Q42 相続放棄のメリット・デメリット

公開日:2017/09/04 最終更新日:2021/08/25 閲覧数:1,078 views

 

自分が相続する場面で、もしお亡くなりになられた方に「多額の借金」があったら、相続したくないですよね?
こういった場合に、相続人には「相続放棄」という選択肢が認められています。
 
「相続放棄」は、相続発生後「3か月以内」に決定しなければいけません。
意外とあっという間に3か月は経過してしまうので・・注意しましょう。

 

1. 相続放棄とは?

亡くなった方の「財産や負債」を「一切相続しない」という制度です。
相続放棄をすることで、最初から相続人でなかったことになりますので、非常に強力な制度です。
相続放棄は、相続人全員ではなく、各人ごとに判断が可能ですので、比較的手続きは簡単です。

 

2. メリット・効果

(1) 負債を相続する必要がなくなる。

相続放棄をすることで、被相続人の「借金」などを引き継ぐ必要がなくなります
 
同様に、被相続人が負っていた「保証債務」も引き継ぎません。
実務上、保証債務は把握しきれない場合が多いので、「相続放棄」はそれなりの威力を発揮しますね。

(2) 相続財産がない場合

相続財産がない場合でも、「相続放棄」が有効に機能する場合があります。
例えば、相続人であるということは、たとえ相続財産がない場合でも、「遺産分割協議」や「名義変更手続」等、他の相続人と関わらなければいけませんので、意外と手続きは面倒です。
 
しかし、「相続放棄」を行うことで、そもそも最初から相続人ではなくなりますので、相続人としてのこれらの「手間」から「解放される」ことになります。

(3) 遺産を守るための相続放棄

遺産を守る観点でも、「相続放棄」が有効に機能する場合があります。
例えば、以下のような場合です。
 

  • 被相続人甲の法定相続人は、子供A・Bのみ(配偶者・両親なし)
  • 子供Bは、莫大な借金を抱えている。

 
このケースでは、借金のあるBが「相続放棄」を行えば、借金のないAが遺産を全額相続することになるので、結果的に「遺産を守る」ことになります。
 
いまいち・・イメージがわかないと思いますので、
Bが「相続放棄」をしない場合と、した場合の影響をまとめてみます。
 
42-1

パターン 法定相続人 法定相続分割合 相続財産の行方 影響
Bが相続放棄をしない場合 A・B  A 1/2・ B 1/2 A・Bそれぞれに相続財産が配分 借金のあるBが「相続放棄」をしない場合、Bは1/2を相続することになるため、、Bが相続した財産は、借金の債権者から取り立てられてしまう。
Bが相続放棄をした場合 Aのみ A 100 % Aが相続財産を全額取得 借金のあるBが「相続放棄」をする場合、Bが相続する財産はないため、相続財産が債権者に取り立てられるおそれはなくなる。

 
つまり、借金がある人が相続した財産は、結果的に債権者から取り立てられてしまうんですよね。
そこで、借金がある人が「相続放棄」を行うことで、もう一方の相続人に、財産は完全に相続される結果、債権者から遺産を取り立てられるリスクが消え、遺産を守ることができる!ってことなんです。
債権者からすれば・・たまったものではありませんが・・法律上はそうなっています。
 
ちなみに、遺産を守る別の方法として、「遺産分割協議」で、借金のあるBの相続分を少なくすることも考えられます。
しかし、この方法では、債権者側は、「遺産分割協議」が詐害行為に該当するとして、「詐害行為取消権」(民法424条)を行使できる可能性がありますので、あまり有効な方法とはいえません。
 

(4) 生命保険金は別

たとえ相続放棄を行っても、「生命保険金」は受取人固有の財産となるため、相続放棄の対象とはなりません。
ご安心を。

 

3. デメリット

(1) 相続財産を一切取得できない

相続放棄をすることで、「最初から相続人ではなかった」ことになりますので、マイナスの財産だけでなく、プラスの財産も一切引き継ぐことができません。
 
例えば・・被相続人と同居していた方が「相続放棄」をした場合は、住んでいる自宅さえも・・明け渡さないといけないことになってしまいます。
 

(2) 一度放棄すると撤回はできない

相続放棄は、一度裁判所に受理されると撤回できません。
また、他の相続人への配慮から、相続放棄は、相続発生後「3か月以内」と定められています(熟慮期間)。
この期間に放棄をしない場合、「単純承認」したものとみなされてしまいます。
 

後々になって「高額な相続財産が見つかった」からといっても、「相続放棄」は撤回できません。
なお、 家庭裁判所の承認があれば、この「熟慮期間」の延長は認められます。
 

(3) 他の相続人に影響する

相続放棄を行った人は、「最初から相続人ではなかった」ことになります。
この結果・・他の相続人にも影響を与えることになってしまいます。
 
例えば、相続放棄する人以外に、「同順位」の法定相続人がいない場合は、次順位の人が「法定相続人」に昇格します。
相続放棄を行うケースは、「借金がある場合」などが多いですので、想像もしていなかった次順位の方が相続人に自動昇格され、借金を背負わされる可能性があるということですね。
相続放棄する場合は、あらかじめ関連者にお知らせしておいた方がよいですね。
 
なお、次順位の人ももちろん、「相続放棄」は可能です。相続放棄による「相続権の移動」は、法定相続人の相続範囲である「兄弟姉妹まで」となっています。