Q111 区分所有から共有名義への変更~二世帯住宅等の小規模宅地等の特例~

公開日:2020/09/01 最終更新日:2020/11/26

DR188

 

今回は、二世帯住宅等の場合の「小規模宅地等の特例」の論点です。
二世帯住宅の「小規模宅地等の特例」の適用は、原則として、建物名義が親子「共有名義」の場合は、土地全体につき適用できますが、「区分所有」の場合は「親の居住スペース」部分しか適用できません。

では、名義を「区分所有」から「共有名義」に変更すればどうなるでしょうか?
今回は、変更のメリットと、実務上の留意事項をまとめます。
なお、土地は親所有で、親と子は「同一生計」であることを前提とします。

1. 建物区分所有の具体例

  • 現在、一軒家の1Fには母、2Fには子供家族が居住している(父は既に死亡)。
  • 土地は、母名義。
  • 建物は、1F母名義、2F子供名義の「区分所有」登記(1F、2Fの面積は全く同じとする)。
  • 子は、無償で母から土地を借りているものとする。
  • 将来、母の相続時に、土地に関して「小規模宅地等の特例」は適用できるか?
    (その他の要件はすべて満たしているものとする。)

 

(1) イメージ図

Q111_1

(2) 結論~「区分所有」での特例の適用~

建物は、母と子「区分所有」となっているため、原則として同一生計とみなされません。
したがって、将来お子様が相続する場合、土地に関しては、母の居住スペースのみ小規模宅地等の特例の適用が可能です(=お子様の居住スペース部分は、特例適用できない)。

2. 共有名義への変更

では、上記具体例で、「建物」を「区分所有」から母と子の「共有名義」に変更すれば、土地全体について「小規模宅地等の特例」の適用はできるのでしょうか?

(1) イメージ図

Q111_2

(2) 結論~「共有名義」変更後の特例の適用~

建物を「共有名義」に変更した場合は、各人の所有区分がなくなるため(2人で全体を共有しているだけ)、「区分所有」の場合のように「同一生計とみなされない」ことはありません。
したがって、「同一生計」であるという要件を満たす限り、土地全体につき、小規模宅地等の特例の適用が可能です。

3. 留意事項

建物を共有名義に変更するだけではなく、母とお子様家族が「同一生計」である必要があります。
元々「区分所有」登記されている場合は、生計別の場合が多いかもしれません。
「同一生計」の合理的な説明ができる必要があります。
なお、建物共有名義で生計が別の場合は、「区分所有」の場合と同様、母の居住スペースのみ、小規模宅地等の特例が認められます。

4. 「区分所有登記」から「共有名義」への変更手続

実務上「区分所有」から「共有名義」への変更作業は、手間やハードルが高いです。
例えば、上記具体例では、一般的に、以下の手続が行われます。

 

① 1Fと2Fの母子各々の持分のうち、1/2ずつを等価交換し、所有権移転登記を行う(司法書士)

 

② その後、1件の建物にするため表題部の変更登記を行う(土地家屋調査士)

等価交換は、税務上、原則として売買とみなされ、「所得税」が課税される場合があります。
したがって、課税関係が生じないよう、「固定資産の交換の特例」適用の有無を検討する必要があります。
区分所有の各々の面積が異なる場合は、さらに複雑です。
また、不動産取得税、登録免許税や司法書士等の手数料などのコストも考慮しなければいけません。

5. 結論

結論的に、「共有名義への変更」は、手間やハードルが結構あるため、実務上は「小規模宅地等の特例」のメリットが大きい場合にのみ、実施する場合が多いのかもしれませんね。

6. 参照URL

(固定資産交換特例)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3511.htm