Q22【自宅の相続税は?】特定居住用宅地等の特例(小規模宅地等の特例)とは?/同居・家なき子の場合の要件や限度面積は?

公開日:2017/05/31 最終更新日:2021/09/10 閲覧数:2,098 views

 
相続税上、亡くなられた方(被相続人)などが「居住」していた宅地を相続(遺贈)した場合、「一定要件」を満たした場合は、宅地の評価額を最大80%減額でき、相続税がかなり安くなります。
「特定居住用宅地等の特例」と呼ばれています。
 
ただし、この制度は、宅地利用者・取得する方のパターンがいろいろあり、要件が複雑なため、制度適用にあたっては、慎重に検討しなければいけません。
 
今回は「特定居住用宅地等の特例」の内容や要件につき解説します。
なお、この制度は、「相続または遺贈」の場合「限定」とされており、「生前贈与」には適用されません

 

1. 特定居住用宅地等の特例とは?

(1) 特定居住用宅地等の特例とは?

①亡くなった方(被相続人)や、②同一生計親族が居住していた土地を相続(or遺贈)する場合、「一定要件」を満たせば、評価額が80%減額される制度です。
 
上記の通り、この制度は、誰がその「宅地」に居住していたか?で「2パターン」に分かれます(①被相続人 ②同一生計親族)。
ただし、ほとんどの場合は「被相続人が居住」のケースとなりますので、「同一生計親族が居住」の適用場面は「限定的」となります。
 

(2) 被相続人が老人ホーム入居の場合は?

被相続人が「老人ホーム」に入居している場合は、「居住していない」ため、形式上は上記の要件を満たしません。ただし、こちらについては、「一定要件」を満たせば特例の適用が可能です。詳しくは、Q28をご参照ください。
 

(3) 建物名義は、被相続人でなくてもOK

土地については、被相続人の「所有権」が要件となりますが、土地の上の建物は、必ずしも被相続人が所有している必要はありません。建物の所有者が親族であれば、特定居住用宅地等に該当します。詳しくは、Q30をご参照ください。

 

以下、「宅地」に居住していた方が①被相続人の場合と、②同一生計親族の2パターンに分けて解説します。
 

2. 被相続人が居住していた宅地の場合

(1) 要件

「宅地等を相続する人」ごとに、必要とされる要件が違ってきます。
「相続する人」ごとにまとめると、以下の通りとなります。
被相続人との関係性により、要件に差異が設けられており、表の下になるにしたがって、要件が厳しくなっています

 

相続する方 申告期限までの継続要件
配偶者 なし(=配偶者は手厚く保護されている)
同居親族 ●居住要件
●所有要件
非同居親族
(家なき子)
●所有要件
その他の要件

 

●「居住要件」とは、申告期限まで、引き続き、その「家屋」に居住していることを指します(以下同様)。
●「所有要件」とは、申告期限まで、引き続き、相続した「宅地」を所有していることを指します(以下同様)。
●「その他の要件」は、別途、下記「3」で解説します。

 

(2) 「同居」の有無の判定は?

「同居の有無」の判断は、基本的には「住民票」で確認することになりますが、「住民票」がある場合でも、「実際に居住していない」場合は適用できません
 
税務署が「実際住んでいたかどうか?」を判定する際には、例えば、光熱費の使用状況、郵便物の宛先、各種届出の住所、電車の通勤定期券の区間などを「総合的に勘案」して判定します。
 

(2) 「単身赴任」の場合はOK

では、「単身赴任」の場合は、「同居」と取り扱われないのでしょうか?
例えば、普段、被相続人と家族は同居しているが、自身は単身赴任で「住民票」をいったん「単身赴任先」に移動している場合です。
 
この場合は、「住民票」や「実際住んでいる場所」も異なりますが、特例の適用は可能です。
単身赴任の場合、休日は家族のもとに帰りますので、「生活の拠点」は「単身先」ではなく、「家族が住む家」と判断されます。したがって、上記のように、相続人の家族と被相続人が同居している場合は、「同居要件」を満たし、小規模宅地等の特例の適用が可能です。
 

3. 非同居親族(家なき子)が取得する場合の「その他の要件」とは?

特定居住用宅地等の特例は、「同居」していなくても、「要件を満たせば」適用が可能です。
ただし、この場合の要件は非常に厳しくなっています(H30税制改正)。
「自宅を所有している方」は特例の適用できませんので、「家なき子特例」とも呼ばれています。
(家なき子とは、自宅が「所有」ではなく、「賃貸」の方のこと)
 
次の要件すべてを満たす必要があります。

 

要件 摘要
被相続人に配偶者及び同居親族(法定相続人)がいない 亡くなった人が基本的には「独り身の方」ということ。
相続する親族は、相続開始3年以内に、自己(配偶者、3親等内の親族、特別の関係がある法人含む)の持ち家に住んだことがない(=マイホームがない人) ●奥様名義や親名義の家も×
●関係会社名義の家も×
相続する親族が、相続開始時に住んでいた住居を過去に「所有」したことがないこと(※) ●「親や孫に売却」して名義を変えても×

 
(※)実質の住まいは変わらないにもかかわらず、「持ち家」をいったん売却して賃貸することで「特例の適用」を受けようとする「租税回避が横行」したため、この制限が設けられました。
 

4. 同一生計親族が居住していた場合

(1) 具体的に当てはまるケース

「同一生計親族が居住していた場合」はレアケースだと思います。なぜなら、被相続人と同居している場合は「2. 被相続人が居住していた宅地」となりますので、こちらのケースは、「被相続人」所有の土地に住んでいる親族だが、「被相続人と別居かつ生計は同一」ですので・・かなり限定されると思います。例えば・・
 

●学生で仕送りをもらっている子供(親と別に居住)が、親名義のマンションに住む場合
 ⇒土地 夫名義、親と子供は同一生計
●土地名義は親(被相続人)、建物名義が生計一親族のお子様で、お子様が居住している場合(親とは別居・使用貸借)。Q30参照 ⇒土地 被相続人名義、親と子供は同一生計

 

 

(2) 同一生計親族とは?

「同一生計親族」とは、被相続人と財布が同じということです。必ずしも「同居」が要件ではありません。別居でも、仕送り等で生計を共にしている場合は、「同一生計親族」となります。
 

(3) 要件

上記2と同様、「宅地等を相続する人」ごとに、必要とされる要件が違ってきます。
 

相続する方 申告期限までの継続要件
配偶者 なし(=配偶者は手厚く保護されている)
同一生計親族 居住要件
所有要件

 
なお、こちらのケースは被相続人が居住しているわけではないので、同居、非同居という区分はでてきません。
 

5. 限度面積

330㎡までとなります。

 

6. 税額ゼロでも申告は必要?

小規模宅地等の特例は、申告が要件となりますので、特例を利用した結果、税額ゼロになる場合も「申告義務」があります。ただし、「小規模宅地等の特例」は、期限後申告、修正申告も認められていますので、結論的には、期限後に申告して税額ゼロになる場合は、延滞税等もかかりません。
 
なお、特例適用には、申告期限までに「遺産分割が完了」していることが要件となりますが、以下の例外が認められています。遺産分割未了の場合は、いったん特例適用前で相続税の申告を行い、申告・納税を行います。
 
(1)申告期限後3年以内の分割見込書
相続税の申告の際、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に遺産分割できれば、その時点で特例を受けることが可能です。
 

(2)遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書
上記(1)で、訴訟や調停等により、3年経過日までに分割できない場合でも、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出した場合は、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内であれば、特例の適用が認められます。
 

7. 添付書類

相続税申告書提出の際に、次の「添付書類」が必要となります。
(マイナンバー制度により「住民票」の提出は不要となりました)
 

●被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本or法定相続情報
●遺産分割協議書の写し(or 遺言書の写し)
●相続人全員の印鑑証明書
●非同居親族の場合は、居住家屋の登記簿謄本・借家の賃貸借契約書等

 
なお、老人ホームに入居していた場合には、介護保険証や老人ホームの入居契約書なども必要となります。
こちらについては、Q28をご参照ください。