正率) × 0.90(奥行長大補正率) = 0.846
 
小さい方の小数点第2位未満を切捨、
① 0.73(小数点2位未満切捨)

⇒ 164千円 × 0.73 = 119.72千円/㎡
 

(ご参考・普通住宅地区)
不整形地補正率 0.78(普通住宅地区B(600㎡ + 200㎡)÷ 1,400㎡ = 0.5714)
間口狭小補正率 0.94(4m以上6m未満)
奥行長大補正率 0.90(40m ÷ 5m = 8倍)


 

(3) 最終的な無道路地(旗竿地)の評価

119.72千円/㎡ × 600㎡ = 71,832千円


 

5. 結論

対象地Bの相続税評価額は、それぞれ以下となります。
 

特定路線価を設定した場合 102,600千円
無道路地評価(旗竿地評価)した場合 71,832千円

 
無道路地(旗竿地)として評価したほうが、評価額は大幅に低くなりました。


 

6. 注意事項

特定路線価の申請は義務ではありませんので、一般的には「無道路地(旗竿地)」で評価した方が、相続税評価額は低くなる可能性が高いです。
ただし、対象地の場所が、路線価設定道路から大きく離れている場合(奥行が長い)、著しく相続税評価が低くなってしまうケースがあります。
その場合は、税務署から「不合理な評価方法」と判断される場合もありますので、注意しましょう。


 

7. 参照URL

(不整形地の評価)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/16.htm
 

(奥行価格補正率等)

http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm

 

Q104 配偶者居住権で相続税が大幅に安くなる?

公開日:2020/05/19 最終更新日:2020/11/26

DR181

 

 
前回お伝えした通り、「配偶者居住権」については相続税上一定の評価が行われるため、「相続税額」にも影響を与えます。
今回は、「配偶者居住権」と相続税額に与える影響につき、具体例を用いて解説します。


 

1. 配偶者居住権評価により「その他の権利」の相続税評価額は低くなる

配偶者居住権とは、「配偶者」が、相続後も家に住み続けることができる権利です。
配偶者居住権の設定により、従来の所有権が
①配偶者所有権と②所有権(以下「その他の権利」といいます)に区分されます。
 
従来の所有権の相続税評価額は、上記①+②ですので、①「配偶者居住権」に相続税上の評価額が付されると、必然的に②「その他の権利」の評価額は、その分だけ低くなります。
 
200519Q104_1


 

2. 「配偶者居住権」は死亡により消滅し、相続税はかからない

「配偶者居住権」は、配偶者死亡時点で消滅するため、「配偶者居住権」にかかる相続は発生しません。
つまり、「配偶者居住権」にかかる相続税課税関係は生じないことになります。


 

3. 相続税額の節税につながる?

「配偶者居住権」が消滅すると、「その他の権利」所有者は、元の制約のない「完全な所有権」を取得することになります。
先ほどお伝えしたとおり、当初「配偶者所有権」を設定した時点では、「その他の権利」は、「配偶者居住権」の評価額だけ、相続税評価額が低くなります。
 
一方、将来配偶者死亡により「配偶者居住権」が消滅すると・・?
「その他の権利」は、「完全な所有権」に戻るにもかかわらず、「配偶者居住権」に相続税の課税関係は生じません。
つまり、当初「その他の権利」を相続した時点では、低い相続税評価額で相続が可能・・ということになりますよね。
具体例で解説します。

 

4. 具体例

(1) 配偶者居住権を設定しない場合

  • 夫、妻、子供1人。夫が亡くなり、その後、妻が亡くなったケース。
  • 夫名義の自宅の相続税評価額は100,000千円(評価額は二次相続時も同様とする)。
  • 一次相続では妻が全額相続、二次相続は子が全額相続。
  • 妻固有の財産はゼロとする。

 

① 一次相続

妻が全額相続しますが、妻には相続税上「配偶者控除」がありますので、課税価格160百万円までは相続税がかかりません。
したがって、一次相続での相続税額はゼロとなります。

 

② 二次相続

お子様は、母親の相続財産100,000千円につき相続税が課税されます。
 

課税遺産総額 100,000千円 -( 30,000千円 + 6,000千円 × 1人)= 64,000千円
子の相続税額 64,000千円 × 30% – 700万円 = 12,200千円

 

③ 相続税総額

一次及び二次相続トータルでの相続税額は、12,200千円となります。


 

(2) 配偶者居住権を設定した場合

  • 上記自宅につき、「配偶者居住権」を設定した。
  • 「配偶者居住権」評価額は90,000千円、「その他所有権」評価額は10,000千円とする。
  • 一次相続では、妻は「配偶者居住権」を相続し、子は「その他の所有権」を相続する。
  • 妻固有の財産はゼロとする。

 

① 一次相続

妻は「配偶者控除」適用により相続税がかからない点、上記(1)同様です。
一方、お子様は「その他の所有権」を相続しますので、相続税が課税されます。
 

課税遺産総額 100,000千円 -( 30,000千円 + 6,000千円 × 2人)= 58,000千円
法定相続割合での相続税総額 妻58,000千円 × 1/2 × 15% – 500千円 = 3,850千円
子58,000千円 × 1/2 × 15% – 500千円 = 3,850千円

合計 7,700千円
妻の相続税額 7,700千円 × 9,000/10,000 = 6,930千円 ⇒ 配偶者控除により税額ゼロ
子の相続税額 7,700千円 × 1,000/10,000 = 770千円

 

② 二次相続

「配偶者居住権」は、配偶者死亡により消滅しますので、二次相続でお子様が相続する財産は0となり、相続税はかかりません。

 

③ 相続税総額

一次及び二次相続トータルでの相続税額は、770千円となります。


 

(3) 結論

「その他の権利」は、「配偶者居住権」の分だけ評価額が低くなるため、「一次相続」で相続するお子様の相続税額は低く抑えられます。
一方、二次相続時には、配偶者居住権は既に消滅しているため「配偶者居住権」にかかる相続税は課税されません。
 
つまり・・お子様が相続した「その他の権利」は、配偶者死亡後、元の完全な所有権に復活し「価値が増加する」にもかかわらず、相続税がかからない(=「配偶者居住権」に相続税が課税されない)という不思議な結論になります。
同じ所有権を取得するはずなのに、上記(1)と(2)では、相続税額が大きく異なっています。
 
現状は「配偶者居住権」に「みなし相続財産」としての課税規定もありませんので、「配偶者居住権」設定により、大幅な相続税節税ができる可能性があると考えられます。


 

5. 小規模宅地等の特例の適用も可能

配偶者居住権については、「小規模宅地等の特例」の適用が可能です。
小規模宅地等の特例は、居住用土地等につき評価額が80%減額できる制度です。


 

6. 注意事項~合意解除と放棄の場合は贈与税が課税される

配偶者死亡時に相続税が課税されることはありませんが、配偶者居住権の「合意解除」と「放棄」があった場合には、「贈与税」が発生することが明文化されています。
 

 

7. YouTube