前回まで(Q80~Q82)、自宅及び貸家として利用している場合の「共有名義不動産の相続と、小規模宅地等の特例の関係」をお伝えしました。
が・・あくまで共有名義人同士が「同一生計」の場合を前提にお伝えしました。
今回は、不動産が共有名義で、かつ「生計が別」の場合、小規模宅地等の特例の関係はどうなるのか?を考えてみます。
「自宅」として利用する場合を例に解説します。
土地、建物どちらが共有なのか?によって、パターンが2つに分かれます。
1. 土地が共有の場合
まず、「土地」が共有の場合です。
(イメージ図)
母共有持ち分 50㎡( 100㎡ × 1/2 )だけが、小規模宅地等の特例の対象となります。
(子土地共有持ち分 50%は、もともと母所有ではないので、もちろん対象外です)
生前区分 | 対象 | 評価区分 | 小規模宅地等との関係 | 利用区分 |
---|---|---|---|---|
母所有土地 | 50㎡ | 自用地 | 特定居住用宅地等 | 本人利用 |
子所有土地 | 50㎡ | ― | ― | ― |
2. 建物が共有の場合
次に、「建物」が共有の場合です。
(イメージ図)
(1) 「母建物共有持ち分」に対応する土地50㎡(すべて所有は母)
「自宅」として利用していますので、「自用地評価」となり、「特定居住用宅地等の特例」の対象となります。
(2) 「子建物共有持ち分」に対応する土地50㎡(すべて所有は母)
こういった事例の場合、当該部分は、母から土地を無償で借りる(=使用貸借)ことが一般的です。
使用貸借の場合、「借地権はゼロ」で評価しますので、
結論、子持ち分建物に対応する土地(所有権は母)は、「自用地」評価となります。
「特定居住用宅地等の特例」の対象にもなりません。
結論、建物が共有名義で、「生計別親族」の場合は、母所有土地のうち、
母建物持分に対応する土地 50㎡のみが「小規模宅地等の特例」の対象となります。
生前区分 | 対象 | 評価区分 | 小規模宅地等との関係 | 利用区分 |
---|---|---|---|---|
母建物共有持ち分対応土地 | 50㎡ | 自用地 | 特定居住用宅地等 | 本人利用 |
子建物共有持ち分対応土地 | 50㎡ | 自用地 | ― | 生計別親族利用 |
なお、今回は、自宅利用の場合で記載しましたが、貸家利用の場合でも、考え方は自宅と同様です。
小規模宅地等の特例との関係も、同様に判断します。