Q20【計算例付】土地の評価額が最大80%減額!小規模宅地等の特例の種類は4種類 どの特例が選択できるのか?フローチャートで判断

 最終更新日:2022/05/12 閲覧数:3,171 views

 

例えば、旦那様と一緒に住んでいた奥様がそのお住まいを相続する場合に、相続税がかかってしまうと、奥様の生活基盤を脅かしてしまう可能性がありますよね。
不動産を処分するにはそれなりの時間がかかりますし、相続税申告期限までに相続時を支払えない可能性もあります。
 
そこで、こういった「居住用」あるいは「事業用」で利用していた宅地等については、「小規模宅地等の特例」という相続税上の恩典があり、相続税が大幅に安くなります。

 

1. 小規模宅地等の特例って何?

一定要件を満たす被相続人の宅地等につき、相続税評価額を大幅に引き下げてくれる制度です(50% ~ 80%)。

 

2. 小規模宅地等の特例制度の種類

下記の4つの種類があります。

 

種類 内容 限度面積 減額割合
特定居住用宅地等 被相続人等が居住していた宅地等 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 被相続人等の事業用(除貸付事業)に使用されていた宅地等 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地等 特定同族会社の事業用(除貸付事業く)に使用されていた宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 被相続人等の貸付事業用(不動産貸付)に使用されていた宅地等 200㎡ 50%

 

上記はすべて、限度面積までは併用が可能です。
ただし、どれを併用するかにより、「合計面積に制限」が生じる場合がありますので、注意しましょう。
 

  • ①と②③(事業用)を併用する場合は、合計での制限はありません。
    つまり、①と②③合わせて最大730㎡(330㎡ + 400㎡)まで利用できます。
  • ④とその他(①~③)を併用する場合は、合計制限があります。
    詳しくは「複数土地がある場合の小規模宅地等の特例の併用」をご参照ください。

 

3. 評価額減額の計算例

 

  • 父死亡。相続人は母親、子1人の2人。
  • 父の遺産総額8,000万円(うち、3,000万円は居住用宅地(330㎡以内))。
  • 法定相続分で相続するものとし、居住用宅地は子が相続するものとする
  • 居住用宅地等の特例要件は満たしているものとする

(1) 小規模宅地等の特例を適用しない場合

 

① 課税総額

8,000万円

 

② 基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 2人(母親・子)= 4,200万円

 

③ 課税遺産総額(① – ②)

8,000万円 – 4,200万円 = 3,800万円

 

④ 相続税総額(法定相続割合)
  • 母親:3,800万円 × 1/2(法定相続割合)× 15%(税率)- 50万円 = 235万円
  • 子 :3,800万円 × 1/2(法定相続割合)× 15%(税率)- 50万円 = 235万円

⇒ 合計470万円

 

⑤ 各相続人の遺産配分及び各人実際相続税額(実際相続割合)

母235万円 ⇒ 配偶者の税額軽減で税額ゼロ
子235万円
⇒合計235万円
 
(結論)
合計相続税額は、235万円となります。

(2) 小規模宅地等の特例を適用する場合

 

① 課税総額

8,000万円 -土地の減額(3,000万円 × 80%) =5,600万円

 

② 基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 2人(母親・子)= 4,200万円

 

③ 課税遺産総額(① – ②)

5,600万円 – 4,200万円 = 1,400万円

 

④ 相続税総額(法定相続割合)
  • 母親:1,400万円 × 1/2(法定相続割合)× 10%(税率) = 70万円
  • 子 :1,400万円 × 1/2(法定相続割合)× 10%(税率) = 70万円

⇒ 合計140万円

 

⑤ 各相続人の遺産配分及び各人実際相続税額(実際相続割合)
実際の遺産配分 相続配分割合(※1) 相続税額(※2) 配偶者控除後
母親 4,000万円
(うち、居住用財産0円)
4,000万円(40/56) 100万円 ゼロ
4,000万円
(うち、居住用財産3,000万円)
1,600万円(16/56) 40万円 40万円
合計 8,000万円 5,600万円 140万円 40万円

 

(※1)子が土地を相続し、「小規模特例」を適用しますので、子の実際相続税の配分割合は、16/56(1,600万円 ÷ 5,600万円)となります。

  • 母 遺産取得額・・4,000万円
  • 子 遺産取得額・・(4,000 – 3,000)+ { 3,000 ×(1 – 80%)} = 1,600万円
  • 合計 母 + 子 = 4,000万円 + 1,600万円 = 5,600万円

 
(※2)

  • 母親:140万円 × 40/56 = 100万円 ⇒ 配偶者控除で最終ゼロ
  • 子:140万円 × 16/56 = 40万円

 
(結論)
合計相続税額は、40万円となります。

 

(3) まとめ

小規模宅地等の特例を適用する方が、195万円(235万円-40万円)相続税額が安くなりました。
 

4. 制度適用の要件

小規模宅地等の特例「4種類」とも共通です。
要件は、(1)から順に判断していきます。

 

(1) 対象物 被相続人が保有していた宅地等(建物は含まない)(※1)
(2) 取得方法 個人が相続又は遺贈により取得した財産(※2)
(3) 利用者 相続開始直前において、被相続人又は同一生計親族が利用(※3)
(4) 利用状況 居住用又は事業用(貸付事業も含む)宅地等(※4)
(5) 4種類ごとの要件 4種類(特定居住用宅地等、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等)の各要件を満たす
(6) 面積要件 限度面積を満たすもの

 

(※1)宅地等とは?

土地及び土地の上に存する権利(借地権など)で、一定の建物等(建物又は構築物)の敷地の用に供されているものをいいます。
なので、車庫など、何らの設備もない「駐車場敷地」などは含まれません。
 

(※2)「暦年贈与」や「相続時精算課税」によって取得した土地は対象になりません。

逆にいうと、「小規模宅地等の特例」を利用できる土地などを「生前贈与」すると、損してしまう場合もあるということです。
 

(※3)同一生計親族とは?
  • 被相続人と同一の家屋に住んでいる親族(同居)
  • 被相続人と同一の家屋に住んでいない親族(非同居)で、常に被相続人から生活費等の仕送りをうけていたもの

 

(※4)貸付(不動産)事業には、準事業 5棟10室基準を満たさないものも含みます。

ただし、使用貸借による貸し付けは、事業とはならないため×です)
 

5. 各特例適用のフローチャート

(被相続人保有宅地等で、相続又は遺贈により取得した財産)

Q20-3

 

利用者が「被相続人」ではなく、「同一生計親族」の場合は、少しイメージがつかみにくい所だと思います。
次回改めて詳しく解説します。
 

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