Q19【未分割申告】遺産分割未了の場合の相続税申告のデメリット・申告期限の延長は?/配偶者控除や小規模宅地等の特例の適用は?

 最終更新日:2022/09/02 閲覧数:4,387 views

 

相続人が複数人で、遺言がない場合、相続後に「遺産分割協議」を行う必要があります。
しかし、相続人間でもめている場合などは、遺産分割の方針がまとまらないケースがあります。
 
「遺産分割」に期限は特にありませんが、「相続税申告書」の提出期限は、相続発生後10か月以内となりますので、遺産分割未了の状態で「相続税申告期限」が到来するケースがあります。
 
こういった場合、相続税申告のペナルティや税額への影響等はあるのか?申告期限の延長が認められるのか?不安に思われる方もいるかもしれません。
 
今回は、「遺産分割未了の場合の相続税申告」についてまとめます。
 

1. 相続税申告期限の延長は?

「相続税申告書」の提出期限は、「お亡くなりになったことを知った日の翌日から10か月以内」です。しかし、現実的には、相続人間での遺産分割協議がまとまらず、遺産分割未了のまま「相続税申告期限」が到来するケースもあります。

 
この点、遺産分割が未了である点を理由に、「相続税申告期限の延長」は認められません。申告が間に合わない場合は、「無申告加算税や延滞税」が課税されますので、遺産分割未了でも、必ず「期限内」に申告する必要があります。
 
しかし・・各人の相続税額の計算は、各人の実際相続割合ごとに算定しますので、「遺産分割」が確定せず、各人の実際相続割合が決まっていないのに、どのように「相続税申告書」を作成するのでしょうか・・

 

2. いったん法定相続分で申告

(1) 法定相続分で相続申告・納税

「遺産分割」が、相続税申告期限までに間に合わない場合、「いったん法定相続分で相続」したと仮定して申告・納税を行います(相55条)。法律上は、遺産を法定相続分で「共有取得したもの」と取り扱われます(民法898条)。
 
この場合の「相続税申告」は、あくまで「仮申告・仮納税」です。つまり、一旦相続税申告書を提出し、将来、「遺産分割」が確定した時点で相続税計算をやりなおし、再度「確定申告書」を提出します(「修正申告」「更正の請求」と呼ばれます)。その時点で、当初納税額との差額を、相続人ごとに追加納付、還付を行うことになります。

 

(2) 更正請求・修正申告の期限や、延滞税は?

更正請求期限は、「分割確定」翌日から4ヵ月以内となりますので、期限に注意が必要です(相32Ⅰ)。
 
修正申告に関して期限は存在しませんが(相31Ⅰ)、実質的には、更正の請求をした場合は、修正申告が強制されます(相35Ⅲ)。この場合、相続人の責に帰せない原因による修正申告のため、法定申告期限の翌日から期限後申告を行った日、又は税務署長が更正通知書を発した日までの「延滞税」は課されません(相法51Ⅱ)。

 

3. 未分割申告のデメリット

未分割の状態で相続税申告書を提出する場合、下記の特例等の適用ができませんので、相続税納税額が多くなる可能性が高いです。

 

配偶者の税額軽減
(配偶者控除)
配偶者については、相続財産額が最低1億6千万円までは課税されない配偶者の税額軽減があります。しかし、「配偶者の税額軽減」は、「申告書提出期限までに、配偶者が遺産分割等により遺産を取得したこと」が要件となります。したがって、未分割申告の場合は、「配偶者の税額軽減」は適用できません
小規模宅地等の特例 小規模宅地等の特例とは、一定要件を満たす場合に「土地の相続税評価額」を最大80%減額してくれる制度です。しかし、「小規模宅地等の特例」は、「相続税申告期限までに、対象土地の遺産分割」が要件となります。したがって、未分割申告の場合は、「小規模宅地等の特例」は適用できません。
 非上場株式・
農地の納税猶予の特例
非上場株式や農地等を相続等により取得した場合、事業の継続等を要件に相続税が猶予される制度です。当該制度も、「相続税申告期限までに対象株式や農地の遺産分割」が要件となります。したがって、未分割申告の場合は、「非上場株式・農地の納税猶予の特例」は適用できません
物納 物納とは、一定要件を満たす場合に、金銭の代わりに、不動産等の現物財産で納付できる制度です。遺産分割が行われるまでは「相続人全員の共有財産」となります。共有持ち分の場合は、共有者全員で物納申請しない限り、物納が認められませんので、実質的には難しいと思われます(管理処分不適格財産)。

 

4. 配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は遡って適用可能

ただし、未分割申告の場合でも、①配偶者の税額軽減と②小規模宅地等の特例に関しては、将来、「遺産分割確定時点」で、遡って適用できる特例が認められています。以下の2つです。
 

(1) 申告期限後3年以内の分割見込書

当初の相続税申告を提出する際に、税務署に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、申告期限後3年内に「遺産分割が確定」した場合は、①配偶者の税額軽減と②小規模宅地等の特例を適用し、「更正請求」が可能です。
 

更正請求期限は、「分割確定」から4ヵ月以内となりますので、期限には十分注意が必要です。
 

(2)  遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書

「遺産分割」は、想像以上に遺族間でもめる場合が多く、申告期限から3年経過した時点でも、「遺産分割未確定」の場合もあります。こういった場合、もう一つ「救済方法」が用意されています。
 
申告期限後3年経過日翌日から2か月以内に、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署に提出し、所轄税務署長の承認を受けます。
この場合は、例えば、裁判の判決確定の日などから4か月以内に遺産が分割されれば、①配偶者の税額軽減、②小規模宅地等等の特例、の適用が可能です。この場合の更正請求期限も「分割確定」から4ヵ月以内となりますのでご留意ください。
 
(※)やむを得ない事由とは、例えば、「相続人間で裁判等になっている」などの事情です。単純な話し合いが決着していないだけでは×です。
 

5. 共有財産の処分・3年内取得費加算への影響 

(1) 共有財産の処分の制限

「遺産分割が未分割」の場合は、財産の処分についても影響があります。
遺産分割未了の場合、財産は相続人の共有財産となります。共有財産の場合、共有持分者全員の承諾がない限り、売却や処分ができません
また、共有の状態で「相続人が死亡した」場合などは、相続人がさらに分散する結果、権利関係が非常に複雑になる可能性も高いです。
 

(2) 相続財産を申告期限3年以内に売却

相続財産を申告期限後3年以内に売却した場合、相続税の3年内取得費加算の特例を受けることが可能です。
 
この点、遺産分割未了の「共有財産」も、3年内取得費加算の特例の適用自体は可能です。しかし、現実的に売却するためには、共有者全員の同意や(民法251条)、共有持ち分者への「相続登記の変更」も必要ですので、遺産分割未了の状態では、当該特例の適用も難しいものと思われます。
 
つまり、少なくとも、申告期限後3年以内に遺産分割を決めておく方が・・無難ということになります。
 

6. 参照URL

(No.4208 相続財産が分割されていないときの申告)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4208_qa.htm

 

7. YouTube

 
YouTubeで分かる「未分割申告」
 

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