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相続税上、建物は、原則として「固定資産税評価額」で評価を行います。
一般的に「固定資産税評価額」は、「実勢価格」より低くなりますので、結果的に、資産を現預金で所有するよりも、建物を建築して現預金を少なくした方が、全体の「相続税評価額」は下がることになります。
では、建物をリフォームした場合はどうでしょうか?
リフォームすることで、現預金は減少します。
一方、リフォームした建物等の価値が、「固定資産税評価額」・・つまり相続税評価額にどういう形で反映されるか?という点が論点となります。
1. 固定資産税評価額は?
一般的に、増築など、床面積を増やすリフォームを実施した場合は、「固定資産税評価額」は増加します。
一方、内装や家屋内設備リフォームの場合は、「固定資産税評価額」は改訂されず、評価が据え置かれます
(というか・・役所も把握しきれないから)
役所は、3年に一度、航空写真等で固定資産の実地調査を行っています。
この際、前回調査と比較して、見た目に増築等が明らかな家屋については、「固定資産税評価額」を改訂します。
逆に言うと、見た目に判別のつかないリフォームの場合は、役所も把握しきれないので、「固定資産税評価額は据え置きされている」というのが実態です。
ここでわかることは、リフォームの内容によっては、「固定資産税評価額」に反映されない場合がある!ということですね。
2. 相続税の評価は?
(1) 原則
家屋と構造上一体となっている設備(電気設備・ガス設備・衛生設備など)は、家屋の価額に含めて評価できます
(財基通92-(1))
例えば、浴室を取り換える、あるいはシステムキッチンに変更するなどのリフォームは、通常、家屋と構造上一体となっていますので、「家屋の価額に含めて評価」します。
家屋に含めて評価するということは?・・リフォームにより増築した設備も、家屋の固定資産税評価額に内包されることになります。
つまり・・家屋の「固定資産税評価額」が変わらなければ、たとえリフォームをしたとしても、相続税評価額は増加しない!ということになります。
(2) 例外
一方、上記の規定とは別に、「増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価」という質疑応答事例が制定されています(質疑応答事例・平成25年11月1日)。
この質疑応答事例では、増改築部分は、たとえ固定資産税評価額が改訂されていなくても、以下の方法で相続税の評価を行うことが要求されています。
当該質疑応答事例は、過去の行き過ぎたリフォーム節税に歯止めをかける趣旨で、最近作られた規定です。
3. 実務的には?
(1) リフォームはすべて評価?
上記「質疑応答事例」の、「増改築」という言葉が、「具体的にどういったものを想定しているのか?」までは例示されていません。なので・・ここからは解釈となります。
大がかりのリフォーム、例えば「資本的支出」に該当するようなものは、相続税上は、追加で評価しないといけないという理解でよいかなと思います。
(ご参考~資本的支出とは?)
定義 | 具体例 | 収益的支出(修繕費) |
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---|---|---|
資本的支出(資産) |
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(2) リフォーム部分の具体的計算方法
実務的には、「増改築家屋と類似した物件」を見つけるのは至難の業ですので、以下の計算式で評価します。
(リフォーム前固定資産税評価額 + リフォーム費用 - リフォーム部分償却費(※)) × 70%
(※)リフォーム部分の償却費の計算方法
リフォーム費用 × 90% × (リフォーム日 ⇒ 死亡日までの経過年数) / 耐用年数
まとめると・・「資本的支出」に該当するリフォームの場合は、たとえ「固定資産税評価額」が改訂されていなくても、70%部分は相続税評価の場合は、反映しないといけないということですね。
それでも、30%評価はさがるので、「現金」で保有するよりは節税になりますが!
4. 住宅取得資金贈与の非課税枠
住宅取得資金贈与については、最大1,500万円までの「贈与税非課税枠」があります。
詳しくは、Q5をご参照ください。
当該制度は、増改築やリフォームも対象となります。
(住宅取得資金贈与の非課税枠制度のポイント)
- 売却用ではなく、自分が住むために行う増改築工事
- 工事費用100万円以上。
- 増改築後の床面積が50平米以上240平米以下かつ、居住部分工事費が全体の半分以上
5. 参照URL
増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/19/01.htm