Q95【私的年金】個人年金受給権・退職年金受給権と相続税・所得税の関係は?死亡一時金との違いや二重課税の取扱い

 最終更新日:2022/04/01 閲覧数:16,819 views

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公的年金については、たとえ相続時点で未支給の金額についても、遺族保障の観点で、相続税は課税されません。
 
一方で、公的年金等ではなく、「私的年金」の未支給年金には相続税が課税されるのでしょうか?

例えば「個人年金」や「退職年金(企業年金)」などで、死亡後に遺族に支給される年金等です。
 
「個人年金」や「退職年金」の受給期間中に死亡した場合、遺族がその「受給権」を承継し、残りの期間の「年金」を受給できます。また、「死亡保険金」や「満期保険金」も、一時金ではなく「年金形式」でもらう場合は、同様に「年金受給権」を承継します。この「年金受給権」は、相続税法上は「定期金に関する権利」と呼ばれます。
 
今回は、こういった「個人年金・退職年金」と相続税、所得税との関係につき解説します。
(今回の「個人年金」は、保険料負担者 = 被保険者 = 年金受取人を前提とします。)
 

1. 個人年金とは?種類は?

(1) 個人年金とは?

個人年金とは、公的年金(国民年金や厚生年金等)を補填する目的で、生命保険会社と契約する「私的年金」です。
一般的に、60歳あるいは65歳まで保険料を支払い、その後、年金で受給します
(保険会社によっては「一時金」で受け取れるタイプもまれにあります)。

 

(2) 個人年金の種類

大きく、下記3つの種類となります。

 

種類 内容 死亡後の遺族の受取
確定年金 生死に関わらず、一定期間「年金」が受け取れる OK
有期年金 生存している限り、一定期間「年金」が受け取れる 原則×
終身年金 生存している限り、一生涯「年金」が受けとれる ×

 

基本的に、受給者が死亡した場合、遺族は「年金受給権」を承継し、残りの期間の「年金」を受け取ることができます。
ただし、有期年金、終身年金については、そもそも生存している限り受け取れるタイプとなりますので、年金受給権が発生する個人年金は、上記のうち、「確定年金」ということになります。
(例外的に「有期年金」で、保証期間が付いている商品もあり、この場合は、保証期間中は、年金受給権が発生)。
 
つまり・・相続税の課税対象となる「年金受給権」が生じる個人年金は、基本的に「確定年金」ということになります。
 
なお、要件を満たす個人年金は、所得税上「生命保険料控除」の対象となります(個人年金保険料控除)。
 

2. 退職年金とは?

(1) 退職年金とは?

退職年金とは、「企業年金制度」のある勤務先に勤めていた被保険者が、退職金の一部を「一時金」ではなく「年金」として受け取るものです。
受給者が死亡した場合、遺族は「年金受給権」を承継し、残りの期間の「年金」を受け取ることができます。
 

(対象となる退職年金)

●確定給付企業年金法で支給される年金(確定給付企業年金法第3条1項)
●特定退職金共済団体が行う退職金共済制度の年金(商工会議所などの退職共済契約年金、所得税法施工例第73条)
●適格退職年金契約に基づき支給を受ける退職年金(法人税法附則第20条第3)などが該当

 

(2) ご参考~在職中に亡くなった場合~

年金受給中ではなく、在職中に死亡した場合は、遺族の方に「退職手当金」が支給されます。この場合、死亡後3年以内に支給が確定したものは「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります(今回の論点とは別の論点となります)。
当該死亡退職金については、一定の相続税非課税枠(500万円 × 法定相続人の人数)があります。
(死亡後3年経過後に支給額が確定したものは、支払を受けた相続人等の、所得税の課税対象(一時所得))。
 
なお、個人事業主の「小規模企業共済等」の一時金や、確定拠出年金の一時金についても、上記同様「退職手当金」等に該当し、相続税非課税枠の利用が可能と考えられています。
(確定拠出年金は、加入者死亡時点で「一時金」として払い戻すものであり、残存期間分の定期金の支給ではないと理解されています)。
 

3. 相続税上の取り扱い(個人年金・退職年金共通)

(1) 年金受給権は「みなし相続財産」

「年金受給権」は、遺族が「保険会社や年金運用機関」から原始取得する固有の権利であり、被相続人から取得する「相続財産」ではありません。
しかし、「将来年金をもらえる権利」(= 財産価値)を取得する経済的実態に着目し、相続税上は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。(相続税法第3条1項5号、6号、契約に基づかない定期金に関する権利)。
 

(2) 遺産分割の対象にはならない

年金受給権は、遺族が保険会社等から原紙取得するものですので、「生命保険の死亡一時金」などと同様、受給権受取人の固有財産となり、遺産分割の対象にはなりません。
 

(3) 生命保険や死亡退職金に認められる非課税限度額はない

「年金受給権」は、同じ「みなし相続財産」である「生命保険金の死亡一時金」などとは異なり、死亡保険金非課税限度額(500万円 × 法定相続人の数)の対象にはなりません。ここは十分注意が必要です。
 

4. 所得税上の取り扱い

(1) 所得税上の取扱いは異なる

相続後に遺族が受け取る「個人年金」「退職年金」にかかる所得税上の取扱いは、それぞれ異なります。
 

個人年金 雑所得として所得税が課税
退職年金 非課税(所得税基本通達9-2)

 

(2) 個人年金受給権は、二重課税排除の規定あり

相続により取得した「退職年金受給権」については、「相続税」は課税されますが、遺族受給時の年金には「所得税」が課税されませんので、二重課税は排除されています。
一方で・・気づいた方もいるかもしれませんが、「個人年金等の年金受給権」は、相続時に「みなし相続財産」として相続税が課税され、遺族が実際年金受取時に「所得税」が課税されますので、二重課税となっています。

 
したがって、個人年金については、年金受取時の所得税の計算上、「相続税課税対象部分」を差し引いて算定することされ、二重課税の排除が行われています(2010年7月6日 最高裁判決)。

 

5. 年金受給権の評価方法(個人年金・退職年金共通)

「年金受給権」の評価方法は、大きく、以下の2つに分かれます(相続税法24条)。
(ただし、実務上は、生命保険会社等が計算してくれます。)

(1) 有期定期金

年金支給期間が決まっているタイプのものです。(確定年金など)
評価額は、下記①~③のうち、最も高い金額となります。
 

① 解約返戻金
② 一時金の金額(定期金の代わりに受け取れる場合の金額)
③ 年あたりの平均給付額 × 残存期間に応ずる予定利率による「複利年金現価率」

 

(2) 終身定期金

亡くなるまでの間、終身で年金を受け取れるタイプのものです。
評価額は、下記①~③のうち、最も高い金額となります。
 

① 解約返戻金
② 一時金の金額(定期金の代わりに受け取れる場合の金額)
③ 年あたりの平均給付額 × 平均余命に応ずる予定利率による「福利年金現価率」

 

ただし、「終身年金」は被相続人が生きている限り受給できる年金ですので、被相続人の死亡により受給は終了し「年金受給権」の論点、相続税課税関係は生じません(保険契約者 = 被保険者 = 年金受取人の場合)。

 
上記のほか、「無期定期金」(永久に定期金を受けることができるもの)もありますが、実務上は、ほとんどありませんので、今回は省略します。

 

6. 参照URL

(No.4123 相続税等の課税対象になる年金受給権)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4123.htm

 

(No.1620 相続等で取得した年金受給権の所得税調整)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1620.htm

 

7.YouTube

 
YouTubeで分かる「【年金受給権】相続税・所得税は課税されるのか?」
 

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