Q12 生命保険金に関する権利~「本来の相続財産」と「みなし相続財産」

公開日:2017/03/29 最終更新日:2021/10/13 閲覧数:3,094 views

「生命保険契約に関する権利」については、相続税が課税されます。
 
この点、あまりないかもしれませんが・・被相続人(保険料負担者)が、保険契約者でない場合があります。
例えば、亡くなった夫が、生前に「妻を被保険者」として死亡保険金を支払っていたが、「保険契約者の名義が妻」の場合です。
 
こういった場合、相続税上は、生命保険の契約者が誰であるか?ではなく、誰が保険の負担をしているか?」を重視して、相続税の課税関係が決められています。
つまり、保険契約者が誰であれ、相続税は課税されます。
 
ただし、この場合、生命保険契約に関する権利はあくまで生命保険の「契約者」が保有していますので、少しロジックが異なってきます。

 

1. 保険契約者=負担者の場合(本来の相続財産)

(1)具体例

●夫が、妻を被保険者として死亡保険金を掛けていた。
●上記保険は掛け捨てではなく、解約返戻金があるものとする。
●今回夫が死亡した。
●保険契約者は夫、死亡保険金受取人も夫とする。

「妻が亡くなった時のために」、夫が死亡保険金を支払っていたような場合ですね。
この場合に、「生命保険契約に関する権利」が発生します。。以下解説します。

Q11-2

(2)保険金請求権が発生するタイミング

被保険者が「妻」の場合は、妻死亡が「保険事故」となりますので、妻死亡時点で初めて保険金が発生します。
したがって、夫死亡した時点では、まだ「保険事故」が発生していないため、「保険金請求権」は発生しません。
 

(3)生命保険契約に関する権利が発生

しかし、上記の生命保険には「解約返戻金」があります。
保険契約者・受取人とも夫のため、生前、夫には「将来、妻死亡時点で生命保険金を受け取ることができる権利」が存在しています。
この「権利」は、保険契約者が夫のため、被相続人(お父さん)の純粋な財産 =「相続財産」となります。

(4)本来の相続財産

この財産は、他の財産と取扱いは同じですので、「本来の相続財産」と呼ばれます(「みなし相続財産」と対比して、この呼び方がされます)。
「本来の相続財産」は、通常通り「遺産分割協議」によって誰が相続するか?が決定され、相続により「契約者」の名義も変更されます。

 

2. 保険契約者 ≠ 保険負担者の場合(被相続人が負担)(みなし相続財産 相続税法3条1項3号)

次に、保険契約者≠保険負担者の場合を考えます。
 
一般的に、保険料は契約者が負担することが通常ですが(保険契約者 = 保険負担者)、契約者以外の方が保険料を負担するケースもありえます。
 
例えば、保険料はお父さんが負担するが、法人割引等などで安くなる等で「奥さん」が契約者となるケースなどです。

(1)具体例

●妻が、妻(ご自身)を被保険者として死亡保険金を掛けていた。
●上記保険は掛け捨てではなく、解約返戻金があるものとする。
●ただし、上記の保険は、実質夫が負担していた。
●今回夫が死亡した。
●保険契約者は妻、死亡保険金受取人も妻とする。

Q12-2

 

(2)保険金請求権が発生するタイミング

上記例題の場合も、被保険者が「妻」の場合は、妻死亡が「保険事故」となりますので、妻死亡時点で初めて保険金が発生します。
したがって、夫死亡した時点では、まだ「保険事故」が発生していないため、「保険金請求権」は発生しません。

 

(3)生命保険契約に関する権利が発生

しかし、上記の生命保険には「解約返戻金」があります。
しかしながら、上記1と異なるのは、保険契約者が妻である点です。

解約等により「解約返戻金」を受け取る権利は契約者である妻が保有しています(保険契約の解約や受取人変更ができるのはあくまで契約者)。
したがって、この権利は、お父さんの財産ではないので、「相続財産」にはなりません。
 

(4)みなし相続財産

ただし、今回の例題で、実質保険料を負担していたのは夫です。
冒頭にお伝えした通り、税法上は、誰が保険料を負担しているか?を重視して課税関係が決まります。

つまり、今回のケースでは、実際に保険料を負担しているのは夫であることを重視して、過去に父が払っていた保険払込分は、相続によって「お母さんに財産が移る」とみなされ、相続税の課税対象とされます(相続税法 3条1項3号)。
 
この財産は、「本来の相続財産」ではないため、「みなし相続財産」と呼ばれます。
「みなし相続財産」は、遺産分割協議の対象ではなく、お母さん固有の財産となります。

 

3. 贈与ではないのか?

本来は、保険契約者が支払うべきものを、契約者ではない「お父さん」が支払っているので、支払った時点で「お母さんへの贈与」ではないか?という風にも考えられます。
しかし、少なくとも相続税上は、この事象を贈与とは取り扱っておらず、出口課税(みなし相続財産)として取り扱っています。
 
逆にいうと、「贈与」と取り扱われない以上、「暦年贈与110万の非課税枠も主張できない」んですよね。ここ注意です。

 
例えば「お母さん契約分をお父さんが負担しているが、年間110万の範囲内だから大丈夫!」と考えている方は注意です。
暦年贈与110万の非課税枠は主張できません。
最終的には「みなし相続財産」として課税されてしまいます。

 

ですので、こういったトラブルがないよう、「契約者」と「保険料負担者」は合わせておくことが無難だと思います。
例えば、保険負担者 = 契約者にしたうえで、保険の枠外で、お父さんがお母さんに「暦年贈与110万円」の枠内で贈与しておけば、少なくとも資金の出どころはお父さんにできますので。

 

被相続人 相続人
ケース1 保険料負担者
= 保険契約者
被保険者 本来の相続財産
ケース2 保険料負担者
≠ 保険契約者
被保険者
= 保険契約者
みなし相続財産

 

3. 保険契約者 ≠ 保険負担者の場合(相続人が負担)

上記2の「逆」の場合はどうでしょうか?

保険契約者は被相続人で、負担が相続人の場合です。

 

Q12-3

 

この場合は、契約者は夫ですので「生命保険契約の権利」は夫、妻が保険料を負担していますので、課税関係は生じません。