Q119 賃貸アパート贈与時の「負担付贈与」の適用関係

公開日:2021/05/01 最終更新日:2021/06/27 閲覧数:528 views


 
前回の「負担付贈与」の続きです。
今回は、賃貸アパートのオーナーが「アパートを贈与」する場合を考えます。
アパート経営をする場合、入居者から「敷金・保証金」を預かるケースがあると思います。
こういった「敷金・保証金」は、アパートオーナーの立場から見ると、将来入居者に返還しなければいけない「債務」となります。
この点、賃貸アパートを贈与する場合の「税金」は、入居者から預かった「保証金相当額」を、贈与者 ⇒ 受贈者に支払うかどうか?で金額に大きな違いが生じます。


 

1. 保証金相当額を支払有無により「負担付贈与」の適用関係が異なる

賃貸アパートを贈与する場合は、贈与税等の税金が生じます。
この点、贈与者が贈与する際に、マンション入居者から預かっている「保証金相当額」を、受贈者に支払うかどうか?で「負担付贈与」の適用関係が異なってきます。
 

(1) 保証金相当額を支払わない場合

「保証金相当額」を贈与者 ⇒ 受贈者に支払わない場合、贈与者は、受贈者に「保証金返還義務」が引き継がれることになります。
この場合は、財産と債務をセットで贈与=「負担付贈与」となります。
負担付贈与の場合、対象不動産は、「相続税評価額」ではなく「市場価額(時価)」で評価され、通常の贈与よりも評価額が高くなります。
 

(2) 保証金相当額を支払う場合

一方、「保証金相当額」を贈与者 ⇒ 受贈者に支払う場合は、受贈者の負担は相殺され、「負担付債務」ではなく「通常の贈与」として扱われます。
「敷金返還債務」を承継させる意図が、贈与者・受贈者間になく、実質的な負担はないと判断されるためです。
通常の贈与の場合は「相続税評価額」で評価され、「負担付贈与」よりも、評価額は低くなります。


 

2. 例題

  • 賃貸アパートを、父から息子(20歳以上)に贈与する
  • 賃貸アパートの取得価額3,000万円・固定資産税評価額3,500万円・時価5,000万円とする
  • 入居者から預かっている敷金は200万円とする

 

(1) 敷金相当額を支払わない場合(=負担付贈与)

父(贈与者) 所得税課税なし
(200万 – 3,000万)≦ 0
父は、取得価額3,000万円のマンションを、息子の債務負担額200万で売却したと考えます。
この場合は父に所得は生じないため、所得税はかかりません。
息子(受贈者) 贈与税課税
(5,000万 – 200万 – 110万)× 55% – 640万円 = 1,939万円
息子は、父から時価5,000万のマンションを「敷金債務200万」で購入したと考えます。
差額4,800万円は父親からの贈与とみなされ、贈与税が課税されます。

 

 

(2) 敷金相当額を支払う場合(=通常の贈与)

父(贈与者) 所得税課税なし この場合、息子の債務負担は相殺され、「負担付債務」ではなく「通常の贈与」として扱われます。
したがって、贈与側の父には所得税課税は行われません。
息子(受贈者) 贈与税課税
(3,500万円 ×( 1 – 借家権割合0.3 )= 2,450万
(2,450万円 – 110万)× 45% – 265万円 = 788万円
息子は、アパートの贈与を受けることになるため、「贈与税」が課税されます。
ただし、負担付贈与ではなく、「通常の贈与」と取り扱われるため、相続税評価額での評価が可能です。

 

  • 敷金相当額を、贈与者 ⇒ 受贈者に支払う場合、相続税評価、すなわち家屋の場合は「固定資産税評価額」を基準として、借家権利割合を反映した相続税評価額で計算することが可能です。
    「暦年贈与」の基礎控除額110万円を差し引いた残額に贈与税が課税されます。

  • 息子が現金で受け取った敷金200万円は、債務見合いの金額を受け取っただけのため、「贈与税」はかかりません。

 

 

(3) 結論

敷金相当額を贈与者 ⇒ 受贈者に支払うするかしないか?で、受贈者に生じる「贈与税」の金額が大幅に違ってきます。
結論的には、敷金相当額の支払いをした方が税額は大幅に安くなります。


 

3. 参照URL

(賃貸アパートの贈与に係る負担付贈与通達の適用関係)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/14/08.htm


 

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