遺族の方は、被相続人の「死亡保険金以外」に、「手術給付金」や「入院・通院給付金」などを受け取る場合があります。
このうち、「死亡保険金」については、「みなし相続財産」として「相続税の課税対象」となりますが、一定の非課税枠が認められています。
では、死亡保険金以外の「手術給付金」や「入院・通院給付金」の課税関係はどうなるのでしょうか?
今回は、「手術給付金」「入院・通院給付金」と税金の関係をお伝えします。
(被保険者=受取人=被相続人を前提に、以下記載します)。
1. 手術・入院・通院給付金って何?
名前の通り、死亡の有無にかかわらず、手術・入院・通院した場合に受け取ることができる保険です。
一般的には、被保険者=受取人とするケースが多いです。
本来は、本人が生きていれば、本人自身が請求するものですが、お亡くなりになられた場合は、遺族の方が本人に代わってこれらを請求することになります。
2. 所得税は非課税
手術・入院・通院給付金は、たとえ親族の方が受け取った場合でも、「傷害に基因して支払われるもの」と取り扱われ、「所得税」はかかりません。
時期 | 保険請求者 | 所得税 | 理由 |
---|---|---|---|
相続開始前 | 被相続人 | 非課税 | 傷害に起因して支払われるもののため |
相続開始後 | 被相続人以外(※) | 非課税 |
(※)「本人の配偶者や直系血族、生計を一にするその他の親族」の場合のみ非課税となります。
その他の方が受け取る場合は、「一時所得」となります(所基通9-20)
3. 相続税は課税
元々、「被相続人が受取人」である入院給付金等を、本人死亡後に親族が請求した場合、相続税上の取扱いはどうなるでしょうか?
「死亡保険金」と比べると分かりやすいです。
死亡保険金は本来、保険請求者(遺族)が原始的に取得したものであり、相続財産とはなりませんが、課税の公平性から「相続や遺贈とみなして」相続税が課税されるものです(みなし相続財産)。
これに対して、「入院給付金等」は、本来本人が請求すべき保険を、残された家族が代わりに請求しているにすぎません。
つまり、保険請求権の原始取得者は「お亡くなりになった本人」です。
したがって、「みなし相続財産」になる余地はなく、「本来の相続財産」となります。
この結果、死亡保険金であれば「みなし相続財産」として相続税の計算上非課税( 500万円 × 法定相続人の数 )が適用できますが、入院給付金等は、死亡保険金と異なり、相続税の「生命保険金の非課税枠」はありません(相基通3-7注書)。
相続税申告書では、これらの入院給付金等は、「未収金」等として財産の明細書に記載し、課税財産の価額に算入します。
時期 | 保険請求者 | 相続税 | 理由 |
---|---|---|---|
相続開始前 | 被相続人 | 課税 | 死亡によって取得した「生命保険金等」 ではなく、本来の相続財産となります |
相続開始後 | 被相続人以外 | 課税 |
4. 受取人が配偶者の場合は?
入院給付金等の受取人を、「奥様」などにしておけば、保険請求権の原始取得者は最初から「配偶者」になりますので、被相続人の相続財産とはならない結果、「相続税の課税対象」からも外れます。
しかも、所基通9-20により、奥様には所得税もかかりません。
これを考えると、最初から入院給付金の受取人は、「本人以外」にしておいた方がよさそうですね。
5. 参照URL
(所得税基本通達9-20)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/04.htm#a-04