Q105 無道路地評価の方が特定路線価設定より節税?

 最終更新日:2023/01/01 閲覧数:13,408 views

DR182

 
以前お伝えしたとおり、「特定路線価」の設定は、義務ではありません。
今回は、「路線価のない道路のみに接している土地」の評価につき、①特定路線価を設定して評価した場合と②無道路地で評価した場合を比較してみます。

 

1. 事例

下記の対象地Bの相続税評価を行ってみましょう。

  • 路線価なし道路Cは、不特定多数の者の通行の用に供されている公道、建築基準法上の道路とします(対象地Bの専用道路ではない)。
  • 対象地Bは、路線価が設定されていない道路にのみ接しています。

 

(普通住宅地区)

200519Q105_1


 

2. 特定路線価の設定可否

  • 対象地Bは、路線価が設定されていない道路Cにのみに接している。
  • 道路Cは、不特定多数の通行用である。

 
要件を満たすため、特定路線価の設定が可能


 

3. 特定路線価を申請した場合

特定路線価を申請した場合、一般的には高めの路線価がつくことが多いです。
(「近隣土地」の路線価や「固定資産税評価額の倍率」を用いて算定する場合が多い。)
 
今回の例では、近隣路線価200千円を参考に、道路Cの特定路線価は、180千円/㎡と設定されたものとします。
 

(対象地Bの評価額)

 180千円 × 0.95(※)× 600㎡ = 102,600千円
(※)奥行30m奥行価格補正率(普通住宅地区)

 

4. 無道路地(旗竿地)として評価した場合

(1) 差引計算

① 想定整形地(赤線部分)

200千円(正面路線価)× 0.91(40m奥行価格補正率)× 1,400㎡ = 254,800千円

 

② かげ地部分(黒塗部分)
  • 隣接地A・・200千円(正面路線価)× 1.00(20m 奥行価格補正率)× 600㎡ = 120,000千円
  • 路線価なし通路C・・200千円(正面路線価)× 0.91(40m 奥行価格補正率)× 200㎡ = 36,400千円

 

③ 評価対象地Bの評価(青塗部分)不整形地補正前

(254,800千円 – 120,000千円 – 36,400千円)= 98,400千円
98,400千円 ÷ 600㎡ = 164千円/㎡

 

(ご参考・普通住宅地区)
奥行20mの奥行価格補正率 1.00
奥行40mの奥行価格補正率 0.91


 

(2) 不整形地補正(不整形地補正率表 注3参照)

上記(1)の差引計算後、不整形地補正等を行います。
不整形地補正は、以下のどちらか小さい方の選択が可能です(0.60が限度)。
 

① 不整形地補正率 × 間口狭小補正率 (小数点第2位未満切捨)
② 間口狭小補正率 × 奥行長大補正率 (小数点第2位未満切捨)

 
① 0.78(不整形地補正率)× 0.94(間口狭小補正率)= 0.7332
② 0.94(間口狭小補正率) × 0.90(奥行長大補正率) = 0.846
 
小さい方の小数点第2位未満を切捨、
① 0.73(小数点2位未満切捨)

⇒ 164千円 × 0.73 = 119.72千円/㎡
 

(ご参考・普通住宅地区)
不整形地補正率 0.78(普通住宅地区B(600㎡ + 200㎡)÷ 1,400㎡ = 0.5714)
間口狭小補正率 0.94(4m以上6m未満)
奥行長大補正率 0.90(40m ÷ 5m = 8倍)


 

(3) 最終的な無道路地(旗竿地)の評価

119.72千円/㎡ × 600㎡ = 71,832千円


 

5. 結論

対象地Bの相続税評価額は、それぞれ以下となります。
 

特定路線価を設定した場合 102,600千円
無道路地評価(旗竿地評価)した場合 71,832千円

 
無道路地(旗竿地)として評価したほうが、評価額は大幅に低くなりました。


 

6. 注意事項

特定路線価の申請は義務ではありませんので、一般的には「無道路地(旗竿地)」で評価した方が、相続税評価額は低くなる可能性が高いです。
ただし、対象地の場所が、路線価設定道路から大きく離れている場合(奥行が長い)、著しく相続税評価が低くなってしまうケースがあります。
その場合は、税務署から「不合理な評価方法」と判断される場合もありますので、注意しましょう。


 

7. 参照URL

(不整形地の評価)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/16.htm
 

(奥行価格補正率等)

http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm

 

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