相続の豆知識 税額控除・加算




Q59 未成年者・障害者の税額控除って?

公開日:2018/02/07 最終更新日:2021/08/25

 

相続人が未成年者の場合や、障害をお持ちの場合、相続税が安くなります。
未成年者控除・障害者控除という制度です。

 

1. 未成年者控除って?

制度概要 20歳になるまでの年数分(※)、相続税が安くなる制度
適用対象者 20歳未満の法定相続人(日本に住所がある方)
控除額 (20歳-相続開始時の年齢)×10万円

(※)1年未満の端数は、1年となります。

 

相続人が未成年者であるケースは、限られた場面が多いですが、「孫を養子に入れた」場合などは、未成年者控除が利用できることが多いですね。

 



 

2. 障害者控除って?

制度概要 85歳になるまでの年数分(※)、相続税が安くなる制度
適用対象者 85歳未満の法定相続人で障害を持つ方(日本に住所がある方)
控除額
  • 一般障害者
    (85歳-相続開始時の年齢) × 10万円
  • 特別障害者
    (85歳-相続開始時の年齢) × 20万円

(※)1年未満の端数は、1年となります。

 

「障害者控除」が適用できる「障害の種類」は、多岐にわたっています。
詳しくは国税庁HPをご確認ください。
一般的には、「身体障害者手帳」などによって判断されます。

 



 

3. 控除額を引き切れない場合は?

「未成年者控除」や「障害者控除」が適用できるにもかかわらず、相続財産及び相続税額が少なく、本人から引き切れずに「税額控除が余ってしまうケース」があります。
こういった場合は、余った部分を「扶養義務者の相続税」から差し引くことが可能です。

 

(扶養義務者って??)

 

配偶者又は民法で規定する親族(直系血族、兄弟姉妹及び三親等以内親族のうち一定の者)を指します。

  • 実際に扶養しているかどうかは関係ありません。
  • 扶養義務者が2人以上いる場合は、それぞれの協議により金額配分します。

 



 

4. 留意事項

未成年者控除、障害者控除どちらも、以下の点に留意する必要があります。

 

(1) 遺産を取得することが必要

「相続又は遺贈により、財産を取得したこと」が要件となります。未成年者や障害者が、相続財産を全く取得しなかった場合には、本人だけでなく、扶養義務者からも控除することができませんので、注意しましょう。
なお、金額基準はありませんので、1円でも遺産を取得していれば適用可能です。

 

(2) 過去の相続で「控除適用」している場合は、金額調整される

過去の相続で未成年者控除・障害者控除を適用している場合は、 今回の控除額が制限される場合があります。

 

(3) 相続放棄との関係

未成年者や障害者である相続人が「相続放棄」を行った場合でも、相続税計算上は、「相続放棄がなかったもの」として計算しますので、未成年者控除・障害者控除を行うことが可能です。

 



 

5. 参照URL

(No.4164 未成年者の税額控除)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4164.htm

(No.4167 障害者の税額控除)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4167.htm

Q46 相続放棄と債務控除・未成年者控除等との関係

公開日:2017/10/18 最終更新日:2021/08/25

 

今回は「相続放棄」と「債務控除・未成年者控除等」の関係を解説します。

 

1. 債務控除

債務控除は、被相続人の借金や医療費等を相続人が負担していた場合、相続税計算時に控除することができる制度です。
 
相続放棄した場合は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継がないため、「債務控除」を差し引くことはできません。



 

2. 葬式費用は?

葬式費用は、相続税上「債務控除」に該当しますので、相続税計算時に控除することができます。
 
では・・相続放棄があった場合はどうでしょうか?
 
被相続人が負担した「葬式費用」は、被相続人が残した「負債」とは性格が全く別物となりますので、相続放棄者が支払った葬式費用については、差し引くことができます。(相続税基本通達13-1)
 
相続放棄者は、財産を取得しないのに・・なんでこんな制度があるの?と思われるかもしれません。
実はこの制度、被相続人が、相続放棄者に対して「特定遺贈」を行っていた場合を想定しています
「相続放棄」と「遺贈」の制度は全く別の制度なので、相続放棄を行っても、別途特定遺贈により「遺贈財産を取得」することは可能です。
この「特定遺贈財産」には、他の相続財産と同様に、相続税が課税されます。
そこで、上記規定により、相続放棄者が「葬式費用」を支払っている場合には、遺贈財産から葬式費用を控除することができますよ!っていうロジックなんですね。



 

3. 未成年者控除・障害者控除は?

未成年者控除は、相続人が未成年者の場合、満20歳までの残年数につき、1年あたり10万円を相続税額から控除できる制度です。障害者控除は、相続人が障害者の場合、満85歳までの残年数につき、1年当たり10万円(特別障害者は20万円)を相続税額から控除できる制度です。
 
上記控除は、未成年者本人や障害者本人の税額から引ききれなかった場合、扶養義務者(他の相続人)の相続税額からも差し引くことができます。
 
未成年者や障害者である相続人が「相続放棄」を行った場合でも、相続税計算上は、相続放棄がなかったものとして計算しますので、未成年者控除・障害者控除を行うことが可能です。

Q18 相次相続控除って?

公開日:2017/04/28 最終更新日:2021/08/03


 

短期間に相次いで相続が起こった場合、何度も相続税が課税されると、結構負担が大きくなりますよね。
そこで、こういった相次いで相続が起こった場合の税額を軽減してくれる制度が、「相次相続控除」です。

 

1. 相次相続控除って何?

お亡くなりになった方が、「過去10年以内」に相続税を支払っていた場合、既に支払った相続税の一部を「今回の相続税」から控除できる制度です。

 

(イメージ図)

例えば、お父さんが亡くなった後、10年以内にお母さんが亡くなった場合・・
お母さんが既に支払った相続税(第一次相続)の一部を、お子さんの相続税計算(第二次相続)時に控除してくれる制度です。

一般的に、お父さんとお母さんは「歳が近い」と思いますので、意外と使える制度ですよ!

 

18-01

 

 

2.相次相続控除の要件

  • 第一次相続から第二次相続までの期間が、10年以内であること
  • 第二次相続の被相続人が、第一次相続において「相続人」として課税されている⇒遺贈は含まれない点、注意です。
  • 今回の相続で「相続人」であること⇒遺贈は含まれない点、注意です。

 
よく間違えがちなのは・・
第一次相続でお父さんが亡くなった際、お母さんが配偶者控除などで「相続税を支払っていない場合」はどうでしょう?
 
この場合は、たとえ第一次相続でお子さんが相続税を支払っていたとしても、相似税額控除は利用できません
なぜなら、第一次相続でお母さんは相続税を支払っていないので、要件を満たさないからですね!
 
相次税額控除は、第一次相続で、今回亡くなった方が相続税を支払っている場合ですので、注意しましょう。

 

3. 計算方法

例えば、お父さんが亡くなって(第一次相続)、1年以内にお母さんが亡くなり、今回、お子さんが相続(第二次相続)した場合を前提にします。

 

18-2

(※)1を超える場合は、1となります。

 

第一次相続で、お母さんが支払った相続税額
第一次相続で、お母さんが取得した財産(債務控除後)
今回の相続の遺産総額(債務控除後)
今回の相続で、お子さんが取得した財産(債務控除後)
第一次相続から第二次相続までの経過年数(1年未満切捨)

 

難しそうな式ですが、分解すると・・以下となります。

 

18-3


B – A・・・お母さんが、第一次相続で取得した財産(相続税差引後)です。
C・・・今回の第二次相続の遺産総額です。

 
つまり、第一次相続で取得した財産(税引後)(B – A)のうち、今回の第二次相続でも引き継いだ遺産総額(C)は何%あるのか?を計算しています。
これに第一次相続の相続税額(A)を掛けます。つまり、第一次相続で支払った相続税のうち、上記の%部分(今回もダブっている部分)を計算しています。

 

18-4

今回の第二次相続の遺産総額(C)のうち、今回お子さんが取得する割合です。

 

18-5

1年~10年の間で、年数が経過するにつれ、相次相続控除の額が低くなる式です。
1年未満は切り捨て ⇒ 納税者有利

 

4. 具体例(サザエさんを例にします)

(1) 第一次相続の状況

  • H28年7月に波平が死亡。
  • その際、妻のフネは財産を5億円取得。
  • フネは相続税を1億円支払(A)

 

(2) 第二次相続の状況

  • H29年4月フネ死亡
  • フネの相続財産合計は4億円。
  • うち、サザエが上記4億円を全額相続

 

18-6

 

この例はちょっと極端ですが・・

  • フネは、波平が亡くなった1年以内に亡くなっています
    (1年未満は切り捨て)
  • フネが波平から相続した財産(税引後)は、その後全く減少せずに、全額サザエが相続しています。
    (フネ自身の財産は、波平から相続した財産以外なかったということ)
  • この場合、サザエが第二次相続で取得した財産は、まさに波平さんが元々持っていた財産4億ですよね。
    ⇒なので、フネが第一次相続で支払った相続税1億円は、今回サザエさんの第二次相続の相続税の計算上、全額控除することができるという結論になります

 

5. 添付資料

  • 相続税申告書第7表(相次相続控除額の計算書)
  • 第一次相続の相続税申告書のコピー(第1表・第11表・第11表の2・第14表・第15表)

 

なお、相次相続控除には「当初申告要件」がありませんので、修正申告や更正の請求でも可能です。
また、遺産分割が完了していなくても適用OKです。
 

Q17【令和3年改正】相続税の2割加算になる方・ならない方/死亡保険金や養子・孫の取扱いをわかりやすく解説!

公開日:2017/04/28 最終更新日:2021/09/30

相続税は、財産を取得する人によって、最終的に算出された「相続税額」に20%加算される場合があります。
「相続税の2割加算」と呼ばれるものです。
例えば、「お孫さん」などが財産を取得する場合などは、原則として「相続税の2割加算」の対象となります。

 

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1.対象者・なぜ2割加算?

(1)2割加算の対象者

加算の適用のない方 加算対象者
  • 配偶者
  • 1親等の血族(父母・子)養子も含む
  • 子の代襲相続人
  • 養子縁組をした者(孫養子は除く)
  • 祖父母(2親等)
  • 兄弟姉妹及び代襲相続人(2親等)
  • 孫(2親等)(代襲相続人を除く)・孫養子
  • おい、めい(3親等)
  • 血のつながりがない方(内縁の妻、夫など)

 
養子縁組をした孫は、民法上は、「実子」同様「1親等血族」となりますが、相続税逃れの観点より、2割加算の対象になります。
孫が代襲相続する場合は、孫として相続ではなく子に代わって相続する立場のため、相続税上は、1親等の血族と考えて、2割加算は行われません。ただし、代襲相続した孫が「相続放棄」した場合は、2割加算の対象となります。
 

(2)なぜ2割加算するのか?

2割加算する理由は、以下の通りです(孫が、財産を取得する場合を例)。
 

子供が相続する場合と比べて「偶然性」が高く、そもそも生活の元手となることが 予定されていない。
孫が直接、財産を取得する場合は、お子さんが相続した場合に本来支払うべ き相続税を 1 度スルーすることになるので、相続税を1回免れることになる。

 

2.2割加算の計算方法

 
2割加算が行われる場合の加算金額 = 各人の税額控除前の相続税額 × 0.2
 

3.生命保険の死亡保険金も「2割加算」の対象

死亡保険金(生命保険金)は「みなし相続(遺贈)財産」となり、相続税の課税対象かつ2割加算の対象にもなります。例えば、お孫さんが死亡保険金を受け取る場合は2割加算の対象となります。
 
なお、死亡保険金には、一定の非課税枠が認められていますが、「非課税枠」が認められるのは「相続人」のみです。
例えば、孫(代襲相続人除く)が死亡保険金を受け取る場合は、2割加算かつ「相続人」ではないため「生命保険の非課税枠」の適用もありません。
 

孫が生命保険の受取人として死亡保険金を受け取った場合、遺贈により財産を取得したとみなされ、「3年内生前贈与加算の対象」になります
(通常の場合、孫は相続財産を取得しないため、3年内生前贈与加算の対象外)。
 

4.2割加算は損?

孫などが相続すると「2割加算」となりますので、税負担が多くなることが想定されます。
しかし、二次相続まで考慮すると、「相続税総額」はお得なケースもあります。
なぜなら、確かに2割加算にはなりますが、相続税を1回飛ばすことができるためです
 
つまり、「一次相続」でお子さんが相続した分は、いずれお孫さんが相続する時(二次相続)がやってきます。
この「二次相続」の際にかかる相続税と、今回2割加算で支払う相続税、どちらが安く収まるのか?ということです!

 

5.例題

  • 母が死亡(一次相続)、子1人死亡(二次相続)、孫1人いるものとする。
  • 一次相続時の母の財産は5億円。
  • 二次相続時の法定相続人は孫1人のみとする。簡便的に、二次相続時のお子様の財産は、一次相続で取得した「税引後財産」のみとし、その他の固有の財産は保有していないものとする(遺留分も無視)。
  • 、母死亡(一次相続)⇒ 子死亡(二次相続)した場合のトータルの相続税額は?
  •  
    (1)ケース1  一次相続時に、母から孫へ全額財産を遺贈(一次相続のみで完結・2割加算)
    (2)ケース2  母 ⇒ 子に全額相続(一次相続) ⇒ 子死亡時に孫へ全額相続(二次相続)

 

(1)ケース1(一次相続時に、母から孫へ全額財産を遺贈)

①課税価格の合計額(遺産総額)

5億円
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 1人(法定相続人 子1人)=3,600万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

5億円 - 3,600万円 = 4億6,400万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
子供分 1億9,000万円 4億6,400万円 × 1/1(法定相続割合) = 4億6,400万円
4億6,400万 × 50% -4,200万円 = 1億9,000万円
孫分 0円 孫は「法定相続人」ではないため、相続税総額の計算には関係しない
合計 1億9,000万円

 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
子供分 0円 ケース1は、お子さんは相続しないので ⇒ 子の相続税はゼロ
孫分 2億2,800万円 1億9,000万円 × 1/1(実際相続割合) ×120% = 2億2,800万円
一時相続の税額計 2億2,800万円

 

(2)ケース2(母 ⇒ 子に全額相続(一次相続)・子死亡時に孫へ全額相続(二次相続))

【一次相続の相続税額・子供】

①~④

 上記5.(1)①~④と同じ
 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
子供分 1億9,000万円 1億9,000万円 × 1/1(実際相続割合)= 1億9,000万円
孫分 0円 ケース2は、一次相続では孫は財産取得しないため
相続税額計 1億9,000万円

 
【二次相続の相続税額・孫】

①課税価格の合計額(遺産総額)

5億円 – 1億9,000万円 =3億1,000万円 (一次相続でお子さんが引き継いだ、税引後の財産)
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 1人(法定相続人・孫1人)=3,600万円
 1

③課税遺産総額(① ‐ ②)

3億1,000万円 - 3,600万円 = 2億7,400万円
 

④⑤相続税額の計算・各人の相続税額

2億7,400万円 × 45% - 2,700万円 = 9,630万円

 

(3)合計相続税額(一次相続+二次相続)

1億9,000万円 + 9,630万円 = 2億8,630万円

 

6.結論

2割加算された「ケース1」の方が、相続税額が5,000万以上も安くなっています。
つまり・・今回のケースは、たとえ2割加算があるとしても一次相続で「孫が全額財産を取得したほうが得」ということになります。

 

7.令和3年改正 教育資金贈与の非課税枠との関係

教育資金一括贈与として、1,500万円の非課税制度がありますが、令和3年改正により、以下の変更があります。

満30歳に達するなど「教育資金一括贈与非課税制度」終了前に、贈与者が死亡した場合、一定の場合、死亡日における未消費残額(管理残額)が相続税課税対象となります。
上記の場合、孫・ひ孫に相続税が課税される場合は、「相続税の2割加算」が適用されます(2021年改正)。

 

8.参照URL

(相続税額の2割加算)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm

(相続税率)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm

Q16【相続税配偶者控除の誤解】二次相続を考えると「配偶者」が全額相続しないほうが良い?/計算例付

公開日:2017/04/28 最終更新日:2021/09/23

 

配偶者が相続する場合は、「配偶者控除」がありますので、最低でも1億6000万円までは相続税が課税されません

 
しかし・・実はここに「危険」があります。

配偶者控除があるからといって、「配偶者が全額相続した方がいい」・・とは限りません
二次相続まで考慮した場合、トータルの相続税額が増加するケースが多いです
必要以上に配偶者に相続させるよりも、一次相続でお子様に配分しておく方がよい場合があります
 

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1.二次相続までを考慮すると?

例えば、お父様が死亡した後(一次相続)、お母さまが死亡する(二次相続)場合などが二次相続の代表例です。一般的に夫婦(お父さんとお母さん)は年齢が近いことが多いと思いますので、一次相続があった後、遠くない将来、二次相続が発生します。
 
通常、一次相続よりも、二次相続の方が相続税額は圧倒的に高くなります。したがって、一次相続時点で相続する財産は、二次相続も含めた税額を予想して決めておかないと・・トータルの税額がかなり高くなる可能性があります

 

2.二次相続の税額が高くなる理由

一次相続よりも、二次相続の方が税額が高くなる「理由」は以下の通りです。

(1) 配偶者固有の財産が増える

相続税は、財産が多くなればなるほど税率が高くなる「累進課税」です。
この点、二次相続は、一次相続で相続した財産だけでなく、「配偶者が元々保有する固有の財産」も相続財産となり、課税対象になるため、適用される「相続税率」が、通常は高くなります。

 

(2) 「相続人」が1人減る影響

当然ですが、二次相続の場合、一次相続よりも法定相続人の人数が1人減少します。
法定相続人の減少により、相続税が課税されない「基礎控除」の額が減少するだけでなく、法定相続人が減少する結果、税率等にも影響があります。
相続税は、「相続人が多ければ多いほど」税額が安くなる計算ロジックとなっています
(相続人が多い場合は、一人当たりが実際相続する財産が少なくなり、累進課税によりトータルの相続税額は下がる)

 

3.例題

  • 父・母・子供1人。父死亡(一次相続)⇒母死亡(二次相続)
  • 一次相続時の父固有の財産は1億円。二次相続時の母固有の財産は1億円。
    ⇒簡便的に一次相続で相続した「父固有の財産1億円」は二次相続時点でそのまま残っているものとする。
  • 相次税額控除は無視。その他の特例はないものとする
  •  
    (1)ケース1
    一次相続は「母が全額相続」&「配偶者控除」適用。その後 二次相続。
    (2)ケース2
    一次相続は「法定相続割合での相続」&「配偶者控除」適用。その後 二次相続。

 

4.ケース1の場合

(1) 一次相続の相続税額(母が、父固有の相続財産100百万円を相続)

①課税価格の合計額(遺産総額)

1億円
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 2人(法定相続人)=4,200万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

1億円 - 4,200万円 = 5,800万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
配偶者分 385万円 5,800万円 × 1/2(法定相続割合) = 2,900万円
2,900万円 × 15% -50万円 = 385万円
子供分 385万円 5,800万円 × 1/2 (法定相続割合)= 2,900万円
2,900万円 × 15% – 50万円 = 385万円
合計 770万円

 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
配偶者分 0円 770万円 × 1/1(実際相続割合) = 770万円
⇒配偶者控除適用で税額ゼロ

子供分 0円 770万円 × 0/1(実際相続割合) = 0
一時相続の税額計 0円

 

(2)二次相続の相続税額(子が、母の財産200百万円を相続)

①課税価格の合計額(遺産総額)

2億円 (母固有の財産1億円+母が父から相続した財産1億円)
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 ×1人(法定相続人) =3,600万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

2億円 - 3,600万円 = 1億6,400万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
配偶者分 0万円 二次相続は、お子様のみ
子供分 4,860万円 1億6,400万円 × 1/1 (法定相続割合)= 1億6,400万円
1億6,400万円 × 40% – 1,700万円 = 4,860万円
合計 4,860万円

 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
配偶者分 0円 二次相続は、お子様のみ
子供分 4,860万

1億6,400万円 × 1/1 (実際相続割合)= 1億6,400万円
1億6,400万円 × 40% – 1,700万円 = 4,860万円
二次相続の税額計 4,860万円

 

(3)合計相続税額(一次相続+二次相続)

0円 + 4,860万円 = 4,860万円

 

5.ケース2の場合

(1)一次相続の相続税額

①課税価格の合計額(遺産総額)

1億円
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 2人(法定相続人)=4,200万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

1億円 - 4,200万円 = 5,800万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
配偶者分 385万円 5,800万円 × 1/2(法定相続割合) = 2,900万円
2,900万円 ×15% -50万円 = 385万円
子供分 385万円 5,800万円 × 1/2 (法定相続割合)= 2,900万円
2,900万円 × 15% – 50万円 = 385万円
合計 770万円

 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
配偶者分 0円 770万円 × 1/2(実際相続割合) = 385万円 ⇒配偶者控除適用で税額ゼロ
子供分 385万円 770万円 × 1/2(実際相続割合) = 385万円
一時相続の税額計 385万円

 

(2)二次相続の相続税額

①課税価格の合計額(遺産総額)

1億5,000万円 (母固有の財産1億円+母が父から相続した財産5,000万円)
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 1人(法定相続人)=3,600万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

1億5,000万円 - 3,600万円 = 1億1,400万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
配偶者分 0万円 二次相続は、お子様のみ
子供分 2,860万円 1億1,400万円 × 1/1 (法定相続割合)= 1億1,400万円
1億1,400万円 × 40% – 1,700万円 = 2,860万円
合計 2,860万円

 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
配偶者分 0円 二次相続はお子様のみ
子供分 2,860万円 1億1,400万円 × 1/1 (実際相続割合)= 1億1,400万円
1億1,400万円 × 40% – 1,700万円 = 2,860万円
二時相続の税額計 2,860万円

 

 

(3)合計相続税額(一次相続+二次相続)

385万円 + 2,860万円 = 3,245万円

 

6.結果

ケース1よりもケース2の方が、相続税額が1,000万以上も安くなっています。
つまり・・今回のケースは、一次相続で「配偶者が全額財産を引き継ぐのがベストではない」ということですね。

 

7.まとめ

上記の通り、「配偶者控除」があるからといって、一次相続で「全額相続財産を引き継ぐのがベストではない」ケースがあります。
 
ただし、今回のケースは、一次相続で引き継いだ財産が「そのまま残っているケース」を前提としていますので、二次相続までの間に、配偶者が、相続財産も含めてどれだけ財産を消費するか?で・・結論が変わってきます。つまり・・厳密には、将来の「二次相続」の時点で、配偶者にどれくらいの財産が残っているのか?を予測しないと正しい答えはでません
 
大きな話でいうと・・二次相続の際に、「配偶者固有の財産」も含め、「課税される相続財産」が少なければよい!ということになります。そうすると・・「一次相続」の際に「配偶者」に相続させる分も、おのずと方向性は見えてきます。
配偶者が一次相続で相続する財産は、ご自身がお亡くなりになる「二次相続」の間までに最低限「消費可能な資金」があればよい!ということになります。
「配偶者固有の財産」が多い場合、一次相続では、配偶者は全く相続しない!という意思決定もありえます。

 
通常は、近い将来二次相続が訪れます。目の前の税額だけではなく、次の相続(二次相続)も考慮して、一次相続での「遺産配分」を決めておくことをお勧めします。
 

Q15【1億6000万円まで無税】相続税の配偶者控除とは?婚姻期間や子供の有無・申告は必要?(相続税額軽減)

公開日:2017/04/28 最終更新日:2021/09/16


 

配偶者が相続する場合は、「相続後の老後生活を保障」する観点から、相続税上、税額が軽減される制度があります。
相続税の配偶者控除と呼ばれています。
 
配偶者が相続する場合は、1億6000万円までは「相続税非課税」・・という話は聞いたことがあるかもしれません。
これは正しいのですが・・1億6000万円を超えた場合でも、配偶者控除により「相続税非課税」となるケースがありますので、必ずしも1億6000万円に縛られるわけではありません。
 
今回は、相続税の配偶者控除制度(厳密には「配偶者の相続税額軽減」制度)につき解説します。
 

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1. 相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは?

(1)相続税の配偶者控除とは?

配偶者が実際相続する相続財産が、1億6,000万円までは相続税がかからない制度です。子供の有無は問いません。
また、配偶者の実際相続財産が、たとえ1億6,000万円を超えた場合でも、民法で定められた法定相続分以内であれば、相続税がかかりません
 
つまり・・相続財産が100億円あったとしても、配偶者が「実際相続する遺産額が法定相続割合を越えない」限り、相続税は非課税となります
 

【イメージ】
(配偶者の「実際課税価格」が1億6,000万円 or「法定相続分」より少ない場合)
⇒相続税はかからない

 

15-2
(配偶者の「実際課税価格」が1億6,000万円 or「法定相続分」より多い場合)
⇒相続税がかかる。

 

15-3

 

(2)具体例

●遺産総額3億円
●法定相続人は、妻と子1人(法定相続割合 各々1/2)

 
配偶者の「実際相続金額」ごとに、相続税の課税対象になるかどうかをまとめると以下の通りとなります。

 
【遺産総額3億円・奥様の法定相続割合1/2】

配偶者
法定相続分(1)
配偶者
実際相続分(2)
相続税
課税対象
理由
1.5億円 1.5億円 ゼロ 法定相続割合での相続のため
1.5億円 1.6億円 ゼロ 法定相続割合は超えるが、実際相続財産1億6000万以下のため
1.5億円 1億円 ゼロ 実際相続財産1億6000万以下のため
(法定相続割合以下のため)
1.5億円 3億円
(全額相続)
課税 実際相続財産が法定相続割合を超え、かつ1億6000万超のため

 
●「実際取得する遺産額が法定相続割合を越えない」限り、相続税はかかりませんので、 (1) < (2)にならない限り、相続税はかかりません。
●また、(1) < (2)の場合でも、実際課税価額が1億6,000万円までは相続税がかかりません(上記②)。
●上記④の場合の相続税額については、後ほど具体例で解説します。
 

2. 配偶者控除額の金額算定方法

配偶者控除は、以下の式で算定されます。


 

 

①・・課税価額の合計額×配偶者の法定相続分 (1億6,000万円未満の場合は1億6,000万円)

 

②・・配偶者の実際課税価格 (千円未満切捨)

 
計算式は、少しややこしいのですが・・上記式の意味は、以下の通りです。

 

  • 分子は、「配偶者の法定相続分」と、「実際相続分」を比較しています。
    ⇒少ない方なので、少なくとも「法定相続分まで」は税金がかからないということ。
  • また、分子は、たとえ「実際課税価額」が「法定相続分」を越えたとしても
    ⇒160百万円までは、相続税がかからないことを示しています。

 

3. 具体例 

 

(例)遺産総額が3億円・法定相続人は配偶者と子供1人(法定相続割合1/2ずつ)
● ケース1 配偶者と子供が「法定相続割合」で相続した場合
● ケース2 配偶者が全額相続した場合

 

(1)ケース1 配偶者と子供が「法定相続割合」で相続した場合

①課税価格の合計額(遺産総額)
3億円
 
②基礎控除額
3,000万円+600万円×2人(法定相続人)=4,200万円
 
③課税遺産総額(①‐②)
3億円-4,200万円=2億5,800万円
 
④相続税総額の計算

相続税額 計算式
配偶者分 3,460万円 2億5,800万円 × 1/2(法定相続割合) = 1億2,900万円
1億2,900万円 × 40% – 1,700万円 = 3,460万円
子供分 3,460万円 2億5,800万円 × 1/2 (法定相続割合)= 1億2,900万円
1億2,900万円 × 40% – 1,700万円 = 3,460万円
合計 6,920万円

 
⑤各人の相続税額

相続税額 計算式
配偶者分 0円 6,920万円 × 1/2(実際相続割合) = 3,460万円
3,460万円 - 3,460万円(配偶者控除)(※) = 0
子供分 3,460万円 6,920万円 × 1/2(実際相続割合) = 3,460万円

 
(※)【配偶者控除の金額計算】
 相続税総額6,920万円 × 1.5億(※A) ÷ 3億(課税価格の合計額)= 3,460万円
 
(※A)次のうち、少ない額
 ①3億(課税価格の合計額)×1/2(配偶者の法定相続分) =1億5,000万(1億6,000万円未満の場合は1億6,000万円)
  ⇒ 1億6000万円
 ②配偶者の実際課税価格 ⇒1億5,000万円
  ① > ② ⇒ ②少ない方 1億5,000万円
 

(2)ケース2 配偶者が全額相続した場合

①~④ ケース1と同様
 
⑤各人の相続税額

相続税額 計算式
配偶者分 3,229.4万円 6,920万円 × 1/1 (実際相続割合)= 6,920万円
6,920万円 - 3,690.6万円(配偶者控除)(※) =3,229.4万円
子供分 0万円

 
(※)【配偶者控除の金額計算】
 相続税総額6,920万円 × 1.6億(※A) ÷ 3億(課税価格の合計額)= 3,690.6万円

(※A)次のうち、少ない額
 ①3億(課税価格の合計額)×1/2(配偶者の法定相続分) =1億5,000万(1億6,000万円未満の場合は1億6,000万円)
  ⇒ 1億6000万円
 ②配偶者の実際課税価格 ⇒3億円
  ① < ② ⇒ ①少ない方 1億6,000万円
 

4. 配偶者控除の要件・添付資料

(1)配偶者控除の要件

配偶者控除を適用して、「相続税ゼロ」になる場合でも、申告は必要となります。
配偶者控除を適用するためには、下記の要件すべてを満たさなければいけません。

 

戸籍上の配偶者であること 内縁関係は×です。婚姻期間については特に期間の定めはありませんので、婚姻期間1か月でも配偶者控除は可能です。
申告期限までに遺産分割が完了(※) 申告期限までに「遺産分割完了」していることが要件となります。
申告書を税務署に提出 配偶者控除の結果、納付続税がゼロになった場合でも「申告書提出」は必要です。

 
(※)ただし、下記5.の例外があります

(2)税務署添付資料

  • 相続税申告書 第5表「配偶者の税額軽減額の計算書」
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明書

 

(3)遺産分割前に配偶者が死亡した場合は?

被相続人と配偶者は年齢が近いことが多いため、相続開始後、遺産分割協議が完了する前に配偶者が亡くなってしまう場合があります。
この場合でも、一次相続時点では生存していたため、通常通り、亡くなった配偶者が生存しているものとして遺産分割を行い、配偶者相続分については、配偶者控除が可能です。
 

5. 遺産分割未了の場合の例外

配偶者控除の要件として、申告期限までに「遺産分割が完了」していることが要件となりますが、一定の場合、例外が認められています。遺産分割が未了の場合、いったん各相続人の法定相続分で相続税の申告を行い、配偶者は、配偶者控除の適用を受けない形で申告・納税を行います。

(1)申告期限後3年以内の分割見込書

相続税の申告の際、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、申告期限から3年以内に遺産分割できれば、その時点で「配偶者控除」を受けることが可能です。
この場合、分割成立日の翌日から4か月以内に税務署に対して「更正の請求」が必要です。

 

(2)遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書

上記(1)で、訴訟や調停等により、3年経過日までに分割できない場合でも、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出した場合は、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内であれば、配偶者控除が認められます。
 

なお、配偶者控除は、「期限後申告」でも適用可能です
例えば、一度相続税申告を行った後、新たな遺産が見つかった場合に「修正申告」を行うケースもありますが、この場合でも「配偶者控除」を受けることは可能です。

6. 配偶者が全額相続するのがよいわけではない

「配偶者控除」があるからといって、全額配偶者が相続すればよい!というわけではありません。
近い将来、お子様への二次相続が発生します。通常、二次相続の方が一次相続よりも相続税はかなり高くなりなります
 
したがって、一時相続の際、配偶者が全額相続するよりも、一部子供が相続した場合の方が、トータルの相続税額は安くなる場合があります。
こちらについては、別途まとめておりますので、Q16をご参照ください。
 

7. 参照URL

(配偶者の税額の軽減)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm

 

Q13【生前贈与注意】相続開始前3年以内の贈与には「相続税」が課税される?孫は対象外?

公開日:2017/04/28 最終更新日:2021/08/31

生前贈与については、年間110万円までの「贈与税非課税枠」があります。
しかし・・死亡直前に贈与をした場合、相続税逃れの観点から、「贈与」がなかったものとされる制度があります。
「相続開始前3年以内生前贈与加算」と呼ばれています。

 

1. 生前贈与加算って?

例えば、相続直前に「贈与」して相続税が安くなるのなら、みなさん贈与しますよね?
このような「駆け込み贈与」を防止するために設けられた制度です。
生前贈与加算の制度は、「相続税」の制度です。「贈与税」の制度ではありません。
 

(1) どんな制度?

亡くなった方から、生前に「贈与を受けた場合」に、贈与を受けた人の相続税の課税価格に加算する制度です。
相続開始前3年以内の贈与」が対象です。
 
つまり、相続開始前3年内に贈与を受けたとしても、贈与がなかったものとして「相続税」の対象になるんですね。
例えば、お亡くなりになる直前に、相続人に現金110万円を渡した場合、贈与税は課税されませんが・・相続税計算上は、「贈与前の金額」に戻される結果、「相続税」が課税されることになります。
この持ち戻しは、たとえ、生前贈与時に贈与税を支払っていても、同様です。
 

 
(応当日) 例えば、令和6年10月30日に死亡した場合は、令和3年10月30日が「応当日」となります。
 

(2) 既に贈与税を支払っている場合は?

生前贈与で加算される財産につき、生前贈与時に、既に「贈与税を支払っている」場合もあると思います。
これらの財産が、「生前贈与加算」されると、贈与税に加えて・・さらに相続税がかかることになってしまいますね。
これでは「二重課税」になってしまいますので、既に支払った贈与税については、相続税の計算上控除できますので、ご安心を。
 

(3) 暦年贈与非課税枠110万の枠内の贈与も対象?

基礎控除額110万円以下の財産であっても、「相続開始前3年内」であれば、加算の対象となります。

 

2. 具体例

●母と法定相続人子供1人(20歳以上)
●令和4年~令和6年に、母から子供に毎年500万ずつ贈与した(500万円×3年=1,500万円)。
●上記贈与前の母の財産は1億円とし、令和7年に母が死亡した。
●簡便的に、母死亡時の財産は、1億円から、上記贈与分のみ減少しているものとする(=8,500万円)。
●相続財産は、法定相続人が全額相続するものとする。
(1)ケース1 生前贈与加算がないケース
(2)ケース2 生前贈与加算があるケース

 
結論を先にお伝えしておくと、生前贈与加算がないケース1の方が、300万程度もトータル税額が安くなります
 

3. ケース1(生前贈与加算がないケース)

(1) 生前贈与時の贈与税の計算

(500万円-110万円(基礎控除))×15%-10万円 =48.5万円
48.5万円 ×3年 =145.5万円
 

(2)相続税の計算

①課税価格の合計額(遺産総額)

1億円‐500万円×3年=8,500万円
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 1人(法定相続人)=3,600万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

8,500万円 - 3,600万円 = 4,900万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
子供分 780万円 4,900万円 × 1/1 (法定相続割合)= 4,900万円
4,900万円 × 20% – 200万円 = 780万円

 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
子供分 780万円 780万円 × 1/1(実際相続割合) = 780万円

 

(3) トータルの税額

贈与税145.5万円+相続税780万円 =925.5万円

4. ケース2(生前贈与加算があるケース)

(1) 贈与税の計算

(500万円-110万円(基礎控除))×15%-10万円 =48.5万円
48.5万円 ×3年 =145.5万円
 

(2)相続税の計算

①課税価格の合計額(遺産総額)

1億円(生前贈与1,500万円はなかったものとされるため)
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 1人(法定相続人)=3,600万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

1億円 - 3,600万円 = 6,400万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
子供分 780万円 6,400万円 × 1/1 (法定相続割合)= 6,400万円
6,400万円 × 30% – 700万円 = 1,220万円

 

⑤各人の実際相続税額
相続税額 計算式
子供分 1,010万円 1,220万円 × 1/1(実際相続割合) = 1,220万円
1,220万円 -145.5万円(生前贈与税支払分マイナス) =1,074.5万円

 

(3) トータルの税額

贈与税145.5万円+1,074.5万円 =1,220万円

5. 3年以内生前贈与加算の対象は?

(1) 対象となる方

  • 亡くなった方から「相続開始前3年以内」に贈与を受けた方
  • 相続や遺贈により財産を取得している方

 

遺贈とは、「遺言」によって財産を贈与することです。つまり、「相続人や遺言による受贈者」に贈与した場合だけ持ち戻しされます。逆に言うと・・例えば、孫など、法定相続人でない人(遺言による遺贈の方は×)などへの贈与は、「生前贈与加算」の対象となりません。
 
そう考えると・・孫への生前贈与 ⇒「生前贈与加算の対象外」⇒ 駆け込み贈与可能なので、相続税対策になりますね!
ただし、孫でも加算されるケースがありますので、後ほど解説します。

 

(2) 対象となる財産

生前贈与は、「現預金」だけに限りません。不動産や株式など「換金性」があるものも、すべて「生前贈与の対象」となります。贈与財産の「贈与時の価額」が加算の対象となります(相続時ではない)

 

6. 孫が3年内生前贈与加算になる場合も・・

孫は相続人の地位を有しませんので、孫が相続開始前3年以内に贈与を受けても、原則として相続により財産を取得しないため、3年以内生前贈与加算の適用を受けることはありません。
 
しかし・・孫でも例外的に「3年内生前贈与加算」の適用を受ける場合があります。以下のケースです。
 

代襲相続人として財産を相続する場合 孫が代襲して相続人の地位を有することにより、相続により財産を取得したときは、生前贈与加算の適用を受けます。
遺言に基づき財産を取得する場合 被相続人の遺言に基づき、遺贈により財産を取得した場合、生前贈与加算の適用を受けます。
生命保険金の受取人となっている場合 被相続人が保険料を払い込んでいた生命保険契約の受取人として保険金を受け取ったときは、遺贈により財産を取得したとみなされ、生前贈与加算の適用を受けます。

 
上記の③は、よく間違える論点ですので注意しましょう。
なお、「相続人ではない」お孫さんが死亡保険金等を受け取る場合は、生命保険の非課税枠(500万×相続人の人数)の適用もありませんので、ご留意ください。
 

7. 加算されない例外は?

上記の生前贈与加算ですが、「納税者の財産保護」の観点から、例外的に以下の場合は加算されません。
加算されないということは相続税がかからないのでお得ですね!
 

 

 
(令和3年税制改正大綱、内閣府第4回税制調査会資料(2020年11月13日より)
現在の日本では生前贈与加算の期間は「3年」ですが、諸外国ではかなり長い年度の贈与が「相続税」の対象となっています(アメリカは生前贈与すべて、ドイツは10年、フランスは15年)。したがって、将来的には日本の「生前贈与」の期間を長くするなどの改正があると思われます。
 

8. 参照URL

(贈与財産の加算と税額控除)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm

(贈与税率)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm

(相続税率)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm