Q9【徹底比較】相続税上の「債務控除」と所得税上の「医療費控除」の関係は?準確定申告との関係は?

 最終更新日:2022/03/01 閲覧数:8,974 views


 

被相続人がお亡くなりになる前は、「医療費」が発生しているのが一般的です。
医療費を支払う方は、本人の場合のほか、相続人が立替で払うケースもあると思います。
 
所得税上、支払った医療費については、一定額を超えると「医療費控除」が可能です。

一方、所得税上の「医療費控除」とは別に、相続税では「債務控除」という制度があり、相続発生時点で未払の医療費については、債務控除(相続財産から控除)可能です。

 

今回は、所得税上の「医療費控除」と相続税上の「債務控除」の関係につきまとめます。

 

1. 相続税上の債務控除

(1)相続税上の債務控除とは?

相続税上の「債務控除」は、相続発生時点で「被相続人」が負担すべき債務につき、相続財産の計算の際に控除できる制度です。

 

(2)債務控除と医療費の関係

「債務控除」は、相続発生時点の債務ですので、原則として、相続発生日後に支払われるものとなります。
ただし、相続開始前に「相続人」が立替払いした部分も、被相続人から見た場合、相続発生時点では、「相続人に対する債務」となりますので「債務控除」が可能です。
 
支払者ごと、相続発生前後でまとめると以下の通りとなります。
 

相続開始前の支払 相続開始後の支払
被相続人支払 債務控除ではない
(単に相続人が保有する現金が減少しただけ)
-(既に亡くなられているため)
相続人支払 債務控除OK(相続人に対する債務)(※) 債務控除OK(病院に対する債務)

(※)後日被相続人に清算予定の立替支払のみ(扶養義務間での当然の支払は「債務控除」できないケースあり)

 

(3)被相続人に資力がない場合

上記のとおり、相続人が立替えた医療費は、基本的には「債務控除」が可能ですが、扶養義務間での当然の支払いの場合には「債務控除」できないケースがあります。例えば、被相続人に「入院費」を支払える資力がない場合です。
 
この場合は、相続人が民法上の扶養義務の履行(民法877)として医療費を支払うことになりますので、被相続人が負担すべきものではなく、相続人が負担すべき医療費となります。
相続税が課税されるケースで、こういったケースはあまりないかもしれませんが、たとえ「相続人」が医療費を立替払いした場合でも、債務控除ができません。ご留意ください。
 

2. 所得税上の医療費控除

(1)医療費控除とは?

所得税上の医療費控除は、相続税の「債務控除」とは全く別の制度です。
所得税上の「医療費控除」は、一定額以上の医療費の支払がある場合に、所得税が安くなる制度です。
支払者本人だけでなく、「生計を一にする方」のために負担した「医療費」も、本人自身の医療費控除に利用できます。

 

(2)生計を一にするとは?

イメージは、「財布がいっしょ」ということです。
「同居」は要件とはなっていませんが、「生活費等の送金等が行われている場合」などが例示されています。
同居の場合は、原則として「生計を一としている」と取り扱われます(所基通2-47)。

 

(3)相続の場面での「医療費控除」の適用関係

「相続」の場面でも、所得税上の「医療費控除」は適用可能です。
所得税上の医療費控除は、医療費を支払っている方が「医療費控除」を行うことが可能です。
 
生前に被相続人が支払った医療費は、被相続人自身の「準確定申告」で医療費控除を行います。
一方、被相続人と「生計を一」にする「相続人」が医療費を支払った場合は、「相続人」の確定申告で医療費控除を行います。「相続開始」前後にかかわらず可能です。被相続人の準確定申告では控除できません。

支払者ごと、相続発生前後でまとめると以下の通りとなります。

 

相続開始前の支払 相続開始後の支払
被相続人負担 被相続人の準確定申告で医療費控除(※1)
相続人負担 相続人の確定申告で医療費控除(※2) 相続人の確定申告で医療費控除(※2)

 
(※1)相続が発生した場合は、相続人は、被相続人の相続発生時点までの所得につき、相続後4カ月以内に「準確定申告」を行わなければいけません。
この「準確定申告」の中で、生前に「相続人本人」が負担した医療費は、「医療費控除」を行うことになります。
(※2)被相続人の準確定申告では控除できません。

 

3. 「債務控除」と「医療費控除」がダブルで引ける?

上記の通り、相続人が負担した「医療費」は、相続前後にかかわらず、債務控除も医療費控除もできる場合があります。

二重に差し引いている感じがしますが、それぞれの目的が異なるので、両方とも適用が可能です。

 

4. 例題

●母が12月31日に亡くなった(母の資力はあるものとする)
●息子Aは母と同居し、母と生計を一にしている。
●息子Aには妻B子がいる。
●母が生前かかった医療費や、医療費支払者は以下の通り

 

支払日 医療費金額 支払者 債務控除 準確定申告
(母)
確定申告
(息子A・妻B子)
10/30 50,000円 (※1) (※2)
11/30 150,000円 息子A (※3)
(対 母親)
1/30 200,000円 息子A (※3)
(対 病院)
2/28 50,000円 妻B子 ×(※4)

 

(※1)本人(母)の相続財産(現金)が減少するだけなので、債務控除はなし。
(※2)本人(母)の準確定申告で、「医療費控除」が可能。
(※3)息子Aは法定相続人のため、相続前後に関わらず債務控除が可能。また、生計を一にしているため、本人の確定申告で「医療費控除」も可能。
(※4)妻B子は、法定相続人ではないため債務控除は不可。
 

5. 参照URL

(No.4126 相続財産から控除できる債務)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm
 

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6. YouTube

 
YouTubeで分かる「相続税上の「債務控除」と所得税上の「医療費控除」の関係は?」