Q16【相続税配偶者控除の誤解】二次相続を考えると「配偶者」が全額相続しないほうが良い?/計算例付

公開日:2017/04/28 最終更新日:2021/09/23 閲覧数:2,673 views

 

配偶者が相続する場合は、「配偶者控除」がありますので、最低でも1億6000万円までは相続税が課税されません

 
しかし・・実はここに「危険」があります。

配偶者控除があるからといって、「配偶者が全額相続した方がいい」・・とは限りません
二次相続まで考慮した場合、トータルの相続税額が増加するケースが多いです
必要以上に配偶者に相続させるよりも、一次相続でお子様に配分しておく方がよい場合があります
 

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1.二次相続までを考慮すると?

例えば、お父様が死亡した後(一次相続)、お母さまが死亡する(二次相続)場合などが二次相続の代表例です。一般的に夫婦(お父さんとお母さん)は年齢が近いことが多いと思いますので、一次相続があった後、遠くない将来、二次相続が発生します。
 
通常、一次相続よりも、二次相続の方が相続税額は圧倒的に高くなります。したがって、一次相続時点で相続する財産は、二次相続も含めた税額を予想して決めておかないと・・トータルの税額がかなり高くなる可能性があります

 

2.二次相続の税額が高くなる理由

一次相続よりも、二次相続の方が税額が高くなる「理由」は以下の通りです。

(1) 配偶者固有の財産が増える

相続税は、財産が多くなればなるほど税率が高くなる「累進課税」です。
この点、二次相続は、一次相続で相続した財産だけでなく、「配偶者が元々保有する固有の財産」も相続財産となり、課税対象になるため、適用される「相続税率」が、通常は高くなります。

 

(2) 「相続人」が1人減る影響

当然ですが、二次相続の場合、一次相続よりも法定相続人の人数が1人減少します。
法定相続人の減少により、相続税が課税されない「基礎控除」の額が減少するだけでなく、法定相続人が減少する結果、税率等にも影響があります。
相続税は、「相続人が多ければ多いほど」税額が安くなる計算ロジックとなっています
(相続人が多い場合は、一人当たりが実際相続する財産が少なくなり、累進課税によりトータルの相続税額は下がる)

 

3.例題

  • 父・母・子供1人。父死亡(一次相続)⇒母死亡(二次相続)
  • 一次相続時の父固有の財産は1億円。二次相続時の母固有の財産は1億円。
    ⇒簡便的に一次相続で相続した「父固有の財産1億円」は二次相続時点でそのまま残っているものとする。
  • 相次税額控除は無視。その他の特例はないものとする
  •  
    (1)ケース1
    一次相続は「母が全額相続」&「配偶者控除」適用。その後 二次相続。
    (2)ケース2
    一次相続は「法定相続割合での相続」&「配偶者控除」適用。その後 二次相続。

 

4.ケース1の場合

(1) 一次相続の相続税額(母が、父固有の相続財産100百万円を相続)

①課税価格の合計額(遺産総額)

1億円
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 2人(法定相続人)=4,200万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

1億円 - 4,200万円 = 5,800万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
配偶者分 385万円 5,800万円 × 1/2(法定相続割合) = 2,900万円
2,900万円 × 15% -50万円 = 385万円
子供分 385万円 5,800万円 × 1/2 (法定相続割合)= 2,900万円
2,900万円 × 15% – 50万円 = 385万円
合計 770万円

 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
配偶者分 0円 770万円 × 1/1(実際相続割合) = 770万円
⇒配偶者控除適用で税額ゼロ

子供分 0円 770万円 × 0/1(実際相続割合) = 0
一時相続の税額計 0円

 

(2)二次相続の相続税額(子が、母の財産200百万円を相続)

①課税価格の合計額(遺産総額)

2億円 (母固有の財産1億円+母が父から相続した財産1億円)
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 ×1人(法定相続人) =3,600万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

2億円 - 3,600万円 = 1億6,400万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
配偶者分 0万円 二次相続は、お子様のみ
子供分 4,860万円 1億6,400万円 × 1/1 (法定相続割合)= 1億6,400万円
1億6,400万円 × 40% – 1,700万円 = 4,860万円
合計 4,860万円

 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
配偶者分 0円 二次相続は、お子様のみ
子供分 4,860万

1億6,400万円 × 1/1 (実際相続割合)= 1億6,400万円
1億6,400万円 × 40% – 1,700万円 = 4,860万円
二次相続の税額計 4,860万円

 

(3)合計相続税額(一次相続+二次相続)

0円 + 4,860万円 = 4,860万円

 

5.ケース2の場合

(1)一次相続の相続税額

①課税価格の合計額(遺産総額)

1億円
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 2人(法定相続人)=4,200万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

1億円 - 4,200万円 = 5,800万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
配偶者分 385万円 5,800万円 × 1/2(法定相続割合) = 2,900万円
2,900万円 ×15% -50万円 = 385万円
子供分 385万円 5,800万円 × 1/2 (法定相続割合)= 2,900万円
2,900万円 × 15% – 50万円 = 385万円
合計 770万円

 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
配偶者分 0円 770万円 × 1/2(実際相続割合) = 385万円 ⇒配偶者控除適用で税額ゼロ
子供分 385万円 770万円 × 1/2(実際相続割合) = 385万円
一時相続の税額計 385万円

 

(2)二次相続の相続税額

①課税価格の合計額(遺産総額)

1億5,000万円 (母固有の財産1億円+母が父から相続した財産5,000万円)
 

②基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 1人(法定相続人)=3,600万円
 

③課税遺産総額(① ‐ ②)

1億5,000万円 - 3,600万円 = 1億1,400万円
 

④相続税総額の計算
相続税額 計算式
配偶者分 0万円 二次相続は、お子様のみ
子供分 2,860万円 1億1,400万円 × 1/1 (法定相続割合)= 1億1,400万円
1億1,400万円 × 40% – 1,700万円 = 2,860万円
合計 2,860万円

 

⑤各人の相続税額
相続税額 計算式
配偶者分 0円 二次相続はお子様のみ
子供分 2,860万円 1億1,400万円 × 1/1 (実際相続割合)= 1億1,400万円
1億1,400万円 × 40% – 1,700万円 = 2,860万円
二時相続の税額計 2,860万円

 

 

(3)合計相続税額(一次相続+二次相続)

385万円 + 2,860万円 = 3,245万円

 

6.結果

ケース1よりもケース2の方が、相続税額が1,000万以上も安くなっています。
つまり・・今回のケースは、一次相続で「配偶者が全額財産を引き継ぐのがベストではない」ということですね。

 

7.まとめ

上記の通り、「配偶者控除」があるからといって、一次相続で「全額相続財産を引き継ぐのがベストではない」ケースがあります。
 
ただし、今回のケースは、一次相続で引き継いだ財産が「そのまま残っているケース」を前提としていますので、二次相続までの間に、配偶者が、相続財産も含めてどれだけ財産を消費するか?で・・結論が変わってきます。つまり・・厳密には、将来の「二次相続」の時点で、配偶者にどれくらいの財産が残っているのか?を予測しないと正しい答えはでません
 
大きな話でいうと・・二次相続の際に、「配偶者固有の財産」も含め、「課税される相続財産」が少なければよい!ということになります。そうすると・・「一次相続」の際に「配偶者」に相続させる分も、おのずと方向性は見えてきます。
配偶者が一次相続で相続する財産は、ご自身がお亡くなりになる「二次相続」の間までに最低限「消費可能な資金」があればよい!ということになります。
「配偶者固有の財産」が多い場合、一次相続では、配偶者は全く相続しない!という意思決定もありえます。

 
通常は、近い将来二次相続が訪れます。目の前の税額だけではなく、次の相続(二次相続)も考慮して、一次相続での「遺産配分」を決めておくことをお勧めします。