相続の豆知識 相続人関係




Q62 内縁の妻・胎児・腹違いの兄弟は法定相続人?

公開日:2018/02/27 最終更新日:2021/08/25

 

1. 法定相続人の範囲

相続が発生した場合、民法で「相続人になる方」は決められています。
法定相続人は以下の方に限定されていますので、下記の方以外が法定相続人になることはありません。
 

  • 配偶者
  • 直系尊属(父母や祖父母)
  • 兄弟姉妹

 


 

2. 内縁の妻や夫は?

婚姻届を届け出ていない「事実婚関係」にある相手は、「内縁の妻や夫」と呼ばれます。
これらの内縁の夫や妻は「法定相続人」にはなりません。
「法律上」婚姻関係にある者のみが、法定相続人となる「配偶者」とされています。


3. 非嫡出子は?

非嫡出子なんて・・あまり普段聞かない名前ですよね。
摘出子・非摘出子っていうのは、以下の方を指します。

 

嫡出子 法律上「婚姻関係」にある者の間に生まれた子
非嫡出子 法律上「婚姻関係」にない者の間に生まれた子(内縁の夫・妻との子)

 

法定相続人には、嫡出子だけでなく、「非嫡出子」も含まれます。



 

4. 養子は?(普通養子・特別養子)

実子と養子の違いは、以下となります。

 

実子 血縁関係のある子
養子 血縁関係のない法律上の子(養子縁組の届出が行われている者)

 

法定相続人には、実子だけでなく、「養子」も含まれます。
また、養子には2種類ありますが、普通養子、特別養子、どちらの場合も、法定相続人となります。
 
なお、普通養子の場合は、養親だけでなく、血縁関係のある両親の法定相続人の地位も併せ持ちます。
(特別養子の場合は、血縁関係のある両親との親族関係は終了し、養親のみの法定相続人となります)。



 

5. 胎児は?

胎児とは、おなかの中にいる赤ちゃんとのことです。
胎児は、相続に関しては「すでに生まれたものとみなす」と定められています。
ですので、相続が発生した場合、被相続人の妻のお腹にいる「胎児」は法定相続人として取り扱われます。
ただし、例外的に、「死産であった場合」は、法定相続人になりません。



 

6. 腹違いの兄弟姉妹(半血)

62-1
 

子Aの両親が離婚し、その後結婚した「後妻」との間に生まれたB。
この場合の、AとBの関係は、「腹違いの兄弟姉妹」となります。
「腹違いの兄弟・姉妹」でも、民法上は「兄弟姉妹」と取り扱われますので、「法定相続人」になります。
 
上記の例では、腹違いのAとBは「兄弟関係」になりますので、例えば、もしAが亡くなった場合、BはAの兄弟としてAの「法定相続人」となります。



 

7. 実子と養子の関係

62-2

 

実子と養子は、民法上は「兄弟姉妹」と取り扱われますので、「法定相続人」になります。
 
上記の例では、実子Aと養子Bは「兄弟関係」となりますので、例えば、もし実子Aが亡くなった場合、養子Bは、Aの兄弟としてAの法定相続人となります。

Q61 遺贈と死因贈与の違い?

公開日:2018/02/07 最終更新日:2021/08/25


 

前回、相続と遺贈の違いをお伝えしましたが、「遺贈」に似たもので、「死因贈与」という概念があります。
どちらも「相続人の死亡によって効力が発生」する点は共通しています。
しかし、法的な性格や、税金の取扱いで異なる点があります。

 

1. 遺贈・死因贈与って何?

(1) 遺贈とは?

遺贈は、「遺言」によって、特定の人に財産を分け与えることです。

 


 

(2) 死因贈与とは?

死因贈与は、生前に「贈与契約」を行い、贈与者の死亡によって贈与の効力が発生するものです。
簡単にいうと、自分が死んだらあなたに1億円贈与する!みたいな契約です。

 

2. 共通点

何となく・・似てますよね?共通点は以下になります。

  • 贈与者の死亡を原因として効力が生じる
  • 財産が無償で受贈者に承継される

 

法律上、「死因贈与」は「贈与契約」ですが、「遺贈」と共通点が多いことから、民法上は、「遺贈に関する規定を準用」しています。
(民554条)

 

3. 法律上の比較

法律上は、遺言による単独行為(遺贈)なのか?当事者間の贈与契約(死因贈与)なのか?という違いがあります。

 

遺贈 死因贈与
手続方法 遺言による「被相続人の一方的な意思」で行う。 両者の「贈与契約」で行う。
遺贈者(贈与者)の撤回 遺贈者の意思で自由に撤回できる。 同左(遺贈の規定準用 民法554条)
受遺者の放棄・撤回 受遺者は自由に遺贈の放棄が可能。 「書面によらず、まだ履行が終わっていない」ものは撤回可能。
(民法550条)

 

 

4. 税法上の比較

(1) 相続税

相続税法では、「死因贈与」は、「遺贈」と同じ取り扱いとなります。
つまり、相続税の課税対象となりますので「相続税」がかかります。
死因贈与は、「贈与」という名前がついていますので、「贈与税」と勘違いされる方もありますが、「相続税」の課税対象となる点に留意しましょう。

 


 

(2) 不動産取得税・登録免許税

特定遺贈・死因贈与のどちらの場合も、原則的に「不動産取得税」が課税されます。
ただし、遺贈の場合、相続人への遺贈には不動産取得税がかかりません。
(死因贈与の場合は、たとえ相続人への死因贈与でも「不動産取得税」がかかる)
また、遺贈・死因贈与どちらの場合も、「登録免許税」が課税されます。
ただし、相続人への遺贈の場合は「税率」が安くなっています。
(死因贈与の場合は、相続人への死因贈与でも税率は高い)

Q60 相続と遺贈の違い

公開日:2018/02/07 最終更新日:2021/08/25

 

相続とよく似た概念で、「遺贈」というものがあります。
どちらも、被相続人の財産を引き継ぐ方法ですが、法律上だけでなく、相続税上の取扱いも異なります。

 

1. 法律上の違い

(1) 相続とは?

相続とは、被相続人の財産を、包括的に法定相続人が引き継ぐことをいいます。

 

(2) 遺贈とは?

被相続人の財産を、「遺言」により特定の人物に無償で与えることをいいます。

 

(3) 主な違い

相続 遺贈
引き継げる方 相続できるのは、民法で定められている「法定相続人」のみ 法定相続人以外の第三者など自由に選ぶことができる。
財産 プラスの財産もマイナスの財産も包括的に引き継ぐ 遺贈の対象となる財産を、遺言などで自由に決めることができます
遺留分は除く)。

 

なお、「遺贈」と「贈与」も、似ていますが、性格は少し異なります。
贈与は、「両者合意」のうえで行いますが、遺贈は「被相続人の一方的な意思」で行います。


 

2. 相続税計算方法の違い

遺贈は、贈与とは異なりますので、贈与税の対象とはなりません。
遺贈は、相続に近い性格を有するため、「相続税の対象」となります。
相続税計算方法は、遺贈でも、基本的に相続の場合と同じです。
ただし、遺贈の場合、「相続税額の2割加算」など特別な計算が定められているものがあります。
「遺贈」で、相続税と同じ取扱いがされるもの、適用できないものをまとめると、以下のとおりとなります。
法定相続人に対する遺贈は除きます


 

(1) 適用できないもの

 

基礎控除額 受贈者は、基礎控除額の計算ではカウントされない
死亡保険金・死亡退職金の非課税枠 遺贈で保険金等を引き継いだ人には、適用なし
未成年者・障害者の税額控除 法定相続人が条件となるため、遺贈には適用なし
相次相続控除 相似相続控除は「相続人」が条件のため、遺贈には適用なし

 


 

(2) 適用されるもの

 

小規模宅地等の特例 小規模宅地等の特例の要件は、「被相続人の親族」。
相続人以外の方も、「遺贈」で特例を受けられる可能性はある。
生前贈与加算による贈与税額控除 遺贈の場合も適用される。

 


 

3. 不動産取得税・登録免許税

相続と遺贈では、不動産取得税、登録免許税の取り扱いが異なります。
相続の場合、不動産取得税はかかりませんが、遺贈(特定遺贈)の場合は、不動産取得税がかかってきますので、ご留意ください。
なお、相続人への遺贈は、相続と同様の取り扱いとなります。

 

相続(法定相続人) 遺贈(法定相続人以外)
不動産取得税 かからない かかる(特定遺贈の場合のみ)
登録免許税 税率安い 税率高い

 


 

4. ご参考~遺贈の効力~

遺言で相続人が「遺贈」の意思を表していても、被相続人が亡くなる前に、受遺者が先に死亡していた場合は「無効」になってしまいますので注意です。
この場合、受遺者の子への「代襲相続」は発生しません。

Q58 数次相続と相続放棄の関係

公開日:2017/12/27 最終更新日:2021/08/25

 

相続放棄の期限(3か月)内に数次相続が発生した場合、亡くなった相続人の法定相続人である子は、第一次相続につき、「相続放棄」ができるのでしょうか?
 
第一次相続の相続人が、「相続放棄」の手続を行う前に、相続人が亡くなってしまった場合です。
 
ちょっとややこしいですね。
事例をもとに解説します。

 

1. 事例

  • 莫大な借金があった祖父がなくなった。
  • 父は、祖父の相続につき「相続放棄」をする予定であったが、祖父がなくなった直後に亡くなってしまい、相続放棄の手続を行っていなかった。
  • 祖父には莫大な借金がある一方、父には「財産」がある。
  • 子は、祖父の相続放棄を行った上、父の「財産」を相続することはできるか?


 

2. 結論

  • 上記の例の場合、第二次相続の相続人(子)は、父が保有していた「第一次相続権」と自分が保有する「第二次相続権」を併せ持つ立場となります。
    この場合、子は、それぞれの相続(第一次及び第二次相続)につき、「相続放棄」と「相続の承認」が可能です。
    つまり、子は、祖父の第一次相続のみを放棄し、父の第二次相続だけを承認することが可能です。
  •  

  • 逆は×です。
    つまり、上記の例で、子が「第二次相続を放棄」し、「第一次相続を承認」することはできません。
    なぜなら、相続放棄をした場合、最初から相続人ではなかったとみなされるからです。
    つまり、第二次相続(父の相続)を放棄した時点で、最初から相続人ではなくなるため、第一次相続(祖父の相続)で本来父が保有していた祖父の「相続権」を引き継ぐ権利を放棄したことになります。
    したがって、第二次相続を放棄した時点で、第一次相続を承認することはできなくなります。
  •  

  • なお、第一次相続の「放棄の期間」は、第二次相続の熟慮期間内に行うことができます。
    上記の例では、子が父の死亡を知り、自分が相続人になったことを知った時点が第一次相続及び第二次相続の3か月間の熟慮期間の起算点になります(民法916条)

Q57 代襲相続と数次相続の違い

公開日:2017/12/27 最終更新日:2021/08/25

 

1. 代襲相続と数次相続

代襲相続」とは、被相続人が亡くなった時点で、本来相続人になるはずだった人が既に亡くなっている場合に、その本来相続人になるはずだった人の子や孫などが、本来の相続人に代わって相続人になる制度です。
 
一方、「数次相続」とは、被相続人が亡くなった時点では相続人は生きていたが、「当初相続発生、遺産分割協議確定」に、相続人が亡くなってしまった場合、当該相続人の「法定相続人」が権利を受け継ぐことをいいます。
 

 

2. 両制度の違い

両制度の違いは、「相続人の死亡時期」が、被相続人より前か?後か?という点になります。
 
「代襲相続」の場合は、本来の相続人が、被相続人よりも先に死亡しているため、その代わりに本来の相続人の子が法定相続人になるケースです。
 
一方、「数次相続」の場合は、被相続人が亡くなった後に、相続人が亡くなるケースですので、被相続人死亡時には「相続人」は生存しています。
 
この結果、以下の違いが生じます。
 

 

(1) 相続財産の取得者の違い

それぞれの場合、「相続財産を直接取得する人」が異なってきます。
代襲相続の場合、相続財産を直接取得する方は「代襲相続人」になります。
一方、数次相続の場合は、相続財産を直接取得する方は、「死亡した相続人」になります。
数次相続は、あくまで死亡した相続人に代わって、「相続人の法定相続人」が遺産分割協議を行っているにすぎません。


 

(2) 相続人の配偶者の取扱い

代襲相続の場合、既に死亡している本来の相続人の「配偶者」に代襲相続権はありません。
この結果、代襲相続の場合、被相続人の遺産分割協議を行う者には、「本来の相続人の配偶者」は含まれません。
一方、数次相続の場合は、あくまで、死亡した相続人が保有していた「第一次相続の相続人としての地位」を相続するのが誰か?というお話です。
つまり、配偶者は、相続人の「法定相続人」ですので、元々亡くなった相続人が保有していた「第一次相続の相続人としての地位」は、法定相続人としてそのまま引き継ぐことになります。
この結果、数次相続の場合、第一次相続の遺産分割協議を行う者には、「相続人の配偶者」が含まれることになります。

 

57-1

 

57-2

 


 

3. まとめ

まとめると以下の通りです。

 

代襲相続 数次相続
ケース 被相続人より前に、相続人が死亡していたケース 被相続人死亡後に、相続人が死亡したケース
相続財産の直接取得者 代襲相続人が相続財産の取得者
(亡くなった相続人ではない)
亡くなった相続人が相続財産の取得者
(数次相続人ではない)
相続人の配偶者の取扱い 被相続人の「遺産分割協議」を行う者には、本来相続人だった方の配偶者は含まれない。
(配偶者は代襲相続人にはなれない)
第一次相続の被相続人の「遺産分割協議」を行う者には、相続人の配偶者が含まれる。
(配偶者は相続権を引き継ぐ)

Q56 数次相続で「申告期限延長」が認められる事例

公開日:2017/12/27 最終更新日:2021/08/25

 

前回、数次相続の場合には、「相続権を相続した方」に「申告期限延長の特例」が認められるケースがあることをお伝えしました。
 
しかし、「相続権を相続した方以外」には「申告期限の延長」が認められていません
 
具体的にはどういうケースでしょうか?

 

1.  申告期限の延長が認められる場合


 

(1) 事例

サザエさんに例えます(毎回、例えがサザエさんで・・すみません)。
波平(父)、フネ(母)、サザエ(長女)、カツオ(長男)、ワカメ(次女)、マスオ(長女の夫)、タラちゃん(長女の子)
この度、波平が亡くなり、波平の「遺産分割協議確定」に、フネが亡くなりました。
フネ自身には、サザエ、カツオ、ワカメ以外に相続人はいないものとします。

 

  • 波平 平成29年1月1日死亡
  • フネ 平成29年5月1日に死亡(波平の遺産分割協議確定

 
56-1
 



 

(2) 波平の遺産分割協議

 

フネ死亡前の波平の相続人の地位 もし、フネが死亡していなければ、「波平の相続人の地位」は、妻であるフネ&子であるサザエ、カツオ、ワカメが保有していました。
波平の相続人の地位 フネ死亡により、フネが有していた「波平の相続人の地位」は、子であるサザエ、カツオ、ワカメが引き継ぎます。
波平の遺産分割協議 上記の結果、「波平の遺産分割協議」は、子供である①サザエ②カツオ③ワカメ(次女)の3人で行います。

 



 

(3) 波平の相続税申告書期限

 

サザエ・カツオ・ワカメ フネの代わりに、サザエ、カツオ、ワカメが行う波平の相続税申告期限は11月1日⇒3月1日に延長されます。

 

  • 申告期限の延長期間については、Q55をご参照ください



 

2. 申告期限の延長が認められない場合


(1) 事例

サザエさんに例えます。
波平(父)、フネ(母)、サザエ(長女)、カツオ(長男)、ワカメ(次女)、マスオ(長女の夫)、タラちゃん(長女の子)
この度、波平が亡くなり、波平の「遺産分割協議確定」に、サザエが亡くなりました。
サザエ自身には、マスオ、タラちゃん以外に相続人はいないものとします。

 

  • 波平 平成29年1月1日死亡
  • サザエ 平成29年5月1日に死亡(波平の遺産分割協議確定

 
56-2
 


(2) 波平の遺産分割協議

 

サザエ死亡前の波平の相続人の地位 もし、サザエが死亡していなければ、「波平の相続人の地位」は、妻であるフネ&子であるサザエ、カツオ、ワカメが保有していました。
波平の相続人の地位 サザエ死亡により、サザエが有していた「波平の相続人としての地位」は、マスオ(夫)&タラちゃん(子)が引き継ぎます。
波平の遺産分割協議 上記の結果、「波平の遺産分割協議」は、①フネ(妻)、②カツオ(長男)、③ワカメ(次女)、④サザエから「波平の相続人の地位」を引き継いだ人(マスオ、タラちゃん)で行います。

 



(3) 波平の相続税申告書期限

 

フネ・カツオ・ワカメ 11月1日(当初予定通り)
マスオとタラちゃん
(サザエから「波平の相続人の地位」を
引き継いだ人)
サザエの代わりにマスオとタラちゃんが行う「波平の相続税申告期限は、
11月1日→3月1日に延長されます。

 

  • サザエ死亡により、「波平の相続人の地位」を引き継いだマスオとタラちゃんが行う「波平相続税の申告期限」は3月1日に延長されます。
    (⇒マスオとタラちゃんが行う「サザエの相続税申告期限」=3月1日と同日になる)。
  •  

  • 一方、サザエ死亡の影響を受けない、フネとカツオ、ワカメが行う「波平の相続税申告期限」についての延長はなく、当初予定通り11月1日となります。
  •  

  • 申告期限の延長期間については、Q55をご参照ください。

Q55 数次相続の相続税申告期限

公開日:2017/12/06 最終更新日:2021/08/25

 

数次相続の場合、「第一次相続の相続税申告期限」につき、例外的な取扱いがあります。
事例をもとに解説します。

 

1. 事例

 

  • 父死亡(平成29年1月1日)
    ⇒相続人 母・子1人
  • 父の遺産分割未了のまま、母死亡(平成29年5月1日)
    ⇒相続人 子1人

 

(イメージ図)
 
55-1
 



 

2. 父の財産に係る「相続権」の地位

本来、母が保有していた「父の財産にかかる相続権」の地位は、子が相続することになります。
その結果、本来、母が申告義務者であった第一次相続の申告については、子が申告義務を引き継ぎます。



 

3. 相続税申告期限

① 一般的な相続税申告書の申告期限
相続税の申告は、死亡後、10か月以内となります。
例えば、上記例で、数次相続であることを無視した場合の「相続税申告期限」は、以下となります。

 

相続人 通常の申告書提出期限
父の相続税申告書期限 母・子 平成29年11月1日
母の相続税申告書期限 平成30年3月1日

 

② 数次相続の場合の申告期限の例外(期限延長)
数次相続の場合は、第一次相続の申告書の提出期限につき「延長の特例」があります。
第一次相続に関しては、本来、母が実施すべきであった父の相続税申告書の申告期限のみ延長され、第二次相続と同じ申告期限(平成30年3月1日)となります
ただし、「相続権を相続した方」だけに延長期限が認められ、それ以外の方には延長が認められない点に注意です。
ちょっとわかりにくいですね。
次回、数次相続の「相続税申告期限」が延長されるケース、延長されないケースにつき、事例で解説します。

Q54 数次相続とは?遺産分割協議や相続税への影響は?申告期限の例外は?登記は省略できるのか?

公開日:2017/12/06 最終更新日:2022/01/08


 

通常、父と母の年齢は近いことが一般的ですので、例えば、父が亡くなり、間もなく母が亡くなってしまうケースもあるかもしれません。数次相続とは、「相続手続完了前」に、さらに相続が重なっている状態のことです。
例えば、父の相続手続完了前に、母がなくなってしまう場合などが代表例です。
実務では、配偶者が「遺産分割前に死亡するケース」は意外とよくあります。

 
今回は、こういった「数次相続」が発生した場合の、相続税や相続税申告書への影響につきまとめます。
 

1. 数次相続とは?

数次相続とは、「相続手続完了前」に、さらに相続が重なっている状態のことです。
具体的には、被相続人の「遺産分割協議確定」に、相続人も死亡してしまい、「被相続人の相続権」の地位を、相続人の法定相続人が引き継ぐことです。

 

2. 数次相続の具体例

例えば、父が亡くなって(一次相続)、母と子供が相続人となったが、「遺産分割協議」が終了しないうちに、相続人であった「母」も亡くなってしまった(二次相続)ケースが、「数次相続」です。

 

  • 父死亡(令和4年1月31日)
    ⇒相続人は母・子1人
  • 父の遺産分割未了のまま、母死亡(令和4年5月31日)
    ⇒相続人 子1人

 

 

 

この場合、母保有の「父の相続権」は、母死亡により、「母の相続人」である「子」に移動します。
つまり、子は、「父親の財産」の遺産分割協議(母と子が相続人)だけでなく、「母親の財産」の遺産分割協議(子のみが相続人)も行わなければいけません。
「母親の相続財産」には、母が一次相続で相続するはずだった「父の財産」も含まれていますので、非常にややこしくなりそうですね。

 

3. 遺産分割協議への影響(法律上の影響)

上記例の場合、母は本来、「父の遺産を相続する地位」を有していたはずですので、この地位は、母の相続人(子)が承継することになり、子が、母に代わって一時相続の遺産分割協議を進めることになります。
 
つまり・・数次相続の場合、一次相続の遺産分割協議に、二次相続の相続人も参加することになります。
 
上記例のように、母の「法定相続人」が子供だけの場合は簡単ですが、子がいない場合などは・・母方の親や兄弟姉妹など「法定相続人」が多くなる場合があります。
遺産分割は、相続人全員で行う必要がありますので、これらの方が、一次相続の遺産分割に参加することになれば・・「遺産分割協議」が非常に難航する可能性があります。

 

4. 相続税への影響

数次相続が発生した場合の、相続税への影響や留意点は以下の通りです。

 

(1)法定相続人は増えない

数次相続は、単に相続が重なっているだけですので、数次相続により法定相続人が増えるわけではありません
数次相続により、「相続人の地位」を相続する方が2名以上いた場合も、1回目の相続の法定相続人が増えるわけではありません。

第一次相続にかかる「相続税の基礎控除額」については、「数次相続」があってもなくても、影響はありません。
あくまで「被相続人の相続」(一次相続)が発生した時点の基礎控除額( 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 )となります。

(2)法定相続割合も変動なし

数次相続があったからといって、法定相続割合が変動するわけではありません。
二次相続の相続人が2名以上いた場合でも、法定相続分は1人分であり法定相続割合が増えることはありません。

 

(3)相次相続控除が可能(相続税法20条)

相次相続控除とは、相続開始前10年以内に、相続税が課されていた場合に、相続税額から一定の金額を控除してくれる制度です。数次相続に関わらず、第二次相続の場合、第二次相続税額から一定額が控除される「相似税額控除」の適用が受けられる場合があります。詳しくはQ18を参照ください。

 

(3)各種特例の活用

数次相続の場合も、「配偶者の税額の軽減」及び「小規模宅地等の特例」の適用は可能です。
これらの特例を活用することで、一次相続及び二次相続全体の相続税額の軽減を図ることができます。
 
また、第一次相続で相続税を支払う形にすることで、第二次相続の相続税につき、「相次相続控除」を受け、相続税総額が安くなるパターンもあります。
さまざまなパターンを「シミュレーション」してみるのもありかもしれません。
 

(4)遺産分割未了の場合

数次相続の場合は、遺産分割協議が難航するケースがあります。
例えば、先の例で、第一次相続の遺産分割協議が未了のまま、第二次相続(母)の相続税申告期限がきた場合は、父の遺産のうち、母の法定相続分(1/2)に相当する部分を母の遺産として相続税の課税価格に加算して申告します(相続税法第55条)

実務上は、父死亡による「第一次相続」の「遺産分割協議」で、母の遺産引継額をゼロにすれば、子が「母が有していた父の相続権の地位」を承継することはなくなりますので、すっきりするかもしれません。

 

5. 相続税申告書期限の延長

数次相続だからといって、第一次相続の相続税申告書の提出が省略されるわけではありません。
数次相続の場合は、二次相続人が一時相続人の代わりに相続税を申告する必要があります。第一次相続の「相続税申告書」の内容は、通常の相続税申告書と同じです。

 
ただし、数次相続の場合、第一次相続の申告期限につき、例外的な取り扱いがあります(相続税法27条の2)。
 

(1)具体例

先ほどの具体例の場合をあてはめます。

  • 父死亡(令和4年1月31日)
    ⇒相続人は母・子1人
  • 父の遺産分割未了のまま、母死亡(令和4年5月31日)
    ⇒相続人 子1人

 

(2)数次相続の場合の申告期限の例外(期限延長)

相続税の申告は、死亡後、10か月以内となりますが、数次相続の場合は、第一次相続の申告書の提出期限につき「延長の特例」があります。
第一次相続に関しては、本来、母・子が実施すべきであった父の相続税申告書の申告期限のみ延長され、第二次相続と同じ申告期限(令和5年3月31日)となります

 

相続人 通常の申告書提出期限 申告期限の例外
父の相続税申告書期限 母・子 令和4年11月30日 令和5年3月31日
母の相続税申告書期限 令和5年3月31日 令和5年3月31日

 
ただし、「相続権を相続した方」だけに延長期限が認められ、それ以外の方には延長が認められない点に注意です。
次回、数次相続の「相続税申告期限」が延長されるケース、延長されないケースにつき、事例で解説します。
 

6. ご参考~相続登記への影響~

不動産を相続した場合、名義変更(相続登記)を行う必要があります。
通常は、数次相続の場合でも、相続の都度、名義変更と登記費用が発生しますが、中間の相続が単独名義である場合に限り、「中間省略登記」が可能とされており、登記費用が節約できます。
(ただし、登記上の記載は、2回の相続の記載になります)。

なお、最終の相続が単独である必要はありません。最終の相続人が複数の場合でも中間省略登記は可能です。
 

Q53【外貨建て相続財産】外貨預金・外貨建て生命保険等の相続税評価方法/海外口座や海外不動産も相続税の対象か?

公開日:2017/12/06 最終更新日:2022/01/19

 

相続財産に「外貨の財産」が含まれている場合があります。
相続税の申告は日本円で行う必要がありますので、外貨建ての財産は日本円に換算する必要があります。
また、国内だけではなく、海外に所在する財産も、原則として相続税の課税対象となります。こういった「海外財産」も、日本円での換算が必要となります。
今回は、相続税上の「外貨財産の換算方法」や、「海外資産と相続税の関係」につきお伝えします。
 

1. 外貨建て相続財産の具体例

外貨預金や、トラベラーズチェック、外貨建て保険証券や外貨建て年金などが対象となります。また、海外に所在する資産も、原則として相続税の課税対象となります。
 

2. 外貨建て資産換算方法

(1) 外貨建て資産換算方法

国税庁HPでは、下記のように決められています。(No4665)
原則として、納税者の取引金融機関が公表する課税時期(相続又は遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)における最終の対顧客直物電信買相場(TTB)又はこれに準ずる相場により行います。
対顧客直物電信買相場とは、金融機関が顧客から外貨を買って邦貨を支払う場合(顧客側にとっては外貨を邦貨に交換する場合)の相場をいいます。課税時期にその相場がない場合には、課税時期前の相場のうち、課税時期に最も近い日の相場によります。

 

(2) POINT

  • お亡くなりになられた日のTTB(最終値)により算定します。
  • お亡くなりになられた日が、土日祝日の場合や、取引所の相場がない場合は、原則として、その相続開始日前のレートで換算します。
  • 公表されているTTBは、納税者(相続人)の取引金融機関です。亡くなった方(被相続人)ではありません。ただし、メインバンクがなかったり、過去の為替相場を公表していないケースもありますので、任意の金融機関の為替レートを使用しても、実務上は問題ないと思われます。

 

(~ご参考~)

TTB 銀行が外貨を買い取る際の適用レート
TTS 銀行が外貨を販売する際に適用レート
TTM TTBとTTSの中間値

 

(3) 例題

相続開始日:202×年12月31日
外貨普通預金残高 : 5,000 US$
202×年12月31日に相場がなく、前日の相場は以下の通り

 

(12月30日の相場)

TTB TTS TTM
104.5 102.5 103.5

 
(計算式)
5,000×102.50(TTB)=512,500円 ⇦相続財産 となります。

3. 外貨建て債務の場合は?

外貨建ての借入金等の債務は、相続税上「債務控除」をすることができます。当該外貨建債務も、外貨建資産と同様に円に換算が必要となりますが、TTS(対顧客直物電信売相場)での換算が可能です(財産基本通達4-3)。
 
(財産基本通達4-3)
・・(注)外貨建てによる債務を邦貨換算する場合には、この項の「対顧客直物電信買相場」を「対顧客直物電信売相場」と読み替えて適用することに留意する。

 

4. 先物外国為替契約の場合

先物外国為替契約の締結により、その財産につき決済相場が確定している場合は、当該先物外国為替契約により「確定している為替相場によって換算します(同4-3)
 

5. 海外資産も課税

(1) 原則課税

海外にある資産についても、原則として相続税が課税されます。例えば、外貨預金は、国内にある外貨預金だけとは限りません。海外に所有する外貨預金があるケースもあります。これらについても、原則として相続税が課税されますのでご留意ください。

(2) 例外

ただし、財産取得時に日本国籍を有しており、死亡日前10年を超えて外国に住んでいる場合等は、外国の財産に日本の相続税が課税されません。

(3) 海外不動産の評価は?

海外の不動産を相続税評価する場合も、日本の「財産評価基本通達」に基づき、相続開始日のTTBで円換算を行います。ただし、海外では「路線価」のない国もあり、国内の不動産と同じように評価できないケースがあります。その場合は、「市場での売買価格」や、現地の不動産会社に査定を依頼、不動産鑑定士等の専門家に鑑定を依頼することになります。

(4) 外国税額控除あり

海外の財産については、現地所在地国で「相続税相当額」の課税がある場合があります。この場合、外国で納税した相続税相当額につき、日本の相続税課税額から控除可能です。

(5) 申告しなくてもばれないか?

原則として、「海外の財産」も相続税の課税対象となります。
現在は、世界各国の税務当局が、各地の預金情報を交換していますので、海外の金融機関の外貨預金の情報も、日本の税務当局は把握していると思われます。つまり・・申告漏れは、ばれる可能性は高いと思われます。
なお、被相続人の海外資産については、所得税申告書に添付される「財産債務調書」「国外財産調書」が参考になります。

 

6.参照URL

国税庁 No4665  外貨(現金)の邦貨換算

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4665.htm
 

財産評価基本通達4-3(邦貨換算)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01/01.htm#a-4_3
 

外貨(現金)の評価

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/15/05.htm
 

No.4138 相続人が外国に居住しているとき

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4138.htm
 

7.YouTube

Coming Soon

Q52 生命保険金の負担者と相続税・贈与税・所得税の関係

公開日:2017/11/10 最終更新日:2022/01/08

 

1. 死亡保険金と各種税金の関係

受取人が取得した保険金には、何らかの税金がかかります。
一般的な死亡保険(被相続人=被保険者、負担者、受取人が遺族)の場合、「死亡保険金」には相続税が課税されます。

しかし、契約形態や保険料負担者が誰か?によって、相続税ではなく、所得税や贈与税がかかるケースもあります。

 

保険料負担者、受取人との関係で、課税される税金を比較すると以下の通りとなります。

 

被保険者 保険料負担者
(契約者)
受取人 課税される税金の種類
お父さん お父さん お母さん 相続税(※1)
お父さん お母さん お母さん 所得税(※2)
お父さん お母さん お子さん 贈与税(※3)

 

(※1)負担者(契約者)と被保険者が同一&受取人が家族

お父さんが、受取人をお母さんとして、自分自身で保険を支払っている場合です。

お父さんの「みなし相続財産」として、お母さんに「相続税」が課されます。

先ほどの例のパターンですね。
 
500万円×法定相続人数が、「非課税限度額」として認められますので、通常は、このパターンが、一番税金がかからないケースが多いと思います。

 
 

(※2)負担者(契約者)と保険金受取人が同一の場合

お母さんが、受取人「お母さん自身」で、お父さんに保険を掛けているケースです。

自分が掛けた保険に対して、自分で受け取るので「所得税」となります。
 
「保険料負担者」と「保険金受取人」が同一の場合、受け取る死亡保険金には、所得税(一時所得)が課税されます。

 

一時所得課税対象額 =(保険金 + 配当金 – 実払込保険料 – 50万円)× 1/2

なお、年金形式で受け取った時は。「雑所得」となります。

 
 

(※3)負担者(契約者)・被保険者・保険金受取人が異なる場合

お母さんが、受取人を子供として、お父さんに保険を掛けているケースです。
お母さんから子供への贈与として「贈与税」が課税されます。
 
「保険料負担者」「被保険者」「保険金受取人」がそれぞれ異なる場合、受け取る保険金は、「保険料負担者」から「受取人」に対する贈与として、贈与税が課税されます。