今回は、同族関係にある個人や法人間で適用される「借地権認定課税」のお話です。
1. 権利金って?
一般的に、貸した土地上に「他人の建物」が建つと・・?
当分の間・・貸した土地を返還してもらうことは、難しくなりますね。
そこで、他人に(建物建設目的で)土地を貸し出す場合、それに見合う「権利金」の授受が行われるのが一般的です(※)。
簡単に言うと、土地の所有権が制約されるので、その分「お金をもらう」ということですね。
権利金は「礼金」のようなもので、一般的には返還されません。
(※)権利金を授受する「取引慣行」のある地域の場合です。
一般的に、借地権割合が30%以上の地域は「取引慣行がある地域」ととされています。
2. 権利金の金額の算定方法は?
権利金の金額は、「土地価格 × 借地権割合」の金額をベースに算定します。
上記式の意味は、以下の通りです。
そもそも、土地所有者の所有権が制約される理由は、借主に「借地権という権利が認められる」からです(Q31参照)。
つまり、土地所有者は、借主から「制約された借地権の評価額」に見合う「権利金」をもらえば、取り返すことができます。
この「借地権」は、「土地価格 × 借地権割合」で評価しますので、この価格が権利金の金額のベースになるという意味です。
(借主側は、支払った権利金の金額を「借地権」として計上します。)
(例)土地路線価が100百万円、借地権割合が60%の土地の場合
権利金の額(借地権の評価) | 100百万円 × 60 % = 60百万円 |
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土地の評価(借地権差引) | 100百万円 × ( 1 – 60% )= 40百万円 |
この場合、借主は、土地所有者に「権利金」として60百万円を支払います。
3. 同族間での土地の賃貸の場合は?
しかし、現実的には・・同族個人や同族会社へ土地を貸し出す場合、「権利金」の支払を行わないのが一般的です。
なぜなら、一般的に権利金は高額ですし、権利金のやりとりには「税金」がかかるからです。
簡単に言うと・・同族間では、何もやり取りしない方がお得なんですね。
でも・・「権利金のやりとり」がないからといって・・税金がかからないか?
税法は・・そんな甘くはありません(笑)。
税法上、「本来支払うべき権利金」を支払わない場合、その「得した分」に税金をかけようとします。
これが「借地権認定課税」とよばれるものです。
ただし、この「借地権認定課税」の論点は、「同族関係にある個人及び法人間」という特殊なケースに対してのみ適用され、第三者間取引には適用されません。
なぜなら、第三者間取引の場合は、経済的合理性に基づいて取引すると考えられ、「借地権認定課税」の論点は、そもそも発生しないと考えられるからです。
4. 借地権認定されない場合は?
そうは言っても・・現実的には、一般的に多額になるであろう「権利金のやり取り」を、同族個人や同族会社に強いるのは・・かわいそうな面もあります。
そこで税法上、権利金の授受がない場合でも「借地権認定課税」が行われない場合が認められています。
以下の2つのパターンです。
- 相当の地代を収受する場合
- 土地の無償返還届出書を提出する場合
次回以降、上記2つのパターンを解説します。