「住宅ローン付のマンションを子供に贈与したい!」というケースもあると思います。
こういった、「不動産」+「負債」をセットで贈与する行為は「負担付贈与」と呼ばれています。
「負担付贈与」の場合は、贈与を受ける側だけでなく、贈与する側にも税金が課税される場合がありますので、注意が必要です。
目次
負担付贈与は、財産を贈与するだけでなく債務(借入金・預り保証金など)もセットで贈与することです。
通常の贈与と異なるのは、財産を与えるだけでなく、見返りとして「債務の負担」を約束する点です。
負担する債務は、「第三者」に対するものも含まれます。
父が子に財産を贈与する代わりに、母を介護してほしいなどです。
不動産を贈与する場合、通常の贈与の場合は「相続税評価額」で贈与税を計算するのに対し、負担付贈与の場合は、「通常取引価額」つまり市場価額で評価を行います。
不動産の「相続税評価額」は、概ね「時価の8割程度」の金額になりますので、「通常の贈与」よりも「負担付贈与」で財産を渡す方が評価額は高くなります。
通常の贈与 | 相続税評価額で評価 |
---|---|
負担付贈与 | 市場価格(時価)で評価 |
贈与の場合、贈与者には、所得税、贈与税とも課税されません。
受贈者は、土地相続税評価額4,000万円に対して、贈与税が課税されます。
(4,000万円 – 110万円)× 50% – 415万円 = 1,530万円
借金をセットで贈与する「負担付贈与」の場合、贈与者(父)は、3,000万円で取得した土地を、息子に借金免除額3,500万円で売却したと考えます。
したがって差額の500万円に対して「譲渡所得税」が課税されます。
500万 × 20.315%(5年超譲渡所得税率)= 101.5万円の所得税が発生します。
受贈者は、5,000万(時価)の土地を、借金引受額3,500万円で購入したと考え、差額の1,500万円は父親からの贈与とみなされ、贈与税が課税されます。
(1,500万円 – 110万円)× 40% – 190万円 = 366万円
メリット | デメリット |
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負担付贈与の場合は、贈与時の時価(市場価額)での取引とされ、贈与者、受贈者それぞれに税金が課税される可能性がある点に、注意が必要です。
ただし、贈与税は通常の所得税よりも税率が高いため、必ずしも「負担付贈与」の場合に、税金総額が高くなるとは限りません。
不動産を「贈与」するのか「負担付贈与」で渡すのか?は、対象不動産の時価や、借金等の金額を総合的に勘案し、税金総額をシミュレーションの上で意思決定することが大切となります。
個人でのマンション経営の場合は、「賃料収入」を受け取れば受け取るほど個人に帰属する「相続財産」は増加します。
一方、個人⇒法人化すれば、「賃料収入」は法人に帰属するため、その後の「相続財産」を抑えることが可能です。
今回は、不動産賃貸経営を「法人化」するメリット・デメリットにつき解説します。
将来の相続財産の圧縮 | 法人化により不動産を法人所有にした場合、その後の「賃貸収入」はすべて法人に帰属するため、「相続財産」は増加せず、相続財産圧縮につながります。 また、法人の株主をお子様等にすることで、法人にプールされる賃料収入を含めた財産評価は、すべて「お子様保有の株式評価」に変わります。 |
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不動産の評価方法が変わる | 法人化により不動産を法人所有にした場合、対象不動産の評価は「不動産評価」から「株式評価」へと変わります。 非上場株式の評価では、一般的に株価が低くなる「類似業種比準価額」を利用できる場合があり、一般的に不動産現物で保有するよりも評価を引き下げることが可能です。 ただし、設立後3年間は「純資産価額方式」での評価となり、評価額は高くなります。 |
遺産分割が容易になる | 一般的に、不動産現物は「遺産分割」が困難です。 しかし、法人化すれば不動産現物が「株式」という証券に変わります。 不動産と異なり、株式の場合は、株数に応じた分割が可能となるため、遺産分割が容易となります。 |
相続資金の確保 | 法人で「賃料収入」の資金をストックしておくと、将来、個人側で相続税等による資金負担が発生した場合も、法人が個人から財産を買い取ることで「資金の移動」が可能です。 また、法人自ら「自己株式」の買取も認められるため、株主への資金移動も可能です(みなし配当の論点はあり)。 |
税率が安くなる | 所得税率は累進課税(15~55%・総合課税)となりますが、法人税率は、年間所得800万以下で22~23%、800万超でも32~33%程度で固定されるため、所得が多い個人の場合は、法人化することで税率が低くなります。 |
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所得分散効果 | 法人の場合、自分に給料を支払うことが可能です。 給料を支払うことで、「給与所得控除」の存在により、所得分散による所得税税金圧縮効果があります。 なお、個人所得税の規定上、「青色専従者給与」の制度はありますが、自分への給料支払はできません。 |
法人契約の生命保険の加入 | 法人の場合は、加入できる保険の種類が増えます。 例えば、法人は、従業員を被保険者とした「死亡保険」への加入が可能です。 また、退職金も損金にでき、受取側は、退職所得控除、死亡退職金の場合は「相続税の非課税枠」があります。 |
永続的に継続可能 | 個人と異なり、法人には寿命がありませんので、永続的に継続が可能です。 また、法人の場合は、たとえ代表が死亡や病気で倒れても、他の方が代表に就任することで、法人の法的手続全般を継続することが可能です。 |
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銀行融資が有利 | 一般的に、個人よりも法人の方が「社会的信頼性」は高いため、法人の方が、銀行融資の審査の観点では有利になります。 |
個人から法人に不動産を移転する場合は、登録免許税(固定資産税評価額の2%)、不動産取得税(固定資産税評価額の3%)、消費税(取引価額10%)、印紙税などのコストが発生します。
また、消費税改正により、居住用賃貸不動産取得時の消費税は控除できなくなりましたので、取得法人側での消費税納税額は、改正前と比べて多くなります。
ただし、新設法人の場合は、消費税最大2年間免税のメリットがありますので、ある程度上記のデメリットは相殺されると思われます。
法人の場合は、社会保険の加入義務が生じます。
ただし、家族経営の場合は、社会保険加入により、個人が受け取る将来の年金額は増加するため、一概にデメリットとも言えません。
法人への不動産譲渡の際、「所得税」が課税される場合があります。
また、買い取る法人側では資金を準備する必要があります(同族関係者間の取引 = 適正な時価)。
ただし、帳簿価額(未償却残高)で売却すれば「譲渡損益」は発生しないため税額は生じません。
また、長期的な分割返済スケジュールを組むことで、一時的な「資金負担」の回避は可能です。
個人の場合、「不動産所得」の赤字は「給与所得等」との損益通算が可能ですが、法人の場合は損益通算の制度はありません。
ただし、法人の場合は「欠損金」が10年間繰越可能(個人の場合は3年)ですので、影響は限定されます。
法人設立には通常10万円~30万円の資金が必要になります。
また、毎年利益に関わらず課税される「均等割」(年7万円程度)が発生します。
その他、一般的に、法人の方が諸々の費用は高くなります。
税理士費用や、インターネットバンキング、振込手数料等への影響を想定しておく必要があります。
個人から法人に不動産を移転する場合、古くから保有する土地で「取得費が不明」な場合は、売却額の95%が課税対象となり、「譲渡所得課税」が生じるケースが多いです。
したがって、個人で「土地建物」を保有する場合は、「建物」のみを法人に譲渡する事例が多いです。
建物だけの売却であれば、法人に「未償却簿価」で売却すれば、基本的に所得税の課税関係は生じません。(未償却簿価 = 時価)
なお、建物だけを法人に譲渡する場合、「土地」に関しては、法人は個人から借りる立場となり、「借地権課税」の問題が生じます。
ただし「借地権課税」は、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出することで回避することができます。
しかも、この届出書を提出することで、個人が保有する土地の相続税評価は20%減少させることが可能です(法人は同額を純資産価額に加算)。
なお、多額の「繰越欠損金」を有する法人に建物を移す場合は、あえて「土地の無償返還の届出書」を提出せず、借地権を発生させる場合もあります。
この場合、法人側は「繰越欠損金」と「借地権受贈益」の相殺により、法人税は発生しません。
一方、個人側の土地の相続税評価は、「借地権割合」を控除した評価額まで大きく下がります。
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相続税は、「亡くなった方」が保有する財産を引き継いだ「相続人」に課税される税金です。
しかし、亡くなった方の名義ではない財産も、「実質的に亡くなった方の財産とみなして」課税される場合があります。
その代表例が「名義預金」です。
今回は、税務調査でよく問題になる「名義預金」につき解説します。
目次
名義預金とは、被相続人名義ではない預金通帳にもかかわらず、「被相続人の財産として相続税が課税」される預金のことです。
例えば、亡くなった夫が、妻名義や子の名義で預金していた場合、「実態としては、夫の収入から貯金している」ものとして、「名義預金」と認定される場合などです。
相続税の税務調査では、かなりの割合で「名義預金」が問題になります。
しかし・・なぜ税務署はこういった情報を持っているのでしょうか?
実は・・税務署には法律上、金融機関を調査する権限が与えられています。
つまり、相続人の了解なく、被相続人や親族の預金通帳を閲覧できる権限を有しています
一般的に「資金移動調査」と呼ばれ、税務署は金融機関等の過去10年間の動きを把握しています。
お金の出入りの整合性、引出だけの資金の場合は、その「利用使途」の説明が求められます。
税務調査の際は、事前にそれらの「情報を入手済」である可能性が高いですので、通帳の大きな動きは、通帳等に内容を記載しておくことが望ましいです。
仮に、専業主婦の方が家計の財布を握っていたとしても、その収入源は夫である旦那様です。
奥様に収入がなければ、奥様名義の預金通帳は、名義預金と認定されるケースがあります。
税務署は、過去の申告書や年末調整、法定調書などの情報から、亡くなった方の財産、収入だけでなく、親族の財産・収入等の個人別データベースを持っていると思われます。
税務調査で「相続財産以外の所有財産」という書面の提出が求められる場合があります。
任意の提出書類となりますが、「相続財産以外のご自身の財産をすべて記載してください」という書類です。
書類の提出目的は、ずばり・・相続財産の漏れを確認するためです。
また、間接的に「名義預金」の存在を確認することも目的としています。
もし、この書類に、「名義預金」を記載しなかった場合は・・
「ご自身が把握していない財産」とみなされ、名義預金認定される、という恐ろしい書類になります。
名義預金の存在を隠した場合は「重加算税の対象」となります(相続税額の35%)ので、提出が求められた場合は、名義預金も含め、すべての財産を記載しておく必要があります。
「名義預金」と認定された預金残高は、「相続税の課税対象」となりますので、「遺産分割協議書」に記載し、誰が相続するか?を確定しないといけません。
例えば、孫名義の「名義預金」を親が相続する場合など、「名義人でない方」が相続する場合は、「解約や名義変更」に時間がかかるケースがあります。
金融機関によっては、名義預金を、一旦被相続人名義に変更し、そのうえで「遺産分割協議書」を確認の上、解約 or 名義変更手続きが行われる場合もあります。
贈与税は、6年 or 7年経過すると「時効」となります。
しかし、贈与の法律行為は「双方の同意」が要件となります。
この点、名義預金と認定される場合は、そもそも預金通帳の存在を知らない、管理していないケースですので、法律上の「贈与」は成立しません。
したがって、名義預金の場合は、「贈与での時効」の概念がありませんので、「贈与税」の時効は成立しない場合がほとんどです。
相続税額に大きな影響がありますので、名義預金と判定されないために、「自分が管理している預金口座」であることが証明できる「エビデンス」を残す必要があります。
具体的な対策は以下の通りです。
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遺言書を作成する場合、「~に遺贈する」と記載することもあれば、「~に相続させる」と記載することもあります。
これって・・どこが違うのでしょうか?
実は・・承継する財産が「不動産」の場合には、両者に大きな違いが生じます。
相続とは、被相続人の財産を、包括的に法定相続人が引き継ぐことをいいます。
一方、遺贈とは、被相続人の財産を、「遺言」により特定の人に無償で与えることをいいます。
つまり、遺言書を作成することで、「遺贈」は、法定相続人でない人、例えば親族ではない「第三者」に対しても可能、ということになります。
相続と遺贈の違いは、Q60をご参照ください。
「相続」が可能なのは、「法定相続人」のみで「第三者」は含まれません。
したがって、遺言で財産を承継する方が・・
では・・遺言書で財産を承継する方が「相続人」の場合、文言は「相続させる」「遺贈する」のどちらがよいのでしょうか?
「相続させる」という遺言は、「遺贈」ではなく、「遺産分割方法の指定」であると解されています
(最高裁判所平成3年4月19日)。
この判決により、承継する財産が不動産の場合は、「相続」と「遺贈」で、以下の点に違いが生じます。
「相続させる」という文言の場合は、相続開始時点でその不動産は「遺産分割」され、当然に所有権が移転することを意味します。一方、「遺贈する」という文言の場合は、相続開始時点では当然に所有権が移転するわけではなく、単に遺言者からの受遺者への財産遺贈義務を相続人全員が引き継ぐだけになります。
相続の場合 | 遺贈の場合 | |
---|---|---|
相続登記 | 単独で不動産登記が可能 | 他の法定相続人全員の協力必要(※) |
相続債権者への対抗 | 登記なくても相続債権者に対抗可 | 登記がないと相続債権者に対抗不可 |
借地権等相続の場合 | 賃貸人の承諾不要 | 賃貸人の承諾必要 |
(※)遺言執行者がいる場合は、遺言執行者と受遺者で手続可能
「遺贈」の場合は、不動産移転登記を行うにあたって、少なくとも相続人全員の「印鑑証明」が必要になりますので、手間が増えます。
また、他の共同相続人が勝手に不動産を第三者に譲った場合でも、相続の場合は「第三者に対抗可能」ですので、「第三者」に土地の返還を求めることも可能です。
遺言者よりも「受遺者」が先に死去した場合は、「代襲相続」にも影響があります。
遺贈の場合、受贈者が先に死去したケースでは遺贈の効力自体が生じません(民994Ⅰ)。
一方、「相続」の場合は、遺言書に「代襲相続の際の取扱い」を記載しておけば、「代襲相続」が可能と考えられています。
通常の登録免許税は、「遺贈」の方が「相続」よりも税率が高くなっています(遺贈:「1000分の20、相続:1000分の4」。
ただし、遺贈の場合でも受遺者が「法定相続人」の場合は、1000分の4で計算されますので、この点において違いはありません。
上記のとおり、「相続」の方が、
①手続の観点では「単独で登記」できる点で効率的ですし、
②権利保護の観点でも相続人に有利な権利が認められています。
したがって、結論的には、「遺言書」で財産を引き継ぐ相手が「法定相続人」の場合は、遺言書の文言は、「遺贈する」ではなく、「相続させる」と記載することをお勧めします。
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土地を有効活用する観点で、「土地」と「建物」を等価交換する場合があります。
この等価交換を利用すると、相続税評価額を下げることができる場合があります。
こういった「等価交換」は、具体的にどういった場面で利用されるのでしょうか?
土地所有者と、マンション等開発業者が共同で賃貸マンション等を建設する場合
「等価交換方式」というしくみを利用します。
この方式では、地主が土地を提供する代わりに、マンション開発業者は建築費用を負担します。
そして、建物完成後、「土地」と「建物建築費用」が「等価」になるように、土地と建物を交換するしくみです。
地主さんはマンションを建築したいけど、資金がない場合など・・有効な手段ですね。
地主側は、土地を提供するだけで、資金負担をすることなくマンションを建設できるため、よいしくみですね。
総額=8億円(土地評価額)+2億円(マンション建設費用)=10億円。
「土地建物総額」に占める、Aさん(土地負担者)と、B建設(建物負担者)の所有権割合は、8対2となります。
建物完成後に、「土地」と「建物」を等価交換した場合、土地、建物それぞれの所有金額をまとめると、以下の通りです。
Aさん(地主) | B建設 | 合計 | |
---|---|---|---|
土地 | 640百万円 | 160百万円 | 800百万円 |
建物 | 160百万円 | 40百万円 | 200百万円 |
等価交換は、同価値の「モノ同士」を交換するだけで、お金も動いていないので・・
「所得税」は発生しないようにも思います。
しかし、等価交換の税務上の取り扱いは、原則として「土地・建物の売買」として取り扱います。
つまり、例えば、交換により譲渡した土地の時価が160百万円で、当該土地を過去に取得した際の価額が1百万円の場合は、差額159百万円に対して「所得税」がかかってくる、という結論になります。
(中高層耐火共同住宅建設のための買換え特例(措法37条の5①二)
一定要件を満たす等価交換の場合、課税が繰延され、等価交換時に税金はかかりません。
(要件)
譲渡資産 | 三大都市圏の既成市街地等内にある土地建物等(所有期間や譲渡前用途の制限はなし) |
---|---|
買替資産 | 譲渡土地等の上に建築される3階以上の耐火(or準耐火)構造で、半分以上が居住用 |
買換資産は、原則として譲渡年12月末までに取得、取得の日から1年以内に居住用か事業用に使用すること |
等価交換方式を利用して、建物を第三者に賃貸する場合は、結果的に、土地や建物の「相続税評価額」が下がります。
等価交換による直接の影響ではありませんが、「建築した建物を第三者へ賃貸」することにより、「借地権」「借家権」部分の評価が下がるというしくみです。
先ほどの例をもとに、「等価交換方式」で賃貸した場合の土地・建物の評価額をまとめます。
等価交換を実施して、第三者に賃貸した場合、土地は「貸家建付地」としての評価、建物は、借家権割合を差し引いた評価をすることが可能になります。
例えば、借地権割合を60%、借家権割合は30%として、Aさん(地主)の土地、建物それぞれの評価額をまとめます。
(Aさん)
等価交換後 | 借地・借家権控除後 | |
---|---|---|
土地 | 640百万円 | 524.8百万円(※1) |
建物 | 160百万円 | 112百万円(※2) |
合計 | 800百万円 | 636.8百万円 |
(※1)640百万円 × (1 – 60% × 30%) = 524.8百万円
(※2)160百万円 × (1 – 30%) = 112百万円
メリット | デメリット |
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また、税務上の論点以外でも、デベロッパー主体で動くケースが多いため、不利な条件で交換してしまう可能性や、デベロッパー取得部分は自由にデベロッパーが譲渡できるため、権利者が多数になる可能性がある点にも留意しなければいけません。
「等価交換方式」は、土地の有効活用や、相続税の圧縮という観点では、非常に有用な制度です。
ただし、所得税上は、「土地の売却益課税」の論点や、「立体買い換え特例」を満たした場合でも、交換後の「建物減価償却額」が小さくなるデメリットがあります。
したがって、等価交換後の建物減価償却額と、等価交換による相続税の節税効果などを比較衡量、総合的に判断して、意思決定されることをお勧めします。
相続対策として、不動産を活用する方法は、結構よく聞きますよね。
でも、不動産は・・安い買い物ではありませんし、なかなか相続対策というだけで簡単に購入できるものではありませんよね。
そこで・・もう少し手軽に相続税評価を下げることができるものとして、「ゴルフ会員権」があります。
ゴルフ会員権は、おおむね「取引価格の70%」で評価できますので、現金で保有するよりも、相続税評価額は安くなります。
取引相場があるゴルフ会員権は、原則として、取引価格の70%で評価を行います。
ただし、取引価格に含まれない「預託金」がある場合は、返還預託金等の金額を加算します。
課税時期の取引価格 × 70% + 返還される預託金等
なお、預託金等返還までに「一定期間」がある場合は、「割引現在価値」で評価を行うことも可能です。
取引相場がないゴルフ会員権の評価方法は、以下の3つです。
① 株主のみが会員となれる会員権
通常の株式評価と同じ。
② 株主かつ会員となるために預託金等が必要な会員権
株式評価額+預託金評価額の合計で評価します。
預託金の評価は、取引相場がある会員権と同様の評価となります。
③ 株主ではなく、預託金等のみの会員権
預託金評価額で評価します。
預託金の評価は、上記同様です。
負担付贈与とは、財産だけでなく、借金も同時に贈与するものです。
例えば、「自宅と住宅ローン」をセットで贈与するような場合です。
例えば、自宅財産評価額≦住宅ローンの場合は、マイナスの財産を贈与することと同じですので、贈与税はかかりません。
(例題)
(結論)
つまり・・実際は500万円で購入したゴルフ会員権も、「負担付贈与」を活用すれば、贈与税や相続税がかからない場合があるということです。
預託金(返還請求権)は、取引価格に 含まれているのか? |
含まれている場合と、含まれていない場合がありますので、実務上は必ず確認が必要です。 この有無により、相続税評価だけでなく、売却する際のキャッシュフローにも影響します。 |
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相続後に名義書換した際の名義変更料は 相続税評価上控除できる? |
できません。 ゴルフ会員権は、相続後に名義変更を行わなければいけません。 しかし、この名義書換料は相続後に、相続人が負担すべき費用ですので、相続時の「相続税評価額」から差し引くことはできません。 |
破たんしたゴルフ場の会員権評価は? | 一言で破綻したゴルフ場といっても、さまざまなパターンがあります。
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上記の通り、ゴルフ会員権の相続税評価額は、現金で保有するよりも安くなります。
でも考えてみて下さい。
ゴルフ会員権も不動産同様、将来売却できるか?はわからないですし、将来ゴルフ場が破綻する可能性だってあります。
そもそもゴルフをしない人からすると・・個人にとっては価値のないものですよね。
ですので、近々ゴルフ会員権を買う予定の人だったら、ゴルフ会員権を買うことで、結果的に生前対策にもつながるので良いと思います。
でも・・生前対策として・・ゴルフをしないのに「ゴルフ会員権」を買うのは・・本末転倒ですので!
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前回に引き続き、今回もリフォームのお話です。
例えば、親子間で、親が子供のマイホームのリフォーム代を出してあげる、あるいは、逆のケースも結構あると思います。
これ・・親子だからって、あまり気にせずやっていませんか?
税務上は・・「贈与」と取り扱われますので、注意しましょう。
リフォーム部分は、「付合」(=建物と切り離せないモノ)により、所有権は「建物所有者」に帰属します(民法242)。
したがって、当該リフォーム代を負担した人が、建物所有者以外の場合、リフォーム部分については、「資金を負担した人から建物所有者への贈与」と取り扱われます。
たとえ親子間でも、「贈与税」の話が、セットでついてくるということですね。
親が、子供のマイホームの「リフォーム代」を負担した場合はどうでしょうか?
親から子供に贈与する場合でも、例えば教育費や生活費については「贈与税」はかかりませんが、「リフォーム代」は、原則通り、贈与税の対象になります。
ただし、リフォーム代でも、「住宅取得等資金贈与の特例」要件を満たした場合は、例外的に贈与税がかからないようになっています。
例えば、2世帯住宅を建築するケースなどでは、子供が親所有の建物のリフォーム代を負担するケースもあるでしょう。
この場合はどうでしょうか?
この場合は、「住宅取得等資金贈与の特例」の対象にはなりませんので、原則通り、贈与税が課税されます。
また、この場合、子供がリフォーム代につきローンを組んだ場合でも、リフォーム対象の建物は、子供所有ではありませんので、「住宅ローン控除」の適用もありません。
上記の通り、子供が親名義の建物リフォーム代を負担した場合は、普通に贈与税が発生します。
この場合、贈与税を発生させないためには、どうすればよいでしょうか?
リフォーム代相当額を、親から子供に現金等で支払えば、贈与税は発生しません。
現金で精算すれば、「経済的利益の移転はありません」ので、贈与税自体の論点は出てきません。
ただし、この場合も、お子様が当該リフォーム部分につき、住宅ローン控除を受けることは、相変わらずできません。
現金ではなく、「建物持分」を親から子供に移転させれば、親から子供に「現金を支払うのと同様の効果」があります。
具体的には、子供が支払ったリフォーム資金に相当する「建物持分」を親から子供へ移転させて「登記」します(共有名義)。
そうすると、お子様は、自分の建物にリフォームしたことと同じになりますので、「住宅ローン控除」を受けることも可能となります。
親のマイホームの価値は当初100万円⇒リフォーム後、1,000万円に増加
⇒増加後の親の持ち分価値が100万円になるように、持ち分を移転してあげればよいです。
(1,000万円⇒100万円、差引900万円の持ち分移転)
上記例では、リフォーム後の建物価値1,000万円のうち、親の元々の持分価値100万円を超えた 900万円を、親⇒お子さんに「持分移転登記」し、共有名義にすれば、現金を支払ったことと同様になりますので、贈与税はかかりません。
ちなみに、この例では、元々の親のマイホームの建物価値は100万円ですので、リフォーム後1,000万円すべての建物につきお子様に移転登記しても、贈与税の非課税枠(年間110万円)の範囲内ですので、贈与税はかかりません。
持ち分移転部分の900万円は、親から子供に対しての債務(本来親が負担すべきリフォーム代を子供が支払ったために生じた、子供に対する債務)につき、不動産持ち分移転により「現物で弁済」したということになります。
つまり親の立場から考えると、債務を息子に弁済しただけですので、譲渡所得税も発生しません。
墓地や墓石、仏壇などは、「祭祀財産」と呼ばれます。
この祭祀財産も、もちろん「財産」ですので、原則的には「相続税の対象」となります。
でも・・現実的にこういったものに相続税をかけるのは・・ちょっとかわいそうな気がしますよね?
そこで、民法上、「祭祀財産」は相続の対象とならないこととされ、相続税も課税されないことになっています。
逆に考えると??
「生前にお墓などを建てておくと現金が減り、相続税が課税されず節税できる可能性」がありますね。
墓地や墓石、仏像や位牌、神棚などです。
民法上、「祭祀財産」は、相続の対象にはならないことが規定されています(民法897条)。
祭祀財産には相続税がかからないため、生前に購入することで「相続財産」を減らすことが可能になります。
意外と、お墓や仏壇などはいい値段しますので、購入時期が「相続前」で相続税額が安くなるのであれば、生前購入もありかもしれませんね。
一般常識からして、「特に高価な祭祀財産」の場合は、税務署から否認される恐れがあります(=相続対象となる)。
非課税になることを利用して、明らかに不自然に高価な仏具などを購入した場合は、認められない場合があります。
被相続人が亡くなった後に、相続人が相続財産である現金等からから「祭祀財産」を購入しても、既に相続は終わっていますので、非課税にはなりませんので注意しましょう。
生前に、被相続人が「祭祀財産」をローンで購入した場合、「相続時の被相続人のローン残高」は、相続税計算上の「債務控除」の対象になりません。
なぜなら、祭祀財産自体が「非課税財産」にもかかわらず、それに対応する「債務=ローン」の控除までできるとなると・・「いいとこどりになってしまう」からですね。
「祭祀財産のローン残高」は、相続税申告書作成時に債務控除の対象としないように注意しましょう。
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相続税上、建物は、原則として「固定資産税評価額」で評価を行います。
一般的に「固定資産税評価額」は、「実勢価格」より低くなりますので、結果的に、資産を現預金で所有するよりも、建物を建築して現預金を少なくした方が、全体の「相続税評価額」は下がることになります。
では、建物をリフォームした場合はどうでしょうか?
リフォームすることで、現預金は減少します。
一方、リフォームした建物等の価値が、「固定資産税評価額」・・つまり相続税評価額にどういう形で反映されるか?という点が論点となります。
一般的に、増築など、床面積を増やすリフォームを実施した場合は、「固定資産税評価額」は増加します。
一方、内装や家屋内設備リフォームの場合は、「固定資産税評価額」は改訂されず、評価が据え置かれます
(というか・・役所も把握しきれないから)
役所は、3年に一度、航空写真等で固定資産の実地調査を行っています。
この際、前回調査と比較して、見た目に増築等が明らかな家屋については、「固定資産税評価額」を改訂します。
逆に言うと、見た目に判別のつかないリフォームの場合は、役所も把握しきれないので、「固定資産税評価額は据え置きされている」というのが実態です。
ここでわかることは、リフォームの内容によっては、「固定資産税評価額」に反映されない場合がある!ということですね。
家屋と構造上一体となっている設備(電気設備・ガス設備・衛生設備など)は、家屋の価額に含めて評価できます
(財基通92-(1))
例えば、浴室を取り換える、あるいはシステムキッチンに変更するなどのリフォームは、通常、家屋と構造上一体となっていますので、「家屋の価額に含めて評価」します。
家屋に含めて評価するということは?・・リフォームにより増築した設備も、家屋の固定資産税評価額に内包されることになります。
つまり・・家屋の「固定資産税評価額」が変わらなければ、たとえリフォームをしたとしても、相続税評価額は増加しない!ということになります。
一方、上記の規定とは別に、「増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価」という質疑応答事例が制定されています(質疑応答事例・平成25年11月1日)。
この質疑応答事例では、増改築部分は、たとえ固定資産税評価額が改訂されていなくても、以下の方法で相続税の評価を行うことが要求されています。
当該質疑応答事例は、過去の行き過ぎたリフォーム節税に歯止めをかける趣旨で、最近作られた規定です。
上記「質疑応答事例」の、「増改築」という言葉が、「具体的にどういったものを想定しているのか?」までは例示されていません。なので・・ここからは解釈となります。
大がかりのリフォーム、例えば「資本的支出」に該当するようなものは、相続税上は、追加で評価しないといけないという理解でよいかなと思います。
(ご参考~資本的支出とは?)
定義 | 具体例 | 収益的支出(修繕費) |
|
|
---|---|---|
資本的支出(資産) |
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実務的には、「増改築家屋と類似した物件」を見つけるのは至難の業ですので、以下の計算式で評価します。
(リフォーム前固定資産税評価額 + リフォーム費用 - リフォーム部分償却費(※)) × 70%
(※)リフォーム部分の償却費の計算方法
リフォーム費用 × 90% × (リフォーム日 ⇒ 死亡日までの経過年数) / 耐用年数
まとめると・・「資本的支出」に該当するリフォームの場合は、たとえ「固定資産税評価額」が改訂されていなくても、70%部分は相続税評価の場合は、反映しないといけないということですね。
それでも、30%評価はさがるので、「現金」で保有するよりは節税になりますが!
住宅取得資金贈与については、最大1,500万円までの「贈与税非課税枠」があります。
詳しくは、Q5をご参照ください。
当該制度は、増改築やリフォームも対象となります。
(住宅取得資金贈与の非課税枠制度のポイント)
増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価
目次
前回お伝えした、一般社団法人とは別に、「一般財団法人」あるいは「公益財団法人」という法人があります。
今回は、この「公益財団法人」と、相続税の関係を中心にまとめます。
まず、「社団法人」と「財団法人」の違いを記載します。
「社団法人」は、人が集まることに「法人格」を与えたものですが、「財団法人」は、物が集まることに「法人格」を与えたものです。
社団法人 | 財団法人 | |
---|---|---|
相違点 | 人が集まることで法人格が与えられる。 | 財産が集まることで法人格が与えられる。 |
共通点 | どちらも法人格があるため、個人から拠出した財産は、個人の資産とは切り離される。 また、持ち分がないため、原則、「相続税」はかからない。 |
公益財団法人とは、一般財団法人のうち、「公益」を行うことを目的とする法人のことです。
この「公益財団法人」ですが・・いきなり設立することはできません。
まずは、「一般財団法人」を設立し、内閣府等に申請&「公益認定基準」等を満たす場合に、はじめて「公益財団法人」として設立が可能となります。
なお、公益事業は「23の事業」に限定されています(学術・技芸・慈善その他、公益に関する事業)。
公益財団法人の設立には、「事業目的」、「公益性の判断」、「公益目的事業が50%以上」等、さまざまな要件を満たす必要があり、非常にハードルは高いです。
また、理事等の親族等の合計数が「総数の3分の1以下」という要件があり、支配権を維持するのも一苦労です。
公益財団法人の設立には、様々なハードルがありますが・・
実は・・公益財団法人の活用は、全世界で究極の相続税対策といわれているのも事実です(公益社団法人も同様)。
公益財団法人の場合、一般的に「相続税法第66条第4項」のハードルを満たし、個人の資産を提供した場合でも、贈与税や相続税の「課税対象外」になるものと考えられています。
公益財団法人には、税法上、非常に大きな恩典があります。
① 法人税の特例
② 所得税の特例(譲渡所得の特例)
③ 相続税・贈与税の特例
公益財団法人に財産を贈与・寄付した場合、「贈与者等の相続税または贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合」を除き、相続税や贈与税が非課税となる。
(租税特別措置法70①⑩)。
つまり・・すべての税法においてメリットがあるということです。
公益財団法人は、「公益目的」以外の理由で、株を処分することはできません。
この結果、実質的に公益財団法人が「株を長期保有」することになるため、株を保有してもらう法人の立場では、安定株主を確保できることになります。
規模の大きな会社は、地域社会に大きな影響力を持つだけでなく、その影響力に見合う社会への貢献が期待されています。
当該会社のオーナーは、公益財団法人を通じて、学術・文化・芸術の振興、福祉・教育の増進等、さまざまな社会貢献を行うことで、広く社会的責任を果たすことが可能となります。