Q28 老人ホームに入居すると小規模宅地等の特例は利用できないのか?添付書類は?

 最終更新日:2022/12/07 閲覧数:20,529 views

 
相続税上、亡くなられた方(被相続人)が「居住」していた宅地を取得した場合、「一定要件」を満たせば宅地の評価額を最大80%減額できます。特定居住用宅地等の特例と呼ばれています。

 
この点、被相続人が老人ホームに入居しているケースもあると思います。こういった場合、一般的に老人ホームに住民票を移すケースは少ないです。
しかし、「老人ホーム」などに入所している場合、自宅には「居住」していないことになります。
こういった場合、特定居住用宅地等の特例の「居住要件」を満たさないのか?という論点です。

 
今回は、「老人ホーム等」に入居している場合の「小規模宅地等の特例」の適用関係につきまとめます。
 

Q28-1

 

1.要件を満たす場合はOK

相続時点で「老人ホーム」に入居している場合でも、「下記の要件すべて」を満たす場合は、小規模宅地等の特例の適用が可能です。

 

(1) 相続開始時点(死亡時点)で、被相続人が「要介護認定等」の状態であったこと

「要介護認定等」とは、下記を指します。

 

要介護認定(1~5)(介護保険法 19条1項)
要支援認定(1,2)(介護保険法 19条2項)
障害支援区分の認定(障害者総合支援法 21条1項)
基本チェックリスト該当者(介護保険法施行規則 140条の62の4第2号)

 

(注意事項)
●老人ホーム入居時点ではなく、相続開始時点(死亡時点)で判断します。
●要介護認定等の申請中に亡くなった場合でも、認定される場合は「過去にさかのぼって認定」されますので小規模宅地等の特例の適用は可能です。

 

(2) 老人福祉法等に規定する老人ホームであること

国税庁上、規定されています。以下の老人ホームが該当します。

 

認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居(グループホーム)
養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム
介護老人保健施設
サービス付き高齢者向け住宅(上記の有料老人ホームを除く)
障害者支援施設又は共同生活援助を行う住居

 
実際は、ほとんどの種類の「有料老人ホーム」が該当するケースが多いです。ただし、「都道府県」に届け出していない無許可の「老人ホーム」は×ですので、念のため、老人ホームに直接問い合わせてみてもよいと思います。
 

(3) 老人ホーム入所後の自宅を、「他の用途に利用」していないこと

老人ホーム入所後に、自宅を他の用途に利用する場合は、特例の適用が認められません。
例えば、「事業用に利用」したり、他の方に賃貸する場合は、要件を満たしません。
例外的に、「生計一の親族」が、老人ホーム入所後に居住する場合だけはOKです。
 

(×のケース)

老人ホーム入所後に空き家になった自宅を、その後に事業用に利用(特定事業用宅地の特例は可能)
老人ホーム入所後に空き家になった自宅を、その後に賃貸(貸付事業用宅地の特例は可能)
老人ホーム入所後に空き家になった自宅を、その後に生計別親族が居住

 

なお、老人ホーム入居直前「被相続人が居住」していれば、その時点での被相続人の「所有の有無」は問われません。
例えば、老人ホーム入居中に「相続」により取得した土地であっても、「老人ホーム入居直前」に被相続人が居住していれば適用可能です。
 

2.添付書類

老人ホーム入居の場合、通常の「特定居住用宅地等の特例」の書類に加え、以下の添付書類が必要です。
 

●被相続人の戸籍の附表の写し(相続開始日以後)
●介護保険の被保険者証の写し又は障害福祉サービス受給者証の写し等(介護保険法・障害者総合支援法)
●介護施設等の名称がわかる書類(契約書など)

 
(ご参考)
●「特定居住用宅地等の特例」を受ける場合は、①被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(or法定相続情報)、②遺産分割協議書の写し(or 遺言書の写し)、③相続人全員の印鑑証明書が必要となります。
●「介護保険の被保険者証等」は、一般的に、亡くなった後「市区町村に返却」することになりますので、市区町村に申請して別途「要介護又は要支援」の状態を証明する書類等を提出する場合が多いです。
 

3.長期入院の場合は?

老人ホームではなく、被相続人が「長期入院」していた場合はどうでしょうか?
この場合は、入院により被相続人の「生活の拠点は移転していない」ため、特例の適用が可能です。
(介護療養型医療施設及び療養介護を受ける施設も病院のため同様)
 

4.参照URL

(老人ホーム入所により空家となった建物敷地についての小規模宅地等の特例)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/10/15.htm
 
(要介護認定の申請中に死亡した場合の小規模宅地等の特例)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/10/16.htm

 
(老人ホーム入居中に自宅を相続した場合の小規模宅地等の特例)
https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/souzoku/181207/01.htm#a01

 

5.YouTube

 
YouTubeで分かる「老人ホーム入居と小規模宅地等の特例の関係」
 

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