目次
相続とよく似た概念で、「遺贈」というものがあります。
どちらも、被相続人の財産を引き継ぐ方法ですが、法律上だけでなく、相続税上の取扱いも異なります。
1. 法律上の違い
(1) 相続とは?
相続とは、被相続人の財産を、包括的に法定相続人が引き継ぐことをいいます。
(2) 遺贈とは?
被相続人の財産を、「遺言」により特定の人物に無償で与えることをいいます。
(3) 主な違い
相続 | 遺贈 | |
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引き継げる方 | 相続できるのは、民法で定められている「法定相続人」のみ | 法定相続人以外の第三者など自由に選ぶことができる。 |
財産 | プラスの財産もマイナスの財産も包括的に引き継ぐ | 遺贈の対象となる財産を、遺言などで自由に決めることができます (遺留分は除く)。 |
なお、「遺贈」と「贈与」も、似ていますが、性格は少し異なります。
贈与は、「両者合意」のうえで行いますが、遺贈は「被相続人の一方的な意思」で行います。
2. 相続税計算方法の違い
遺贈は、贈与とは異なりますので、贈与税の対象とはなりません。
遺贈は、相続に近い性格を有するため、「相続税の対象」となります。
相続税計算方法は、遺贈でも、基本的に相続の場合と同じです。
ただし、遺贈の場合、「相続税額の2割加算」など特別な計算が定められているものがあります。
「遺贈」で、相続税と同じ取扱いがされるもの、適用できないものをまとめると、以下のとおりとなります。
(法定相続人に対する遺贈は除きます)
(1) 適用できないもの
基礎控除額 | 受贈者は、基礎控除額の計算ではカウントされない |
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死亡保険金・死亡退職金の非課税枠 | 遺贈で保険金等を引き継いだ人には、適用なし |
未成年者・障害者の税額控除 | 法定相続人が条件となるため、遺贈には適用なし |
相次相続控除 | 相似相続控除は「相続人」が条件のため、遺贈には適用なし |
(2) 適用されるもの
小規模宅地等の特例 | 小規模宅地等の特例の要件は、「被相続人の親族」。 相続人以外の方も、「遺贈」で特例を受けられる可能性はある。 |
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生前贈与加算による贈与税額控除 | 遺贈の場合も適用される。 |
3. 不動産取得税・登録免許税
相続と遺贈では、不動産取得税、登録免許税の取り扱いが異なります。
相続の場合、不動産取得税はかかりませんが、遺贈(特定遺贈)の場合は、不動産取得税がかかってきますので、ご留意ください。
なお、相続人への遺贈は、相続と同様の取り扱いとなります。
相続(法定相続人) | 遺贈(法定相続人以外) | |
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不動産取得税 | かからない | かかる(特定遺贈の場合のみ) |
登録免許税 | 税率安い | 税率高い |
4. ご参考~遺贈の効力~
遺言で相続人が「遺贈」の意思を表していても、被相続人が亡くなる前に、受遺者が先に死亡していた場合は「無効」になってしまいますので注意です。
この場合、受遺者の子への「代襲相続」は発生しません。