Q45 相続放棄と遺贈・遺贈放棄の関係

公開日:2017/10/18 最終更新日:2017/10/23

DR110

 

相続放棄とは別に、「遺贈放棄」という手続きがあります。
似たような手続きですが、全く別の制度になります。
今回は、相続放棄と遺贈、そして遺贈放棄の関係をまとめます。


1. 遺贈って?

遺贈というのは、「遺言」によって財産を贈与することです。
法律上は、相続と異なり、遺言による一方的な「贈与」となります。
遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類があります。
贈与を受ける方は、一般的に「受贈者」と呼ばれます。


2. 遺贈の放棄って?

遺贈は、法律上は一方的な「贈与」となりますが、必ずしも受け取らないといけないわけではありません
「遺贈放棄」という手続きにより、「放棄」することは可能です。
「包括遺贈」と「特定遺贈」それぞれで手続が異なりますので、以下にまとめておきます。

 

内容 効果 放棄の方法
包括遺贈 すべて(又は一部の一定の割合)の遺産を一括して贈与する遺贈。 全ての財産・債務を引き継ぐことになるため、相続人が単純承認したのと同じ効果となる。 借金を相続してしまう可能性があるため、債権者保護の観点から、家庭裁判所での手続が必要。
期限は相続放棄と同様、相続発生後3か月以内。
特定遺贈 特定の遺産を指定して贈与する遺贈。 遺贈対象だけを引き継ぐため、借金などを引き継ぐことはない。 家庭裁判所での手続は不要。
他の相続人や、遺言執行者に対して、遺贈放棄の意思表示をすれば足りる。
期限は特にない。

 


3. 遺贈放棄と相続放棄の関係

「遺贈放棄」と「相続放棄」は全く別物の制度です。
ですので、たとえ遺贈放棄を行ったとしても、別途「相続放棄」の手続は行わなければいけません
特に、相続人が「受贈者」の場合は、注意しましょう。
 
例えば、「遺贈放棄」を行った場合、遺贈予定であった財産は「相続財産」となり、相続人による相続の対象となります。
つまり、相続人が「受贈者」が相続人でもある場合は、たとえ「遺贈放棄」をした場合でも、その後「相続人」の立場で、「相続財産」を引き継ぐことになります。
制度が全く別なので、相続人が「遺贈放棄」を行っても自動的に「相続放棄」が行われるわけではありません。
 
被相続人の財産を完全に放棄したい場合は、「遺贈放棄」だけでなく、別途、「相続放棄」も行わなければならない点、に注意しましょう。


4. 遺贈と相続放棄の関係

相続放棄を行うと、被相続人の「プラスの財産」も「マイナスの財産」も引き継がなくてすみます。
しかし、中には「プラスの財産だけ」は相続したいと考える方もいるかもしれません。
 
ここで・・「遺贈」で財産を受け取ったうえ、別途「相続放棄」を行うことは可能か?という論点があります。
 
制度上、「遺贈」と「相続放棄」は、全く別物の制度ですので、遺贈を受けた人が「相続放棄」を行うことは可能です。
仮に、相続放棄を行った場合でも、その効果が「遺贈財産」まで及ぶことはありませんので、遺贈財産は、そのまま引き継ぐことが可能です。
 
ただし、当該行為が、「債権者を著しく害する場合」には、債権者から「詐害行為取消権」(民法424条)などによって取り消される可能性がありますので、実務的には難しいところもあるようです。