前回に引き続き、「共有名義の不動産相続」と「小規模宅地等の特例」の関係です。
今回は、共有名義の不動産が、「自宅」「貸家」の両方で利用されている場合を解説します。
(自宅のみ、貸家のみの利用の場合は、Q80、Q81をご参照ください)
目次
1. 共有名義でない場合
共有の論点に入る前に、前提として、共有名義でない不動産を、「自宅」と「貸家」で利用されている場合の「小規模宅地等の特例」との関係を考えてみます。
(イメージ図)
2F 貸家部分に対応する土地 50㎡( 100㎡ × 1/2 )は貸付事業用宅地等の特例の対象となります。
生前区分 | 対象 | 評価区分 | 小規模宅地等との関係 | 利用区分 |
---|---|---|---|---|
父所有土地 | 1F 50㎡ | 自用地 | 特定居住用宅地等 | 本人利用 |
2F 50㎡ | 貸家建付地 | 貸付事業用宅地等 | 本人利用 |
2. 土地が共有の場合
(イメージ図)
(1) 土地の評価区分
1F 自宅部分は「自用地評価」、2F 貸家部分は「貸家建付地評価」となります。
(2) 小規模宅地等の特例の対象
「小規模宅地等の特例」との関係では、父の土地共有割合は、全体の50%ですので、
父共有持ち分 50㎡( 100㎡ × 1/2 )だけが、小規模宅地等の特例の対象となります。
(母土地共有持ち分50%は、もともと父所有でないので、もちろん対象外です)
(3) 小規模宅地等の特例の種類・対象面積
① 特定居住用宅地等の特例の対象面積
50㎡ × 50% = 25㎡
② 貸付事業用宅地等の特例の対象面積
50㎡ × 50% = 25㎡
生前区分 | 対象 | 評価区分 | 小規模宅地等との関係 | 利用区分 |
---|---|---|---|---|
父所有土地 | 1F 25㎡ | 自用地 | 特定居住用宅地等 | 本人利用 |
2F 25㎡ | 貸家建付地 | 貸付事業用宅地等 | 本人利用 | |
母所有土地 | 1F 25㎡ | ― | ― | ― |
2F 25㎡ | ― | ― | ― |
3. 建物が共有の場合
(イメージ図)
(1) 土地の評価区分
① 父持ち分建物に対応する土地 50㎡(すべて所有は父)
② 母持ち分建物に対応する土地部分 50㎡(すべて所有は父)
この部分の土地については、母は所有権を有していません。
この場合、当該部分は父から土地を無償で借りる(=使用貸借)ことが一般的です。
使用貸借の場合、「借地権はゼロ」で評価しますので、
結論、母持分建物に対応する土地(所有権は父)は「自用地評価」となります。
(2) 小規模宅地等の特例の対象
① 父持ち分建物に対応する土地 50㎡(すべて所有は父)
「自宅」及び「貸家」として利用していますので、被相続人本人の「居住用」及び「貸付事業用宅地等の特例」の適用が認められます。
② 母持ち分建物に対応する土地部分 50㎡(すべて所有は父)
「自用地」評価となりますが、「被相続人と生計一である母の居住用及び貸付事業用」ですので、
「居住用」及び「貸付事業用宅地等の特例」の適用が認められます。
結論、父が所有していた土地 100㎡すべてが小規模宅地の特例になります。
(3) 小規模宅地等の特例の種類・対象面積
① 特定居住用宅地等の特例の対象面積
100㎡ × 50% = 50㎡
② 貸付事業用宅地等の特例の対象面積
100㎡ × 50% = 50㎡
結論、たとえ、建物が共有名義であっても、「同一生計親族」の場合は、
父所有土地100㎡すべてが「居住用」及び「貸付事業用」小規模宅地等の特例の対象となります。
生前区分 | 対象 | 評価区分 | 小規模宅地等との関係 | 利用区分 |
---|---|---|---|---|
父建物共有持ち分対応土地 | 1F 25㎡ | 自用地 | 特定居住用宅地等 | 本人利用 |
2F 25㎡ | 貸家建付地 | 貸付事業用宅地等 | 本人利用 | |
母建物共有持ち分対応土地 | 1F 25㎡ | 自用地 | 特定居住用宅地等 | 同一生計親族利用 |
2F 25㎡ | 自用地 | 貸付事業用宅地等 | 同一生計親族利用 |