Q112 【2020年最新サンプル付!】自筆証書遺言の記載方法

 最終更新日:2022/12/07 閲覧数:3,703 views

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遺言書で一般的に利用されるのは、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類です。
自筆証書遺言は、ご自身で作成できる点、気軽に作成が可能な反面、民法で必要な要件が定められています(民968)。
ただし、平成31年に民法が改正され、自筆証書遺言の方式が緩和されています。

 

1. 公正証書遺言との違い

「自筆証書遺言」は、遺言者本人自身が自筆(手書き)で作成する遺言書です。一方で、公正証書遺言は、公文書で公正証書の形で作成する遺言です。
自筆証書遺言は、気軽に作成できる一方で、自ら自筆で作成が必要となり、遺言書の要件を満たさない場合無効になる恐れがあります。一方で、公正証書遺言の場合は、証人や公証役場での手続きにはなりますが、口述で公証人が作成してくれるため無効になるおそれはありません。比較すると以下の通りです。

 

自筆証書遺言 公正証書遺言
作成方法 ご自身で自筆(代理人×) 遺言の内容を公証人に口述して、公証人が作成
保管方法 自宅など。紛失、隠蔽の恐れあり 公証役場。紛失隠ぺいの恐れなし
証人の立ち合い 不要 2人以上必要
遺言の様式 法務省令で決められている 特になし
費用(実費のみ) 無料 5万円程度~
無効の可能性 あり なし
検認の有無 あり 不要

 

「検認」手続とは、遺言書の存在を裁判所で明らかにすることで、偽造や変造を防止するための手続です。
「自筆証書遺言」の場合、原則として相続開始後遅滞なく、家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります(民法1004条)。なお、検認は、「法律上有効に成立したかどうか」の手続であり、遺言の内容の妥当性を確認するものではありません。

 

2. 自筆証書遺言の要件

自筆証書遺言は、民法に厳格な要件が定められています。要件を満たさない場合は、遺言が無効になる点注意が必要です

(1) 原則

原則として、①全文を自ら手書き②作成日付、氏名を自書③署名押印の3要件が必要です(民968Ⅰ)。
 

全文を自ら手書き すべて遺言者本人が手書きで作成必要があります。
一部でも代筆があると無効となります。録音テープ、録画×
作成日付、氏名を自署 遺言書を作成した年月日を手書きで記入します(〇年〇月吉日×)。
署名押印 自筆によるフルネームでの署名が必要。署名は必ず遺言者1名のみ。夫婦2人共同で遺言を行うことはできません。
押印については特別な定めはなく。認印でもよいですが、後々のトラブルを考えると実印が良いと思います。
遺言書が数枚にわたる場合は、割印があるほうがベター(有効要件ではない)。

 
なお、相続人及び相続財産が特定できるように正確に記載します。
例えば、「妻に家を相続させ、長男に預金を相続させる」は、あいまいなため×です。具体的で、客観的な記載が必要です。
 
【自筆証書遺言 民法968条1項】
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 

(2) 例外 財産目録は手書きでなくてOK(2019年改正)

例外的に、自筆証書に「財産目録」を添付する場合、「財産目録」については自署する必要はありません(民968Ⅱ)。例えば、財産目録をPCで作成したり、預金通帳コピー、不動産登記事項証明書等を添付することで、自筆証書遺言の一部として認められます。ただし、財産目録の各ページに署名押印が必要です(自筆証書本文と財産目録をとじたり,契印は要求されていませんが、遺言書の一体性を明らかにする観点からは望ましい)

 
【自筆証書遺言 民法968条2項、3項】
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産・・・の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉・・・に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

 

(3) その他

●用紙や筆記用具に制約はありませんが、高耐久性の高い紙、後から改ざんされない万年筆などがベター
●遺言書は封筒に入れ、封をしておく方がベター。第三者に保管してもらう方が安全(弁護士など)
●裏面には「本遺言書は、私の死後、開封せずに家庭裁判所で検認を受けてください」などと記載しておくと明確。
●「訂正」する場合は、必ず、訂正場所に二重線を引き、押印の上、正しい文字を記載します。
そのうえで、遺言書の余白に「〇行目〇文字削除〇文字追加」と自書で追記、署名を行います。
 

3. 遺留分に配慮

遺留分とは、遺言でも奪われない最低限度の「相続財産」に対する取り分の権利です。
兄弟姉妹には認められていません。
遺留分を侵害された相続人は、相続開始後、他の相続人に対して、「遺留分減殺請求」を行うことができます。
 
なお、法律上、「遺留分を侵害する遺言」そのものは「有効」ですが、相続人間でもめる可能性が高いため、遺留分に配慮のうえ遺言書を作成することが大切です。

 

4. 遺言執行者の選任

遺言執行者は、遺言内容を正確に実行する人です。
遺言書で「遺言執行者」を指定しておくと、執行者が相続人代表として手続を進められるため、相続人が複数の場合などは、署名押印手続等の点で時間短縮になります。
また、相続人間で協力が得られない場合でも、不動産登記を進めることが可能な点や、他の相続人による財産の処分などを抑止することも可能です。

 

5. 自筆証書遺言の記載例

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(※1)戸籍通りに記載します。妻、息子などは、あいまいなため×です。
(※2)「相続させる」と明記します。「引き継ぐ」「取得させる」などあいまいな表現は×。
(※3)土地と建物を分けて物件を特定します。登記簿どおりに記載(現住所地ではない)。
(※4)預貯金は、銀行名、支店名、預金種類、口座番号を記載して特定します。
金額は、相続時点では変動している可能性が高いため、通常は記載しません。
(※5)相続人以外の方に財産を遺贈する場合は、「遺贈する」と記載します。
(※6)遺言書の「記載漏れ対策」として、当該文言を入れておくと、紛争防止になります。
(※7)遺言執行者を定めておくと、遺言の実行がスムーズに短縮化されるメリットがあります。
(※8)将来は予測できませんので、不測の事態に備え、相続人が自分より先に亡くなった場合をあらかじめ記載することも可能。(予備的遺言)。
(※9)付言事項は、自由に記載できます。「家族に対する感謝の気持ち」や、「自分の望み」などを記す場合が多いです。法的な効力はありませんが、読んだ人を納得させる効果があります。
葬儀の方法などを記載する場合もあります。
(※10)日付は正確に記載し、自筆により署名します。
 

6.  2020年「自筆証書遺言の保管制度」

2020年7月より、法務局で「自筆証書遺言」を保管してもらえる制度が始まりました。
これにより、遺言の紛失等のリスクが大幅に軽減されます。
こちらは、次回Q113で、詳しく説明します。

7. 参照URL

(法務省 自筆証書遺言に関するルールが変わります)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00240.html

 

8. YouTube

 

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