相続の豆知識 相続人関係




Q51 代襲相続って何?

公開日:2017/11/10 最終更新日:2021/08/25

 

1. 代襲相続とは?

代襲相続とは、被相続人が亡くなった時点で、「本来相続人になるはずだった人」が既に亡くなっている場合、その子や孫やひ孫(直系卑属といいます)が代わって相続人となる制度です(民法887Ⅱ、Ⅲ)。



 

3. 代襲相続人の例

「サザエさん」に例えますね(すみません、分かりやすいと思ったので)。
「サザエ」は、若くして父の「波平」より先に亡くなってしまいました。
その後、「波平」が亡くなった場合の「相続」を考えます。
 
51-1
 
この場合、本来は、波平の「配偶者」&第一順位の「子」、つまり、波平の妻「フネ」と、子供「サザエ、カツオ、ワカメ」が、波平の財産を相続する権利があったわけです。
しかし、既に「サザエ」は「波平」より先に亡くなっているので、サザエ(が、もし生きていたら持っていたであろう)波平の相続権を代襲する者として、サザエの子供タラちゃんが法定相続人(代襲相続人)として登場します。
これが「代襲相続」です。
亡くなった人の財産にかかる「代襲相続権」は、本来相続するべき人が亡くなっていた場合、子→孫→ひ孫→玄孫・・・と、どんどん下の世代に相続されていきます。
 

2. 兄弟姉妹の代襲相続の場合

代襲相続は、子だけでなく、被相続人の兄弟姉妹が相続人となるケースでも発生します。
この場合、「代襲相続人」は本人からみて、甥や姪となります。
ただし、兄弟姉妹の代襲相続の場合、代襲相続は1世代までとなっています。
つまり、甥・姪が死亡している場合に、その子には代襲相続されることはありません。

Q49 限定承認とみなし譲渡所得課税って?

公開日:2017/10/18 最終更新日:2021/08/25

 

限定承認」が行われた場合、被相続人から相続人に、「すべての資産の譲渡」があったものとみなされます
 
ここでの譲渡価格は「相続開始時の時価」とされているため、相続時点で含み益がある資産については、「みなし譲渡所得課税」が発生します。例えば、取得価額の低い自宅などは、相続時点で含み益が発生している可能性が高いため、相続税とは別に所得税もかかることになります(所得税法59条)。
結構インパクト大きいですよ!
 
でも実際・・みなし譲渡所得課税が発生するからといって、限定承認は単純に損?ということになるのでしょうか?
実は・・そうではないんですね。
 

1. みなし譲渡所得課税の趣旨

実は・・みなし譲渡所得課税制度は、相続人に生じるであろう、将来の売却にかかる「譲渡所得税」を軽減することを目的としています。
 
通常の相続(単純承認)と比較するとわかりやすいです。
通常の相続の場合、相続人は、相続時の時価ではなく、被相続人の取得価額を引き継ぎます。したがって、相続人が将来、資産を売却する場合には、被相続人の当初取得価額と売却価額との差額につき莫大な「譲渡所得税」が発生します。
 
一方、「限定承認によるみなし譲渡所得課税」では、相続時までの含み益に対応する所得税は、一旦被相続人負担として譲渡所得税を課税します。そして、相続人は、相続時点の時価で取得価額を引き継ぎ、相続人が将来、資産を売却する場合には、相続時の時価と売却価額との差額(相続後の含み益)だけに課税されることになります。
 
(イメージ図)
 
49-1
 

どのみち、相続時点までの含み益も、被相続人にみなし譲渡所得課税がされるのなら、納税負担があるので同じなのでは?と思われるかもしれません。
 
しかし、限定承認により引き継ぐ負債は、あくまで「被相続人のプラスの財産の範囲内」です。
つまり、負債が資産を超えている場合は、租税債務も切り捨てられますので(租税債務も「負債」です)、結果的に、相続時点までの含み益にかかる租税債務はゼロとなります。
一方、相続人が、将来当該不動産を売却する場合は、相続以降の含み益に対する課税のみとなり、結果的に被相続人の税金負担を軽減する効果があることになります。
 

2. みなし譲渡所得課税の効果

 

資産<負債の場合 限定承認では、プラスの財産を超える部分は切り捨てとなりますので、みなし譲渡所得にかかる納税は発生しません。
資産>負債の場合 プラスの財産が多いため、みなし譲渡所得にかかる納税が生じ、その分相続財産は減少します。
ただし、当該所得税債務も、他の借入金同様、相続人の債務ですので、相続税の計算上「債務控除」の対象となります。

 


3. みなし譲渡所得所得税の確定申告

みなし譲渡所得に関する所得税は、被相続人の準確定申告によって申告・納税します。
(相続開始日から4ヵ月以内)。


4. 留意事項

  • みなし譲渡所得計算時の、不動産の「時価」は、相続税評価額(路線価等)とは異なります。
    時価については、「適正な時価とは?」をご参照ください。
  •  

  • みなし譲渡所得課税が生じる場合は、必然的に親族間での売買となります。
    したがって、「居住用財産の3,000万円特別控除」の要件は満たしません。
  •  

  • みなし譲渡所得課税が適用された不動産の「取得日」は「相続開始日」となります。
    もし、相続人が、不動産を相続後短期間で売却する場合は、「短期譲渡」に該当し、税率が高くなる可能性があります。
  •  

  • 限定承認では、被相続人に譲渡所得税が課税されます。
    しかし、被相続人は、翌年1月1日現在は住所がありませんので、住民税は課税されません。
  •  

  • みなし譲渡所得課税の申告(準確定申告)を失念していた場合、加算税や延滞税がかかります。
    これらは相続人自身の負担になります。

Q48 限定承認の利用場面

公開日:2017/10/18 最終更新日:2021/08/25

 

お亡くなりになられた方が、もし借金だらけだったら・・相続したくないですよね?
こういった場合、「相続放棄」を行うことで、借金を相続しないことが可能となります。
 
しかし、もしお亡くなりになられた方が、借金だけでなく、プラスの財産もお持ちの場合はどうでしょうか?
「相続放棄」を行うと、借金だけでなくプラスの財産も相続することができなくなってしまいます。
プラスの財産だけは引き継ぎたい!と考える方もいるかもしれません。
 
そこで、「限定承認」という制度があります。
限定承認は、「相続放棄」と「単純承認」の中間的な位置づけの制度となります。
被相続人の「プラスの財産の範囲内で」借金を相続する制度となります。
この制度では、借金を一部相続する代わりに、プラスの財産の相続が可能となりますので、例えば自宅だけを確保したい場合などによく利用されます。
 
(イメージ図)

48-1
 

1. 相続方法の決定

相続が発生した場合は、相続発生後3か月以内に、単純相続、相続放棄、限定承認のいずれかを選択しなければいけません。
 

単純承認 被相続人のすべての資産・負債を相続する。 一番オーソドックスな方法。
3か月以内に何もしなければ、「単純承認」をしたものとみなされます。
相続放棄 被相続人のすべての資産・負債を相続しない。 被相続人が借金だらけの場合、相続放棄を行うことで借金の相続を免れるものです。
相続自体最初からなかったものとされます
限定承認 被相続人のプラスの財産の範囲で負債を相続する。 全ての借金の肩代わりはできないが、相続放棄するのはもったいない。
プラスの財産の範囲で負債を引き継ぐものです。

 

2. 限定承認の利用場面


(1) 自宅を確保したい場合

相続放棄を行うと、借金だけでなくプラスの財産も相続できません。
例えば、被相続人と同居していた相続人は、相続放棄を行うと、自宅を明け渡さないといけないことになります。
この点、「限定承認」であれば、借金は引き継ぐ代わりに、プラスの財産である自宅は引き継ぐことが可能ですので、自宅だけは確保することが可能となります。
 

(2) 財産や債務が不明な場合

被相続人が残した財産が「プラス」なのか「マイナス」なのか?わからない場面では、「限定承認」が有効に機能します。
なぜなら、わからないまま「単純承認」や「相続放棄」をしてしまうと、想定外の借金を背負うリスクや、逆に、莫大な資産が存在していた場合には、大きな機会損失が発生してしまうリスクがあるためです。
限定承認では、最終的に債務よりもプラスの財産が上回る部分は引き継げますので、上記のリスクを和らげる効果があります。
 

(3) 相続財産の中に、引継ぎたい資産が含まれている場合

例えば、遺産の中に、先祖代々の家宝や、希少価値のある資源などが含まれている場合も「限定承認」は有効に機能します。
限定承認を行うことにより、負債は引き継ぐ代わりに、家宝や宝石などは引き継ぐことが可能になりますので。
 

3. 留意事項


(1) 相続人全員の同意が必要

「相続放棄」は、相続人各人が「自分だけ」で手続きをすることが可能ですが、「限定承認」は、「家庭裁判所で、法定相続人全員で限定承認の申述」が必要となります。
なぜなら、相続財産のプラスとマイナスの財産は「全体として計算」されるため、一部の人についてだけ「限定承認」を認めることは物理的にできないからです。
一人でも単純承認すると、限定承認ができなくなります。限定承認を行うには、他の相続人全員が限定承認するか、他の相続人全員に相続放棄してもらう必要があるんですね。
 
また、家庭裁判所の手続きは、非常に煩雑で、しかもコストがかかります。
この点で、実務上、「限定承認」は、あまり利用されていないのが現状です。
 

(2) みなし譲渡所得税(所得税法59条)

限定承認が行われると、すべての資産が、被相続人から相続人に「相続開始時の時価で譲渡」があったとみなされ、「みなし譲渡所得課税」が発生します。
相続開始時に含み益がある資産については、所得税がかかることになります。
古い自宅などは、譲渡所得税が発生する可能性が高いです。
 
ただし・・これはデメリットとも言えません。
このあたりは次回お伝えします。

Q47 相続放棄と代襲相続

公開日:2017/10/18 最終更新日:2021/08/25

 

代襲相続とは、被相続人が亡くなった際、本来「相続人」になるはずだった人が既に亡くなっている場面で、その子や孫・ひ孫(直系卑属といいます)が代わって相続人になることができる制度です。

今回は、相続人の中に「相続放棄」を行った方がいる場合、相続放棄者の子供や孫などに、上記の「代襲相続」が認められるのか?という論点を解説します。


1. 相続放棄の場合の代襲相続権の有無

代襲相続が発生する場合は以下の3つに限定されており、「相続放棄」は含まれていません。

  • 被相続人の子が相続開始以前に死亡すること
  • 相続人の欠格事由に該当すること
  • 推定相続人の廃除により相続権を喪失したこと

 
したがって、相続放棄を行った場合、その子供や孫に「代襲相続」は認めらません
 
これは、相続放棄によって、相続放棄者は「最初から相続人でなかったこととみなされる」ため、財産は相続できませんので、「代襲相続」も起こり得ない!いう考え方になります。
 

2. 代襲相続人の例


(1)例題

サザエさんにたとえます。
 

  • 波平さん死亡。
  • 妻フネ、子供サザエ、カツオ、ワカメの合計4人が「法定相続人」。
  • 今回、サザエは、「相続放棄」を行った。

相続放棄者(サザエ)の子供、タラちゃんは、サザエの分を「代襲相続」できるでしょうか?

 
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(2) 解答

サザエが「相続放棄」を行った場合、サザエは、「もともと相続人でなかったとみなされる」ので、タラちゃんには「代襲相続」が認められません。
したがって、相続人は、妻フネ、子供カツオ、ワカメの3人となります。
 

3. 実際の相続放棄の場面を考えると?

実際に、相続放棄を利用する場面は、「借金を相続したくない」というケースがほとんどだと思います。
資産と逆の関係にある「借金の相続」という観点では、「相続放棄」を行えば、お子様は代襲相続しない=お子様に借金が相続されることはないということになり、安心ですね。
 

4. 直系尊属が相続放棄する場合は?

直系尊属とは、被相続人よりも「前の世代」に属する血族で、自分子孫にあたる関係のことです。
具体的には、被相続人から見て父母、祖父母などですね。
 
一方、直系卑属とは、上記の逆で、被相続人よりも「後の世代」に属する血族で自分子孫にあたる関係の者です。
具体的には、子、孫、ひ孫などですね。
 
あまりないですが、被相続人の子供(卑属)ではなく、親(尊属)が相続放棄した場合にはどうなるでしょうか?
代襲相続の逆のパターンですね。
 
この場合は、相続権は、「相続放棄者」の父母(尊属)に移動します。
例えば、仮にタラちゃんが亡くなった場合、マスオとサザエが「法定相続人」となりますが、サザエが相続放棄した場合は、サザエの相続権は、その父母、波平とフネに相続権が移動することになります。
あんまりないでしょうけど(笑)


5. 法定相続人全員が相続放棄した場合

この場合、「相続人」は誰もいなくなりますので、被相続人の財産や負債は、相続財産管理人により管理・清算されることになります。

 

Q45 相続放棄と遺贈・遺贈放棄の関係

公開日:2017/10/18 最終更新日:2021/08/25

 
相続放棄とは別に、「遺贈放棄」という手続きがあります。
似たような手続きですが、全く別の制度になります。
今回は、相続放棄と遺贈、そして遺贈放棄の関係をまとめます。
 

1. 遺贈って?

遺贈というのは、「遺言」によって財産を贈与することです。
法律上は、相続と異なり、遺言による一方的な「贈与」となります。
遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類があります。
贈与を受ける方は、一般的に「受贈者」と呼ばれます。


2. 遺贈の放棄って?

遺贈は、法律上は一方的な「贈与」となりますが、必ずしも受け取らないといけないわけではありません
「遺贈放棄」という手続きにより、「放棄」することは可能です。
「包括遺贈」と「特定遺贈」それぞれで手続が異なりますので、以下にまとめておきます。

 

内容 効果 放棄の方法
包括遺贈 すべて(又は一部の一定の割合)の遺産を一括して贈与する遺贈。 全ての財産・債務を引き継ぐことになるため、相続人が単純承認したのと同じ効果となる。 借金を相続してしまう可能性があるため、債権者保護の観点から、家庭裁判所での手続が必要。
期限は相続放棄と同様、相続発生後3か月以内。
特定遺贈 特定の遺産を指定して贈与する遺贈。 遺贈対象だけを引き継ぐため、借金などを引き継ぐことはない。 家庭裁判所での手続は不要。
他の相続人や、遺言執行者に対して、遺贈放棄の意思表示をすれば足りる。
期限は特にない。

 


3. 遺贈放棄と相続放棄の関係

「遺贈放棄」と「相続放棄」は全く別物の制度です。
ですので、たとえ遺贈放棄を行ったとしても、別途「相続放棄」の手続は行わなければいけません
特に、相続人が「受贈者」の場合は、注意しましょう。
 
例えば、「遺贈放棄」を行った場合、遺贈予定であった財産は「相続財産」となり、相続人による相続の対象となります。
つまり、相続人が「受贈者」が相続人でもある場合は、たとえ「遺贈放棄」をした場合でも、その後「相続人」の立場で、「相続財産」を引き継ぐことになります。
制度が全く別なので、相続人が「遺贈放棄」を行っても自動的に「相続放棄」が行われるわけではありません。
 
被相続人の財産を完全に放棄したい場合は、「遺贈放棄」だけでなく、別途、「相続放棄」も行わなければならない点、に注意しましょう。


4. 遺贈と相続放棄の関係

相続放棄を行うと、被相続人の「プラスの財産」も「マイナスの財産」も引き継がなくてすみます。
しかし、中には「プラスの財産だけ」は相続したいと考える方もいるかもしれません。
 
ここで・・「遺贈」で財産を受け取ったうえ、別途「相続放棄」を行うことは可能か?という論点があります。
 
制度上、「遺贈」と「相続放棄」は、全く別物の制度ですので、遺贈を受けた人が「相続放棄」を行うことは可能です。
仮に、相続放棄を行った場合でも、その効果が「遺贈財産」まで及ぶことはありませんので、遺贈財産は、そのまま引き継ぐことが可能です。
 
ただし、当該行為が、「債権者を著しく害する場合」には、債権者から「詐害行為取消権」(民法424条)などによって取り消される可能性がありますので、実務的には難しいところもあるようです。

 

Q44 相続放棄と生命保険金・死亡退職金の関係

公開日:2017/10/18 最終更新日:2021/08/25

 

相続放棄を行った場合、「死亡保険等の生命保険金」も放棄することになるの?と心配に思われる方もおられると思います。
今回は、相続放棄と、生命保険金(死亡保険金)の関係をまとめます。

 

1. 生命保険金は相続財産ではない

例えば、旦那様が、自分自身を被保険者(受取人 奥様)として支払っていた保険料の場合、
旦那様が亡くなった時点で、奥様に「死亡保険金」が支払われます。
 
しかし、この死亡保険金は、あくまで生命保険会社から受け取るもので、相続財産ではありません
保険金受取人の「固有の財産」となります。
 
つまり、「相続放棄」をした場合でも、別途、死亡保険金は受け取ることができます。
 
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2. 生命保険金には相続税がかかる

上記の通り、死亡保険金は「相続財産」ではありませんが、「みなし相続財産」として「相続税の課税対象」になります。
つまり、相続放棄をした場合には「死亡保険金」を受け取ること自体問題ありませんが、税金がかかりますので。



 

3. 未成年者控除・障害者控除は?

相続税計算上、生命保険金に関しては「非課税枠」が認められています( 500万円 × 法定相続人の人数 )。
例えば、法定相続人が2人の場合、生命保険金1,000万円までは相続税がかかりません(Q10参照)。
 
では、相続放棄した方がいる場合はどうでしょうか?
法定相続人が減るので、上記「非課税枠」も減ってしまって損するのでは?と考える方もいるかもしれません。
 
大丈夫です!
実は、上記の法定相続人には、「相続放棄」を行った人も含めて「非課税枠」を計算することが可能です。
例えば、法定相続人が2人で、1人が相続放棄を行った場合も、非課税枠は、1,000万円( 500万円 × 2人 )で計算可能です。



 

4. 相続放棄者は、非課税枠の適用が受けられない

上記の通り、相続放棄者についても、「生命保険金の非課税枠」の計算上は、法定相続人に含めて計算が可能です。
しかし、実際、「相続放棄者」がこの非課税枠の恩典を利用することができるか?という点は、別問題になります。
 
相続放棄者は、最初から相続人でなかったことになるため、ご自身は生命保険金の「非課税枠」の利用はできません。
(=相続放棄者は、受取額全額が相続税の課税対象となる)
 
相続税の「非課税枠総額」は、相続放棄者も含めて算定できますが、実際この「非課税枠」を利用できるのは、相続放棄者以外ってことなんです。
 
少しややこしいと思いますので、簡単な事例を作りました。



 

5. 例題

(例)

  • 夫甲死亡、法定相続人は、妻A、子供B・Cの3人
  • 甲死亡に伴い、A・B・Cは、それぞれ1,000万円の死亡保険金を受け取った。
  • 子供Cは相続放棄を行った(生命保険は受け取ったが)。



 

(1) 生命保険金の非課税枠総額の計算

生命保険金の非課税枠総額の計算上は、相続放棄者を含めて計算できます。
500万円×人(相続放棄者も含む) = 1,500万円


 

(2) 生命保険金の非課税枠の利用

非課税枠総額(1,500万円)については、相続放棄を行ったC自身は利用できません
相続放棄者以外の法定相続人A・Bの2人で利用することになります。
 

  • A・Bが受け取った「死亡保険金」の合計は2,000万円
    ( A 1,000万円 + B 1,000万円 )
  • 生命保険金の非課税枠総額1,500万円は、A・Bが受け取った保険割合(1,000万円ずつ)で「非課税枠」を按分します。
  • Cは、相続放棄しているため、生命保険の非課税枠は利用できません

 
A非課税分 = 1,500万円 ×( 1,000万円 / 2,000万円 )= 750万円
B非課税分 = 1,500万円 ×( 1,000万円 / 2,000万円 )= 750万円
C非課税分 = ゼロ(相続放棄のため非課税枠の適用不可
 
まとめると以下の通りとなります。
 

死亡保険金受取額 非課税枠 課税額
A 1,000万円 750万円 250万円
B 1,000万円 750万円 250万円
C 1,000万円 0円 1,000万円

 
(結論)
相続放棄者Cが有していた非課税枠500万円は、C自体は利用できないが、その分、相続者であるAとBが余分に利用できていることになります。



 

6. 死亡退職金は?

死亡退職金も、生命保険金同様「みなし相続財産」となりますので、生命保険と同様の非課税枠が認められています。
そして、相続放棄の場合も、生命保険と同様の取扱いがなされます。



 

7. (ご参考)相続放棄者の相続税計算上の取扱い

相続税の「基礎控除額」については、たとえ相続放棄者であっても、法定相続人数に含めてカウントできます。
つまり、相続人内に相続放棄者がいたとしても、相続税総額に影響はありません。

(ただし、もちろん、相続税の配分額は変わります。相続する方は、相続放棄した方が本来もらうべき財産を余分にもらうことができますので、その分、相続税額は増加することになります。)

Q43 相続放棄ができない場合は?

公開日:2017/09/04 最終更新日:2021/08/25


 

相続放棄の期限は、「相続発生後3か月以内」であると定められています。
しかし、相続発生後「3か月以内」でも、相続放棄ができないケースがありますので・・注意しましょう!

 

1. 相続放棄ができない場合(民法921条)

相続発生後「3か月以内」でも、以下の場合は「単純承認」したとみなされ、相続放棄ができなくなります。
 

(1) 相続財産を、一部でも処分した場合(売却、名義変更、預貯金の引出等)

 

(2) 相続財産を、隠したり消費した場合

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2. 注意事項

(1) 高価な遺品を処分した場合は?

「通常の遺品」程度であれば処分しても問題ありませんが、「高価な遺品」の場合、処分してしまった結果、「相続放棄」が認められなかったケースもあるようです。怖いですね。
 

(2) 相続財産の修繕は?

相続財産の現状を維持する保存行為(不動産の修繕・債権の時効中断行為等)は含まれません(民法921条1号但書)。
 

(3) 相続後に借金を返済した場合は?

相続後に、「被相続人の借金」を相続人が返済した場合はどうでしょうか?
借金の返済行為は、単なる保存行為(利息を発生させないための維持行為)であり、「相続財産の処分行為」にはあたらないとされています。
 
ですので、借金を返済したからといって「相続放棄」ができなくなることはありません。
 

Q42 相続放棄のメリット・デメリット

公開日:2017/09/04 最終更新日:2021/08/25

 

自分が相続する場面で、もしお亡くなりになられた方に「多額の借金」があったら、相続したくないですよね?
こういった場合に、相続人には「相続放棄」という選択肢が認められています。
 
「相続放棄」は、相続発生後「3か月以内」に決定しなければいけません。
意外とあっという間に3か月は経過してしまうので・・注意しましょう。

 

1. 相続放棄とは?

亡くなった方の「財産や負債」を「一切相続しない」という制度です。
相続放棄をすることで、最初から相続人でなかったことになりますので、非常に強力な制度です。
相続放棄は、相続人全員ではなく、各人ごとに判断が可能ですので、比較的手続きは簡単です。

 

2. メリット・効果

(1) 負債を相続する必要がなくなる。

相続放棄をすることで、被相続人の「借金」などを引き継ぐ必要がなくなります
 
同様に、被相続人が負っていた「保証債務」も引き継ぎません。
実務上、保証債務は把握しきれない場合が多いので、「相続放棄」はそれなりの威力を発揮しますね。

(2) 相続財産がない場合

相続財産がない場合でも、「相続放棄」が有効に機能する場合があります。
例えば、相続人であるということは、たとえ相続財産がない場合でも、「遺産分割協議」や「名義変更手続」等、他の相続人と関わらなければいけませんので、意外と手続きは面倒です。
 
しかし、「相続放棄」を行うことで、そもそも最初から相続人ではなくなりますので、相続人としてのこれらの「手間」から「解放される」ことになります。

(3) 遺産を守るための相続放棄

遺産を守る観点でも、「相続放棄」が有効に機能する場合があります。
例えば、以下のような場合です。
 

  • 被相続人甲の法定相続人は、子供A・Bのみ(配偶者・両親なし)
  • 子供Bは、莫大な借金を抱えている。

 
このケースでは、借金のあるBが「相続放棄」を行えば、借金のないAが遺産を全額相続することになるので、結果的に「遺産を守る」ことになります。
 
いまいち・・イメージがわかないと思いますので、
Bが「相続放棄」をしない場合と、した場合の影響をまとめてみます。
 
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パターン 法定相続人 法定相続分割合 相続財産の行方 影響
Bが相続放棄をしない場合 A・B  A 1/2・ B 1/2 A・Bそれぞれに相続財産が配分 借金のあるBが「相続放棄」をしない場合、Bは1/2を相続することになるため、、Bが相続した財産は、借金の債権者から取り立てられてしまう。
Bが相続放棄をした場合 Aのみ A 100 % Aが相続財産を全額取得 借金のあるBが「相続放棄」をする場合、Bが相続する財産はないため、相続財産が債権者に取り立てられるおそれはなくなる。

 
つまり、借金がある人が相続した財産は、結果的に債権者から取り立てられてしまうんですよね。
そこで、借金がある人が「相続放棄」を行うことで、もう一方の相続人に、財産は完全に相続される結果、債権者から遺産を取り立てられるリスクが消え、遺産を守ることができる!ってことなんです。
債権者からすれば・・たまったものではありませんが・・法律上はそうなっています。
 
ちなみに、遺産を守る別の方法として、「遺産分割協議」で、借金のあるBの相続分を少なくすることも考えられます。
しかし、この方法では、債権者側は、「遺産分割協議」が詐害行為に該当するとして、「詐害行為取消権」(民法424条)を行使できる可能性がありますので、あまり有効な方法とはいえません。
 

(4) 生命保険金は別

たとえ相続放棄を行っても、「生命保険金」は受取人固有の財産となるため、相続放棄の対象とはなりません。
ご安心を。

 

3. デメリット

(1) 相続財産を一切取得できない

相続放棄をすることで、「最初から相続人ではなかった」ことになりますので、マイナスの財産だけでなく、プラスの財産も一切引き継ぐことができません。
 
例えば・・被相続人と同居していた方が「相続放棄」をした場合は、住んでいる自宅さえも・・明け渡さないといけないことになってしまいます。
 

(2) 一度放棄すると撤回はできない

相続放棄は、一度裁判所に受理されると撤回できません。
また、他の相続人への配慮から、相続放棄は、相続発生後「3か月以内」と定められています(熟慮期間)。
この期間に放棄をしない場合、「単純承認」したものとみなされてしまいます。
 

後々になって「高額な相続財産が見つかった」からといっても、「相続放棄」は撤回できません。
なお、 家庭裁判所の承認があれば、この「熟慮期間」の延長は認められます。
 

(3) 他の相続人に影響する

相続放棄を行った人は、「最初から相続人ではなかった」ことになります。
この結果・・他の相続人にも影響を与えることになってしまいます。
 
例えば、相続放棄する人以外に、「同順位」の法定相続人がいない場合は、次順位の人が「法定相続人」に昇格します。
相続放棄を行うケースは、「借金がある場合」などが多いですので、想像もしていなかった次順位の方が相続人に自動昇格され、借金を背負わされる可能性があるということですね。
相続放棄する場合は、あらかじめ関連者にお知らせしておいた方がよいですね。
 
なお、次順位の人ももちろん、「相続放棄」は可能です。相続放棄による「相続権の移動」は、法定相続人の相続範囲である「兄弟姉妹まで」となっています。

Q41 養子縁組と代襲相続人の関係

公開日:2017/09/04 最終更新日:2021/08/25


 
代襲相続とは、相続開始時点で既に「法定相続人」が亡くなっている場合に、亡くなった「法定相続人」の代わりに、「代襲相続人」が財産を相続する制度です。
 
代襲相続人の例としては、被相続人のお子様が「被相続人」よりも先に亡くなっている場合の、お子さんのお子さん(孫)ですね(詳しくは、「代襲相続とは」をご参照ください)。
 
一方、養子縁組をした人は、実子と同様に取り扱われるので、その養子の「子供」にも「代襲相続権」は認められます。

しかし、養子縁組を行った時期との関係で、養子の子供に「代襲相続権」が認められない場合があります。
 
以下にまとめておきます。

 

1. 養子の子供に代襲相続権はある?

養子であっても、相続税上は実子と同様に取り扱われるため、「養子の子供」には「代襲相続権」が認められます。
 

2. 「養子になったタイミング」に注意

「養子になったタイミング」により、「代襲相続権」が認められないケースがあります。

なぜなら、民法上、養子は、「養親と養子縁組を行った日から法定血族関係(親族関係)に入る」と規定されています。
 
つまり、養子縁組を行った後に初めて親族関係になりますので、親族関係に入った後に生まれた子供だけが親族関係となり、養子縁組を行う前から存在する養子の子供は、被相続人の「親族関係」にはならないんですね。
 
養子と代襲相続権の関係をまとめると、以下のとおりとなります。
 

種類 代襲相続権
養子縁組を行った時点で既に存在した「養子の子」 なし
養子縁組後に生まれた「養子の子」 あり

 

Q40 養子縁組により相続税が増加するケース

公開日:2017/09/04 最終更新日:2021/08/25


養子縁組」をすると、必ず相続税額が安くなるかというと・・そうではありません。
養子縁組をした結果、相続税額が増加するケースもあるので・・注意です。

 

1. 養子縁組をすることで、「法定相続人の総数」が減る場合

養子縁組をしたことが原因で、養子縁組をしなかった場合と比べて、法定相続人の総数が減り、相続税の基礎控除額が減少する場合があります。
 
例えば、被相続人の法定相続人が、兄弟のみの場合です(配偶者・実子・両親すべていない)。

以下、事例をもとに解説します。
 

(事例)

  • 被相続人甲(長男)の法定相続人は兄弟3人(A・B・C)のみ。
    (配偶者、実子、両親はいない)
  • 兄弟のうち、Aだけが、被相続人甲(長男)と養子縁組を行った。

 
40-1
 
(非課税枠)

法定相続人 基礎控除額(非課税枠)
養子縁組をしない場合 A・B・C 4,800万円
(3,000万 + 600万 × 3人)
養子縁組をした場合 Aのみ 3,600万円
(3,000万円 + 600万 × 1人)

 

なぜこんなことになるのでしょうか?
法律上の子(=養子縁組したA含む)は兄弟姉妹よりも相続順位が上位のためです。
 
Aが養子縁組に組み込まれることにより、結果的に、Aのみが法定相続人となり、残りの兄弟( B・C )は、法定相続人ではなくなります(詳しくは、「法定相続人の範囲」をご参照ください)。
 
法定相続人が多い方が、相続税の基礎控除額や、生命保険金等の非課税枠は増えますので、こういったケースでは・・相続税の「基礎控除額」が減ります。

 

2. 養子縁組をすることで、「配偶者法定相続分」が減少する場合

養子縁組をしたことが原因で、養子縁組をしなかった場合と比べて、「配偶者法定相続分」が減少するケースがあります。
 
例えば、被相続人の法定相続人が、配偶者のみの場合です(実子・両親・兄弟すべていない)。

以下、事例をもとに解説します。

 

(事例)

  • 被相続人甲の法定相続人は配偶者Xのみ。
    (実子・両親・兄弟はいない)
  • 今回、赤の他人Yが、甲と養子縁組を行った。

40-2

 
(非課税枠)

法定相続人 法定相続分割合 基礎控除(非課税枠) その他の非課税枠
養子縁組をしない場合 Xのみ X 100% 3,600万円
(3,000万円 + 600万円 × 1人)
Xは配偶者控除を全額利用できる
養子縁組をした場合 X・Y X 1/2
Y 1/2
4,200万円
(3,000万円 + 600万円 × 2人)
Xは配偶者控除を半分しか利用できない

 

養子縁組をしない場合は、配偶者Xだけが「法定相続人」となるため、Xが遺産100%を受け取ります。
 
一方、Yと養子縁組をした場合は、Yは「実子」と同様に取り扱われるため、「法定相続人」は2人( X・Y )となり、その結果、法定相続分の割合は配偶者X 1/2、養子Y 1/2となります。
 
一見、法定相続人が1人増えたので、「基礎控除額」が増え、相続税額は減少するようにも思います。
しかし、養子縁組をすることで、配偶者Xの法定相続分が減り、本来、Xが利用できていた「配偶者控除額」の利用可能金額が減少する、という影響があります。
つまり、配偶者Xの相続分が減ることで、「税法上優遇される配偶者控除額」が減少し、結果的に、相続税総額が増加してしまう場合があるということです。

 

3. 孫を養子縁組にする場合の2割加算

孫を養子縁組することで、法定相続人の数が増加します。
しかし、孫養子は、相続税の2割加算の対象となりますので、場合によっては、養子縁組をした結果、税額が逆に増加してしまうケースがあります。
 
相続税の減額を見込んで「養子縁組」をしたにもかかわらず、2割加算で相続税額が増えてしまうと・・あまり意味がありませんね。