今回は、土地を「コインパーキング」などで利用する場合の相続税評価です。
一般的に、土地が更地の場合は、「自用地評価」を行います。
また、自らが青空駐車場や、アスファルト舗装して「月極」で貸している場合も、更地同様に「自用地評価」となります。
ただし、コインパーキングのように、外部委託して駐車場経営してもらう場合は、自用地評価額から「賃借権」部分を差し引くことができます。
前回の「借地権」と似ていますね。
1. 賃借権部分の評価
(1) 駐車場の活用方法によって異なる
一言で「駐車場」といっても、自ら駐車場として貸す場合と、コインパーキング業者に貸す場合など、さまざまです。
実は・・駐車場の活用方法により、相続税の評価が異なってきます。
① 自らユーザーに直接貸す場合は ×
コインパーキング業者ではなく、自らが、その土地を、月極等によりでユーザーに直接貸しているような場合は、「更地評価」となります(アスファルト舗装などしていても、更地評価)。
自ら駐車場として直接ユーザーに貸す行為は、一見「土地」を貸しているようにも錯覚しますが、これは、土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約ではなく、「一定期間、自動車を保管する契約」と取り扱われます。
したがって、自ら駐車場を直接ユーザーに貸す場合は、「賃借権部分」の控除はできません。
② 業者に貸した場合は?
では、コインパーキング業者などに土地を貸す場合はどうでしょう?
この場合は、一般的に、「借りた業者側の費用で、車庫などの施設を造ることを認める契約」となりますので、「土地の賃貸借」になります。
したがって、「賃借権相当」を控除することができます。
(2) 賃借権の評価額は?
「賃借権」の評価額は、以下のように決められています。
① 地上権に準ずる賃借権(賃借権の登記がされている、堅固な構築物が施されている等)
下記いずれか低い方の価額。
- 自用地としての価額 ×( 1 – 法定地上権割合又は借地権割合)
- 自用地としての価額 ×( 1 – 残存期間に応ずる割合)
(残存期間に応ずる割合)
賃借権の残存割合 | 5年以下 | 5年超10年以下 | 10年超15年以下 | 15年超 |
---|---|---|---|---|
割合 | 5% | 10% | 15% | 20% |
② 上記①以外の賃借権
下記いずれか低い方の価額。
- 自用地としての価額 ×( 1 – 法定地上権割合又は借地権割合)
- 自用地としての価額 ×( 1 – 残存価額に応ずる割合 × 1/2 )
(残存期間に応ずる割合)
賃借権の残存割合 | 5年以下 | 5年超10年以下 | 10年超15年以下 | 15年超 |
---|---|---|---|---|
割合 | 2.5% | 5% | 7.5% | 10% |
実務上は、ほとんどが、上記②に該当します。
ちなみに、土地所有者が、「管理会社」を設立し、その会社が駐車場を経営する場合はどうでしょうか?
この場合は、一般的に土地所有者と管理会社間で「土地の賃貸借契約」を交わしますので、「賃借権の控除」ができますよ!
2. 小規模宅地の特例の適用
先ほど、自らが経営する駐車場は「更地評価」となるという点をお伝えしましたが、
この場合でも、別途「小規模宅地等の特例」の適用は可能です。
(1) 青空駐車場は×・アスファルトはOK
事業用宅地として「小規模宅地等の特例」を受けるためには、下記の要件が必要です。
① 相当の対価を得て継続的に行う事業であること
② 一定の建物または構築物の敷地の用に供されているものであること
この点、青空駐車場は × ですが、アスファルトは「構築物」に該当します。
つまり、アスファルト舗装の駐車場は、自ら経営している場合でも、貸付事業用宅地等の特例の適用が可能です。
一部のみがアスファルトであれば、該当部分のみ「小規模宅地等の特例」の適用となります。
なお、コインパーキングなど第三者に貸している場合も、同様に、小規模宅地等の特例の適用は可能です。
小規模宅地等の特例では、「建物等の所有者」=「土地の所有者」という要件までは求められていないので、たとえ、外注先がアスファルトを埋め込んだとしても(自分の所有ではない)、「貸付事業用宅地の特例」の適用は可能なんですね。
(2) 砂利敷きや、ロープ、止め石だけの場合は?
ロープ、止め石だけの場合は、「構築物」に該当しないので、青空駐車場と同様になります。
砂利敷きは、構築物に該当し、適用が可能です(耐用年数15年)。
ただし、砂利の量が少ない場合などは、特例の対象外と判断される場合あるようです。
駐車場全体に砂利を引いている場合なら、ある程度費用もかけていますし、事業性があると判断されるのではないでしょうか!
(3) 空き部分に適用は?
コインパーキングの空き部分があっても、「賃貸募集」を適切に行っていれば、「敷地全体」に貸付事業用宅地等の特例の適用が可能です。
(4) 自家用車を止めている部分は?
自家用車両の駐車部分は「貸付事業の用」に供されていませんので、「面積按分等」により貸付部分のみを割り出し、「貸付事業用宅地等の特例」を適用します。
3. まとめ
更地よりは、駐車場として活用する方が、相続税上はかなり有利になりそうですね。
居住用の土地よりも固定資産税は若干高いですが、マンション建設ほど資金負担もいりませんし、気軽に始められるビジネスです。
一つの相続対策として活用されてはいかがでしょうか?
4. 参照URL
(貸駐車場として利用している土地の評価)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4627.htm