Q93【死亡後に入金】未支給年金・税金還付金・保険過誤納還付金・未収給与・弔慰金等には相続税はかかる?

 最終更新日:2023/11/24 閲覧数:96,152 views

DR169
 

お亡くなりになられた後に、「被相続人が受け取るべき」お金が入金される場合があります。
例えば「高額医療費の返戻金」や「未支給年金」、「保険料還付金」などです。
これらは・・相続税の課税対象となるのでしょうか?
(相続後に、被相続人が「支払うべき取引」は「債務控除」をご参照ください)

1. 健康保険・市役所関係

 

名称 内容 相続財産か? 理由
高額医療費 生前に支払済の医療費のうち、「自己負担限度額」を超えた分が返戻されるもの 相続財産
  • 高額医療費は、過去の支払額(相続財産減少済)の返金に過ぎないため
  • 所得税上は非課税(健康保険法第62条)
過誤納還付金
(国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料等)
生前に支払済の保険料で、「納めすぎ」の金額が還付されるもの 相続財産
  • 同上(過去の支払額の返金に過ぎない)(※)
葬祭費・埋葬費等給付金
(国民健康保険や健康保険)
葬儀を行った遺族等に「葬祭費等」として支給されるもの(5万円程度) 該当しない
  • 本人ではなく、葬儀や埋葬を行った人が受けとるべき給付のため
  • 所得税上は非課税(健康保険法第62条他)
重度心身障害者医療費助成金 障害者本人と家族の負担を軽減するため、医療費の一部を県や市で助成するもの 相続財産
  • 生前に本人が受け取るべき給付のため
  • 所得税上は医療費控除のマイナス

(※)逆に、納付の場合(例 未納国民健康保険料等)は「債務控除」の対象。


 

2. 未支給年金関係

(1)公的年金

公的年金(国民年金や厚生年金等)は、お亡くなりになられた月(相続発生月)分まで受給する権利があります。
公的年金の支払いは、偶数月の15日に「前月分と前々月分」が後払支給されます。
例えば、7月死亡の場合、6・7月分の支給は8月 ⇒したがって、 相続開始時点では必ず「未支給の年金」が存在します。

 
(例 7月5日に死亡した場合)

受給可能な年金 支給時期 未支給年金
7月分まで受給可能 8月15日(6・7月分) 6・7月分

(※)6月15日支給分(4・5月分)は、生前に受取済のため、「未支給年金」の取扱いとはなりません。

 
なお、「未支給年金」とは、「相続発生時点で受給していない年金」のことを指しますので、「受給権」の有無ではなく、「生前に、実際に受取ができていない年金」を意味します(「個人年金」受給中の相続で、遺族が相続する「年金受給権」は別の論点になります。この「年金受給権」は相続財産に含まれます。)

 
「未支給年金」や「その他の一時金等」の相続税課税関係は、以下の通りです。
 

名称 内容 相続財産か? 理由
未支給公的年金 死亡した者に支給すべき公的年金給付で、生前に支給されていない年金 該当しない
  • 未支給年金は「遺族固有の権利」として保障されているため(最高裁判決 平成7年11月7日)
  • 所得税上は遺族の「一時所得」として課税対象(※)
未支給遺族年金
(公的年金)
「国民年金」や「厚生年金」の受給者が死亡した場合、受給要件を満たす遺族が受け取ることができる年金で、生前に支給されていない年金 該当しない
  • 遺族年金も、「遺族の生活保障」の観点から相続税は非課税となります。
  • 「公的年金の未支給年金」と異なり、所得税も課税されません。
未支給寡婦年金
(公的年金)
国民年金1号被保険者(自営業者等)で、10年以上保険料を納めた夫が亡くなった際に、妻が受け取ることができる年金で、生前に支給されていない年金 該当しない
  • 寡婦年金も、「遺族の生活保障」の観点から相続税は非課税となります。
  • 遺族年金と同様、所得税も課税されません。なお、一定要件を満たす寡婦は、「寡婦控除」という所得税上の恩典もあります。
死亡一時金
(国民年金)
遺族一時金
(国民年金基金)
家族が死亡したときに支給される一時金 該当しない
  • 相続人が受け取るべき給付のため(国民年金法第133条、国民年金法第25条)
  • 所得税上は遺族の「一時所得」として課税対象

(※)死亡時までに「実際支給済の年金」は、被相続人の「準確定申告」(雑所得)で申告し、「死亡時までの未支給年金」は、相続人の「確定申告」(一時所得)として申告します。
 

(非課税対象の未支給年金の範囲)

国民年金法、厚生年金保険法、恩給法、旧船員保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、旧農林漁業団体職員共済組合法

 

(2)私的年金

私的年金とは、公的年金以外の年金で、企業年金や個人年金が該当します。
私的年金の相続税課税関係は、以下の通りです。
 

名称 内容 相続財産か? 理由
未支給年金
(私的年金)
企業年金や個人年金などの私的年金 相続財産
  • 企業年金は、「年金受給権」として相続税課税対象
  • 個人年金は、「年金受給権」として相続税課税対象

 
私的年金の相続税課税関係については、Q95で、別途まとめています。ご参照ください。
 

3. 税金関係

 

名称 内容 相続財産か? 理由
所得税等の還付金 生前に支払済の所得税・住民税等で、「納めすぎ」の金額が還付されるもの 相続財産
  • 生存中の潜在的な請求権が、死亡により顕在化したため(※)
還付加算金
(確定申告)
確定申告書提出後に「還付される税金」に対応する利息的なもの 相続財産
  • 暦年終了時に、被相続人に「還付請求権」が潜在的に存在しているため
還付加算金
(準確定申告)
準確定申告提出後に「還付される税金」に対応する利息的なもの 該当しない
  • 準確定申告の場合は、相続人が申告することで「還付加算金請求権」を原始的に取得するもののため
  • 所得税上は遺族の雑所得として課税対象

(※)逆に、納付の場合は「債務控除」の対象。


 

4. 勤務先等関係

 

名称 内容 相続財産か? 理由
弔慰金・花輪・葬祭料 亡くなった人の功労や家族へのお見舞として支給されるもの 該当しない
  • 名目は弔慰金であっても、実質上「退職手当金等」に該当するものは相続税の課税対象
  • 所得税は非課税(所施令30条)
療養補助金・入院見舞金 被相続人に対し生前の療養や入院見舞金として支給されるもの 相続財産
  • 生前に本人が受け取るべき給付のため
未収給与・賞与 死亡後に支払われる生前の給与・賞与 相続財産
  • 生前に本人が受け取るべき給付のため
  • 所得税は非課税となります(所基通9-17)

 

5. 参照URL

(未支給国民年金)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/02/09.htm
 

(確定申告書提出後に死亡した被相続人に係る還付加算金の課税関係)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/02/04.htm
 

(被相続人の準確定申告に係る還付金等)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/02/01.htm
 

(弔慰金)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4120.htm

 

(死亡後に支給期が到来する給与)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hotei/7/05.htm
 

(相続財産とされる死亡者の給与等、公的年金等及び退職手当等)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/04.htm#a-04
 

6. YouTube

 
YouTubeで分かる「未支給年金に相続税はかかる?」
 

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