相続の豆知識 生前対策




Q120【生前贈与】年間110万円までの「贈与税非課税枠」とは?契約書や証拠は必要?贈与税率は?

公開日:2021/08/01 最終更新日:2021/10/14


 
将来の相続税の節税を考えて、生前に贈与しておきたい!と考える方は多いですね。
贈与税については、年間110万円までの非課税枠があります。
この非課税枠を活用すれば、相続税の節税は可能です。
しかしながら、制度を正しく理解しておかないと、想定外に課税されるケースがありますので、注意点もあります。
今回は、「贈与税の年間非課税枠110万円」の内容と、留意事項につき解説します。

 

0.YouTube

 

 

1. 贈与税の計算期間は?

(1) 贈与税の集計期間

贈与税の集計期間は毎年1月1日~12月31日までとなります。
「年間110万円」を超えた場合、贈与税申告義務があり、贈与を受けた翌年3月15日までに税務署に「贈与税申告書」を提出します。
 

(2) 誰が申告?

贈与税を申告する人はもらった方です。
渡した方ではありません。
 

(3) 申告すると職場にばれる?

誤解されている方もおられますが、贈与税は、住民税や社会保険への影響はありません。
申告結果が職場に通知されることはありませんので、ご安心を。


 

2. 贈与税非課税枠110万円の内容

(1) 110万円は、贈与を受ける側1人あたりの金額

贈与税年間110万円の非課税枠は、贈与を受ける側1人に対する上限金額となります。
贈与を行う側ではありませんので、注意しましょう。
 

(例)
父親から、長男と長女に、それぞれ110万円ずつ贈与 贈与を受ける側(長男、長女)は、それぞれ年間贈与額110万円の非課税枠の範囲内のため、贈与税は課税されない。
父親と母親から、長男に対して110万ずつ贈与した場合 贈与を受ける側(長男)の年間贈与額は220万円(110万円+110万円)のため、贈与税の非課税枠を超えます。したがって長男には贈与税が課税されます。

 

(2) 贈与税の非課税枠は、家族以外もOK

贈与税の非課税枠は身内の方への贈与に限りません。
赤の他人への贈与についても贈与税非課税枠110万円は認められます。
つまり・・財産を渡すことができる方がたくさんいれば、税金とられることなく、いくらでも贈与は可能ということですね。


 

3. 具体例

  • 父はいない。母の相続人は子供3人(将来的に相続人の増減はないものとする)。
  • 今後20年間、母から3人の子どもに、毎年110万ずつ贈与するものとする。
  • 母の現在の財産は1億円(相続税評価額)とし、簡便的に、25年後は上記贈与財産のみ減少し、相続税評価額は変わらないものとする。
  • 25年後に母が亡くなり、相続人3人が法定相続割合で相続した場合の相続税は?
  • 簡便的に、母死亡時の相続財産は、上記贈与財産のみ減少するものとする。
  • その他の特例はないものとし、贈与の要件はすべて満たしているものとする。

 

(1) 母死亡時(25年後)の相続税額

① 20年間の贈与金額合計

110万円/年 × 3人 × 20年 = 6,600万円(贈与税非課税)
 

② 母死亡時の相続財産

1億円 – 6,600万円 = 3,400万円
 

③ 相続税額

3,400万円 < 基礎控除4,800万円(※)以下のため相続税はかからない
(※)3,000万円 +(600万円 × 3人(法定相続人の人数))
 

(2) 仮に20年間 贈与しなかった場合の相続税額

(1億円 – 4,800万円)÷ 3人 = 1,733万円
(1,733万円 × 15% – 50万円)× 3人 = 約630万円(相続税額)
 

(3) 結論

どうですか?毎年110万の贈与といっても・・バカにできませんよね。
20年間蓄積すると、相続税は630万円も安くなることがわかります。


 

4. 留意事項

(1) 3年内生前贈与加算の対象

上記のとおり、贈与税は、年間110万円までの「非課税枠」がありますが、相続開始前3年以内に贈与した金額については、贈与しなかったものとみなすルールがあります。
相続開始前3年以内の贈与」と呼ばれます。
贈与がなかったものとされる・・ということは、贈与額が「持戻し」され、相続財産として課税されるということになりますので、注意しましょう。
 

(2) 贈与の有効性

「生前贈与」が法律上有効に成立するには、贈与者と受贈者両方に贈与を行う・受ける意思が必要です。
勝手に贈与した場合は、法律上、「贈与」が有効に成立しません。
例えば、親が子供の口座に毎年110万円を勝手に貯金している場合は、贈与は成立せず、結果的にこれらは贈与した側(親側)の相続財産と判定されます。
名義預金」と呼ばれます。
 

(3) 定期贈与との関係

定期贈与とは、あらかじめ、一定期間、一定金額の贈与が決められている贈与のことです。
例えば、1,000万円を、事前の取り決めに基づき100万円ずつ10年間に分けて行う贈与は「定期贈与」となります。
「定期贈与」の場合は、贈与開始時に「すべての金額を贈与する意思があった」とみなされ、贈与額合計額が贈与税課税対象となります(定期金に関する権利)。
上記の例ですと、1,000万円 – 110万円 = 890万円に対して、贈与開始時に贈与税が課税されます。
定期贈与とみなされないためには、「贈与契約書」を作成しておく方が安全です。
 
なお、毎年「同額の支払」だからといって「定期贈与」とみなされることはありません。
ただし、金額や時期は、毎年異なる方が、「その都度贈与額を決めて支給している」という説明は・・しやすいかなと思います。


 

5. 贈与の客観的な証明書類

(1) 贈与税申告書

贈与の事実を証明するために「贈与税の申告」しておくことが考えられます。
贈与税の申告をしておくと「贈与の事実」を証拠として残すことが可能です。
ただし、「贈与税申告書」は、あくまで贈与を受けた受贈者が作成するものであり、贈与者・受贈者双方の合意を示す証拠にはなりません。
 

(2) 贈与契約書の作成

贈与契約書は、贈与者と受贈者それぞれが署名押印をするため、双方が合意した根拠資料となります。
契約日付は必ず記載します。
 

(3) 通帳での履歴を残す

上記の「贈与契約書」に基づき、実際の贈与は、通帳での履歴を残しておく方が安全です。
なお、通帳は、贈与用に新たに作ったものの場合は、贈与者が作成した(=名義預金)と指摘される可能性がありますので、注意が必要です。


 

6. ご参考 贈与税率

(1) 直系尊属から20歳以上の者(子・孫)への贈与(特例税率)

 

(2) 上記以外(一般税率)


 

7. 参照URL

(NO4402)贈与税がかかる場合

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm

 

Q119 賃貸アパート贈与時の「負担付贈与」の適用関係

公開日:2021/05/01 最終更新日:2021/06/27


 
前回の「負担付贈与」の続きです。
今回は、賃貸アパートのオーナーが「アパートを贈与」する場合を考えます。
アパート経営をする場合、入居者から「敷金・保証金」を預かるケースがあると思います。
こういった「敷金・保証金」は、アパートオーナーの立場から見ると、将来入居者に返還しなければいけない「債務」となります。
この点、賃貸アパートを贈与する場合の「税金」は、入居者から預かった「保証金相当額」を、贈与者 ⇒ 受贈者に支払うかどうか?で金額に大きな違いが生じます。


 

1. 保証金相当額を支払有無により「負担付贈与」の適用関係が異なる

賃貸アパートを贈与する場合は、贈与税等の税金が生じます。
この点、贈与者が贈与する際に、マンション入居者から預かっている「保証金相当額」を、受贈者に支払うかどうか?で「負担付贈与」の適用関係が異なってきます。
 

(1) 保証金相当額を支払わない場合

「保証金相当額」を贈与者 ⇒ 受贈者に支払わない場合、贈与者は、受贈者に「保証金返還義務」が引き継がれることになります。
この場合は、財産と債務をセットで贈与=「負担付贈与」となります。
負担付贈与の場合、対象不動産は、「相続税評価額」ではなく「市場価額(時価)」で評価され、通常の贈与よりも評価額が高くなります。
 

(2) 保証金相当額を支払う場合

一方、「保証金相当額」を贈与者 ⇒ 受贈者に支払う場合は、受贈者の負担は相殺され、「負担付債務」ではなく「通常の贈与」として扱われます。
「敷金返還債務」を承継させる意図が、贈与者・受贈者間になく、実質的な負担はないと判断されるためです。
通常の贈与の場合は「相続税評価額」で評価され、「負担付贈与」よりも、評価額は低くなります。


 

2. 例題

  • 賃貸アパートを、父から息子(20歳以上)に贈与する
  • 賃貸アパートの取得価額3,000万円・固定資産税評価額3,500万円・時価5,000万円とする
  • 入居者から預かっている敷金は200万円とする

 

(1) 敷金相当額を支払わない場合(=負担付贈与)

父(贈与者) 所得税課税なし
(200万 – 3,000万)≦ 0
父は、取得価額3,000万円のマンションを、息子の債務負担額200万で売却したと考えます。
この場合は父に所得は生じないため、所得税はかかりません。
息子(受贈者) 贈与税課税
(5,000万 – 200万 – 110万)× 55% – 640万円 = 1,939万円
息子は、父から時価5,000万のマンションを「敷金債務200万」で購入したと考えます。
差額4,800万円は父親からの贈与とみなされ、贈与税が課税されます。

 

 

(2) 敷金相当額を支払う場合(=通常の贈与)

父(贈与者) 所得税課税なし この場合、息子の債務負担は相殺され、「負担付債務」ではなく「通常の贈与」として扱われます。
したがって、贈与側の父には所得税課税は行われません。
息子(受贈者) 贈与税課税
(3,500万円 ×( 1 – 借家権割合0.3 )= 2,450万
(2,450万円 – 110万)× 45% – 265万円 = 788万円
息子は、アパートの贈与を受けることになるため、「贈与税」が課税されます。
ただし、負担付贈与ではなく、「通常の贈与」と取り扱われるため、相続税評価額での評価が可能です。

 

  • 敷金相当額を、贈与者 ⇒ 受贈者に支払う場合、相続税評価、すなわち家屋の場合は「固定資産税評価額」を基準として、借家権利割合を反映した相続税評価額で計算することが可能です。
    「暦年贈与」の基礎控除額110万円を差し引いた残額に贈与税が課税されます。

  • 息子が現金で受け取った敷金200万円は、債務見合いの金額を受け取っただけのため、「贈与税」はかかりません。

 

 

(3) 結論

敷金相当額を贈与者 ⇒ 受贈者に支払うするかしないか?で、受贈者に生じる「贈与税」の金額が大幅に違ってきます。
結論的には、敷金相当額の支払いをした方が税額は大幅に安くなります。


 

3. 参照URL

(賃貸アパートの贈与に係る負担付贈与通達の適用関係)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/14/08.htm


 

4. YouTube

coming soon..
 

Q118 不動産とセットで「住宅ローン」を贈与する方法は?負担付贈与と通常の贈与の違い

公開日:2021/04/01 最終更新日:2021/06/29


 
「住宅ローン付のマンションを子供に贈与したい!」というケースもあると思います。
こういった、「不動産」+「負債」をセットで贈与する行為は「負担付贈与」と呼ばれています。
「負担付贈与」の場合は、贈与を受ける側だけでなく、贈与する側にも税金が課税される場合がありますので、注意が必要です。
 

1. 負担付贈与とは?

負担付贈与は、財産を贈与するだけでなく債務(借入金・預り保証金など)もセットで贈与することです。
通常の贈与と異なるのは、財産を与えるだけでなく、見返りとして「債務の負担」を約束する点です。

 

2. 具体例

  • マンションを贈与する代わりに、住宅ローンの負担をしてもらう
  • 財産を贈与する代わりに、死ぬまで介護してほしい
  • 土地を贈与する代わりに、土地の一部を利用させてほしい

 
負担する債務は、「第三者」に対するものも含まれます。
父が子に財産を贈与する代わりに、母を介護してほしいなどです。


 

3. 「通常の贈与」と「負担付贈与」の評価額の違い

不動産を贈与する場合、通常の贈与の場合は「相続税評価額」で贈与税を計算するのに対し、負担付贈与の場合は、「通常取引価額」つまり市場価額で評価を行います。
不動産の「相続税評価額」は、概ね「時価の8割程度」の金額になりますので、「通常の贈与」よりも「負担付贈与」で財産を渡す方が評価額は高くなります。
 

通常の贈与 相続税評価額で評価
負担付贈与 市場価格(時価)で評価


 

4. 具体例

  • 父から息子(20歳以上)に土地を贈与する(土地の所有期間7年)
  • 父が土地取得時の価額は3,000万円、息子への贈与時時価(市場価額)は5,000万円
  • 息子への贈与時の土地相続税評価額4,000万円
  • 贈与時において、父は借金3,500万円あるものとする
  • その他の特例はないものとする

 

(1) 土地のみを贈与するケース(通常の贈与。借金は贈与しない

① 父の税金(贈与者)

贈与の場合、贈与者には、所得税、贈与税とも課税されません。
 

② 息子の税金(受贈者)

受贈者は、土地相続税評価額4,000万円に対して、贈与税が課税されます。
(4,000万円 – 110万円)× 50% – 415万円 = 1,530万円
 

 

(2) 土地とセットで借金も贈与するケース(負担付贈与)

① 父の税金(贈与者)

借金をセットで贈与する「負担付贈与」の場合、贈与者(父)は、3,000万円で取得した土地を、息子に借金免除額3,500万円で売却したと考えます。
したがって差額の500万円に対して「譲渡所得税」が課税されます。
500万 × 20.315%(5年超譲渡所得税率)= 101.5万円の所得税が発生します。
 

② 息子の税金(受贈者)

受贈者は、5,000万(時価)の土地を、借金引受額3,500万円で購入したと考え、差額の1,500万円は父親からの贈与とみなされ、贈与税が課税されます。
(1,500万円 – 110万円)× 40% – 190万円 = 366万円
 


 

5. 不動産を「負担付贈与」する場合のメリットデメリット(生前贈与のメリット)

 

メリット デメリット
  • 生前贈与の場合は、贈与者の意思を確実に反映して財産を渡すことができるため、無用な相続争いを避けることができる。
  • 不動産を負担付贈与する場合は、贈与時の時価での贈与となるため、将来値上がりが見込まれる不動産の場合は、現時点で贈与する方が有利となる。
  • 負担付贈与は、贈与ではなくあくまで時価での「売却」となるため、贈与者、受贈者どちらにも税金がかかる場合がある。
  • 生前贈与の場合は、相続時に適用可能な小規模宅地等の特例(最大8割減)の適用ができない。
  • 相続の際は課税されない不動産取得税(原則4%、現在は1.5%)が課税される。また、登録免許税は、相続の際よりも高い税率(2%)


 

6. 結論

負担付贈与の場合は、贈与時の時価(市場価額)での取引とされ、贈与者、受贈者それぞれに税金が課税される可能性がある点に、注意が必要です。
ただし、贈与税は通常の所得税よりも税率が高いため、必ずしも「負担付贈与」の場合に、税金総額が高くなるとは限りません。
不動産を「贈与」するのか「負担付贈与」で渡すのか?は、対象不動産の時価や、借金等の金額を総合的に勘案し、税金総額をシミュレーションの上で意思決定することが大切となります。
 

Q117 不動産賃貸を「法人化」することによるメリット

公開日:2021/03/01 最終更新日:2021/06/29

 
個人でのマンション経営の場合は、「賃料収入」を受け取れば受け取るほど個人に帰属する「相続財産」は増加します。
一方、個人⇒法人化すれば、「賃料収入」は法人に帰属するため、その後の「相続財産」を抑えることが可能です。
今回は、不動産賃貸経営を「法人化」するメリット・デメリットにつき解説します。

 

1. 法人化によるメリット

(1) 相続税の観点

将来の相続財産の圧縮 法人化により不動産を法人所有にした場合、その後の「賃貸収入」はすべて法人に帰属するため、「相続財産」は増加せず、相続財産圧縮につながります。
また、法人の株主をお子様等にすることで、法人にプールされる賃料収入を含めた財産評価は、すべて「お子様保有の株式評価」に変わります。
不動産の評価方法が変わる 法人化により不動産を法人所有にした場合、対象不動産の評価は「不動産評価」から「株式評価」へと変わります。
非上場株式の評価では、一般的に株価が低くなる類似業種比準価額」を利用できる場合があり、一般的に不動産現物で保有するよりも評価を引き下げることが可能です。
ただし、設立後3年間は「純資産価額方式」での評価となり、評価額は高くなります。
遺産分割が容易になる 一般的に、不動産現物は「遺産分割」が困難です。
しかし、法人化すれば不動産現物が「株式」という証券に変わります。
不動産と異なり、株式の場合は、株数に応じた分割が可能となるため、遺産分割が容易となります。
相続資金の確保 法人で「賃料収入」の資金をストックしておくと、将来、個人側で相続税等による資金負担が発生した場合も、法人が個人から財産を買い取ることで「資金の移動」が可能です。
また、法人自ら「自己株式」の買取も認められるため、株主への資金移動も可能です(みなし配当の論点はあり)。

 

(2) 所得税・法人税の観点

税率が安くなる 所得税率は累進課税(15~55%・総合課税)となりますが、法人税率は、年間所得800万以下で22~23%、800万超でも32~33%程度で固定されるため、所得が多い個人の場合は、法人化することで税率が低くなります。
所得分散効果 法人の場合、自分に給料を支払うことが可能です。
給料を支払うことで、「給与所得控除」の存在により、所得分散による所得税税金圧縮効果があります。
なお、個人所得税の規定上、「青色専従者給与」の制度はありますが、自分への給料支払はできません。
法人契約の生命保険の加入 法人の場合は、加入できる保険の種類が増えます
例えば、法人は、従業員を被保険者とした「死亡保険」への加入が可能です。
また、退職金も損金にでき、受取側は、退職所得控除、死亡退職金の場合は「相続税の非課税枠」があります。

 

(3) その他

永続的に継続可能 個人と異なり、法人には寿命がありませんので、永続的に継続が可能です。
また、法人の場合は、たとえ代表が死亡や病気で倒れても、他の方が代表に就任することで、法人の法的手続全般を継続することが可能です。
銀行融資が有利 一般的に、個人よりも法人の方が「社会的信頼性」は高いため、法人の方が、銀行融資の審査の観点では有利になります。

 

2. デメリット

(1) 登録免許税・不動産取得税・消費税、印紙税の発生

個人から法人に不動産を移転する場合は、登録免許税(固定資産税評価額の2%)、不動産取得税(固定資産税評価額の3%)、消費税(取引価額10%)、印紙税などのコストが発生します。
また、消費税改正により、居住用賃貸不動産取得時の消費税は控除できなくなりましたので、取得法人側での消費税納税額は、改正前と比べて多くなります。
ただし、新設法人の場合は、消費税最大2年間免税のメリットがありますので、ある程度上記のデメリットは相殺されると思われます。

 

(2) 社会保険加入義務

法人の場合は、社会保険の加入義務が生じます。
ただし、家族経営の場合は、社会保険加入により、個人が受け取る将来の年金額は増加するため、一概にデメリットとも言えません。
 

(3) 資産譲渡時の所得税課税&資金負担

法人への不動産譲渡の際、「所得税」が課税される場合があります。
また、買い取る法人側では資金を準備する必要があります(同族関係者間の取引 = 適正な時価)。
ただし、帳簿価額(未償却残高)で売却すれば「譲渡損益」は発生しないため税額は生じません。
また、長期的な分割返済スケジュールを組むことで、一時的な「資金負担」の回避は可能です。

 

(4) 損益通算ができなくなる

個人の場合、「不動産所得」の赤字は「給与所得等」との損益通算が可能ですが、法人の場合は損益通算の制度はありません
ただし、法人の場合は「欠損金」が10年間繰越可能(個人の場合は3年)ですので、影響は限定されます。

 

(5) 法人設立費用や維持費

法人設立には通常10万円~30万円の資金が必要になります。
また、毎年利益に関わらず課税される「均等割」(年7万円程度)が発生します。
その他、一般的に、法人の方が諸々の費用は高くなります
税理士費用や、インターネットバンキング、振込手数料等への影響を想定しておく必要があります。

 

3. 建物のみを移す

個人から法人に不動産を移転する場合、古くから保有する土地で「取得費が不明」な場合は、売却額の95%が課税対象となり、「譲渡所得課税」が生じるケースが多いです。
したがって、個人で「土地建物」を保有する場合は、「建物」のみを法人に譲渡する事例が多いです。
建物だけの売却であれば、法人に「未償却簿価」で売却すれば、基本的に所得税の課税関係は生じません。(未償却簿価 = 時価)

なお、建物だけを法人に譲渡する場合、「土地」に関しては、法人は個人から借りる立場となり、「借地権課税」の問題が生じます。
ただし「借地権課税」は、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出することで回避することができます。
しかも、この届出書を提出することで、個人が保有する土地の相続税評価は20%減少させることが可能です(法人は同額を純資産価額に加算)。

なお、多額の「繰越欠損金」を有する法人に建物を移す場合は、あえて「土地の無償返還の届出書」を提出せず、借地権を発生させる場合もあります。
この場合、法人側は「繰越欠損金」と「借地権受贈益」の相殺により、法人税は発生しません
一方、個人側の土地の相続税評価は、「借地権割合」を控除した評価額まで大きく下がります。

 

4. YouTube

coming soon
 

Q115「名義預金」はばれる?時効や認定されないための対策・解消方法

公開日:2021/01/01 最終更新日:2021/09/17

 
相続税は、「亡くなった方」が保有する財産を引き継いだ「相続人」に課税される税金です。
しかし、亡くなった方の名義ではない財産も、「実質的に亡くなった方の財産とみなして」課税される場合があります。
その代表例が「名義預金」です。
今回は、税務調査でよく問題になる「名義預金」につき解説します。
 

0. YouTube

coming soon
 

1. 名義預金とは?具体例

名義預金とは、被相続人名義ではない預金通帳にもかかわらず、「被相続人の財産として相続税が課税」される預金のことです。
 
(具体例)

亡くなった夫が、妻名義で預金していた場合、「実態としては、夫の収入から貯金している」ものとして、「名義預金」と認定される場合
親が子供の口座に、暦年贈与の枠内(毎年110万円)なら贈与税がかからないと判断して勝手に貯金している場合。「生前贈与」は贈与者と受贈者両方に「贈与を行う・受ける」意思が必要なため、贈与は成立しない。

 

 

2. なぜばれる?資金移動調査

相続税の税務調査では、かなりの割合で「名義預金」が問題になります。
しかし・・なぜ税務署はこういった情報を持っているのでしょうか?
 
実は・・税務署には法律上、金融機関を調査する権限が与えられています。
つまり、相続人の了解なく、被相続人や親族の預金通帳を閲覧できる権限を有しています
一般的に「資金移動調査」と呼ばれ、税務署は金融機関等の過去10年間の動きを把握しています。
お金の出入りの整合性、引出だけの資金の場合は、その「利用使途」の説明が求められます。
税務調査の際は、事前にそれらの「情報を入手済」である可能性が高いですので、通帳の大きな動きは、通帳等に内容を記載しておくことが望ましいです。

 

3. 名義預金と認定されるケース

  • 預金残高が、相続人の収入と比べて、不自然に多い。
  • 相続人が、当該「名義預金」の存在を知らない、あるいは管理していない。
  • 被相続人との「贈与契約」がない。
  • 預金口座の登録印が、被相続人の印鑑と同じ。
  • 相続人の住まいが遠方にもかかわらず、被相続人の地元銀行に口座がある。

 
仮に、専業主婦の方が家計の財布を握っていたとしても、その収入源は夫である旦那様です。
奥様に収入がなければ、奥様名義の預金通帳は、名義預金と認定されるケースがあります。
税務署は、過去の申告書や年末調整、法定調書などの情報から、亡くなった方の財産、収入だけでなく、親族の財産・収入等の個人別データベースを持っていると思われます。

 

4. 「相続財産以外の所有財産」を記載する書類

税務調査で「相続財産以外の所有財産」という書面の提出が求められる場合があります。
任意の提出書類となりますが、「相続財産以外のご自身の財産をすべて記載してください」という書類です。
書類の提出目的は、ずばり・・相続財産の漏れを確認するためです。
また、間接的に「名義預金」の存在を確認することも目的としています。
 
もし、この書類に、「名義預金」を記載しなかった場合は・・
「ご自身が把握していない財産」とみなされ、名義預金認定される、という恐ろしい書類になります。
名義預金の存在を隠した場合は「重加算税の対象」となります(相続税額の35%)ので、提出が求められた場合は、名義預金も含め、すべての財産を記載しておく必要があります。

 

5. 遺産分割・名義変更手続

(1) 遺産分割の対象

「名義預金」と認定された預金残高は、「相続税の課税対象」となりますので、「遺産分割協議書」に記載し、誰が相続するか?を確定しないといけません。
つまり・・追加で「名義預金部分」だけ遺産分割を行う、ないし、金額によっては「遺産分割協議」をやり直す場合も生じます。
⇒相続税申告も修正申告となります。
 

(2) 名義預金の解約、名義変更方法

例えば、孫名義の「名義預金」を親が相続する場合など、「名義人でない方」が相続する場合は、「解約や名義変更」に時間がかかるケースがあります。
金融機関によっては、名義預金を、一旦被相続人名義に変更し、そのうえで「遺産分割協議書」を確認の上、解約 or 名義変更手続きが行われる場合もあります。

 

6. 時効は?

贈与税は、6年 or 7年経過すると「時効」となります。
しかし、贈与の法律行為は「双方の同意」が要件となります。
この点、名義預金と認定される場合は、そもそも預金通帳の存在を知らない、管理していないケースですので、法律上の「贈与」は成立しません。
したがって、名義預金の場合は、「贈与での時効」の概念がありませんので、「贈与税」の時効は成立しない場合がほとんどです。

 

7. 名義預金と判定されないための対策

相続税額に大きな影響がありますので、名義預金と判定されないために、「自分が管理している預金口座」であることが証明できる「エビデンス」を残す必要があります。
具体的な対策は以下の通りです。

 

  • 「贈与契約書」を作成し(双方自署、押印必要)、銀行振込で贈与を受ける。
    また、「暦年贈与の非課税枠(年間110万円)」内の贈与の場合でも、履歴を残す意味で「贈与税申告」をしておくことが望ましい。
  • 通帳、印鑑、キャッシュカードは相続人が管理し、いつでも自ら引き出しできる状態にしておく。
  • 預金通帳作成時は、本人(相続人)の筆跡で登録、銀行届出印は、被相続人と「別の本人の印鑑」で登録する(被相続人と同じ印鑑の場合は、物理的に被相続人が作成することが可能なため、本人作成の預金口座と主張できる根拠が薄い)。

8. 名義預金の解消・財産移転方法

名義預金の存在に気付いた場合は、将来的な税務リスクがあることから、いったん「親名義」に戻します。そのうえで、財産を移すための方法としては、以下の方法があげられます。

(1)生前贈与

名義預金をいったん親名義に変更して解消します。そのうえで、「贈与契約」を締結し、きちんとした形で生前贈与します。
 

(2)生命保険の活用

名義預金解消後の金銭で受取人を相続人等とする「生命保険」に加入します。生命保険には500万円の非課税枠がありますので、実質無税で名義預金相当額を相続人等に資金移動できる効果があります。

 

Q114 【遺産分割注意】遺言書の文言で「相続させる」「遺贈する」では大違い! 

公開日:2020/12/01 最終更新日:2021/08/26

 
遺言書を作成する場合、「~に遺贈する」と記載することもあれば、「~に相続させる」と記載することもあります。
これって・・どこが違うのでしょうか?
実は・・承継する財産が「不動産」の場合には、両者に大きな違いが生じます。


 

1. 相続と遺贈とは?

相続とは、被相続人の財産を、包括的に法定相続人が引き継ぐことをいいます。
一方、遺贈とは、被相続人の財産を、「遺言」により特定の人に無償で与えることをいいます。
つまり、遺言書を作成することで、「遺贈」は、法定相続人でない人、例えば親族ではない「第三者」に対しても可能、ということになります。
相続と遺贈の違いは、Q60をご参照ください。

 

2. 「相続させる」と「遺贈する」の違い

「相続」が可能なのは、「法定相続人」のみで「第三者」は含まれません。
したがって、遺言で財産を承継する方が・・

  • 「法定相続人以外」の場合は、「相続する」とは記載できません。この場合、選択肢は「遺贈する」のみとなります。
  • 「法定相続人」の場合は、「相続させる」「遺贈する」どちらも可能です。


 

3. 遺言書は「相続する」と記載するのがベター

では・・遺言書で財産を承継する方が「相続人」の場合、文言は「相続させる」「遺贈する」のどちらがよいのでしょうか?

「相続させる」という遺言は、「遺贈」ではなく、「遺産分割方法の指定」であると解されています
(最高裁判所平成3年4月19日)。
この判決により、承継する財産が不動産の場合は、「相続」と「遺贈」で、以下の点に違いが生じます。
 
「相続させる」という文言の場合は、相続開始時点でその不動産は「遺産分割」され、当然に所有権が移転することを意味します。一方、「遺贈する」という文言の場合は、相続開始時点では当然に所有権が移転するわけではなく、単に遺言者からの受遺者への財産遺贈義務を相続人全員が引き継ぐだけになります。

 

相続の場合 遺贈の場合
相続登記 単独で不動産登記が可能 他の法定相続人全員の協力必要(※)
相続債権者への対抗 登記なくても相続債権者に対抗可 登記がないと相続債権者に対抗不可
借地権等相続の場合 賃貸人の承諾不要 賃貸人の承諾必要

(※)遺言執行者がいる場合は、遺言執行者と受遺者で手続可能
 

「遺贈」の場合は、不動産移転登記を行うにあたって、少なくとも相続人全員の「印鑑証明」が必要になりますので、手間が増えます。
また、他の共同相続人が勝手に不動産を第三者に譲った場合でも、相続の場合は「第三者に対抗可能」ですので、「第三者」に土地の返還を求めることも可能です。


 

4. 受遺者が先に亡くなった場合の影響

遺言者よりも「受遺者」が先に死去した場合は、「代襲相続」にも影響があります。
遺贈の場合、受贈者が先に死去したケースでは遺贈の効力自体が生じません(民994Ⅰ)。
一方、「相続」の場合は、遺言書に「代襲相続の際の取扱い」を記載しておけば、「代襲相続」が可能と考えられています。


 

5. 登録免許税の違いは?

通常の登録免許税は、「遺贈」の方が「相続」よりも税率が高くなっています(遺贈:「1000分の20、相続:1000分の4」。
ただし、遺贈の場合でも受遺者が「法定相続人」の場合は、1000分の4で計算されますので、この点において違いはありません。


 

6. 結論

上記のとおり、「相続」の方が、
①手続の観点では「単独で登記」できる点で効率的ですし、
②権利保護の観点でも相続人に有利な権利が認められています。
 
したがって、結論的には、「遺言書」で財産を引き継ぐ相手が「法定相続人」の場合は、遺言書の文言は、「遺贈する」ではなく、「相続させる」と記載することをお勧めします。


 

7. YouTube

coming soon
 

Q79 土地建物の等価交換と相続税・所得税の関係

公開日:2018/11/26 最終更新日:2021/08/25

 

土地を有効活用する観点で、「土地」と「建物」を等価交換する場合があります。
この等価交換を利用すると、相続税評価額を下げることができる場合があります。
こういった「等価交換」は、具体的にどういった場面で利用されるのでしょうか?

 

1. 等価交換方式って何?

土地所有者と、マンション等開発業者が共同で賃貸マンション等を建設する場合
「等価交換方式」というしくみを利用します。
 
この方式では、地主が土地を提供する代わりに、マンション開発業者は建築費用を負担します。
そして、建物完成後、「土地」と「建物建築費用」が「等価」になるように、土地と建物を交換するしくみです。
 
地主さんはマンションを建築したいけど、資金がない場合など・・有効な手段ですね。
地主側は、土地を提供するだけで、資金負担をすることなくマンションを建設できるため、よいしくみですね。
 

 

2. 具体例

  • 土地所有者Aさん。土地(評価額8億円)保有
  • 建築業者B建設。マンション建設費用(2億円)
  • 等価交換方式により、Aさんが土地を提供し、B建設が建物を建設
  • 建設マンションは、第三者に賃貸を予定している

  •  

    (1) 土地と建物の所有権割合

    総額=8億円(土地評価額)+2億円(マンション建設費用)=10億円。
    「土地建物総額」に占める、Aさん(土地負担者)と、B建設(建物負担者)の所有権割合は、8対2となります。


     

    (2) 等価交換による各人の金額

    建物完成後に、「土地」と「建物」を等価交換した場合、土地、建物それぞれの所有金額をまとめると、以下の通りです。

    Aさん(地主) B建設 合計
    土地 640百万円 160百万円 800百万円
    建物 160百万円 40百万円 200百万円

    Q79-1

     

    3. 等価交換と所得税の関係

    (1) 原則的な取り扱い

    等価交換は、同価値の「モノ同士」を交換するだけで、お金も動いていないので・・
    「所得税」は発生しないようにも思います。
     
    しかし、等価交換の税務上の取り扱いは、原則として「土地・建物の売買」として取り扱います。
    つまり、例えば、交換により譲渡した土地の時価が160百万円で、当該土地を過去に取得した際の価額が1百万円の場合は、差額159百万円に対して「所得税」がかかってくる、という結論になります。
     


     

    (2) 立体買換えの特例

    (中高層耐火共同住宅建設のための買換え特例(措法37条の5①二)
    一定要件を満たす等価交換の場合、課税が繰延され、等価交換時に税金はかかりません。

     

    (要件)

    譲渡資産 三大都市圏の既成市街地等内にある土地建物等(所有期間や譲渡前用途の制限はなし)
    買替資産 譲渡土地等の上に建築される3階以上の耐火(or準耐火)構造で、半分以上が居住用
    買換資産は、原則として譲渡年12月末までに取得、取得の日から1年以内に居住用か事業用に使用すること



     

    (3) 注意事項

    • この特例は、あくまで「課税の繰延」で、「課税の免除」ではありません。したがって、将来売却するときなどには、税金が発生する可能性があります。
    •  

    • 等価交換により取得する建物の「取得価額」は、交換によって譲渡した「土地の取得価格」となります。
      つまり、時価160百万円の土地を売却したにもかかわらず、取得した「建物」の取得価額は、譲渡した「土地の簿価」となりますので、譲渡土地の取得価額が低い場合は、減価償却金額が少なくなる可能性があります。
    •  

    • 他の譲渡所得の買換え特例や、特別控除の適用を受けることはできません。

     

    4. 等価交換で、相続税評価が下がる?

    等価交換方式を利用して、建物を第三者に賃貸する場合は、結果的に、土地や建物の「相続税評価額」が下がります。
    等価交換による直接の影響ではありませんが、「建築した建物を第三者へ賃貸」することにより、「借地権」「借家権」部分の評価が下がるというしくみです。
     
    先ほどの例をもとに、「等価交換方式」で賃貸した場合の土地・建物の評価額をまとめます。

    (1) 等価交換をしない場合

    • 土地評価額・・8億円
    •  

    • 建物評価額・・ゼロ



     

    (2) 等価交換をした場合

    等価交換を実施して、第三者に賃貸した場合、土地は「貸家建付地」としての評価、建物は、借家権割合を差し引いた評価をすることが可能になります。
    例えば、借地権割合を60%、借家権割合は30%として、Aさん(地主)の土地、建物それぞれの評価額をまとめます。

     

    (Aさん)

    等価交換後 借地・借家権控除後
    土地 640百万円 524.8百万円(※1)
    建物 160百万円 112百万円(※2)
    合計 800百万円 636.8百万円

     
     (※1)640百万円 × (1 – 60% × 30%) = 524.8百万円
     
      (※2)160百万円 × (1 – 30%) = 112百万円
     
      

  • 土地に関しては、要件を満たせば、小規模宅地等の特例の適用も可能です。
  •  

    5. 等価交換による税務上のメリットデメリット(土地所有者から見た場合)

    メリット デメリット
    • 資金負担なく、建物建築ができる。
    •  

    • 土地の譲渡に関しては、一定要件を満たす場合、所得税がかからない
    •  

    • 土地は、貸家建付地としての評価、建物は、借家権部分の評価を引くことができるため、相続税評価額が下がることになる。
    • 土地の所有権を一部手放してしまうことになる。
    •  

    • 立体買換の特例は「課税の繰り延べ」のため、将来売却する場合には、税金が発生する可能性がある。
    •  

    • 等価交換による取得建物の簿価は、譲渡する土地の過去取得価額となるため、減価償却費が小さくなり、等価交換後の経費が少なく抑えられてしまう可能性がある。

     

    また、税務上の論点以外でも、デベロッパー主体で動くケースが多いため、不利な条件で交換してしまう可能性や、デベロッパー取得部分は自由にデベロッパーが譲渡できるため、権利者が多数になる可能性がある点にも留意しなければいけません。

     

    6. 税務上の結論

    「等価交換方式」は、土地の有効活用や、相続税の圧縮という観点では、非常に有用な制度です。
     
    ただし、所得税上は、「土地の売却益課税」の論点や、「立体買い換え特例」を満たした場合でも、交換後の「建物減価償却額」が小さくなるデメリットがあります。
     
    したがって、等価交換後の建物減価償却額と、等価交換による相続税の節税効果などを比較衡量、総合的に判断して、意思決定されることをお勧めします。
     

    Q73 ゴルフ会員権購入で相続税評価額が下がる?

    公開日:2018/08/22 最終更新日:2021/08/25

     

    相続対策として、不動産を活用する方法は、結構よく聞きますよね。
    でも、不動産は・・安い買い物ではありませんし、なかなか相続対策というだけで簡単に購入できるものではありませんよね。
    そこで・・もう少し手軽に相続税評価を下げることができるものとして、「ゴルフ会員権」があります。

     
    Q73-1
     

    ゴルフ会員権は、おおむね「取引価格の70%」で評価できますので、現金で保有するよりも、相続税評価額は安くなります。

     

    1. ゴルフ会員権の評価方法

    (1) 取引相場があるゴルフ会員権

    取引相場があるゴルフ会員権は、原則として、取引価格の70%で評価を行います。
    ただし、取引価格に含まれない「預託金」がある場合は、返還預託金等の金額を加算します。
     
    課税時期の取引価格 × 70% + 返還される預託金等
     
    なお、預託金等返還までに「一定期間」がある場合は、「割引現在価値」で評価を行うことも可能です。



     

    (2) 取引相場がないゴルフ会員権

    取引相場がないゴルフ会員権の評価方法は、以下の3つです。
     
    ① 株主のみが会員となれる会員権
    通常の株式評価と同じ
     
    ② 株主かつ会員となるために預託金等が必要な会員権
    株式評価額+預託金評価額の合計で評価します。
    預託金の評価は、取引相場がある会員権と同様の評価となります。
     
    ③ 株主ではなく、預託金等のみの会員権
    預託金評価額で評価します。
    預託金の評価は、上記同様です。



     

    2. 負担付贈与にすると?

    負担付贈与とは、財産だけでなく、借金も同時に贈与するものです。
    例えば、「自宅と住宅ローン」をセットで贈与するような場合です。
    例えば、自宅財産評価額≦住宅ローンの場合は、マイナスの財産を贈与することと同じですので、贈与税はかかりません。
     
    (例題)

     

  • 取引相場があるゴルフ会員権を500万円で購入(預託金はなしとする)
  •  

  • 自己資金250万、借入金250万で購入(借入金は返済なしとする)
  •  

  • ゴルフ会員権の取引価額は、500万円で変わらないものとします。
     
    上記のゴルフ会員権と借入金を、負担付贈与で奥様に贈与した場合は?
  •  
    (結論)

       

    • 相続税評価額500万円 × 70% = 350万円
    •  

    • 借入金・・250万円
    •  

    • 「負担付贈与」で奥様に渡す場合は、350万円 - 250万円 = 100万円の財産を贈与したことと同じになります。
      この場合、贈与税の非課税限度額(110万円)の範囲内ですので、贈与税はかかりません。
    •  
      つまり・・実際は500万円で購入したゴルフ会員権も、「負担付贈与」を活用すれば、贈与税や相続税がかからない場合があるということです。



       

      3. 実務上の留意事項

      預託金(返還請求権)は、取引価格に
      含まれているのか?
      含まれている場合と、含まれていない場合がありますので、実務上は必ず確認が必要です。
       
      この有無により、相続税評価だけでなく、売却する際のキャッシュフローにも影響します。
      相続後に名義書換した際の名義変更料は
      相続税評価上控除できる?
      できません。
       
      ゴルフ会員権は、相続後に名義変更を行わなければいけません。
      しかし、この名義書換料は相続後に、相続人が負担すべき費用ですので、相続時の「相続税評価額」から差し引くことはできません。
      破たんしたゴルフ場の会員権評価は? 一言で破綻したゴルフ場といっても、さまざまなパターンがあります。
       

      • プレーもできず、売買もできない場合
        ⇒相続税評価額はゼロ
      •  

      • プレーはできる場合
        ⇒通常の評価。
        預託金が戻ってくるかどうか不明な場合は預託金がないものとして評価をします。



       

      4. まとめ

      上記の通り、ゴルフ会員権の相続税評価額は、現金で保有するよりも安くなります。
       
      でも考えてみて下さい。
      ゴルフ会員権も不動産同様、将来売却できるか?はわからないですし、将来ゴルフ場が破綻する可能性だってあります。
       
      そもそもゴルフをしない人からすると・・個人にとっては価値のないものですよね。
      ですので、近々ゴルフ会員権を買う予定の人だったら、ゴルフ会員権を買うことで、結果的に生前対策にもつながるので良いと思います。
      でも・・生前対策として・・ゴルフをしないのに「ゴルフ会員権」を買うのは・・本末転倒ですので!

    Q72 【二世帯要注意】親子「リフォーム」で贈与税がかかる危険

    公開日:2018/08/22 最終更新日:2021/08/25

    前回に引き続き、今回もリフォームのお話です。
     
    例えば、親子間で、親が子供のマイホームのリフォーム代を出してあげる、あるいは、逆のケースも結構あると思います。
    これ・・親子だからって、あまり気にせずやっていませんか?
    税務上は・・「贈与」と取り扱われますので、注意しましょう。



     

    1. リフォーム部分の所有権

    リフォーム部分は、「付合」(=建物と切り離せないモノ)により、所有権は「建物所有者」に帰属します(民法242)。
    したがって、当該リフォーム代を負担した人が、建物所有者以外の場合、リフォーム部分については、「資金を負担した人から建物所有者への贈与」と取り扱われます。
     
    たとえ親子間でも、「贈与税」の話が、セットでついてくるということですね。



     

    2. 親が、「子供のマイホーム」のリフォーム代を負担した場合

    親が、子供のマイホームの「リフォーム代」を負担した場合はどうでしょうか?
     
    親から子供に贈与する場合でも、例えば教育費生活費については「贈与税」はかかりませんが、「リフォーム代」は、原則通り、贈与税の対象になります。
     
    ただし、リフォーム代でも、「住宅取得等資金贈与の特例」要件を満たした場合は、例外的に贈与税がかからないようになっています。



     

    3. 子が、「親のマイホーム」のリフォーム代を負担した場合

    例えば、2世帯住宅を建築するケースなどでは、子供が親所有の建物のリフォーム代を負担するケースもあるでしょう。
    この場合はどうでしょうか?
     
    この場合は、「住宅取得等資金贈与の特例」の対象にはなりませんので、原則通り、贈与税が課税されます。
    また、この場合、子供がリフォーム代につきローンを組んだ場合でも、リフォーム対象の建物は、子供所有ではありませんので、「住宅ローン控除」の適用もありません。



     

    4. 贈与税を発生させないためには?

    上記の通り、子供が親名義の建物リフォーム代を負担した場合は、普通に贈与税が発生します。
    この場合、贈与税を発生させないためには、どうすればよいでしょうか?



     

    (1) 現金で精算

    リフォーム代相当額を、親から子供に現金等で支払えば、贈与税は発生しません。
    現金で精算すれば、「経済的利益の移転はありません」ので、贈与税自体の論点は出てきません。
     
    ただし、この場合も、お子様が当該リフォーム部分につき、住宅ローン控除を受けることは、相変わらずできません。



     

    (2) 建物持分の移転

    現金ではなく、「建物持分」を親から子供に移転させれば、親から子供に「現金を支払うのと同様の効果」があります。
     
    具体的には、子供が支払ったリフォーム資金に相当する「建物持分」を親から子供へ移転させて「登記」します(共有名義)。
    そうすると、お子様は、自分の建物にリフォームしたことと同じになりますので、「住宅ローン控除」を受けることも可能となります。



     

    5. 持分移転登記の具体例

  • 親所有の建物(時価100万)につき、2世帯住宅にするため、子供が900万円のリフォーム代金を支払った。
  • リフォーム後の建物時価は1,000万円となった。
  •  
    Q72-1



     

    (1) リフォーム後の建物の価値

    • 100万円 + 900万円 = 1,000万円

    親のマイホームの価値は当初100万円⇒リフォーム後、1,000万円に増加
    ⇒増加後の親の持ち分価値が100万円になるように、持ち分を移転してあげればよいです。
    (1,000万円⇒100万円、差引900万円の持ち分移転)



     

    (2) 900万円の持ち分移転

    上記例では、リフォーム後の建物価値1,000万円のうち、親の元々の持分価値100万円を超えた 900万円を、親⇒お子さんに「持分移転登記」し、共有名義にすれば、現金を支払ったことと同様になりますので、贈与税はかかりません。
     
    ちなみに、この例では、元々の親のマイホームの建物価値は100万円ですので、リフォーム後1,000万円すべての建物につきお子様に移転登記しても、贈与税の非課税枠(年間110万円)の範囲内ですので、贈与税はかかりません。



     

    (3) 譲渡所得税は?

    持ち分移転部分の900万円は、親から子供に対しての債務(本来親が負担すべきリフォーム代を子供が支払ったために生じた、子供に対する債務)につき、不動産持ち分移転により「現物で弁済」したということになります。
     
    つまり親の立場から考えると、債務を息子に弁済しただけですので、譲渡所得税も発生しません



     

    6. YouTube

    Q71 墓地や仏壇などの相続税評価は?

    公開日:2018/07/27 最終更新日:2021/08/25

     

    墓地や墓石、仏壇などは、「祭祀財産」と呼ばれます。
    この祭祀財産も、もちろん「財産」ですので、原則的には「相続税の対象」となります。
    でも・・現実的にこういったものに相続税をかけるのは・・ちょっとかわいそうな気がしますよね?
    そこで、民法上、「祭祀財産」は相続の対象とならないこととされ、相続税も課税されないことになっています。

     

    Q71-1

     

    逆に考えると??
    「生前にお墓などを建てておくと現金が減り、相続税が課税されず節税できる可能性」がありますね。

     



     

    1. 祭祀財産って?

    墓地や墓石、仏像や位牌、神棚などです。
    民法上、「祭祀財産」は、相続の対象にはならないことが規定されています(民法897条)。

     



     

    2. 相続税との関係

    祭祀財産には相続税がかからないため、生前に購入することで「相続財産」を減らすことが可能になります。
    意外と、お墓や仏壇などはいい値段しますので、購入時期が「相続前」で相続税額が安くなるのであれば、生前購入もありかもしれませんね。

     



     

    3. 相続税がかからない祭祀財産

    一般常識からして、「特に高価な祭祀財産」の場合は、税務署から否認される恐れがあります(=相続対象となる)。
    非課税になることを利用して、明らかに不自然に高価な仏具などを購入した場合は、認められない場合があります。

     



     

    4. 生きているうちに購入

    被相続人が亡くなった後に、相続人が相続財産である現金等からから「祭祀財産」を購入しても、既に相続は終わっていますので、非課税にはなりませんので注意しましょう。

     



     

    5. 生きているうちに購入

    生前に、被相続人が「祭祀財産」をローンで購入した場合、「相続時の被相続人のローン残高」は、相続税計算上の「債務控除」の対象になりません。
    なぜなら、祭祀財産自体が「非課税財産」にもかかわらず、それに対応する「債務=ローン」の控除までできるとなると・・「いいとこどりになってしまう」からですね。
     
    「祭祀財産のローン残高」は、相続税申告書作成時に債務控除の対象としないように注意しましょう。