Q91【学資保険】確定申告は必要?受取人の違いで贈与税や所得税が課税される?満期保険金・一時金の取扱い/孫への活用方法

 最終更新日:2023/03/03 閲覧数:6,047 views

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将来の教育資金の準備として、「学資保険」を活用されている方も多いかもしれません。
学資保険に入っているから大丈夫!と安心されている方もいるかもしれませんが・・
実は、学資保険で将来受け取る満期保険金や解約返戻金、お祝い金には税金が課税されるケースがあります。

今回は、学資保険にかかる受取金に課税される税金につき解説します。
 

1. 学資保険の特徴

学資保険は、主に、「子供の教育費」を貯蓄するための保険です。特徴は以下の通りです。
 
●満期は18歳ごろで設定され、満期になれば「満期金額」を受け取れ、返戻率は一般的に高い。
●中途解約した場合は元本割れする。
●「満期」以前に契約者が死亡した場合は、その後の保険料支払は免除され、将来の「満期金が全額」受け取れる。
●掛け金は生命保険料控除の対象(支払額全額が所得控除になるわけではない点に注意)。
 

ただし、教育費は、過去から右肩上がりの傾向にありますので、現在支払っている保険料は、将来のインフレまで想定した保険料ではありません。

つまり、「将来満期返戻金が入ってきたとしても、それで全額の学費がまかなえるものではない!」ということも、想定しておかなければいけません。

 

2. 学資保険に係る税金

学資保険は、通常は、親が契約者(=保険料負担者)、将来の受取人も親自身に設定するケースが多いです。
この場合は、保険負担者=受取人となるため、所得税が課税されます。
一方、親が契約者(=保険料負担者)だが、将来の受取人が子供の場合は、保険料負担者⇒子供への贈与とみなされ、「贈与税」が課税されます(みなし贈与)。
受取人や保険料負担者によって、課税される税金が異なってきます。
 

3. 受取人=保険料負担者本人の場合

(1)満期保険金・解約返戻金は、原則一時所得

受取人が保険料負担者本人の場合は、本人が支払った保険を本人が受け取ることになるため、所得税が課税されます。
満期保険金や解約一時金は「一時所得」になります。
また、中学や高校入学時に支給される「祝い金」等がある場合も、すべて「一時所得」となります。
一時所得の課税対象は、以下の計算式となります。
 
一時所得の課税対象 =(満期保険金 - 支払保険料総額 - 特別控除額(50万円)) × 1/2
 
所得税は「儲け」に対してかかりますので、過去に支払った保険料を控除でき、さらに50万円の特別控除が認められています。現実的には、他の一時所得がなければ、学資保険返戻金に課税されるケースは少ないと思われます。
 

(2)年金受取型の場合は雑所得

満期保険金を、分割で毎年受け取るタイプもあります。例えば、一括受取の満期保険金の場合は1,000万円でだが、250万ずつ、大学4年間で毎年受け取るようなタイプです。
こういった「年金」のように、毎年受け取るタイプの場合は、「雑所得」となります。雑所得の場合は、一時所得のような「特別控除」や「1/2の規定」はありません。
雑所得の課税対象は、以下の計算式となります。
 
雑所得の課税対象 =(毎年の収入額 - 支払保険料当期対応分
 
なお、サラリーマンの場合は、給与所得と退職所得以外の所得の金額が合計で20万円を超えなければ確定申告は不要となります。
 

4. 受取人=子や配偶者等の場合

(1)贈与税が課税

受取人が保険料負担者以外の場合は、他人が支払った保険を受け取ることになるため、この場合は贈与税が課税されます。
ただし、贈与税は、毎年110万円の非課税枠がありますので、贈与税の課税対象は、以下の計算式となります。
 
贈与税の課税対象 =(保険金入金額 - 110万円
 
一時金で受け取る場合は、110万円の控除となりますが、年金で受け取る場合は、毎年110万円の非課税枠が利用できることになります。
 

(2)扶養義務との関係

親子や孫との関係では、「扶養義務」があるため、教育費や生活費を子供のために支払ったとしても、「贈与税」はかかりません。ただし、「学資保険」は、あくまで将来の教育費用のために、保険支払時点では「ためているお金」であって、その時点では「教育費」ではありません
したがって、将来保険を受け取る方が子供の場合は、資金を贈与したものとして贈与税の課税対象となります。

 

(3)所得税や社会保険扶養への影響はなし

学資保険の返戻金が「贈与税の課税対象」となる場合は、あくまで所得ではありませんので、扶養への影響はありません。
また、社会保険上の扶養は、「継続的な所得」で判定しますので、社会保険上の扶養から外れることはありません。
社会保険の論点は、贈与に限らず、所得税が課税される場合も同様です。

 

5. 契約者が死亡した場合

契約者(保険料負担者)が死亡した場合は、学資保険の契約者と受取人を変更する必要があります。
この場合は、生命保険契約の権利として「相続税」が課税されます。
また、学資保険の満期を迎えるまで、所定の年金額を受け取れる「死亡育英年金」の場合は、年金受給権」として、同様に相続税の課税対象となります。

なお、死亡育英年金を受け取るとき際は、雑所得と取り扱われますが、相続税と所得税が二重課税となるため、年金受取時の所得税の計算上、「相続税課税対象部分」を差し引いて算定することされ、二重課税の排除が行われています。
 

6. 祖父母が、孫に学資保険を掛ける場合

祖父母が、子供の援助として、孫のために「学資保険」を掛けたい場合はどうでしょうか・・
仮に祖父母が契約者となり、子供や孫を受取人にすると贈与税の課税対象となります。

⇒返戻金は110万を超える可能性が高いため、贈与税がかかる可能性があります

 

一方、祖父母が、「暦年贈与非課税枠110万円」の範囲内で、自分の子供に贈与を行い、子供名義で、孫の「学資保険」に入れば贈与税はかかりません。

学資保険の契約者は「子供」なので、普通の形になりますね。
 
実質のお金の出どころは「祖父母」という点で、「孫のためにお金を使っている」という満足感があります。
 

もちろん、学資保険の契約者=受取人が将来もらう満期保険金には一時所得等として所得税が課税されます。

なお、別の制度となりますが。祖父母から子供の教育資金を贈与する方法としては、「教育資金一括贈与の非課税枠1,500万円」もあります。
 

7. ご参考~子供保険との違いは?~

子供保険は、「子供の医療保障を主目的に置いた商品」で、予備的に教育資金に備える商品です。
一方、学資保険は、「教育資金貯蓄を主目的に置いた商品」で、予備的に医療保障などがが備わる商品です。
つまり、全く逆の商品になります。ただし、最近は、どちらもいろいろな保障が充実していますので、あまり両者の区別はないかもしれません。

 

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