Q54 数次相続と相続税への影響

公開日:2017/12/06 最終更新日:2021/08/25 閲覧数:6,202 views


 

前回に引きつづき、「数次相続」の論点です。
実際、数次相続が起きた場合、相続税や相続税申告書にはどういった影響があるのでしょうか?

 

1. 相続税への影響

数次相続が発生した場合は、「遺産分割協議」や「相続税の影響」が複雑になる可能性があります。
相続税への影響や、留意点は以下の通りです。

 
① 基礎控除額は増えない
数次相続により「相続人の地位」を相続する方が2名以上いた場合も、法定相続人が増えるわけではありません
第一次相続にかかる「相続税の基礎控除額」については、「数次相続」があってもなくても、影響はありません。
あくまで「被相続人の相続」(一次相続)が発生した時点の基礎控除額( 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 )となります。

 
② 相次相続控除が可能(相続税法20条)
数次相続に関わらず、第二次相続の場合、第二次相続税額から一定額が控除される「相似税額控除」の適用が受けられる場合があります。
詳しくはQ18を参照ください。

 
③ 配偶者の特例・小規模宅地の特例の適用
例えば、父・母・子3人家族で、父死亡の後、母もすぐにお亡くなりになられた場合の「数次相続」を考えます。
お子様は、第一次相続、第二次相続ともに「相続人」となります。
この場合、子は、まず父の遺産分割協議を行い第一次相続で、「母が父の財産をすべて取得したことにする」ことは可能です。
例えば、第一次相続で母が父の財産をすべて取得したことにして、各種特典(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例)を利用することで、相続税額が安くなるケースがあります。
逆に、第一次相続で子が財産を多く相続し、第二次相続の相続税につき、「相次相続控除」を受けることで、相続税総額が安くなるパターンもあります。
いろいろなパターンを「シミュレーション」してみることも重要ですね。



 

2. 相続税申告書への影響

数次相続だからといって、第一次相続の相続税申告書の提出が省略されるわけではありません。
第一次相続の「相続税申告書」の内容は、通常の相続税申告書と同じです。
ただし、数次相続の場合、第一次相続の申告期限につき、例外的な取り扱いがあります。
次回、このあたり解説します(相続税法27条の2)。



 

3. 実務上は?

簡単な例で考えます
 

  • 父死亡 ⇒ 相続人 母・子1人
  • 父死亡後、すぐ母が死亡 ⇒ 相続人 子1人
  •  
    父死亡による「第一次相続」については、「遺産分割協議」で、母の遺産引継額をゼロにすれば、第一次相続の母の相続税申告義務はなくなりますので、子が「母が有していた父の相続権の地位」を承継することはなくなります。
    また、上記例で、父の遺産分割協議が未了のまま、第二次相続(母)の相続税申告期限がきた場合は、父の遺産のうち、母の法定相続分(1/2)に相当する部分を母の遺産として相続税の課税価格に加算して申告します(相続税法第55条)



     

    4. ご参考~相続登記への影響~

    不動産を相続した場合、名義変更(相続登記)を行う必要があります。
    通常は、数次相続の場合でも、相続の都度、名義変更と登記費用が発生しますが、不動産が単独名義である場合には「中間省略登記」が可能となり、登記費用が節約できます。
    (ただし、登記上の記載は、2回の相続の記載になります)。