土地の賃貸借で「借地権認定」が行われる場合、借地権の評価額(認定額)は、どうやって算定するんでしょうか?
実は・・「借地権評価額」の計算方法は、相続税法と法人税法で、若干異なります。
目次
1. 相続税(贈与税)上の借地権の評価額
個人間取引で「借地権認定」される場合の評価額は、以下の式で算定されます。
(1) 自用地評価額
相続税評価額(過去3年平均ではない)。
権利金を一部授受している場合などは、その額を控除します。
(2) 相当地代の年額
自用地評価額の過去3年間平均 × 年 6%
(3) 通常地代の年額
その地域の「通常の賃貸借契約」で支払われている地代。
不明な場合は、一般的に{自用地価額 ×(1 – 借地権割合)}× 6% で計算されます。
(4) まとめ
「相当地代」が「実際地代」と同額の場合は、カッコ内がゼロとなり、借地権評価はゼロとなります。
逆に、「実際地代」が「相当地代」よりも少なくなればなるほど、カッコ内の数値が高くなり、「借地権評価」は増加していきます。
2. 法人税上の借地権の評価額
法人間取引等で「借地権認定」される場合の評価額は、以下の式で算定されます。
(1) 土地の更地価格
通常取引価額(時価)課税上弊害ない限り、相続税評価額もOK。
権利金を一部授受している場合などは、その額を控除する。
(2) 相当地代の年額
土地の更地価額(※) × おおむね年 8%
(※)通常の取引価額(時価)
課税上弊害ない限り、相続税評価額等もOK。
(3) 上限
上記計算式で算定された「借地権評価額」が、通常収受すべき権利金の額(土地の更地価額 × 借地権割合など)を超える場合は、その通常収受すべき額が上限。
3. 例題(相続税&法人税)
土地の自用地評価額(相続税評価額) | 32,000千円 |
---|---|
土地の自用地評価額(路線価)3年平均 | 30,000千円 |
借地権割合 | 60% |
実際地代の年額 | 900千円 |
通常地代の年額 | 720千円 |
- 課税の弊害がないため、法人税上の借地権を算定する際の「土地の更地価格」は、「相続税評価額」で行うものとする。
(1) 相続税(贈与税)上の借地権の評価額
① 相当地代の年額の計算
30,000千円 × 6% = 1,800千円
② 認定課税される借地権の評価額
(2) 法人税上の借地権の評価額
① 相当地代の年額の計算
32,000千円 × 8% = 2,560千円
② 通常収受すべき権利金(上限)
32,000千円 × 60% = 19,200千円
③ 認定課税される借地権の評価額
19,200千円 (通常収受すべき権利金)< 20,750千円(上記金額)
⇒ 19,200千円
4. 借地権認定される場合の税金
借地権認定される場合は、「借地権」という無形の財産を、無償あるいは低額で贈与したという取扱いとなり、借り手・貸し手どちらにも、税金がかかる可能性があります。
ただし、当事者が個人か?法人か?によって、贈与税がかかるケース、法人税がかかるケースなどパターンが結構ややこしいです。
簡単にまとめておきます。
貸主 | 借主 | 貸主の課税 | 借主の課税 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
個人 | 個人 | かからない | 贈与税 |
|
個人 | 法人 | かからない | 法人税 |
|
法人 | 個人 | 法人税 | 所得税 | |
法人 | 法人 | 法人税 | 法人税 |
なお、この論点は、借地権に限った話ではなく、個人間あるいは個人法人間の低額譲渡・高額譲渡という論点に集約されます。
この論点については、別HPでまとめていますので、ぜひ、ご参照ください。
5. 参照URL
(法人税の借地権評価)
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/13/13.htm
(相続税・贈与税の借地権評価)
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/sozoku/850605/01.htm
(所得税基本通達59-5)
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/12/02.htm