Q83 共有名義の貸家にかかる敷地の評価 土地と建物の共有割合が異なる場合

 最終更新日:2022/08/16 閲覧数:5,631 views

共有名義の不動産を相続した場合、相続税の関係は「複雑」になります。
今回は、土地と建物、それぞれの共有割合が異なる「貸家」を相続する場合の、土地の評価及び小規模宅地等の特例の関係をまとめます。

なお、「自宅」が共有、土地と建物の共有割合が異なる場合は、Q84でまとめていますので、そちらをご参照ください。
 

1. 土地と建物の共有割合が「同じ」場合

最初に、土地と建物の共有割合が「同じ」場合を例題で解説します。
 

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった。
  • 生前、土地・建物とも父と母の共有名義(50%ずつ)で登記されている。
  • 土地建物は、「貸付事業」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  • 生前、父と母の間で地代の収受はない(=使用貸借)
  •  

    (1) 「父の建物共有持ち分」の敷地50㎡

    父の建物共有持ち分の敷地は、「貸付事業」として利用していますので、「貸家建付地評価」 となります。
    また、当該土地は、被相続人自身が貸付事業として使用していますので、「貸付事業用宅地等の特例」の適用が可能です。

    (2) 「母の建物共有持ち分」の敷地50㎡

    母の建物共有持ち分の敷地は、元々母の持分ですので、今回の相続対象外となり、関係ありません。

     

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父共有持ち分の敷地 50㎡ 貸家建付地 貸付事業用宅地等の特例 本人利用
    母共有持ち分の敷地 50㎡

     

    2. 土地と建物の共有割合が「異なる」場合 

    続いて、土地と建物の共有割合が「異なる」場合は、どうなるでしょうか?
    被相続人の「土地建物」の共有割合によって、パターンが2つに分かれます。
     

    (1) 被相続人共有土地㎡数 > 共有建物㎡数 の場合

     

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった。
  • 生前、土地は、父70%、母30%の共有名義で登記されている。
  • 生前、建物は、父50%、母50%の共有名義で登記されている。
  • 土地建物は「貸付事業」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  • 生前、父と母の間で地代の収受はない(=使用貸借)
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    (イメージ図)
    190303Q84_2
     
    【考え方】
    まず、父と母は、それぞれ自分の土地の上に、自分の建物を建築しているものと考えます。
    上記では、父所有建物は、すべて自分所有の土地上に建築されています。
    一方、母所有建物のうち、30%は自分所有の土地上、残りの20%は父所有の土地上に建築されていると考えます。
    以下、上記「イメージ図」に示した「①~③の土地」ごとにまとめます。
     
    ① 父建物共有持ち分の敷地(50㎡)
    父建物共有持ち分の敷地は、すべて父所有の土地となります。
    「貸付事業」で利用していますので、「貸家建付地評価」、「貸付事業用宅地等の特例」の対象となります。
     
    ② 「母建物共有持ち分の敷地(20㎡・土地の所有者父)
    母所有建物下の土地のうち、20㎡は父所有の土地です。(母は所有権を有していない)
    当該部分は、母が父から土地を無償で借りて(=使用貸借)、自分の建物を建築していると考えます。
     
    使用貸借の場合、「借地権はゼロ」で評価しますので、この20㎡の部分については「自用地」評価となります。
    また、建物共有登記の場合は、誰がどの部分を所有しているか?の明確な区分はないため、1棟の建物全体が、本人(被相続人)が居住していた建物と取り扱われ、「貸付事業用宅地等の特例」の対象となります。詳しくは、Q27をご参照ください。

     
    ③ 「母建物共有持ち分の敷地(30㎡・土地の所有者母)
    この部分は、母が自分の土地上に自分の建物を建築していると考えます。
    ただし、当該部分は母所有ですので、そもそも今回の相続の対象になりません。
     
    ④ 結論・まとめ
    結論、被相続人共有土地㎡数>共有建物㎡数の場合は、
    父所有土地(70㎡)すべてが「貸付事業宅地等の特例」の対象となります。
     

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父建物共有持ち分下の敷地 50㎡ 貸家建付地 貸付事業用宅地等の特例 本人利用
    母建物共有持ち分下の敷地 父所有土地部分 20㎡ 自用地 貸付事業用宅地等の特例 本人利用
    母所有土地部分 30㎡ 相続対象外

     

    (2) 被相続人共有土地㎡数 < 共有建物㎡数 の場合

     

  • 父が亡くなり、すべて母が相続することになった。
  • 生前、土地は、父30%、母70%の共有名義で登記されている。
  • 生前、建物は、父50%、母50%の共有名義で登記されている。
  • 土地建物は「貸付事業」として利用、小規模宅地等の特例要件は満たす。
  • 土地の全㎡数 100㎡とする。
  • 生前、父と母の間で地代の収受はない(=使用貸借)
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    (イメージ図)
    190303Q84_3
     

    【考え方】
    上記(1)と同様に、父と母は、それぞれ自分の土地の上に、自分の建物を建築しているものと考えます。
    父所有建物の内、30%は父自身所有の土地上、残りの20%は母所有の土地上に建築されていることになります。
    一方、母所有の建物は、すべて母所有の土地上に建築されていると考えます。
    以下、上記「イメージ図」に示した「①~③の土地」ごとにまとめます。
     
    ① 父建物共有持ち分の敷地(30㎡)
    父建物共有持分の敷地は、すべて父所有の土地となります。
    「貸付事業」で利用していますので、「貸家建付地評価」、「貸付事業用宅地等の特例」の対象となります。
     
    ② 父建物共有持ち分の敷地(20㎡・土地の所有者母)
    父所有建物下の土地の内、20㎡は母所有の土地です(父は所有権を有していない)。
    当該部分は、父は母から土地を無償で借りる(使用貸借)となっています。
    ただし、当該部分は母所有ですので、そもそも今回の相続の対象になりません。
     
    ③ 母建物共有持ち分の敷地(50㎡・土地の所有者母)
    この部分は、母が自分の土地上に自分の建物を建築していると考えます。
    ただし、当該部分は母所有ですので、そもそも今回の相続の対象になりません。
     
    ④ 結論・まとめ
    結論、被相続人共有土地㎡数<共有建物㎡数の場合も、
    被相続人共有土地(30㎡)すべてが「貸付事業用宅地等の特例」の対象となります。

     

    生前区分 対象 評価区分 小規模宅地等との関係 利用区分
    父建物共有持ち分下の敷地 父所有土地部分 30㎡ 貸家建付地 貸付事業用宅地等の特例 本人利用
    母所有土地部分 20㎡ 相続対象外
    母建物共有持ち分下の敷地 50㎡ 相続対象外

     

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