前回お伝えした、一般社団法人とは別に、「一般財団法人」あるいは「公益財団法人」という法人があります。
今回は、この「公益財団法人」と、相続税の関係を中心にまとめます。
目次
1. 社団法人と財団法人の違い
まず、「社団法人」と「財団法人」の違いを記載します。
「社団法人」は、人が集まることに「法人格」を与えたものですが、「財団法人」は、物が集まることに「法人格」を与えたものです。
社団法人 | 財団法人 | |
---|---|---|
相違点 | 人が集まることで法人格が与えられる。 | 財産が集まることで法人格が与えられる。 |
共通点 | どちらも法人格があるため、個人から拠出した財産は、個人の資産とは切り離される。 また、持ち分がないため、原則、「相続税」はかからない。 |
2. 公益財団法人とは?
公益財団法人とは、一般財団法人のうち、「公益」を行うことを目的とする法人のことです。
この「公益財団法人」ですが・・いきなり設立することはできません。
まずは、「一般財団法人」を設立し、内閣府等に申請&「公益認定基準」等を満たす場合に、はじめて「公益財団法人」として設立が可能となります。
なお、公益事業は「23の事業」に限定されています(学術・技芸・慈善その他、公益に関する事業)。
3. 設立のハードルは高い
公益財団法人の設立には、「事業目的」、「公益性の判断」、「公益目的事業が50%以上」等、さまざまな要件を満たす必要があり、非常にハードルは高いです。
また、理事等の親族等の合計数が「総数の3分の1以下」という要件があり、支配権を維持するのも一苦労です。
4. 相続税対策?
公益財団法人の設立には、様々なハードルがありますが・・
実は・・公益財団法人の活用は、全世界で究極の相続税対策といわれているのも事実です(公益社団法人も同様)。
公益財団法人の場合、一般的に「相続税法第66条第4項」のハードルを満たし、個人の資産を提供した場合でも、贈与税や相続税の「課税対象外」になるものと考えられています。
5. 公益財団法人のメリット
(1) 税法上の恩典
公益財団法人には、税法上、非常に大きな恩典があります。
① 法人税の特例
- 公益認定法上の「公益目的認定事業」は、非課税となる。
- 収益事業から得た収益の一部を、公益的事業に支出すると、一定金額まで「損金算入」が認められる
(みなし寄付。法人税法66、租措法42の3の2)。
② 所得税の特例(譲渡所得の特例)
- 個人が公益財団法人に財産を売却した場合、一定要件を満たす場合には、「譲渡益」が非課税となる。
- 個人が公益財団法人に財産を寄付をした場合、寄付金の所得控除や税額控除が可能となる。
③ 相続税・贈与税の特例
公益財団法人に財産を贈与・寄付した場合、「贈与者等の相続税または贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合」を除き、相続税や贈与税が非課税となる。
(租税特別措置法70①⑩)。
つまり・・すべての税法においてメリットがあるということです。
(2) 安定株主の確保
公益財団法人は、「公益目的」以外の理由で、株を処分することはできません。
この結果、実質的に公益財団法人が「株を長期保有」することになるため、株を保有してもらう法人の立場では、安定株主を確保できることになります。
(3) 社会貢献
規模の大きな会社は、地域社会に大きな影響力を持つだけでなく、その影響力に見合う社会への貢献が期待されています。
当該会社のオーナーは、公益財団法人を通じて、学術・文化・芸術の振興、福祉・教育の増進等、さまざまな社会貢献を行うことで、広く社会的責任を果たすことが可能となります。