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相続の豆知識 財産評価




Q97 私道の評価

DR174

 

 
私道とは、個人が所有する道路のことです。道路には「公道と私道」があります。
公道か私道か?は、「公図」を見れば把握できます。
公図に「地番」が入っていれば「私道」、地番が入っていなければ「公道」となります。
私道の所有者は、登記簿謄本に記載されています。
 
「私道」は所有者がいるため、もちろん「相続税評価の対象」となります。
分譲住宅などでは、真ん中に私道が隣接しているような物件も結構ありますよね。
今回は、この「私道」の相続税評価について、以下にまとめます。


 

1. 私道の種類

私道は、一般の宅地と比べると評価額は低くなります。
「私道」といっても、通り抜けできる私道、行き止まり私道、専用通路など様々です。
相続税上は、それぞれのパターンごとに評価方法が定められています。
 
以下の3つです。

 

内容 内容 相続税上の評価
通り抜け私道(不特定多数の利用) 評価しない
行き止まり私道(特定の者の通行) 30%評価
専用道路 宅地に含めて評価

 
上記③については、宅地に含めて評価しますので、私道としての評価は行いません。

 

2. 通り抜け私道の評価(不特定多数の利用)

(1) 具体例

191011souzoku2_1
 

  • 上記のように、通り抜けできる私道は、公共性が高いことから「不特定多数の者の通行の用に供される私道」として「相続税評価額はゼロ」となります。(財基通24)
  • 建物建替え等でセットバックした前面通路なども、「通り抜け私道」として評価はゼロとなります。
    (建築基準法第42条2項)


 

(2) 「不特定多数の者の通行の用に供されている道路」の例

  • 公道から公道に通り抜けできる私道。
  • 行き止まり私道だが、その私道を通行して不特定多数の者が地域等の集会所や公園等の公共施設や商店街等に出入りしている場合。
  • 行き止まり私道だが、その私道を通行して私道の一部に公共バスの転回場や停留所が設けられており、不特定多数の物が利用している場合。


 

(3) 申告書の記載

通り抜け私道の場合、相続税評価額はゼロとなりますが、申告書第11表には、評価ゼロとして記載しておく方が安全です。

 

3. 行き止まり私道の評価

(1) 具体例

(普通住宅地区)持ち分1/6
191015souzoku2_4

  • 上記のような「行き止まり私道」は、不特定多数の通行の用ではなく、特定の者が通行するための私道で、各宅地所有者で私道を「共有」で所有している場合が多いです。このような行き止まり私道は、本体宅地と別に30%で評価を行います。
  • 私道の場合、自動車等の通りをスムーズにするように間口に「隅切り」が設けられている場合がありますが、間口には、隅切りは含めませんのでご留意ください。

 

行き止まり私道の評価 = 正面路線価×奥行価格補正率 × (A) × 30% × ㎡ × 持分

 
(A)・・以下のどちらか小さい方を選択適用可(0.60が下限)
 

① 不整形地補正率 × 間口狭小補正率(小数点第2位未満切捨)
② 間口狭小補正率 × 奥行長大補正率(小数点第2位未満切捨)


 

(2) 評価額

200千円 × 0.91(奥行価格補正率)× 0.84(※) × 30% × 200㎡ × 1/6 = 1,528.8千円
(※)
① 1.00(不整形地補正率) × 0.94(間口狭小補正率) = 0.94
② 0.94(間口狭小補正率) × 0.90(奥行長大補正率) = 0.846
小さい方の小数点第2位未満を切捨、
② 0.84(小数点2位未満切捨)

 
(ご参考・普通住宅地区)

奥行価格補正率 0.91(40m)
不整形地補正率 1.00(かげ地なし)
間口狭小補正率 0.94(4m以上6m未満)
奥行長大補正率 0.90(40m ÷ 5m = 8.0倍)

 

4. 専用道路

(1) 具体例

191011souzoku2_3
 
上記のように、宅地所有者のみしか利用しないような「専用道路」は、私道の評価ではなく、宅地に含めて評価します。
旗竿地」と呼ばれる地形となります。
私道としては評価しませんが、旗竿地として評価の際、不整形地補正が入りますので、整形地と比べると、相続税評価は下がります。


 

5. 小規模宅地等の特例との関係

私道であっても、その私道がないと公道へ出られないような宅地の場合は、要件を満たす場合は、小規模宅地等の特例の適用が可能です。


 

6. 参照URL

(私道の相続税評価額)~財産評価基本通達24
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/04.htm#a-24
 
(不特定多数の者の通行の用に供されている道路の例)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/04/06.htm
 
(間口距離の求め方)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/08.htm
 
(奥行価格補正率等)
http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm

 

Q96 旗竿地の評価方法

DR173

 

 
旗竿地とは、名前の通り、間口が狭くなっていて、旗のような形状となっている土地のことです。
この旗竿地は、相続税上どのように評価するのでしょうか?


 

1. 旗竿地の相続税上の評価は低い

旗竿地は、一般の整形地と比べると用途が限定されるため、相続税評価額は下がります。
相続税上は、以下の補正を行います。
 

奥行価額補正率・間口狭小補正率 間口が狭く、奥行価額が長いため、奥行価額補正率、間口狭小補正率の適用により評価が下がる。
不整形率補正 整形地ではないため不整形地補正率の適用により評価が下がる。


 

2. 旗竿地の評価

 
191010souzoku1_1
 
旗竿地は、以下の方法で評価を行います。
 

① 「想定整形地」の評価額から「かげ地」の評価額の差引計算を行う。
② 上記①差引後の評価額につき、不整形地補正等を行う。

 
「想定整形地」とは、評価対象地の全域を囲む、最小面積の長方形(赤線部分)のことをいい、「かげ地」とは、想定整形地の中で評価対象地以外の部分(黒塗部分)を指します。


 

3. 具体例

 
(普通住宅地区)
191010souzoku1_2


 

(1) 差引計算

想定整形地、かげ地それぞれの評価額は、奥行価格補正率を考慮して算定します。
 

① 想定整形地の評価(赤線部分)
200千円(正面路線価) × 0.95(奥行価格補正率) × 720㎡ = 136,800千円
② かげ地の評価(黒塗部分)
200千円(正面路線価) × 1.00(奥行価格補正率) × 300㎡ =   60,000千円
③ 旗竿地の評価(青塗部分)
(136,800千円 – 60,000千円) ÷ 420㎡ = 182.8千円

 
(ご参考・普通住宅地区)

奥行30mの奥行価格補正率 0.95
奥行15mの奥行価格補正率 1.00

 
上記差引計算の結果、旗竿地の1㎡あたりの評価額は、182.8千円/㎡となり、想定整形地の1㎡あたりの評価額190千円/㎡(200千円 × 0.95)よりも、評価額は低くなりました。


 

(2) 不整形地補正(不整形地補正率表 注3参照)

上記(1)の差引計算後、不整形地補正等を行います。
不整形地補正は、以下のどちらか小さい方の選択が可能です。(0.60が限度)
 

① 不整形地補正率 × 間口狭小補正率(小数点第2位未満切捨)
② 間口狭小補正率 × 奥行長大補正率(小数点第2位未満切捨)

 

① 0.85(不整形地補正率) × 0.94(間口狭小補正率) = 0.799
② 0.94(間口狭小補正率) × 0.90(奥行長大補正率) = 0.846
小さい方の小数点第2位未満を切捨、
① 0.79(小数点2位未満切捨)

182.8千円 × 0.79 = 144.4千円/㎡

 
(ご参考・普通住宅地区)

不整形地補正率 0.85(普通住宅地区A 300㎡ ÷ 720㎡ = 0.4166)
間口狭小補正率 0.94(4m以上6m未満)
奥行長大補正率 0.90(30m ÷ 4m = 7.5倍)


 

(3) 最終的な旗竿地の評価

144.4千円/㎡ × 420㎡ = 60,648千円


 

4. かげ地部分の「奥行価格補正率」が1.00未満の場合

例外的に、かげ地の奥行が短いため、「かげ地の奥行価額補正率」が1.00未満」の場合は、かげ地部分の奥行価格補正率を1.00で計算できる規定があります。
単純な差引計算では「不合理な結果になるため」ですね。以下の例題で解説します。
 
(普通住宅地区)
191010souzoku1_3


 

(1) かげ地の奥行価格補正率の把握

かげ地奥行5m(奥行価格補正率0.92) < 1.00未満のため、かげ地部分の奥行価格補正率は0.92ではなく、1.00で計算を行う。


 

(2) 差引計算

想定整形地、かげ地それぞれの評価額は、奥行価格補正率を考慮して算定します。
 

① 想定整形地の評価(赤線部分)
200千円(正面路線価) × 0.95(奥行価格補正率) × 720㎡ = 136,800千円
② かげ地の評価(黒塗部分)
200千円(正面路線価) × 1.00(補正後奥行価格補正率) × 100㎡ = 20,000千円
③ 旗竿地の評価(青塗部分)
(136,800千円 – 20,000千円) ÷ 620㎡ = 188.3千円

 
仮に、かげ地の本来の奥行価額補正率0.92を用いて差引計算すると、評価額は190.9千円/㎡となり、通常の路線価計算190千円/㎡(200千円 × 0.95)よりも評価が高くなるという不合理が生じます。
そこで、こういった場合は、上記のように1.00(補正後奥行価格補正率)で計算します。

 
(ご参考・普通住宅地区)

奥行30mの奥行価格補正率 0.95
奥行5mの奥行価格補正率 0.92


 

(3) 不整形地補正(不整形地補正率表 注3参照)

上記(2)の差引計算後、不整形地補正等を行います。
上記「3.具体例」と同様、どちらか小さい方の選択が可能です。(0.60が限度)
 

① 不整形地補正率 × 間口狭小補正率(小数点第2位未満切捨)
② 間口狭小補正率 × 奥行長大補正率(小数点第2位未満切捨)

 

① 0.99(不整形地補正率) × 0.94(間口狭小補正率) = 0.9306
② 0.94(間口狭小補正率) × 0.90(奥行長大補正率) = 0.846
小さい方の小数点第2位未満を切捨、
② 0.84(小数点2位未満切捨)

188.3千円 × 0.84 = 158.1千円/㎡

 
(ご参考・普通住宅地区)

不整形地補正率 0.99(普通住宅地区B 100㎡ ÷ 720㎡ = 0.1388)
間口狭小補正率 0.94(4m以上6m未満)
奥行長大補正率 0.90(30m ÷ 4m = 7.5倍)


 

(4) 最終的な旗竿地の評価

158.1千円 × 620㎡ = 98,022千円


 

5. 想定整形地の奥行価額が短い場合

ややこしいのですが・・上記4の例外の規定があります。
例外の例外で、ちょっとややこしいですが。
 
「想定整形地」の奥行が短い結果、「想定整形地」の奥行価格補正率が1.00未満となる場合は、かげ地部分の奥行価格補正率は、たとえ1.00未満であっても1.00に調整せず、想定整形地と同一の奥行価格補正率を用いて計算します。
 
(普通住宅地区)
191010souzoku1_4
 
(ご参考・普通住宅地区)

奥行8mの奥行価格補正率 0.97(普通住宅地区) < 1⇒ 1.00で計算する
奥行5mの奥行価格補正率 0.92(普通住宅地区)


 

6. 参照URL

(不整形地の評価)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/16.htm
 
(奥行価格補正率等)
http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm

 

Q95 個人年金・退職年金は相続税の対象?

DR172

 

 
「個人年金」や「退職年金」の受給期間中に死亡した場合、遺族がその「受給権」を承継し、残りの期間の「年金」を受給できます。また、「死亡保険金」や「満期保険金」も、一時金ではなく「年金形式」でもらう場合は、同様に「受給権」を承継します。
 
この「年金受給権」は、相続税法上は「定期金に関する権利」と呼ばれます。
 
では・・この「年金受給権」には、相続税がかかるのでしょうか?
(今回の「個人年金」は、保険料負担者 = 被保険者 = 年金受取人を前提とします。)

 

1. 個人年金・退職年金って?

(1) 個人年金

個人年金とは、公的年金(国民年金や厚生年金等)を補填する目的で、生命保険会社と契約する「私的年金」の一種です。

     

  • 生死に関わらず一定期間「年金」が受け取れる「確定年金」
  • 生存している限り一生涯「年金」が受けとれる「終身年金」
  • 生存している限り一定期間「年金」が受け取れる「有期年金」
  •  

など、様々な種類があります。


 

(2) 退職年金

退職年金とは、「企業年金制度」のある勤務先に勤めていた被保険者が死亡した場合、退職金の一部を「年金」として受け取るものです。


 

2. 受給者が死亡した場合の取扱い

個人年金・退職年金とも、受給者が死亡した場合、遺族は「年金受給権」を承継し、残りの期間の「年金」を受け取ることができます。

 

3. 相続税上の取り扱い(個人年金・退職年金共通)

(1) 年金受給権は「みなし相続財産」

「年金受給権」は、被相続人から取得するわけではなく、「保険会社等」から取得するものですので、本来は相続財産を構成せず、相続税の対象とならないはずです。
しかし、「将来年金をもらえる権利」(= 財産価値)を取得する経済的実態に着目し、相続税上は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。(相続税法第3条1項5号、6号)


 

(2) 非課税限度額の対象にはならない

「年金受給権」は、同じ「みなし相続財産」である「生命保険金の死亡一時金」などとは異なり、死亡保険金非課税限度額(500万円 × 法定相続人の数)の対象にはなりません。


 

(3) 遺産分割の対象にはならない

「みなし相続財産」ですので、「生命保険の死亡一時金」などと同様、保険金受取人の固有財産となり、遺産分割の対象にはなりません。

 

4. 所得税上の取り扱い

(1) 所得税上の取り扱いは異なる

相続後に遺族が受け取る「個人年金」「退職年金」にかかる所得税上の取扱いは、それぞれ異なります。
 

個人年金 雑所得として所得税が課税
退職年金 非課税(所得税基本通達9-2)


 

(2) 個人年金は「所得税課税対象」が調整される

相続等により取得した「個人年金等の年金受給権」は、取得時に「みなし相続財産」として相続税が課税され、遺族が実際年金受取時に「所得税」が課税されますので、二重課税となっています。
そこで、二重課税排除の観点より、実際年金受取時の所得税は、「相続税課税対象部分」を差し引いて算定します。
(2010年7月6日 最高裁判決)


 

5. 年金受給権の評価方法(個人年金・退職年金共通)

「年金受給権」の評価方法は、大きく、以下の2つに分かれます。
(ただし、実務上は、生命保険会社等が計算してくれます。)


 

(1) 有期定期金

年金支給期間が決まっているタイプのものです。(確定年金など)
評価額は、下記①~③のうち、最も高い金額となります。
 

① 解約返戻金
② 一時金の金額(定期金の代わりに受け取れる場合の金額)
③ 年あたりの平均給付額 × 残存期間に応ずる予定利率による「複利年金現価率」


 

(2) 終身定期金

亡くなるまでの間、終身で年金を受け取れるタイプのものです。
評価額は、下記①~③のうち、最も高い金額となります。
 

① 解約返戻金
② 一時金の金額(定期金の代わりに受け取れる場合の金額)
③ 1年あたりの平均給付額 × 平均余命に応ずる予定利率による「福利年金現価率」

 
なお、「終身定期金」というのは、個人年金の種類の1つである「終身年金」のことではありません。
「終身年金」は被相続人が生きている限り受給できる年金ですので、被相続人の死亡により受給は終了し、相続税課税関係は生じません(保険契約者 = 被保険者 = 年金受取人の場合)。
 
上記のほか、「無期定期金」(永久に定期金を受けることができるもの)もありますが、実務上は、ほとんどありませんので、今回は省略します。


 

6. 参照URL

(No.1620 相続等で取得した年金受給権の所得税調整)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1620.htm

 

Q94 相続税の対象となる年金の範囲

DR170

 

 
年金にはさまざまな種類のものがあります。
国民年金や厚生年金、遺族年金、個人年金、退職年金などですね。
これらの年金は、相続税の対象になるのでしょうか?


 

1. 公的年金(の未支給年金)

公的年金の未支給年金は「遺族の生活保障」の観点から相続税は非課税となります。
ただし、遺族が実際年金受取時は、「一時所得」として所得税が課税されます。
未支給年金については、Q93で詳しく記載しています。ご参照ください。


 

2. 遺族年金(国民年金・厚生年金等)

遺族年金は「国民年金」や「厚生年金」の受給者が死亡した場合、受給要件を満たす遺族が受け取ることができる年金です。
遺族年金も、「遺族の生活保障」の観点から相続税は非課税となります。
遺族年金は、
「公的年金の未支給年金」と異なり、所得税も課税されません。
 
非課税対象の「遺族年金」として認められるのは、国民年金法、厚生年金保険法、恩給法、旧船員保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、旧農林漁業団体職員共済組合法となっています。


 

3. 寡婦年金

寡婦年金は、国民年金1号被保険者(自営業者)で、10年以上保険料を納めた夫が亡くなった際に受け取ることができる年金です。
10年以上連れ添った奥様に対してのみ支払われる年金です。
この寡婦年金も、「遺族年金」と同様の趣旨で、相続税及び所得税上も非課税となります。
なお、一定要件を満たす寡婦は、「寡婦控除」という所得税上の恩典もあります。


 

4. 退職年金(企業年金)・個人年金

「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。
この論点については、次回、詳しく解説いたします。


 

5. 参照URL

(相続税の課税対象になる年金受給権)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4123.htm

 

Q93 高額医療費・未支給年金・還付金に相続税はかかる?

DR169
 

 
お亡くなりになられた後に、「被相続人が受け取るべき」お金が入金される場合があります。
例えば「高額医療費の返戻金」や「未支給年金」、「保険料還付金」などです。
これらは・・相続税の課税対象となるのでしょうか?
(相続後に、被相続人が「支払うべき取引」は「債務控除」をご参照ください)


 

1. 保険関係

 

名称 内容 相続財産か? 理由
高額医療費 生前に支払済の医療費のうち、「自己負担限度額」を超えた分が返戻されるもの 相続財産
  • 高額医療費は、過去の支払額の返金に過ぎないため
  • 所得税上は非課税(健康保険法第62条)
過誤納還付金
(国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料等)
生前に支払済の保険料で、「納めすぎ」の金額が還付されるもの 相続財産
  • 同上(過去の支払額の返金に過ぎない)(※)
葬祭費・埋葬費等給付金
(国民健康保険や厚生年金等)
葬儀を行った遺族等に「葬祭費等」として支給されるもの 該当しない
  • 本人ではなく、葬儀や埋葬を行った人が受けとるべき給付のため
  • 所得税上は非課税(健康保険法第62条他)

(※)逆に、納付の場合(例 未納国民健康保険料等)は「債務控除」の対象。


 

2. 年金関係

例えば、国民年金の場合は、お亡くなりになられた月(相続発生月)分まで受給する権利があります。
また、国民年金は、偶数月に「前月分と前々月分」が支給されます。
例えば、7月死亡の場合、6・7月分の支給は8月 ⇒ 相続開始時点では「未支給の年金」が存在します。

 
(例 7月5日に死亡した場合)

受給可能な年金 支給時期 未支給年金
7月分まで受給可能 8月15日(6・7月分) 6・7月分

(※)6月15日支給分(4・5月分)は、生前に受取済のため、「未支給年金」の取扱いとはなりません。

 
なお、「未支給年金」とは、「相続発生時点で受給していない年金」のことを指しますので、「受給権」の有無ではなく、「生前に、実際に受取ができていない年金」を意味します。
(「個人年金」受給中の相続で、遺族が相続する「年金受給権」は別の論点になります。この「年金受給権」は相続財産に含まれます。)

 
「未支給年金」や「その他の一時金等」の相続税課税関係は、以下の通りです。
 

名称 内容 相続財産か? 理由
未支給年金 死亡した者に支給すべき公的年金給付で、生前に支給されていない年金 該当しない
  • 未支給年金は「遺族固有の権利」として保障されているため(最高裁判決 平成7年11月7日)
  • 所得税上は遺族の「一時所得」として課税対象(※)
死亡一時金
(国民年金)
遺族一時金
(国民年金基金)
家族が死亡したときに支給される一時金 該当しない
  • 相続人が受け取るべき給付のため(国民年金法第133条、国民年金法第25条)
  • 所得税上は遺族の「一時所得」として課税対象

(※)死亡時までに「実際支給済の年金」は、被相続人の「準確定申告」(雑所得)で申告し、「死亡時までの未支給年金」は、相続人の「確定申告」(一時所得)として申告します。
 
未支給年金の範囲・・国民年金法、厚生年金保険法、恩給法、旧船員保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、旧農林漁業団体職員共済組合法
 

 

3. 税金関係

 

名称 内容 相続財産か? 理由
所得税等の還付金 生前に支払済の所得税等で、「納めすぎ」の金額が還付されるもの 相続財産
  • 生存中の潜在的な請求権が、死亡により顕在化したため(※)
還付加算金
(確定申告)
確定申告書提出後に「還付される税金」に対応する利息的なもの 相続財産
  • 暦年終了時に、被相続人に「還付請求権」が潜在的に存在しているため
還付加算金
(準確定申告)
準確定申告提出後に「還付される税金」に対応する利息的なもの 該当しない
  • 準確定申告の場合は、相続人が申告することで「還付加算金請求権」を原始的に取得するもののため
  • 所得税上は遺族の雑所得として課税対象

(※)逆に、納付の場合は「債務控除」の対象。


 

4. 勤務先等

 

名称 内容 相続財産か? 理由
弔慰金・花輪・葬祭料 亡くなった人の功労や家族へのお見舞として支給されるもの 該当しない
  • 名目は弔慰金であっても、実質上「退職手当金等」に該当するものは相続税の課税対象
  • 所得税は非課税(所施令30条)
療養補助金・入院見舞金 被相続人に対し生前の療養や入院見舞金として支給されるもの 相続財産
  • 生前に本人が受け取るべき給付のため


 

5. 役所関係

 

名称 内容 相続財産か? 理由
重度心身障害者医療費助成金 障害者本人と家族の負担を軽減するため、医療費の一部を県や市で助成するもの 相続財産
  • 生前に本人が受け取るべき給付のため
  • 所得税上は医療費控除のマイナス


 

6. 参照URL

(未支給国民年金)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/02/09.htm
 

(確定申告書提出後に死亡した被相続人に係る還付加算金の課税関係)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/02/04.htm
 

(被相続人の準確定申告に係る還付金等)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/02/01.htm
 

(弔慰金)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4120.htm

 

Q84 共有名義の不動産相続と「小規模宅地等の特例」の関係5~土地と建物の共有割合が異なる場合~

DR158
 

 

共有名義の不動産を相続した場合、相続税の関係は「複雑」になります。
今回は、土地と建物、それぞれの共有割合が異なる場合の、土地の評価及び小規模宅地等の特例の関係をまとめます。

 

1. 土地と建物の共有割合が「同じ」場合

最初に、土地と建物の共有割合が「同じ」場合を例題で解説します。
 

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった(父母は生計一親族)。
  • 生前、土地・建物とも父と母の共有名義(50%ずつ)で登記されている。
  • 土地建物は、「自宅」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  •  
    (イメージ図)
    190303Q84_1
     

  • 父所有土地共有持ち分は、「自宅」として利用していますので、「自用地評価」となります。
  •  

  • 「小規模宅地等の特例」との関係は、父の土地共有割合が全体の50%ですので、
    父共有持ち分 50㎡( 100㎡ × 1/2 )だけが小規模宅地等の特例の対象となります。
    (母土地共有持ち分 50%は、もともと父所有ではないので、もちろん対象外です)
  •  

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父所有土地 50㎡ 自用地 特定居住用宅地等 本人利用
    母所有土地 50㎡

     

     

    2. 土地と建物の共有割合が「異なる」場合

    続いて、土地と建物の共有割合が「異なる」場合は、どうなるでしょうか?
    被相続人の「土地建物」の共有割合が、それぞれどういう状況か?によって、パターンが2つに分かれます。

     

    (1) 被相続人共有土地㎡数 > 共有建物㎡数 の場合

     

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった(父母は生計一親族)。
  • 生前、土地は、父70%、母30%の共有名義で登記されている。
  • 生前、建物は、父50%、母50%の共有名義で登記されている。
  • 土地建物は「自宅」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  •  
    (イメージ図)
    190303Q84_2
     
    まず、父と母は、それぞれ自分の土地の上に、自分の建物を建築しているものと考えます。
    上記では、父所有建物は、すべて自分所有の土地上に建築されています。
    一方、母所有建物のうち、30%は自分所有の土地上、残りの20%は父所有の土地上に建築されていると考えます。
    以下、上記「イメージ図」に示した「①~③の土地」ごとにまとめます。
     
    ① 「父所有建物」下の土地(50㎡)
    父所有建物下の土地は、すべて父所有の土地となります。
    「自宅」利用していますので、「自用地評価」、「小規模宅地等の特例」の対象となります。
     
    ② 「母所有建物」下の土地の内、父持分(20㎡)
    母所有建物下の土地のうち、20㎡は父所有の土地です。(母は所有権を有していない)
    当該部分は、母が父から土地を無償で借りて(=使用貸借)、自分の建物を建築していると考えます。
    使用貸借の場合、「借地権はゼロ」で評価しますので、この20㎡の部分については「自用地」評価となります。
    ・この「自用地部分」は「被相続人と生計一である母の居住用」ですので「特定居住用宅地等の特例」の対象となります。

     
    ③ 「母所有建物」下の土地のうち、母持分(30㎡)
    この部分は、母が自分の土地上に自分の建物を建築していると考えます。
    ただし、当該部分は母所有ですので、そもそも今回の相続の対象になりません。
     
    ④ 結論・まとめ
    結論、被相続人共有土地㎡数>共有建物㎡数の場合は、
    被相続人共有土地(70㎡)すべてが「居住用小規模宅地等の特例」の対象となります。(同一生計親族の場合)

     

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父所有建物下の土地 50㎡ 自用地 特定居住用宅地等 本人利用
    母所有建物下の土地 父土地部分 20㎡ 自用地 特定居住用宅地等 同一生計親族利用
    母土地部分 30㎡ 相続対象外

     
    なお、土地を使用貸借している場合、当該土地は「自用地評価」を行いますが、
    父と母の「生計が別」の場合は、たとえ「自用地評価」でも小規模宅地等の特例の対象となりません。

     

    (2) 被相続人共有土地㎡数 < 共有建物㎡数 の場合

     

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった(父母は生計一親族)。
  • 生前、土地は、父30%、母70%の共有名義で登記されている。
  • 生前、建物は、父50%、母50%の共有名義で登記されている。
  • 土地建物は「自宅」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  •  
    (イメージ図)
    190303Q84_3
     
    上記(1)と同様に、父と母は、それぞれ自分の土地の上に、自分の建物を建築しているものと考えます。
    父所有建物の内、30%は父自身所有の土地上、残りの20%は母所有の土地上に建築されていることになります。
    一方、母所有の建物は、すべて母所有の土地上に建築されていると考えます。
    以下、上記「イメージ図」に示した「①~③の土地」ごとにまとめます。
     
    ① 「父所有建物」下の土地の内、父持分(30㎡)
    父所有建物下の土地の内、30㎡は父所有の土地となります。
    「自宅」利用していますので、「自用地評価」、「小規模宅地等の特例」の対象となります。
     
    ② 「父所有建物」下の土地の内、母持分(20㎡)
    父所有建物下の土地の内、20㎡は母所有の土地です。(父は所有権を有していない)
    当該部分は、父は母から土地を無償で借りる(使用貸借)のが一般的です。
    ただし、当該部分は母所有ですので、そもそも今回の相続の対象になりません。
     
    ③ 「母所有建物」下の土地(50㎡)
    この部分は、母が自分の土地上に自分の建物を建築していると考えます。
    ただし、当該部分は母所有ですので、そもそも今回の相続の対象になりません。
     
    ④ 結論・まとめ
    結論、被相続人共有土地㎡数<共有建物㎡数の場合も、
    被相続人共有土地(30㎡)すべてが「居住用小規模宅地等の特例」の対象となります。(同一生計親族の場合)

     

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父建物下の土地 父土地部分 30㎡ 自用地 特定居住用宅地等 本人利用
    母土地部分 20㎡ 相続対象外
    母建物下の土地 50㎡ 相続対象外

     

    Q83 共有名義の不動産相続と「小規模宅地等の特例」の関係4~生計が別の場合~

    DR157
     

     

    前回まで(Q80~Q82)、自宅及び貸家として利用している場合の「共有名義不動産の相続と、小規模宅地等の特例の関係」をお伝えしました。
    が・・あくまで共有名義人同士が「同一生計」の場合を前提にお伝えしました。
     
    今回は、不動産が共有名義で、かつ「生計が別」の場合、小規模宅地等の特例の関係はどうなるのか?を考えてみます。
    「自宅」として利用する場合を例に解説します。
     
    土地、建物どちらが共有なのか?によって、パターンが2つに分かれます。

     

    1. 土地が共有の場合

    まず、「土地」が共有の場合です。
     

  • 母が亡くなり、すべて子が相続することになった(母子は生計別親族)。
  • 生前、建物は母が100%所有。土地は母と子の共有名義(50%ずつ)で登記されている。
  • 土地建物は、「自宅」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  •  
    (イメージ図)
    Q83_1
     

  • 母所有土地共有持ち分は、「自宅」として利用していますので、「自用地評価」となります。
  •  

  • 「小規模宅地等の特例」との関係は、母の土地共有割合は、全体の50%ですので、
    母共有持ち分 50㎡( 100㎡ × 1/2 )だけが、小規模宅地等の特例の対象となります。
    (子土地共有持ち分 50%は、もともと母所有ではないので、もちろん対象外です)
  •  

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    母所有土地 50㎡ 自用地 特定居住用宅地等 本人利用
    子所有土地 50㎡

     

     

    2. 建物が共有の場合

    次に、「建物」が共有の場合です。
     

  • 母が亡くなり、すべて子が相続することになった(母子は生計別親族)。
  • 生前、土地は母が100%所有。建物は母と子の共有名義(50%ずつ)で登記されている。
  • 土地建物は「自宅」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  •  
    (イメージ図)
    Q83_2

     

    (1) 「母建物共有持ち分」に対応する土地50㎡(すべて所有は母)

    「自宅」として利用していますので、「自用地評価」となり、「特定居住用宅地等の特例」の対象となります。

     

    (2) 「子建物共有持ち分」に対応する土地50㎡(すべて所有は母)

     

  • この部分の土地については、子は所有権を有していません。
    こういった事例の場合、当該部分は、母から土地を無償で借りる(=使用貸借)ことが一般的です。
     
    使用貸借の場合、「借地権はゼロ」で評価しますので、
    結論、子持ち分建物に対応する土地(所有権は母)は、「自用地」評価となります。
  •  

  • また、この「自用地部分」は、「被相続人と生計別である子の居住用」ですので、
    「特定居住用宅地等の特例」の対象にもなりません。
  •  
    結論、建物が共有名義で、「生計別親族」の場合は、母所有土地のうち、
    母建物持分に対応する土地 50㎡のみが「小規模宅地等の特例」の対象
    となります。
     

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    母建物共有持ち分対応土地 50㎡ 自用地 特定居住用宅地等 本人利用
    子建物共有持ち分対応土地 50㎡ 自用地 生計別親族利用

     
    なお、今回は、自宅利用の場合で記載しましたが、貸家利用の場合でも、考え方は自宅と同様です。
    小規模宅地等の特例との関係も、同様に判断します。

     

    Q82 共有名義の不動産相続と「小規模宅地等の特例」の関係3~自宅と貸家がある場合~

    DR156
     

     

    前回に引き続き、「共有名義の不動産相続」と「小規模宅地等の特例」の関係です。
    今回は、共有名義の不動産が、「自宅」「貸家」の両方で利用されている場合を解説します。
    (自宅のみ、貸家のみの利用の場合は、Q80Q81をご参照ください)

     

    1. 共有名義でない場合

    共有の論点に入る前に、前提として、共有名義でない不動産を、「自宅」と「貸家」で利用されている場合の「小規模宅地等の特例」との関係を考えてみます。
     

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった(父母は同一生計親族)。
  • 生前、土地と建物は、どちらも父が100%所有(=共有関係はなし)。
  • 1Fは自宅、2Fは貸家として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡。1F、2Fの面積は全く同じとする。
  •  
    (イメージ図)
    Q82_1
     

  • 土地の評価区分は、1F 自宅部分は「自用地評価」、2F 貸家部分は「貸家建付地評価」となります。
  •  

  • 「小規模宅地等の特例」との関係は、1F 自宅部分に対応する土地 50㎡( 100㎡ × 1/2 )は特定居住用宅地等の特例
    2F 貸家部分に対応する土地 50㎡( 100㎡ × 1/2 )は貸付事業用宅地等の特例の対象となります。
  •  

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父所有土地 1F 50㎡ 自用地 特定居住用宅地等 本人利用
    2F 50㎡ 貸家建付地 貸付事業用宅地等 本人利用

     

     

    2. 土地が共有の場合

     

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった(父母は同一生計親族)。
  • 生前、建物は父が100%所有。土地は父と母の共有名義(50%ずつ)で登記されている。
  • 1Fは自宅、2Fは貸家として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡。1F、2Fの面積は全く同じとする。
  •  
    (イメージ図)
    Q82_2

     

    (1) 土地の評価区分

     
    1F 自宅部分は「自用地評価」、2F 貸家部分は「貸家建付地評価」となります。


     

    (2) 小規模宅地等の特例の対象

     
    「小規模宅地等の特例」との関係では、父の土地共有割合は、全体の50%ですので、
    父共有持ち分 50㎡( 100㎡ × 1/2 )だけが、小規模宅地等の特例の対象となります。
    (母土地共有持ち分50%は、もともと父所有でないので、もちろん対象外です)

     

    (3) 小規模宅地等の特例の種類・対象面積

     

  • 1F部分は「居住用」ですので、「特定居住用宅地等の特例」の対象となります。
  • 2F部分は「貸付用」ですので、「貸付事業用宅地等の特例」の対象となります。
  •  

    ① 特定居住用宅地等の特例の対象面積
     
    50㎡ × 50% = 25㎡
     
    ② 貸付事業用宅地等の特例の対象面積
     
    50㎡ × 50% = 25㎡

     

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父所有土地 1F 25㎡ 自用地 特定居住用宅地等 本人利用
    2F 25㎡ 貸家建付地 貸付事業用宅地等 本人利用
    母所有土地 1F 25㎡
    2F 25㎡

     

     

    3. 建物が共有の場合

     

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった(父母は同一生計親族)。
  • 生前、土地は父が100%所有。建物は父と母の共有名義(50%ずつ)で登記されている。
  • 1Fは自宅、2Fは貸家として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡。1F、2Fの面積は全く同じとする。
  •  
    (イメージ図)
    Q82_3

     

    (1) 土地の評価区分

     
    ① 父持ち分建物に対応する土地 50㎡(すべて所有は父)
     

  • 1F 自宅部分25㎡・・・自用地評価となります。
  • 2F 貸家部分25㎡・・・貸家建付地評価となります。
  •  
    ② 母持ち分建物に対応する土地部分 50㎡(すべて所有は父)
    この部分の土地については、母は所有権を有していません。
    この場合、当該部分は父から土地を無償で借りる(=使用貸借)ことが一般的です。
    使用貸借の場合、「借地権はゼロ」で評価しますので、
    結論、母持分建物に対応する土地(所有権は父)は「自用地評価」となります。
     

  • 1F 自宅部分 25㎡・・・自用地評価となります。
  • 2F 貸家部分 25㎡・・・自用地評価となります。

  •  

    (2) 小規模宅地等の特例の対象

     
    ① 父持ち分建物に対応する土地 50㎡(すべて所有は父)
     
    「自宅」及び「貸家」として利用していますので、被相続人本人の「居住用」及び「貸付事業用宅地等の特例」の適用が認められます。
     
    ② 母持ち分建物に対応する土地部分 50㎡(すべて所有は父)
     
    「自用地」評価となりますが、「被相続人と生計一である母の居住用及び貸付事業用」ですので、
    「居住用」及び「貸付事業用宅地等の特例」の適用が認められます。
     
    結論、父が所有していた土地 100㎡すべてが小規模宅地の特例になります。

     

    (3) 小規模宅地等の特例の種類・対象面積

     

  • 1F部分は「居住用」ですので、「特定居住用宅地等の特例」の対象となります。
  • 2F部分は「貸付用」ですので、「貸付事業用宅地等の特例」の対象となります。
  •  

    ① 特定居住用宅地等の特例の対象面積
     
    100㎡ × 50% = 50㎡
     
    ② 貸付事業用宅地等の特例の対象面積
     
    100㎡ × 50% = 50㎡

     
    結論、たとえ、建物が共有名義であっても、「同一生計親族」の場合は、
    父所有土地100㎡すべてが「居住用」及び「貸付事業用」小規模宅地等の特例の対象
    となります。
     

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父建物共有持ち分対応土地 1F 25㎡ 自用地 特定居住用宅地等 本人利用
    2F 25㎡ 貸家建付地 貸付事業用宅地等 本人利用
    母建物共有持ち分対応土地 1F 25㎡ 自用地 特定居住用宅地等 同一生計親族利用
    2F 25㎡ 自用地 貸付事業用宅地等 同一生計親族利用

     

    Q81 共有名義の不動産相続と「小規模宅地等の特例」の関係2~貸家の場合~

    DR155
     

     

    前回、自宅利用の「共有名義不動産の相続と、小規模宅地等の特例の関係」をお伝えしましたが、
    今回は第2弾として、「貸家」として利用している場合です。
     
    貸家の場合も、自宅同様、土地、建物どちらが共有なのか?によって、パターンが2つに分かれます。

     

    1. 土地が共有の場合

    まず、「土地」が共有の場合です。事例をもとに解説します。
     

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった(父母は同一生計親族)。
  • 生前、建物は父が100%所有。土地は父と母の共有名義(50%ずつ)で登記されている。
  • 土地建物は、「賃貸事業」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  •  
    (イメージ図)
    Q81-1
     

  • 父所有土地共有持ち分は、「賃家」として利用していますので、「貸屋建付地評価」となります。
  •  

  • 「小規模宅地等の特例」との関係は、父の土地共有割合は、全体の50%ですので、
    父共有持ち分50㎡( 100㎡ × 1/2 )だけが、小規模宅地等の特例の対象となります。
     
    (母土地共有持ち分50%は、もともと父所有でないので、もちろん対象外です)
  •  

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父所有土地 50㎡ 貸家建付地 貸付事業用小規模宅地等 本人利用
    母所有土地 50㎡

     

    2. 建物が共有の場合

    次に、「建物」が共有の場合です。
     

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった(父母は同一生計親族)。
  • 生前、土地は父が100%所有。建物は父と母の共有名義(50%ずつ)で登記されている。
  • 土地建物は、「貸家事業」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  •  
    (イメージ図)
    Q81-2


     

    (1) 「父建物共有持ち分」に対応する土地50㎡(すべて所有は父)

    「貸家」として利用していますので、「貸家建付地」評価となり、「貸付事業用宅地等の特例」の対象となります。

     

    (2) 「母建物共有持ち分」に対応する土地50㎡(すべて所有は父)

     

  • この部分の土地については、母は所有権を有していません。
    こういった事例の場合、当該部分は、父から土地を無償で借りる(=使用貸借)ことが一般的です。
     
    使用貸借の場合、「借地権はゼロ」で評価しますので、
    結論、母持ち分建物に対応する土地(所有権は父)は、「自用地」評価となります。
  •  

  • ただし、この「自用地部分」は、「被相続人と生計一である母の貸付事業用」ですので、
    「貸付事業用宅地の特例」の対象となります。
  •  
    結論、たとえ建物が共有名義であっても、「同一生計親族」の場合は、父所有土地100㎡すべてが、
    「貸付事業用小規模宅地等の特例」の対象
    となります。
     

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父建物共有持ち分対応土地 50㎡ 貸家建付地 貸付事業用小規模宅地等 本人利用
    母建物共有持ち分対応土地 50㎡ 自用地 貸付事業用小規模宅地等 同一生計親族利用

     

    Q80 共有名義の不動産相続と「小規模宅地等の特例」の関係1~自宅の場合~

    DR154
     

     

    「共有名義の不動産」を相続した場合、相続税上の評価は、どう行われるのでしょうか?
    また、「共有名義の不動産」と「小規模宅地等の特例」の関係はどうなるのでしょうか?
     
    今回は第1弾として、共有名義不動産を「自宅として利用」する場合を記載します。
     
    土地、建物どちらが共有なのか?によって、パターンが2つに分かれます。

     

    1. 共有って何?

    共有とは、「二以上の者で、一つのものを共同で所有する」ことをいいます。
    不動産の場合、登記簿謄本の「所有者欄」に、二以上の者が記載されていれば、共有となります。
    (一人で所有している場合は、「単有」といいます)

     

    2. 土地が共有の場合

    まず、「土地」が共有の場合です。事例をもとに解説します。
     

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった(父母は同一生計親族)。
  • 生前、建物は父が100%所有。土地は父と母の共有名義(50%ずつ)で登記されている。
  • 土地建物は、「自宅」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  •  
    (イメージ図)
    Q80-1
     

  • 父所有土地共有持ち分は、「自宅」として利用していますので、「自用地評価」となります。
  •  

  • 「小規模宅地等の特例」との関係は、父の土地共有割合は、全体の50%ですので、
    父共有持ち分50㎡( 100㎡ × 1/2 )だけが、小規模宅地等の特例の対象となります。
     
    (母土地共有持ち分50%は、もともと父所有でないので、もちろん対象外です)
  •  

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父所有土地 50㎡ 自用地 特定居住用宅地等 本人利用
    母所有土地 50㎡

     

    3. 建物が共有の場合

    次に、「建物」が共有の場合です。
     

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった(父母は同一生計親族)。
  • 生前、土地は父が100%所有。建物は父と母の共有名義(50%ずつ)で登記されている。
  • 土地建物は、「自宅」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  •  
    (イメージ図)
    Q80-2


     

    (1) 「父建物共有持ち分」に対応する土地50㎡(すべて所有は父)

    「自宅」として利用していますので「自用地評価」となり、「居住用小規模宅地等の特例」の対象となります。

     

    (2) 「母建物共有持ち分」に対応する土地50㎡(すべて所有は父)

     

  • この部分の土地については、母は所有権を有していません。
    こういった事例の場合、当該部分は父から土地を無償で借りる(=使用貸借)ことが一般的です。
     
    使用貸借の場合、「借地権はゼロ」で評価しますので、
    結論、母持ち分建物に対応する土地(所有権は父)は、「自用地」評価となります。
  •  

  • ただし、この「自用地部分」は、「被相続人と生計一である母の居住用」ですので、
    「特定居住用宅地等の特例」の対象となります。
  •  
    結論、たとえ建物が共有名義であっても、「同一生計親族」の場合は、父所有土地100㎡すべてが、
    「居住用小規模宅地等の特例」の対象
    となります。
     
    なお、共有ではなく、「区分所有」の場合は、小規模宅地の特例の適用面積が異なる場合があります。
    詳しくはQ27をご参照ください。
     

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父建物共有持ち分対応土地 50㎡ 自用地 特定居住用宅地等 本人利用
    母建物共有持ち分対応土地 50㎡ 自用地 特定居住用宅地等 同一生計親族利用

     
    次回は、「貸家」の場合の「小規模宅地等との特例」の関係をまとめます。