Q38 借地権の金額算定方法

 最終更新日:2022/02/25 閲覧数:8,397 views

 

土地の賃貸借で「借地権認定」が行われる場合、借地権の評価額(認定額)は、どうやって算定するんでしょうか?
実は・・「借地権評価額」の計算方法は、相続税法と法人税法で、若干異なります。

 

1. 相続税(贈与税)上の借地権の評価額

個人間取引で「借地権認定」される場合の評価額は、以下の式で算定されます。

 

38-1

 

(1) 自用地評価額

相続税評価額(過去3年平均ではない)
権利金を一部授受している場合などは、その額を控除します。

 

(2) 相当地代の年額

自用地評価額の過去3年間平均 × 年 6%

 

(3) 通常地代の年額

その地域の「通常の賃貸借契約」で支払われている地代。
不明な場合は、一般的に{自用地価額 ×(1 – 借地権割合)}× 6% で計算されます。

 

(4) まとめ

「相当地代」が「実際地代」と同額の場合は、カッコ内がゼロとなり、借地権評価はゼロとなります。
逆に、「実際地代」が「相当地代」よりも少なくなればなるほど、カッコ内の数値が高くなり、「借地権評価」は増加していきます。

 

2. 法人税上の借地権の評価額

法人間取引等で「借地権認定」される場合の評価額は、以下の式で算定されます。

 

38-2

 

(1) 土地の更地価格

通常取引価額(時価)課税上弊害ない限り、相続税評価額もOK
権利金を一部授受している場合などは、その額を控除する。

 

(2) 相当地代の年額

土地の更地価額(※) × おおむね年 8%
(※)通常の取引価額(時価)
課税上弊害ない限り、相続税評価額等もOK。

 

(3) 上限

上記計算式で算定された「借地権評価額」が、通常収受すべき権利金の額(土地の更地価額 × 借地権割合など)を超える場合は、その通常収受すべき額が上限。

 

3. 例題(相続税&法人税)

 

土地の自用地評価額(相続税評価額) 32,000千円
土地の自用地評価額(路線価)3年平均 30,000千円
借地権割合 60%
実際地代の年額 900千円
通常地代の年額 720千円

 

  • 課税の弊害がないため、法人税上の借地権を算定する際の「土地の更地価格」は、「相続税評価額」で行うものとする。

 

(1) 相続税(贈与税)上の借地権の評価額

① 相当地代の年額の計算

30,000千円 × 6% = 1,800千円

 

② 認定課税される借地権の評価額

38-3

 

(2) 法人税上の借地権の評価額

① 相当地代の年額の計算

32,000千円 × 8% = 2,560千円

 

② 通常収受すべき権利金(上限)

32,000千円 × 60% = 19,200千円

 

③ 認定課税される借地権の評価額

 

38-4

 

19,200千円 (通常収受すべき権利金)< 20,750千円(上記金額)
⇒ 19,200千円

 

4. 借地権認定される場合の税金

借地権認定される場合は、「借地権」という無形の財産を、無償あるいは低額で贈与したという取扱いとなり、借り手・貸し手どちらにも、税金がかかる可能性があります。

 

ただし、当事者が個人か?法人か?によって、贈与税がかかるケース、法人税がかかるケースなどパターンが結構ややこしいです。
簡単にまとめておきます。

 

貸主 借主 貸主の課税 借主の課税 摘要
個人 個人 かからない 贈与税
  • 無償・低廉譲渡の場合でも、貸主側が個人の場合には、所得税がかかりません。
  • 借主側には原則「贈与税」がかかりますが、無償や固定資産税相当の場合は、使用貸借となるため、贈与税はかかりません。
個人 法人 かからない 法人税
  • 本来、個人から法人への無償・低廉譲渡については、「みなし譲渡所得課税」がかかりますが、借地権の設定行為は対象外となっています(所得税基本通達59-5)。
法人 個人 法人税 所得税
法人 法人 法人税 法人税

 

なお、この論点は、借地権に限った話ではなく、個人間あるいは個人法人間の低額譲渡・高額譲渡という論点に集約されます。
この論点については、別HPでまとめていますので、ぜひ、ご参照ください。

 

5. 参照URL

(法人税の借地権評価)
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/13/13.htm
 
(相続税・贈与税の借地権評価)
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/sozoku/850605/01.htm
 
(所得税基本通達59-5)
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/12/02.htm

 

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