相続の豆知識 財産評価




Q111 区分所有から共有名義への変更~二世帯住宅等の小規模宅地等の特例~

公開日:2020/09/01 最終更新日:2020/11/26

DR188

 

今回は、二世帯住宅等の場合の「小規模宅地等の特例」の論点です。
二世帯住宅の「小規模宅地等の特例」の適用は、原則として、建物名義が親子「共有名義」の場合は、土地全体につき適用できますが、「区分所有」の場合は「親の居住スペース」部分しか適用できません。

では、名義を「区分所有」から「共有名義」に変更すればどうなるでしょうか?
今回は、変更のメリットと、実務上の留意事項をまとめます。
なお、土地は親所有で、親と子は「同一生計」であることを前提とします。

1. 建物区分所有の具体例

  • 現在、一軒家の1Fには母、2Fには子供家族が居住している(父は既に死亡)。
  • 土地は、母名義。
  • 建物は、1F母名義、2F子供名義の「区分所有」登記(1F、2Fの面積は全く同じとする)。
  • 子は、無償で母から土地を借りているものとする。
  • 将来、母の相続時に、土地に関して「小規模宅地等の特例」は適用できるか?
    (その他の要件はすべて満たしているものとする。)

 

(1) イメージ図

Q111_1

(2) 結論~「区分所有」での特例の適用~

建物は、母と子「区分所有」となっているため、原則として同一生計とみなされません。
したがって、将来お子様が相続する場合、土地に関しては、母の居住スペースのみ小規模宅地等の特例の適用が可能です(=お子様の居住スペース部分は、特例適用できない)。

2. 共有名義への変更

では、上記具体例で、「建物」を「区分所有」から母と子の「共有名義」に変更すれば、土地全体について「小規模宅地等の特例」の適用はできるのでしょうか?

(1) イメージ図

Q111_2

(2) 結論~「共有名義」変更後の特例の適用~

建物を「共有名義」に変更した場合は、各人の所有区分がなくなるため(2人で全体を共有しているだけ)、「区分所有」の場合のように「同一生計とみなされない」ことはありません。
したがって、「同一生計」であるという要件を満たす限り、土地全体につき、小規模宅地等の特例の適用が可能です。

3. 留意事項

建物を共有名義に変更するだけではなく、母とお子様家族が「同一生計」である必要があります。
元々「区分所有」登記されている場合は、生計別の場合が多いかもしれません。
「同一生計」の合理的な説明ができる必要があります。
なお、建物共有名義で生計が別の場合は、「区分所有」の場合と同様、母の居住スペースのみ、小規模宅地等の特例が認められます。

4. 「区分所有登記」から「共有名義」への変更手続

実務上「区分所有」から「共有名義」への変更作業は、手間やハードルが高いです。
例えば、上記具体例では、一般的に、以下の手続が行われます。

 

① 1Fと2Fの母子各々の持分のうち、1/2ずつを等価交換し、所有権移転登記を行う(司法書士)

 

② その後、1件の建物にするため表題部の変更登記を行う(土地家屋調査士)

等価交換は、税務上、原則として売買とみなされ、「所得税」が課税される場合があります。
したがって、課税関係が生じないよう、「固定資産の交換の特例」適用の有無を検討する必要があります。
区分所有の各々の面積が異なる場合は、さらに複雑です。
また、不動産取得税、登録免許税や司法書士等の手数料などのコストも考慮しなければいけません。

5. 結論

結論的に、「共有名義への変更」は、手間やハードルが結構あるため、実務上は「小規模宅地等の特例」のメリットが大きい場合にのみ、実施する場合が多いのかもしれませんね。

6. 参照URL

(固定資産交換特例)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3511.htm

 

Q110 マンション敷地と併設駐車場の相続税評価

公開日:2020/08/16 最終更新日:2020/11/26

DR187

 

 
マンションの場合、居住部分の横に、駐車場が併設されている場合も多いですね。
こういった「駐車場併設」の土地の場合、「駐車場」の利用方法によって、相続税の評価額が変わってきます。
今回は、マンション「居住用敷地」と「駐車場敷地」の評価について、まとめます。


 

1. 土地の評価単位の原則

土地の評価単位は、原則として地目ごとに行います。
ただし、複数の土地でも、一体として利用される場合は、主たる地目からなるものとして、一体で評価します。


 

2. マンションの場合は?

居住用敷地は「宅地」、駐車場は「雑種地」となりますので、原則として別々に評価します。
ただし、土地の利用単位が一体の場合は、一体で評価します。
つまり、マンション併設駐車場の場合は、「駐車場の利用方法」により、土地の評価単位が異なってきます。


 

3. 入居者専用駐車場の場合

駐車場が、入居者専用の駐車場であれば、「居住用敷地」と「駐車場敷地」は一体で利用しているものとして、土地は1単位(居住用敷地+駐車場敷地)で評価します。
この場合、メインとなる「居住用敷地」部分は「貸家建付地」評価となりますので、駐車場敷地部分も「貸家建付地」として評価を行います。
 

(具体例)
  • マンションの居住用敷地400㎡、駐車場敷地100㎡。
  • 駐車場は、マンション入居者専用の駐車場とする。
  • 正面路線価は500千円/㎡、借地権割合70%とする。

 
入居者専用駐車場ですので、駐車場も居住者が一体利用しているものと判断し、全体の土地を「貸家建付地」として評価します。
 
Q110_1
 

① 居住用敷地評価額(貸家建付地評価)

500千円 × 400㎡ ×( 1 – 0.7 × 0.3 )= 158,000千円

② 駐車場敷地評価額(貸家建付地評価)

500千円 × 100㎡ ×( 1 – 0.7 × 0.3 )= 39,500千円

③ 土地評価額合計

① + ② = 197,500千円
 
他の事例としては、「コンビニ店舗」と「来客用駐車場」の場合も、一体利用されているものと判断され、土地は、1単位として評価します。


 

4. マンション入居者以外にも貸している駐車場の場合

入居者以外にも貸している駐車場の場合、「居住用敷地」と「駐車場敷地」は一体利用とは判定せず、それぞれ別々に評価(敷地=宅地 駐車場雑種地)します。
この場合、居住用敷地は「貸家建付地」、駐車場敷地は「自用地」評価となります。
なお、たとえ、駐車場のうち一部だけを外部に貸している場合でも、駐車場全体を一つの利用単位として、敷地とは別に評価します。

 

(具体例)
  • マンションの居住用敷地400㎡、駐車場敷地100㎡。
  • 駐車場は、マンション入居者以外に賃貸している部分があるものとする(※)
  • 正面路線価は500千円/㎡とする。

(※)賃貸は、業者を通じた「コインパーキング」ではなく、直接貸しているものとする。
 
駐車場は、入居者以外にも賃貸していますので、「居住用敷地」と「駐車場敷地」は別々に評価を行い、居住用敷地は「貸家建付地」、駐車場敷地は「自用地」評価となります。
 
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① 居住用土地評価額(貸家建付地評価)

500千円 × 400㎡ ×( 1 – 0.7 × 0.3 )= 158,000千円

② 駐車場土地評価額(自用地評価

500千円 × 100㎡ × 1 = 50,000千円

③ 土地評価額合計

① +② = 208,000千円


 

5. 結論

入居者専用駐車場の方が、駐車場部分の相続税評価額が低くなることがわかります。

6. YouTube


 


 

 

Q107 側方路線に他人が設定した「特定路線価」がある場合

公開日:2020/06/25 最終更新日:2020/11/26

DR184

 

 
今回は、「正面路線価」はあるものの、「側方路線価」がない場合の論点です。
こういったケースでも、路線価がない「側方路線」に、他の土地権者が「特定路線価」を設定している場合があります。
この場合、自分の土地の評価につき「側方路線影響加算等」は行うのでしょうか?


 

1. 側方の路線価が特定路線価の場合は、側方加算は行わない

結論的には、たとえ側方路線に「特定路線価」が設定されたとしても、正面路線価がある土地については、側方路線影響加算は行われません。
特定路線価は、あくまで路線価が設定されていない道路にのみ接している宅地を評価ための路線価であり、すでに路線価に接道している宅地には何ら影響を及ぼしません。
同様に、二方路線影響加算、三方又は四方路線影響加算も影響を及ぼしません。

 

2. 事例

 

下記のA土地の相続税評価はどのように行いますか?

  • 路線価なし通路Cは、隣接地Bの土地権者により、270千円/㎡の特定路線価が設定されている。
  • A土地には側方路線はないが、正面路線価300千円/㎡が存在している。
  • 路線価なし通路Cは、不特定多数通行の公道であり、B土地の専用道路ではない。

 
200625Q106_1


 

(1) 特定路線価の設定可否

 

A土地 側方路線には路線価は存在しないが、正面には路線価があるため、特定路線価の設定はできない。
B土地 路線価が設定されていない道路にのみに接しており、不特定多数が通行する通路のため、特定路線価の設定が可能。


 

(2) B土地の「特定路線価設定」の影響は受けない

A土地を評価するにあたって、たとえ、B土地権者が設定した特定路線価が存在していたとしても、正面路線300千円のみで評価します(側方路線影響加算は行わない)
特定路線価は、あくまで路線価が設定されていない道路にのみ接している宅地を評価ためのものであり(=B土地を評価するためのみに利用)、宅地Aのように既に路線価に接道している宅地の評価には、何ら影響を及ぼしません。
 

(評価対象地Aの相続税評価額)

300千円 × 1.00* × 300㎡ = 90,000千円
* 奥行15mに対する奥行価格補正率
(A土地評価上は、隣接地Bの特定路線価にかかる側方路線影響加算は行わない)


 

3. 注意事項

路線価がある道路に接道しているにもかかわらず、側方に路線価がないからといって、間違えて特定路線価の設定をしないよう注意しましょう。
税務署も、納税者からの申請があると、誤って「設定してしまう」場合があります。
誤って、ご自身の土地評価用に特定路線価を設定して、「側方路線影響加算」を行ってしまった場合は、税額がかなり高くなってしまうことになります。


 

4. 参照URL

(側方路線影響加算等の計算――特定路線価を設定した場合)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/26.htm

 

Q106「配偶者居住権」が消滅した場合に税金はかかる?

公開日:2020/06/23 最終更新日:2020/11/26

DR183

 

 
「配偶者居住権」は、配偶者が亡くなるまで(or 当初設定期間)まで存続し、途中で譲渡することも、当初の設定期間を変更することもできません。
配偶者が亡くなったときや、当初の設定期間が終了した時点では、権利が消滅し、課税関係は生じません
 
ただし、配偶者居住権は、「途中で消滅させる」ことが可能です。
例えば、合意解除や放棄などにより、途中で「消滅」させることは可能です。
また、配偶者が勝手に賃貸・増築等をした場合などは、一定期間後、所有者側から配偶者居住権を消滅させることも可能です(民1032条Ⅲ、Ⅳ)。

このように、配偶者居住権を途中で「消滅させた」場合には、「課税関係」が生じる場合があります。


 

1. 対価を得て消滅させたかどうか?

配偶者居住権を消滅させた場合、有償で消滅させたかどうか?により、課税関係が異なってきます。
 

取扱い 課税される人
有償で消滅 譲渡所得として課税。
現状は、「分離課税」の対象とはなっていないため、総合課税となる。
配偶者
無償で消滅
(低廉譲渡も含む)
原則として,配偶者から贈与があったものとみなされ,消滅直前の配偶者居住権等の価額に相当する利益の額に対し贈与税が課税(相基通9-13の2 )。 居住建物等所有者
(受贈者)

 

(通常の土地建物を譲渡した場合との比較)
通常の土地建物の譲渡 配偶者居住権の有償消滅
分離課税 総合課税

 
配偶者敷地利用権は、「小規模宅地等の特例」の適用が可能ですが、一般的な土地の譲渡の課税方式である「分離課税」ではなく「総合課税」になります。

 

2. 有償で消滅させた場合の譲渡所得算定方法

譲渡所得金額(総合課税)= 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)– 50万円


 

(1) 「短期」か「長期」かで課税対象が異なる

「短期譲渡所得」か「長期譲渡所得」か、で課税対象が異なります(所22、33、38)。
 

区分 課税対象
短期譲渡所得 全額
長期譲渡所得 2分の1が総合課税の対象


 

(2) 長短区分の判定方法

「長短」の判定は、結論的には「被相続人の取得時期」を引き継いで長短区分を行います。
 

短期譲渡所得 被相続人の取得時期より5年内の消滅
長期譲渡所得 被相続人の取得時期より5年超の消滅

 
原則的な長短区分は、「配偶者居住権等」の取得日以後5年内の譲渡かどうか?という条文構成となっていますが、一定の消滅の場合は、短期譲渡所得から除く規定があり(所施令82)、実質的には上記の判定となります。

 

3. 取得費の算定方法

(1) 配偶者居住権(建物)

居住建物等の取得費(※1)× 配偶者居住権等割合(※2)– 減価の額(※3)

(※1)建物取得日 ⇒ 配偶者居住権取得時までの「価値減少額」は減額する
(※2)配偶者居住権設定時における ①配偶者居住権等の価額 ÷ ②居住建物等の価額
(※3)配偶者居住権の取得費 ÷ 配偶者居住権の存続年数 × 取得時から消滅時までの年数


 

(2) 配偶者敷地利用権(土地)

居住土地の取得費(※)× 配偶者居住権等割合

(※)「配偶者敷地利用権の取得費 ÷ 配偶者居住権の存続年数 × 取得時から消滅時までの年数」は、取得費から控除する。


 

4. ご参考~配偶者居住権等消滅前に、対象建物等を譲渡した場合の取得費

配偶者居住権の目的となっている建物や土地等を、配偶者居住権等が消滅する前に譲渡した場合、「取得費」は以下で算定します。
 

居住建物等の取得費 – 配偶者居住権等の取得費

 

Q105 無道路地評価の方が特定路線価設定より節税?

公開日:2020/05/21 最終更新日:2020/11/26

DR182

 

 
以前お伝えしたとおり、「特定路線価」の設定は、義務ではありません。
今回は、「路線価のない道路のみに接している土地」の評価につき、①特定路線価を設定して評価した場合と②無道路地で評価した場合を比較してみます。


 

1. 事例

下記の対象地Bの相続税評価を行ってみましょう。

  • 路線価なし道路Cは、不特定多数の者の通行の用に供されている公道、建築基準法上の道路とします(対象地Bの専用道路ではない)。
  • 対象地Bは、路線価が設定されていない道路にのみ接しています。

 

(普通住宅地区)

200519Q105_1


 

2. 特定路線価の設定可否

  • 対象地Bは、路線価が設定されていない道路Cにのみに接している。
  • 道路Cは、不特定多数の通行用である。

 
要件を満たすため、特定路線価の設定が可能


 

3. 特定路線価を申請した場合

特定路線価を申請した場合、一般的には高めの路線価がつくことが多いです。
(「近隣土地」の路線価や「固定資産税評価額の倍率」を用いて算定する場合が多い。)
 
今回の例では、近隣路線価200千円を参考に、道路Cの特定路線価は、180千円/㎡と設定されたものとします。
 

(対象地Bの評価額)

 180千円 × 0.95(※)× 600㎡ = 102,600千円
(※)奥行30m奥行価格補正率(普通住宅地区)

 

4. 無道路地(旗竿地)として評価した場合

(1) 差引計算

① 想定整形地(赤線部分)

200千円(正面路線価)× 0.91(40m奥行価格補正率)× 1,400㎡ = 254,800千円

 

② かげ地部分(黒塗部分)
  • 隣接地A・・200千円(正面路線価)× 1.00(20m 奥行価格補正率)× 600㎡ = 120,000千円
  • 路線価なし通路C・・200千円(正面路線価)× 0.91(40m 奥行価格補正率)× 200㎡ = 36,400千円

 

③ 評価対象地Bの評価(青塗部分)不整形地補正前

(254,800千円 – 120,000千円 – 36,400千円)= 98,400千円
98,400千円 ÷ 600㎡ = 164千円/㎡

 

(ご参考・普通住宅地区)
奥行20mの奥行価格補正率 1.00
奥行40mの奥行価格補正率 0.91


 

(2) 不整形地補正(不整形地補正率表 注3参照)

上記(1)の差引計算後、不整形地補正等を行います。
不整形地補正は、以下のどちらか小さい方の選択が可能です(0.60が限度)。
 

① 不整形地補正率 × 間口狭小補正率 (小数点第2位未満切捨)
② 間口狭小補正率 × 奥行長大補正率 (小数点第2位未満切捨)

 
① 0.78(不整形地補正率)× 0.94(間口狭小補正率)= 0.7332
② 0.94(間口狭小補正率) × 0.90(奥行長大補正率) = 0.846
 
小さい方の小数点第2位未満を切捨、
① 0.73(小数点2位未満切捨)

⇒ 164千円 × 0.73 = 119.72千円/㎡
 

(ご参考・普通住宅地区)
不整形地補正率 0.78(普通住宅地区B(600㎡ + 200㎡)÷ 1,400㎡ = 0.5714)
間口狭小補正率 0.94(4m以上6m未満)
奥行長大補正率 0.90(40m ÷ 5m = 8倍)


 

(3) 最終的な無道路地(旗竿地)の評価

119.72千円/㎡ × 600㎡ = 71,832千円


 

5. 結論

対象地Bの相続税評価額は、それぞれ以下となります。
 

特定路線価を設定した場合 102,600千円
無道路地評価(旗竿地評価)した場合 71,832千円

 
無道路地(旗竿地)として評価したほうが、評価額は大幅に低くなりました。


 

6. 注意事項

特定路線価の申請は義務ではありませんので、一般的には「無道路地(旗竿地)」で評価した方が、相続税評価額は低くなる可能性が高いです。
ただし、対象地の場所が、路線価設定道路から大きく離れている場合(奥行が長い)、著しく相続税評価が低くなってしまうケースがあります。
その場合は、税務署から「不合理な評価方法」と判断される場合もありますので、注意しましょう。


 

7. 参照URL

(不整形地の評価)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/16.htm
 

(奥行価格補正率等)

http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm

 

Q104 配偶者居住権で相続税が大幅に安くなる?

公開日:2020/05/19 最終更新日:2020/11/26

DR181

 

 
前回お伝えした通り、「配偶者居住権」については相続税上一定の評価が行われるため、「相続税額」にも影響を与えます。
今回は、「配偶者居住権」と相続税額に与える影響につき、具体例を用いて解説します。


 

1. 配偶者居住権評価により「その他の権利」の相続税評価額は低くなる

配偶者居住権とは、「配偶者」が、相続後も家に住み続けることができる権利です。
配偶者居住権の設定により、従来の所有権が
①配偶者所有権と②所有権(以下「その他の権利」といいます)に区分されます。
 
従来の所有権の相続税評価額は、上記①+②ですので、①「配偶者居住権」に相続税上の評価額が付されると、必然的に②「その他の権利」の評価額は、その分だけ低くなります。
 
200519Q104_1


 

2. 「配偶者居住権」は死亡により消滅し、相続税はかからない

「配偶者居住権」は、配偶者死亡時点で消滅するため、「配偶者居住権」にかかる相続は発生しません。
つまり、「配偶者居住権」にかかる相続税課税関係は生じないことになります。


 

3. 相続税額の節税につながる?

「配偶者居住権」が消滅すると、「その他の権利」所有者は、元の制約のない「完全な所有権」を取得することになります。
先ほどお伝えしたとおり、当初「配偶者所有権」を設定した時点では、「その他の権利」は、「配偶者居住権」の評価額だけ、相続税評価額が低くなります。
 
一方、将来配偶者死亡により「配偶者居住権」が消滅すると・・?
「その他の権利」は、「完全な所有権」に戻るにもかかわらず、「配偶者居住権」に相続税の課税関係は生じません。
つまり、当初「その他の権利」を相続した時点では、低い相続税評価額で相続が可能・・ということになりますよね。
具体例で解説します。

 

4. 具体例

(1) 配偶者居住権を設定しない場合

  • 夫、妻、子供1人。夫が亡くなり、その後、妻が亡くなったケース。
  • 夫名義の自宅の相続税評価額は100,000千円(評価額は二次相続時も同様とする)。
  • 一次相続では妻が全額相続、二次相続は子が全額相続。
  • 妻固有の財産はゼロとする。

 

① 一次相続

妻が全額相続しますが、妻には相続税上「配偶者控除」がありますので、課税価格160百万円までは相続税がかかりません。
したがって、一次相続での相続税額はゼロとなります。

 

② 二次相続

お子様は、母親の相続財産100,000千円につき相続税が課税されます。
 

課税遺産総額 100,000千円 -( 30,000千円 + 6,000千円 × 1人)= 64,000千円
子の相続税額 64,000千円 × 30% – 700万円 = 12,200千円

 

③ 相続税総額

一次及び二次相続トータルでの相続税額は、12,200千円となります。


 

(2) 配偶者居住権を設定した場合

  • 上記自宅につき、「配偶者居住権」を設定した。
  • 「配偶者居住権」評価額は90,000千円、「その他所有権」評価額は10,000千円とする。
  • 一次相続では、妻は「配偶者居住権」を相続し、子は「その他の所有権」を相続する。
  • 妻固有の財産はゼロとする。

 

① 一次相続

妻は「配偶者控除」適用により相続税がかからない点、上記(1)同様です。
一方、お子様は「その他の所有権」を相続しますので、相続税が課税されます。
 

課税遺産総額 100,000千円 -( 30,000千円 + 6,000千円 × 2人)= 58,000千円
法定相続割合での相続税総額 妻58,000千円 × 1/2 × 15% – 500千円 = 3,850千円
子58,000千円 × 1/2 × 15% – 500千円 = 3,850千円

合計 7,700千円
妻の相続税額 7,700千円 × 9,000/10,000 = 6,930千円 ⇒ 配偶者控除により税額ゼロ
子の相続税額 7,700千円 × 1,000/10,000 = 770千円

 

② 二次相続

「配偶者居住権」は、配偶者死亡により消滅しますので、二次相続でお子様が相続する財産は0となり、相続税はかかりません。

 

③ 相続税総額

一次及び二次相続トータルでの相続税額は、770千円となります。


 

(3) 結論

「その他の権利」は、「配偶者居住権」の分だけ評価額が低くなるため、「一次相続」で相続するお子様の相続税額は低く抑えられます。
一方、二次相続時には、配偶者居住権は既に消滅しているため「配偶者居住権」にかかる相続税は課税されません。
 
つまり・・お子様が相続した「その他の権利」は、配偶者死亡後、元の完全な所有権に復活し「価値が増加する」にもかかわらず、相続税がかからない(=「配偶者居住権」に相続税が課税されない)という不思議な結論になります。
同じ所有権を取得するはずなのに、上記(1)と(2)では、相続税額が大きく異なっています。
 
現状は「配偶者居住権」に「みなし相続財産」としての課税規定もありませんので、「配偶者居住権」設定により、大幅な相続税節税ができる可能性があると考えられます。


 

5. 小規模宅地等の特例の適用も可能

配偶者居住権については、「小規模宅地等の特例」の適用が可能です。
小規模宅地等の特例は、居住用土地等につき評価額が80%減額できる制度です。


 

6. 注意事項~合意解除と放棄の場合は贈与税が課税される

配偶者死亡時に相続税が課税されることはありませんが、配偶者居住権の「合意解除」と「放棄」があった場合には、「贈与税」が発生することが明文化されています。
 

 

7. YouTube


 

Q103 配偶者居住権の具体的評価方法

公開日:2020/04/16 最終更新日:2020/11/26

DR180

 

 
前回お伝えしたとおり、民法改正により、2020年4月以後の相続より「配偶者居住権」という新たな権利が認められます。
「配偶者居住権」を設定する場合、従来の不動産所有権が「配偶者居住権」と「その他の権利」に区分されます。
今回は、この「配偶者居住権」「その他の権利」の相続税上の評価方法を解説します。


 

1. 配偶者居住権の存続年数により評価がかわる

「配偶者居住権」は、存続年数を自由に設定できます。
例えば、「任意の年数」も可能ですし、「死ぬまで一生涯の年数」を存続年数として設定することも可能です。
この「配偶者居住権」の存続年数によって、相続税評価額はかなり変わってきます。

 

2. 配偶者居住権がある場合の建物の評価方法(相23条の2)

(1) 一般的な建物の相続税評価額

一般的に、建物は「固定資産税評価額」をもとに、相続税評価額を計算します。


 

(2) 配偶者居住権がある場合

建物全体の「固定資産税評価額」(上記(1))を、①その他の権利部分と②配偶者居住権」部分に区分して評価します。
計算方法は、最初に①その他の権利部分の評価額を算定し、差引で②配偶者居住権の評価額を算定します。

 
200416Q103_3
 

① 「その他の権利」の評価

以下の式で評価を行います。
 
200416Q103_1_3
(A) 建物残存耐用年数 = 建物法定耐用年数 – 経過年数
⇒居住用のため、通常の耐用年数 × 1.5倍で計算
(B)「配偶者居住権の存続年数」に応じた民法法定利率による複利現価率
⇒2020年4月以後の民法法定利率は、「年3%」となります

 
式は難しいですが・・ イメージは以下です。
 

分母 現在の建物に、あと何年くらい住めるのか?(建物残存耐用年数)
分子 配偶者居住権消滅時の「残存耐用年数」を示します。
建物残存耐用年数のうち「配偶者居住権の存続年数」を引くと、残りどれくらいの年数住めるのか? (=その他の権利部分)
上記分数の意味 配偶者居住権設定時の「残存耐用年数」に占める「消滅時の残存耐用年数」を示します。

 
この分数割合に、完全な所有権の価値である「固定資産税評価額」を掛け合わせることにより、「配偶者居住権消滅時の建物の価額」を算定しています。

 

  • 配偶者居住権の存続年数
  • 「終身」にした場合は、「平均余命年数」(厚生労働省 完全生命表 )より算定します。
    終身以外の場合は、「遺産分割協議等により定められた」配偶者居住権の存続年数となります
    (上記の平均余命年数が上限)。

  • 複利原価率
  • 年3%の複利原価率は、国税庁HPに記載されています。

 

③ 「配偶者居住権」の評価

固定資産税評価額 – 上記①となります。

 

3. 配偶者居住権がある場合の土地の評価方法

(1) 一般的な土地の相続税評価額

「路線価」あるいは「固定資産税評価額」をもとに相続税評価額を計算します。


 

(2) 配偶者居住権がある場合

土地全体の「路線価」あるいは「固定資産税評価額」(上記(1))を、①その他の権利部分と②配偶者居住権部分に区分して評価します。考え方は、建物と同じです。

 
200416Q103_3
 

① 「その他の権利」の評価

以下の式で評価を行います。
200416Q103_4

 

② 配偶者居住権の評価

土地の相続税評価額 – ①


 

4. 具体例

 

  • 相続時の配偶者(妻)の年齢 80歳
  • 配偶者居住権の年数 終身
  • 建物 鉄筋コンクリート(法定耐用年数70年)築年数20年
  • 建物 相続税評価額3,000万円 土地相続税評価額4,000万円
  • 80歳女性の平均余命年数12年(複利原価率0.701)


 

(1) 建物

① 「その他の権利」の評価

200416Q103_2
 

② 配偶者居住権の評価

3,000万円 – 1,598.28万円 = 1,401.72万円


 

(2) 土地

① 「その他の権利」の評価

4,000万円 × 0.701 = 2,804万円

 

② 配偶者居住権の評価

4,000万円 – 2,804万円 = 1,196万円


 

(3) 評価額まとめ

全体 その他の権利 配偶者居住権
建物 3,000 1,598.28 1401.72
土地 4,000 2,804 1,196

 
なお、「経過年数」が「法定耐用年数」を超えている場合など、結果的に計算式がマイナスになる場合もありえます。
その場合、「その他の権利の評価」はゼロで計算します。
したがって、計算式がマイナスの場合は、全額が「配偶者居住権の評価」になります。
 

Q102 2020年4月から認められる配偶者居住権とは?

公開日:2020/04/16 最終更新日:2020/11/26

DR179

 

 
民法改正により、2020年4月以降の相続より「配偶者居住権」という権利が認められるようになりました。
最近、新聞でも、ちらほら名前が出るようになりましたね。
名前の通り、配偶者自身に認められる権利ですが、この権利の創設により、相続税上の評価及び税額への影響もあります。
今回は「配偶者居住権」の概要をまとめます。


 

1. 配偶者居住権とは?

簡単に言うと、「配偶者」が、相続後も家に住み続けることができる権利です。
配偶者が家に住み続けるのは当然では・・?と思われる方もいるかもしれません。
しかし、配偶者が、家の「所有権」を相続しない場合、家には住み続けられません。
 
そこで今回、民法改正により、所有権とは別に「配偶者居住権」という新たな権利を創設し、所有権を相続しなくても「配偶者居住権」を相続すれば、家に住み続けることが可能となりました。
図で示すと以下になります。
(以下、配偶者居住権以外を「その他の権利」(=所有権)と略します)
 
200416Q102_1
 
従来の所有権が、「配偶者居住権」と「その他の権利(所有権)」の2つに分かれるイメージです。
「その他の権利」には、従来の所有権のうち、「住む権利」以外すべてが含まれています。
例えば、家を売却して代金を受け取る権利などは「その他の権利」の方に含まれています。
ただし「住む権利」だけが認められていないのです。


 

2. なぜ配偶者居住権が必要?

でも・・なぜ「従来の所有権」を「配偶者居住権」と「その他の権利」に区分する必要があったのでしょうか?
いまいち・・状況が浮かばないかもしれませんね。
簡単な例で説明します。
 

  • 同居する夫と妻(後妻)のうち、今回、夫が亡くなった。
  • 夫には「実子」が1人いるが、妻(後妻)と実子は、ほとんど面識がない。
  • 夫の相続財産は、不動産3,000万円のみしかない(極端な例です)。
  • 妻は、現金をほとんど所有していない。

 

Q102_追加図_千葉加工

上記のように血のつながらない「後妻」と「子」の場合、公平に「法定相続分」(2分の1ずつ)で相続することになるかと思います。しかし、夫の財産は「不動産」のみで、妻は現金を保有していません。
この状況だと・・妻は、不動産を売却して、1,500万円の現金を作って、子に渡すしかありません。
 
この点「配偶者居住権」がある場合はどうでしょう?
仮に「配偶者居住権」の価値が1,500万円の場合、「その他の権利」の価値は、1,500万円(3,000-1,500)になります。
「配偶者居住権」が権利価値として認められる場合、妻は家を売却することなく、妻「1500万円の配偶者居住権」、子「1,500万円のその他の権利」を相続することが可能です。
 
その結果、奥様は住み慣れた家に住み続けることが可能ですし、お子様も「1,500万円の価値があるその他の権利」を相続することが可能になります。
 
「配偶者居住権」は、最低限、住む権利だけは配偶者に残してあげよう!という、配偶者を手厚く保護する制度となります。


 

3. 配偶者の死亡により消滅

「配偶者居住権」は、配偶者のみに認められた権利ですので、配偶者が死亡すると消滅します。
「配偶者居住権」は、相続財産として誰かに引き継ぐことはありません。
「配偶者居住権」が消滅すると、「その他の権利」所有者が、制約のない「完全な所有権」を取得することになります。
したがって「配偶者居住権」消滅後は、住む権利はもちろん、完全な自由な権利を行使できることになります。


 

4. 相続税上の評価が行われる

配偶者居住権は、「配偶者」以外には認められませんので、売却価値自体はありません。
しかし、相続税上、この「住む権利」には何らかの財産価値があるものとして、「一定の評価額」が算定されます。
 
「配偶者居住権」に相続税評価が行われるということは・・?
必然的に、もう片方の「その他の権利」の評価額は、「配偶者居住権」の評価額だけ下がることになります。
 
一方、将来、配偶者死亡により「配偶者居住権」が消滅すると・・?
「その他の権利」は、「完全な所有権」に戻るにもかかわらず、「配偶者居住権」に相続税の課税関係は生じません。

 
つまり・・当初、完全な「所有権」よりも低い相続税評価額で収まる「その他の権利」を取得すれば、従来の所有権相続と比べて、低い相続税評価額で相続が可能ということになりますね。
「将来、完全な所有権に戻る」んですよ??だいぶ得だと思いませんか?
 
「所有権」と「借地権」」の関係に似ていますね。


 

5. 配偶者居住権の効果

「配偶者居住権」を活用すると、一般的に、以下の効果が見込まれます。

 

  • 配偶者に「居住権」という手厚い権利が保護される。
  • 遺産分割がスムーズになる場合がある。
  • 従来の所有権相続税評価額よりも、分割された「配偶者居住権」「その他の権利」各々の評価額は低くなるため、各人の相続税が安く収まる場合がある。
  • 配偶者が、低い相続税評価額の「配偶者居住権」を相続すれば、法定相続分に達するまで「他の現金等の相続財産」を取得することが可能になる。


 

6. 配偶者居住権を取得できる要件

配偶者の居住権確保と、第三者を保護する観点で、以下の要件が必要となります。

 

  • 相続発生時点で、自宅に居住していた配偶者にのみに認められる。
    賃貸部分は×。別居している場合も×。
  • 相続発生時点で、建物が配偶者以外の共有名義の場合は×
  • 対抗要件として「配偶者居住権」の登記が必要。


 

7. 留意事項

「配偶者居住権」は、配偶者にとっては、非常に「優遇された権利」を取得できることになりますが、逆に言うと「その他の権利」を取得した方は権利が制限されるため、ある意味、不公平な制度とも言えます。
 
先の例の場合、お子様は「その他の権利」をもらったところで、住むことができないだけでなく、実質売却もできません。
にもかかわらず「その他の権利」も、相続財産として課税対象となります。
こういった例の場合、お子様は何の活用もできない家を相続する意味はなく、しかも、その時点で相続税が発生する可能性もある・・ばからしいと思うでしょうね。
そういった意味で、「配偶者居住権」は、相続人同士でもめる原因になりかねません。
 
「配偶者居住権」の設定は任意ですので、この辺りも十分に考慮して選択する必要があると思われます。
場合によっては、「配偶者居住権」を活用せず、遺言で「完全な所有権を奥様に相続させる」と記載しておく方が、無難な場合もあるでしょうね。


 

8. 修繕費や固定資産税の負担は?

「現状維持に必要な修繕費」の負担は、「配偶者居住権者」となります。
また、「毎年の固定資産税」の負担も、「配偶者居住権者」となります。
しかし、税法上の所有者は、あくまで「その他の権利保有者」となるため、固定資産税課税通知などは「その他の権利者」に通知され、その後、実質負担者である「配偶者居住権」保有者に請求する形になります。

 

Q101 特定路線価は設定申請するべきか?

公開日:2019/12/20 最終更新日:2020/11/26

DR178

 

 
実務上、路線価地域内でも、土地の「路線価」が設定されていない道路があります。
こういった、土地の「路線価」がない場合、どうやって相続税評価をするのでしょうか?
今回は、路線価が設定されていない場合に、税務署に申請して設定する「特定路線価」につき解説します。


 

1. 特定路線価って?

路線価がついていない土地は、税務署に「路線価設定の申し出」をすることができます。
この「申し出」により、税務署が設定した路線価は、「特定路線価」と呼ばれます。
特定路線価は、通常、約1ヶ月程度で設定されるのが一般的です。

 

2. 特定路線価を設定できるケース

(1) 不特定多数の通行用の道路のみ

特定路線価が設定できるのは、「不特定多数の者の通行の用に供されている」道路だけです。
「特定の者」の通行の用に供されている道路(専用通路)には、特定路線価は設定できず、宅地の一部として一体評価することになります。
 

路線価は宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定する・・路線とは、「不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいう」(財基通14)


 

(2) 建築基準法上の道路が対象

特定路線価が設定できる道路は、「建築基準法」の道路です。
「建築基準法上の通路に接していない土地」には、建物自体の建設ができませんので、特定路線価を設定したとしても、そこまでの価値があるとは思えません。
そこで、「建築基準法の道路に接していない土地」は、一般的には特定路線価の設定申請はせず、無道路地として評価します。
 

(建築基準法上の道路)
建築基準法42条Ⅰ①~⑤、42条Ⅱ、43条Ⅰ但書の許可を受けた道路


 

(3) 側方路線や裏面路線には設定できない

「路線価の設定されていない道路のみに接している宅地」しか、特定路線価は設定できません。
例えば、路線価がある道路と、路線価のない道路の両方に接道している土地については、特定路線価の設定はできません。
逆に言うと、「側方路線」や「裏面路線」には、特定路線価の設定はできないということですね。
 

路線価地域内において・・路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合には、・・・「特定路線価」・・を納税義務者からの申出等に基づき設定することができる(財評基通14-3)

 

(正面路線価はあるが、側方に路線価がない土地の評価)

この場合、正面路線価のみで評価します。
つまり、側方路線影響加算、二方、三方又は四方路線影響加算は適用されず、相続税評価額は低く抑えられます。
公道でもない道路に接しているからと言って、評価が加算されるのも・・変ですよね。
 
なお、特定路線価は、評価する対象の土地専用のものです。
たとえ、隣接する他の土地に設定された「特定路線価」が存在したとしても、当該特定路線価は、自分の土地を評価する際の路線価としては利用しません。
つまり、設定された特定路線価は「他の土地の評価」には影響を与えません。

 

3. 特定路線価は設定すべきか?

(1) 特定路線価は「高め」に設定される

特定路線価を申請した場合、通常は「高めに設定」されることが多いため、特定路線価を申請した結果、相続税評価額が高くなってしまう可能性は高いです。
 
路線価がついていない道路は、「私道」や「建築基準法上の道路ではない」場合がほとんどです。
こういった道路には、本来、特定路線価は設定できないはずなんですが・・税務署に申請すれば、実務上は、特定路線価が設定されてしまうことが多いです。
 
しかも・・特定路線価は、近隣土地や固定資産税評価額等を参考に設定されるため、思った以上に「高い金額」で設定されてしまいます。
 
特定路線価の設定は、「強制ではなく、あくまで任意」ですので、むやみやたらに申請するのが得策とは限りません。


 

(2) 実務上は?

私道」は宅地に含めて評価、「建築基準法上の道路でない」場合は、無道路地として評価した方が、ほとんどの場合、相続税評価は安くなります。無道路地の場合は、「旗竿地」評価で、相続税評価額を下げることができる場合もあります。
 

結論ですが・・特定路線価を設定申請する前に、まずは「無道路地、旗竿地としての評価ができないか?」を検討することが、相続税評価の観点からは有用かなと思います。
 
なお、「建築基準法上の道路かどうか?」は、役所などで確認ができます。

 

Q100 土地の間口距離の算定方法 / 迷いやすい事例

公開日:2019/12/20 最終更新日:2020/11/26

DR177

 

 
相続税上、路線価地域の土地は、原則として「土地の面積×路線価」で評価を行います。
しかし、実際の土地の形状は、きれいな「整形地」とは限りません。
「不整形地」の場合は、利用使途が限定されるため、相続税評価額が一定額減額されます。
そこで今回は、「不整形地」を評価する際に必要となる「間口距離」につき解説します。


 

1. 間口距離って?

間口距離とは、土地が「道路に接している」長さのことです。
例えば、左の土地は間口距離20m、右の土地は間口距離10mです。
 
191220Q100_1


 

2. 間口距離が必要な場面

「間口距離の長さ」は、不整形地を評価する際の「計算上の奥行距離」を算定する場面で利用します。
 

計算上の奥行距離 = 土地面積 ÷ 間口距離(道路に接している長さ)

 
上記式を見ると、「計算上の奥行距離」を算定するためには、「間口距離」の情報が必要となることがわかりますね。


 

3. 迷いやすい具体例~曲がった道路に面している場合~

実際の土地の形状は、さまざまなパターンがありますので、実務上、「間口距離」の把握に迷うことは多くあります。
以下、「迷いやすい間口」の事例を記載します。
 

下記の土地の「間口距離」は・・? 間口が途中で曲がっています

 
191220Q100_2

 
上記のような土地の場合、以下の2ステップにより「間口距離」を確定します。

(ステップ1)
各路線価を基準とした「想定整形地」を作成し、面積が小さい方の間口を採用
 
(ステップ2)
ステップ1で採用した間口距離と、実際面している間口距離の短い方を採用


 

(1) ステップ1 各路線を基準とした「想定整形地」を作成

間口距離を計算するために、「想定整形地」と呼ばれる長方形の土地を作成します。
路線①を基準にした「想定整形地」と、路線②を基準にした「想定整形地」を作成し、いずれか面積が小さい方の「間口距離」が採用されます。

 

① 路線①を基準とした想定整形地

191220Q100_3

 

② 路線②を基準とした想定整形地

191220Q100_6

 

③ 結論

①300㎡ < ②600㎡のため、小さい方①300㎡(路線①を基準とした想定整形地)を採用し、間口距離は20mとなります。


 

(2) ステップ2 実際面している間口距離と比較し、短い方を採用

次に、実際に道路に面している間口距離の長さと、ステップ1で採用した間口距離と比較し、短い方を採用します。
 

① 実際面している間口距離 17m + 5m = 22m

 

② ステップ1で採用した間口距離 20m

 

③ 結論

① > ②のため、短い方②を採用⇒ 20mとなります。